ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚64

 

 

他の冒険者に見つからぬよう移動しながらリド達が違和感を感じさせる場所へ向かう。東の最奥まで移動するにつれて違和感が強くなってきたと告げるリド達は、自然と手足や体に力が入る。荒い息を吐き牙を剥き出しに、凶暴な貌を浮かべる他の異端児達も東に進むにつれてアイズが忌避するモンスターになっていく。

 

「みんな、落ち着きが無いぞ」

 

「すまねぇフェルズ。だけどよ、理性が保てれなくなりつつあるんだ。本能に逆らえないようなそんな感覚が俺達を落ち着かせてくれないんだよ」

 

「・・・・・そういう事ならリド達はここで待ってくれ。これ以上先に進むとお前達がお前達でなくなるなら尚更だ」

 

フェルズがリドを制すると、他の異端児達も自然と足を停める。

 

「ここからは私が行く。【剣姫】とアラクネーもここで待機してほしい。特にキミは異世界からの客人だ。怪我をさせるわけにはいかない。【剣姫】、申し訳ないが彼女を守ってほしい」

 

「ん、わかった」

 

「オイラ達もイッセーの仲間を守るぜ」

 

フェルズ一人で森の奥へと姿を消した。その間に一行は静寂に包まれフェルズを待つ姿勢で保っていたが、リド達が一斉に林政体制の構えに入った直後に四方八方から数多のモンスターが飛び出して来た。

 

「やっぱりフェルズの言う通りに―――」

 

迎え撃とうとした異端児達を目の前にしても、モンスター達はあからさまに避けてフェルズが向かった最奥へと向かっていく。自分達を無視してまで何かを目指すモンスター達に経験したことが無い摩訶不思議な現象にリド達は困惑せずにはいられない。

 

「コレハドウイウコトダ」

 

「キュー!」

 

「ガルル!」

 

「どういうこともなにも、オレっち達と同じってことだろ! オレっち達が感じていた違和感を目指して、攻撃するつもりだモンスター達は!」

 

「フェルズのことハ心配しなくてもいいでしょウ。モンスター達も私達を襲わないのであれバ」

 

「えっと、アラクネーさんを守ることは変わりないですねリド?」

 

「それが一番大事だ。傷一つ付けたらイッセーに怒られっぞ。最悪、丸焦げにされるかも」

 

怖すぎる想像をしたからか、異端児達はアラクネーを隙間なく背中向けながら囲み、有翼モンスターの異端児達も空から警戒する力を入れる。

 

「ふふ、異世界のモンスターに守られるなんて不思議な気分だわ」

 

「・・・・・」

 

しばらくの『怪物祭り』が絶えず激流のように何かへ目指して駆けるモンスターによって身動きが取れずにいた一行の下へフェルズの声が届く。リドが持っていた小さな宝玉からだ。

 

『リド、そちらは大丈夫か』

 

「オレっち達を無視してそっちに向かっているぜ。よっぽどそっちに何かがあるらしい。フェルズ、何か見つけたか?」

 

『ああ、ダンジョンの中にあるはずの無い神殿のような建造物があった。モンスター達はその中に入って戻ってこない。恐らくどこか別の場所へ繋がっているのかもしれない』

 

「攻撃していないのか?」

 

『しているモンスターはいるにはいるが、傷一つ付けずにいる。魔法か何かによって攻撃を防いでいるのかもしれないが、今は近づけれずにいるから詳しいことは分からない』

 

「これからどうするよ」

 

『モンスター達の暴走が治まるまで待つわけにはいかない。アラクネーを守りつつ強行突破してでもこの場から離れる。こちらからイッセーに連絡してこのことを伝える』

 

一誠の名が出た。今の一誠の状態を知らないフェルズとリド達に伝えないといけないと感じ、アイズはリドの手の中にある宝玉に向かって告げる。

 

「イッセーは、今何もできない」

 

『何故だ【剣姫】?』

 

「イッセー、記憶がない子供になってる」

 

「『子供?』」

 

