ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
異世界の日本の自衛隊の拠点が完成したことで約束通りにロイマンと会わせる。その為に地上へ連れていく人数は指揮官の狭間を初め僅か三人のみにさせてもらった。待ち合わせ時間通りに自衛隊の拠点に来てみれば、俺が来た報せを受けて見知らぬ二人組が狭間と並んで現れた。
「初めまして兵藤一誠さん。私は内閣総理大臣補佐官の白百合玲子です」
「外務官僚の菅原浩治です」
「どうも、兵藤一誠だ。・・・・・どういうことか説明してくれるよな狭間さんよ。自衛隊の人だけ案内するって言ったのに、完全に交渉する気満々の政府の人間を連れてきたのか」
白いスーツの女性と黒いスーツの男性が絶対に場違いな場所に・・・!
「一言一句、状況の報告をする義務を全うしていた最中に今回のことも報告したら総理はこの二人を派遣したのだ。すまないが地上まで護衛を頼む」
断ることはできるだろうが、オラリオとの交渉は遅かれ早かれか・・・・・。
「そういうそっちの都合で相談もなく無視する形で決めるのは止めてほしいんだが?」
「・・・・・誠に申し訳ない」
狭間以外の二人も素直に謝罪の意を込めてか頭を垂らすから、俺は溜め息を溢すだけにして話を打ち切った。
「次からは絶対に総理が決めたことをその日の内に教えてくれよ。まさかだとは思うけど、他の国の軍人をダンジョンの中に招いて物見遊山みたいなことを許したり、一般市民まで観光させるなんて馬鹿げたことを許すなら・・・・・そいつらの人権と安全は俺達冒険者は守らないぞ。モンスターだろうが冒険者に殺されようと自己責任だ」
「・・・・・仮にそれが現実的になった場合は、全ての責任は我々日本人、強いては世界各国であると言うことか」
「もとより狭間さん達はモンスターの進撃を防ぐために拠点を創ったんだ。民間人を守るためであって、日本の利益のためじゃないと俺はそう認識し、それに賛同したからこうして融通を利かせたり協力したんだよ。だけどそれ以上のことは、俺は手を引かせてもらう。そしてオラリオに住む冒険者としてオラリオに害になる要素は徹底的に排除させてもらう。このことをそっちの総理や政府関係者に確りと伝えてくれよ。―――仮にダンジョン内、強いてはオラリオを日本領土にするってんなら、これは侵略戦争だと認識するからなオラリオは」
真摯に事の重大を伝える。白百合が何か言いかけようするも、それを遮って本題の話に戻す。
「言っておくけど、地上まで数時間は歩くと思ってくれ」
「そんなに時間が掛かるのかね」
「冒険者でもない人間がダンジョンの中を歩くんだ。それも自衛隊でもない人間までいる。それぐらい心構えをしてほしい。実際モンスターに襲われるから俺達から離れないでくれよ」
俺達? と反応をする狭間達に手を挙げる仕草を示せば一緒に来てくれた家族が森の中から出て来てくれた。
「子供・・・・・?」
金髪青瞳の少女、銀髪青瞳の少女二人が背中に剣を装備している。その二人にこの世界の共通語で語り掛ける。
「この三人を地上まで送る護衛をする。モンスターの相手をよろしくな」
「「うん」」
頷き返すアイズとアリサが鞘から剣を抜き放つ姿に菅原が待ったを掛けてきた。
「あの子達は誰なんですか?」
「俺と同じ冒険者だ。銃を使わない戦闘で力だけの戦いなら自衛隊にも負けない強さを持っている」
「こんな小さな子供まで冒険者を!? オラリオの法律はどうなっているのです!」
「法律なんてないぞ。冒険者になる条件は一つだけあるけど、それさえ達成すれば老若男女問わず年齢も関係なく全員が冒険者になれる。無論、異世界から来た狭間さん達も例外ではない」
「我々も冒険者になれる? それはどんな方法なのだ?」
「地上に出たら教えるよ。それじゃ行こうか」
前衛として先に二人を歩かせて護衛の三人を中衛に後衛&殿は俺がする位置で行動を開始する。自然豊かな森の中を歩く先に冒険者達が築き上げたリヴィラの街に寄る。初めて見る三人は決してカタギではない人相の老若男女の冒険者が木造の店や家々の前を我が物顔で闊歩し、地上と違い過ぎる値段の物価と交渉が行っているぼったくりが日常茶判事、刀剣類と防具を装備している人間達とも擦れ違う狭間達にとって全てが興味と好奇心の対象になっているに違いない。
「イッセー君。ここがリヴィラの街という場所か?」
「そうだ。何度もモンスターに街を破壊されても冒険者達が復興させる打たれ強さが持っている街だ。もう100回以上は復興しているぞ」
「そんなにっ!?」
「言い方はあれですが、雑草魂のように逞しいですね」
おお、久しぶりに聞くなその言葉。懐かしいと思うほどこの世界で過ごしているんだな。
「この街を統治している人間はいますか?」
「街というより街に住む冒険者達を纏めている頭がいる。一目見ればわかるほど柄が悪くてゴロツキと荒くれ者の冒険者で命の次に金が大切な冒険者・・・この街に住んでいる冒険者が全員それでもあるがな。狭間さん達からすれば警戒しておく人間ばかりだってことだ。盗みやスリをする冒険者もいるから間違ってでも一人だけ入らないよう他の自衛隊の人に言っておいて狭間さん」
「分かった」
街を素通りして17階層と繋ぐ連絡路へ目指す。が・・・・・。
「兵藤さん。あとどれぐらい進むのですか?」
政府の二人が狭間さんと違って体力は高くなかった。巨大な樹木の根っこの上に登ったところで白百合が顔に汗を浮かべて訊いてきた。
「半分以上は進んだけど、このペースなら数十分ぐらいしたら上の階層に着くかな」
「これだけ歩いてもまだ遠く、さらに17階層分も歩かないといけないとは・・・・・」
「冒険者だと身体能力が強化されるからこのぐらい余裕だけどな。ほら、歩く歩く。これ以上遅れると下手したら半日過ぎるぞ」
「休憩は・・・・・」
「無しだ。オラリオの代表者との謁見は今日にしたんだから今日中に地上に着かないと」
白百合と菅原を催促して先を進むこと数十分。ようやく開けた場所とぽっかりと空いた壁の穴、17階層の連絡路に着いた。
「こっから先はモンスターとの遭遇が高くなる。決して一人で逃げ出すなよ」
「援護射撃は」
「不要だ。冒険者の戦う様を目に焼き付けてくれればいい」
護身用の軍用の銃を持ってきている狭間さんの協力を拒み、変わらない陣形で地下迷宮の名に相応しい洞窟の中に足を踏み入れてから幾度もモンスターと遭遇した。
ブオオオオオオオオオオオオオッ!!!
「う、牛の怪物!?」
「イッセー君、本当に彼女達を―――!」
ズバッッ!!! ズドンッ!!
「「・・・・・っ!?」」
「見たな? これが冒険者だ」
アイズとアリサが二体のミノタウロスの懐に飛び込み、それぞれの剣で的確に魔石を狙って砕き、硬い外皮ごと脳天から一刀両断して灰に変えて露払いし、背後から現れたミノタウロスは俺が倒す。
「日本に出現した牛の怪物と同じ個体であるならば、空対地ミサイルとロケット弾、重機関銃・機関砲級の武器でなければ無力化できなかった怪物を、こうもあっさり・・・しかもそれを少女の華奢な腕で・・・・・!」
ドロップアイテムと魔石の回収はせずひたすら地上へ目指しつつモンスターを倒す。三人は初めて二人の少女の戦いぶりを見せられた以降、すっかり大人して子供に守られる大人の構図となった。
「イッセー君、知っているなら教えてほしい。モンスターが死ぬと必ず残す紺色の石は何かね」
「モンスターの心臓でもある魔石って名前の石だ。オラリオと俺達冒険者はモンスターが落とす体の一部と魔石を主な収入源としていて、魔石を加工すれば様々な道具が作れるんだ」
「あの小さな石が現代のエネルギーの代用品に成り代わるのですか?」
菅原も話に加わり質問してきた。
「さすがにそこまではならない。精々日用品ぐらいだよ。だけど中には人間の身長と同じ巨大な魔石も手に入ることもできるから試さないと何とも言えないな」
「魔石とやらはオラリオのみしか手に入らない代物と思っても?」
「世界で唯一のダンジョンから産まれるモンスターのみ持っているものだから間違いない。ギルドは魔石を独占してモンスターのドロップアイテムも売買して経済的発展を遂げているからオラリオをよく思っていない大国が存在している。まぁ、どの国もオラリオより強さの質が違いすぎて手出ししてこないんだけど」
「そんなオラリオに戦争をする国は存在しているのですか?」
「一国だけ。そしてその一国が必ず負ける。戦い方以前よりその国の兵士の強さのレベルが低すぎて、戦いにもならないほどらしい。俺も一度参戦したけど、本当に弱かったわ」
そ、そうなのか・・・・・と神妙な面持ちになった三人を守りながら襲いかかろうとするヴォ―パルを一蹴する。
「イッセー君。参考にだが我々だけでダンジョンを攻略することになった場合、キミの基準でどこまで進めると思える?」