キョトンとした顔を浮かべるリドと不思議そうに鸚鵡返しをするフェルズの声。それについてアラクネーも説明を買って出て把握したフェルズは唸るように困った風に声を絞る。

 

『そんなことがイッセーの身に起きていたとは・・・・・他に動ける無所属派閥はいるか?』

 

「うん、いる」

 

『ではその者達に連絡を頼む【剣姫】』

 

頼まれたアイズは腕輪を使い、同じ腕輪を持つ異世界食堂で働いている同じ派閥以外の人間・獣人の仲間全員に通信を入れて事の経緯を伝えていると、その間フェルズは歌人鳥のレイに運ばれて合流して来た。

 

「アラクネー、無事だったか」

 

「問題ないわ。それよりモンスター達はどこへと繋がっているか分からない場所に出ているのかしらね」

 

「皆目見当も付かない。仮に地上であって多くの人類が住んでいる町村や国ならば相当な被害を出ているかもしれないが、神の眷族がいる国に繋がっていることを願うしかない」

 

ビシィッッッ・・・・・!

 

一行の耳朶が何かの音の音を拾い、周囲を見渡してもモンスターの大量進撃以外見当たらず変化はない。しかし、立て続けに聞こえてくる引き裂かれるような音の発信源は、18階層を太陽のように照らす天井の水晶群からだと察した時には―――!

 

バキィィィィイイイイイイイインッ!!!

 

白髪に黒い肌の巨人が水晶から産まれ落ちては、アイズ達を愕然とさせた。産声という名の咆哮を上げる黒い巨人の出現にリヴィラの街の冒険者も狼狽、動揺、遁走、唖然と目の前の現実をすぐに受けいれず、長年の経験から直ぐに街から離れんと動き出す冒険者が多数。

 

「バカな・・・アレは・・・・・!」

 

「―――ッ!!」

 

限界まで見開くアイズの金瞳には、6年前―――謎の男神が神威を解放して呼び起こした黒きワイバーンを彷彿させる。背中に背負った剣の柄を握り締め、黒い巨人へ突貫しようと力を足に込める直前だった。黒い巨人は踵を返して木々を薙ぎ払い、蹴り飛ばし、踏み潰しながら東へ駆けだす勢いのままアイズ達の横に通り過ぎた。

 

「・・・・・目的は同じか」

 

「かーちゃんが怒っているのか・・・・・?」

 

「ワカラン。シカシ、この状況ヲ何時マデモ甘ンジテイルワケニモイカナイダロウ」

 

黒い巨人が咆哮を上げながら同胞まで巻き込んで何か―――フェルズが言う神殿に攻撃している模様に一行はまだ立ち往生する。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

玲瓏な魔法の最後の呪文と魔法名と共に時すら凍らせる氷が、森の木々と数多のモンスターの大群を広範囲に凍てつかせた。こんなことできる魔導士は一人しかいないとフェルズとアイズは察し、翡翠色の長髪を伸ばすハイエルフが森の奥から出てきた。

 

「アイズ、無事か」

 

「リヴェリア・・・うん、大丈夫」

 

「ならばこの場から離れるぞ。お前達も他の冒険者達が動かれる前に動け」

 

「感謝する。その前に質問をさせてくれ。イッセーは今、記憶を失って子供になってしまっているのは本当か?」

 

「・・・・・ああ、元に戻る兆しはないがな。自然に戻るのか何かの切っ掛けで戻るのか我々もわからない」

 

「わかった。一先ず【ガネーシャ・ファミリア】に依頼をするしかないな」

 

リヴェリアの魔法により、アイズ達一行はようやくこの場から逃れ二手に分かれて解散した。その最中、アイズが言う。

 

「リヴェリア、黒いゴライアスを倒さなくていいの?」

 

「あのモンスターならアルガナ達に任せてある。だが、どのような条件であのようなモンスターが産まれたのか知っているか?」

 

「・・・・・わからない。突然産まれた。それに他のモンスターと一緒に何かを壊すために攻撃してる」

 

「それはなんだ」

 

「私達も見てはいないけれど、ダンジョンにあるはずがない神殿だとか。しかも神殿に入ったモンスターが地上のどこかと繋がっているのか戻ってこないらしいわ」

 

話しに加わるアラクネーの言葉に歩みを止め、見過ごすことはできないと判断したハイエルフは黒い巨人ことゴライアスが向かった場所へ前に運ぶ足の方向を変える。アイズもアラクネーも追従し、東の最奥にたどり着いた三人を出迎えたのは大きな魔石とドロップアイテムらしい黒い布のような物を持つ四人のアマゾネス。そしてフェルズが言っていたモンスターの攻撃を受けても不自然なほど無傷で残っている神殿。

 

「これがそうなのか」

 

「多分、これ。リヴェリア、どうする?」

 

「どこかに繋がってその先がどこなのかわからぬ以上、これ以上のモンスターの進出を防ぐ」

 

足元に翡翠色の魔方陣を展開し【ウィン・フィンブルヴェトル】を神殿へ向かって放った。石造りの神殿が極寒の冷凍の氷に閉じ込められ、自然に融けるか誰かの手によって破壊されるまで壊されることはない。

 

「取り敢えずはこれで時間を稼ぐ。またモンスターが攻撃するならば対策を考えねばなるまいが」

 

「これ、イッセーの魔法で地上に移動できない?」

 

「・・・・・イッセーでなくとも母君ならば可能かもしれんな。訊ねてみよう」

 

しかし、店が繁盛で抜け出せれない理由で一度は保留にされた。異世界食堂の閉店後になるまでの数時間の間、フェルズの報せを受けたウラノスはロイマンを介して【ガネーシャ・ファミリア】を動かし、リヴェリアの魔法で氷漬けになった神殿の護衛をさせた。

 

「これがそうね?」

 

18階層も暗くなった時間帯に一香と誠、異世界から来た一誠の家族とこの世界のイッセーの家族がほぼ総出で訪れた。彼等彼女等の対応をシャクティがする。

 

「はい。幾度かモンスターの襲撃が遭いましたがそれ以外のことは何も問題も変化もありません」

 

「元々この場所に神殿はなかったの?」

 

「無かった筈です。我々もここまで来ることはないので断言はできませんが、黒いゴライアスが安全地帯に産まれ他のモンスター共々、この神殿に攻撃するのであればすぐにギルドが有力派閥に強制依頼を発令する筈です。それが今日までなかったことなので神殿の存在は誰も知り得なかった証となります」

 

「元々あったとしても、神殿が何かの魔法の類で誰かが発動させるまで結局誰も気付かず放置されていた可能性も否定できないよな」

 

「・・・・・ええ、その可能性もあります」

 

誠も意見を出す横で一香がリヴェリアに問いかける。

 

「リヴェリアちゃん、これを地上に移動させれないか試してほしいのよね?」

 

「・・・・・、・・・・・その通りです。どこかに繋がっているのかもわからない場所へ、これ以上のモンスターの進出を防ぐためです。可能ですか」

 

「試してみるわ」

 

100年近く生きたハイエルフとして誰かにちゃんづけ呼ばわりされる激しい抵抗感に苛まれたが、相手は自分より年上で一誠の母親。訂正してもらいたい気持ちを堪えて頼めば神殿に魔方陣を展開する一香。

 

「・・・・・うん、出来なくはないけどどこに移動させればいいかしら」

 

「フィン、イッセーのホームの中ならどうだ」

 

「ンー、確かに置ければいいんだけど。庭園以外は広くないから置けないね」

 

「それならばオラリオの外に置けばよいじゃろ」

 

「ガレス。それはそれで神殿の奥から何が出てくるのか分からないのに、メレンの港町まで危険に晒すわけにはいかないだろう」

 

「そうねー。オラリオの外まで対処するのもかえって時間が掛かるわガレスのおじさま」

 

「いっそのこと、アダマンタイトで出入り口を塞げばいいだろ」

 

「時間と金がかかる提案だな。出入り口を塞いでしまうのはアリだが」

 

「そもそも神殿を壊すことは?」

 