「それ、一人一人の自衛隊の強さじゃなくて銃の威力で攻略の進み具合が変わる話じゃん。・・・・・まー、一部のモンスター以外は当てれば何とか生き残れるから甘く見積もって27階層までがいいところだな」
「27階層には何があるのですか?」
「21階層から27階層まで天井や床がない吹き抜けの状態で階段状のナイアガラの滝を彷彿させる巨大な水のエリアだ。水中にも魚のモンスターがいるから、水に落ちたらモンスターに食い殺されるオチが待っている。それ以上に身体が弾丸のように速く、身体が障害物にぶつかって弾けようとお構いなしの捨て身で攻撃してくる厄介な燕のモンスターがいる。おそらく戦車の装甲を凹ませるか穴を開ける威力はあると思った方がいいぞ。身体に穴が出きる威力を持ってるから出会ったら最後だな自衛隊の命は」
狭間が息を呑んだ。白百合と菅原は顔色を悪くする。
「その階層に行く前にも、人並みに大きいスズメバチのモンスターを初め、武器を持ったモンスターがいるから犠牲者と負傷者なしで攻略できるほどダンジョンは優しくも甘くもない。が、それ相応の危険には高値で売れる素材が確かにあるから、たくさんの冒険者が命を顧みずダンジョンで冒険することが当たり前だ」
「イッセー君もそうなのか」
「そんなわけあるか。昔は元の世界に帰るまで生き残るための金を稼ぐ必要があるから必然的に冒険者になったんだ」
「今は?」
「元の世界に帰る手段を手に入ったから、今は俺と同じ元の世界から来た日本人達を送還するために居残っている」
と、話をしている間に狼系のモンスター、ヘルハウンドが現れた。もうここまで進んだか。
「あともう少しで地上に出られるぞ」
「やっとですね」
「あの狼もモンスターですか?」
ここまでモンスターに襲われながら守られてきた三人はもはや度胸がついた模様。落ち着いて俺達に守られる姿勢を保つ白百合の質問にこう答えてやった。
「地獄の狼と読んでヘルハウンドっていうモンスターだ。鉄をも溶かす炎を浴びたら、冒険者といえど良くて全身丸焦げもとい重度の火傷。最悪は重度の火傷を負った身体で身動きができないところ、生きたまま群れのヘルハウンドに食われて死ぬ」
「「「―――っっっ」」」
「そんな死に目に遭った冒険者は星の数ほどらしく、珍しくもない死に方だ」
口からそんな火炎を吐くヘルハウンドを真正面から突っ込むアイズは、風で防壁を作り肌が焦げそうな炎の熱を受けても、炎は激しく渦巻く風に逸らされてアイズを焼くことが敵わず口に剣を突き刺され、半身が砕けて死ぬ。アリサの方は危なっかしくヘルハウンドの炎を受けながら赤い大剣を豪快に横凪で振るって、お返しとばかり燃え盛った大剣から炎の濁流が津波のように放ち、ヘルハウンドの一片の肉も魔石も燃やし尽くしてみせる。
「逆にこんな感じとは言わないけど、ヘルハウンドを倒し退ける冒険者が多いのも事実だ」
「「「・・・・・」」」
あれま愕然としちゃってる。
「どう狭間さん。強いだろ」
「・・・・・人間のレベルを超えているのではないか?」
「強い冒険者はこれぐらいが当たり前だからなー」
「そう、なのか・・・・・」
「でもさすがにスナイパーや長距離弾道ミサイル、核兵器などいったわざわざ目の前に立たずとも殺すことができるものには弱いから」
「そう、なのか・・・・・」
「ま、居場所を突き止められたら速攻で距離を縮められて殺されるだろうけどな!」
HAHAHA! と笑いながら狭間の肩を叩き、安心させない俺は鬼畜かもしれないな。
「イッセー、何を言っているの?」
「どっちも戦い方次第で勝てるよーって教えていた」
「この人達、強い?」
「いや、冒険者よりは確実に弱い。駆け出しの冒険者相手だったら勝てるけど第三級冒険者には負けるよ。唯一アイズとアリサや二人以上の強い冒険者に勝てるとしたら武器のみだ」
「どんな武器?」
「それは家に帰ったら教えるさ。ほれ、お代わりが来たぞ」
新たなモンスターとの出会いに少女達は勇ましく得物を振るい、三人にモンスターの凶刃もとい凶牙から守り続けたことで、ついに上層の一階層・・・・・地上まで続く螺旋階段とダンジョンへ、地上へ登り降りする冒険者達が踏む姿が三人の視界に入れさせることができた。
「随分と長くて高い螺旋階段ですね」
「こんな造形物は見たことも聞いたこともないわ」
「地上がどうなっているのだろうか」
長い螺旋階段を上り、駆け出しの冒険者が初めて訪れる広いホールのような場所。唯一の出入り口から出るとそこはまさしく異世界の都市―――!