「ゴライアスですら壊せなかった代物だ。かなり頑丈に作られた物だろう」

 

「じゃあ魔法で!」

 

そんなこんなで一度は破壊活動を行ってみようということになり、魔法の腕に覚えがある魔導士や魔法使いは本気の魔法を放ってみせた。

 

「【レア・ラーヴァティン】!」

 

「えい」

 

「とりゃ!」

 

「エクスプロージョンッ!!」

 

もはや一種の核爆発みたいな爆発が神殿を中心に巻き起こり―――幾何学的な魔方陣が神殿を覆い数々の異世界の魔法全て防ぎ切ってみせたのであった。

 

「嘘だろ!? めぐみんの爆裂魔法でも効かないって!」

 

「それならライトセイバー!」

 

ゆんゆんの光剣が神殿を覆う魔方陣に突き刺さり、効果はなく無効化される結果に終わる。

 

「それぞれの異世界の魔法やスキルが通用しない防御魔法を施すことができる異世界があっても不思議ではないにしろ、厄介じゃないの・・・・・」

 

「ですが、リヴェリア様の【ウィン・フィンブルヴェトル】が確かに当たっていましたよね?」

 

「・・・・・恐らくだが、先ほどの魔方陣に阻まれていた状態で神殿が凍ったように見えていたのかもしれないな」

 

「ならば、私の魔法でも通用しないだろうな。素直に出入り口をその辺の岩石でも何でも詰めて塞いで再びエルフの脆い氷で覆ってしまえば後は放置でいい話だ」

 

アルフィアの指摘も間違いではなく、魔法を受け付けない摩訶不思議な神殿の出入り口は、大きさに合わせて10Mほどの岩石を突っ込み、氷ではなく土くれで覆い被せた上でリヴェリアの【ウィン・フィンブルヴェトル】で氷漬けにした。

 

「後は様子見ね。もしもこれが突破される、突破するようなものが神殿から出た時には息子に任せるしかないわ」

 

「そうだな。俺達もそろそろ帰らないとならないのは非常に残念だぜ。異世界同士の時間の流れが同じだったら気にせずにいられるんだけどなー」

 

「時間の流れ的にどのぐらい違うんですか?」

 

「こっちの世界で一日過ごしたら一週間以上も過ぎてるらしいわ。だからこれ以上いられないのでお別れよ」

 

一香の魔法が元の異世界と一時的に繋げた。一誠の家族たちがイッセーの家族たちと再び会う口約束と別れの挨拶を言い残しつつゲートを潜り元の世界へ帰っていく。

 

「そんじゃあみんな、今日は楽しかったぜ。今度はお土産を持ってまた会いに来る!」

 

「息子のことよろしくお願いするわ」

 

最後に残った誠と一香が潜るとフィン達の目の前で元の空間に戻りながらゲートは閉じた。今日という日を墓場まで持っていき、忘れられない思い出という記憶を頭と心に深く刻みつけ、噛みしめながら白亜の城へ戻った一向に。

 

「―――あ、どこに行っていたんだみんなして。いつの間にか夜になっていたし夕食を食べてないなら今作るぞ」

 

いつの間にか記憶を失った状態で幼児になってしまっていた一誠が元の姿と記憶も取り戻していた。一部の女性は凄ーく残念がり、あとは安堵で溜息を吐いて安心できた。

 

「なんだ?」

 

「何でもない。それよりもいくつかお前に知っておきたいことが起きた。絶対に驚くし悔しがることだ」

 

「悔しがるってなんだ?」

 

「後はすまんの。トレーニングルームが半壊しておる」

 

「なんで半壊!?」

 

「イッセー、可愛かった」

 

「・・・・・なんで?」

 

「ふふ、今日も楽しい一日だったわイッセー」

 

「???」

 

全くもって身に覚えがないことが多々だと疑問符を浮かべながら首を傾げる一誠だけが何も知らないこの状況に面々は思い出話のように和気藹々と語り、一誠に悔しがらせたのは言うまでもなかった。しかも拗ねた。

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