ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
「アイズ、アリサ。護衛をありがとう。みんなにこの三人がオラリオに来た事を伝えてくれ」
「わかった」
「うん」
二手に分かれ行動をするアイズとアリサの背中を見送る俺に質問してきた。
「彼女達は帰ったのですか?」
「この世界には携帯電話や無線なんて作らない限り情報を共有する便利な道具がないからな。必然的に自分の足で伝えないといけない。新しい異世界人がオラリオに来た事を教え回ってもらっている」
「誰にです?」
「オラリオで一番有名な冒険者や仲間達にだ。さて、これからの予定のことなんだが」
菅原が口を開く。
「この都市の代表者と謁見をですが、その予定の時間は何時ですか?」
「夜にしておいた。今の時間帯は代表者が多忙で席から離れないからな。よって三人にはそれまで観光をしてもらう。何か異論はあるか?」
白百合と狭間が無いと返す。
「是非ともお願いします。異世界の文化をこの目で見てみたいので」
「異論はないぞイッセー君」
菅原も同意見なので少し歩いてから三人に振り返り、白亜の摩天楼施設『バベル』に指した。
「じゃあまずは俺達の目の前にある巨大な塔、名前はバベルだ」
三人も振り返り改めてバベルを見上げると感嘆の念を漏らす。
「おおっ、これは凄い。天辺が見えないほど高く石造で作られているのか!」
「歴史的文化にも世界遺産でも文句ない建造物ですね」
「この塔の中から、塔の下にダンジョンがあったのか・・・・・」
ずっと背負っていた鞄からカメラを取り出す狭間が写真を撮り始めた。何を持ってきているのかと思えばそれもあったのか。
「このバベルは千年前から長年作られてた。元々オラリオがなかったこの場所は剥き出しの状態で世界中にモンスターが地上に跋扈してしまう状態であったから、人類がモンスターに襲われ人類滅亡の危機に瀕していた時代だった。故に人類はその危機に立ち向かって星の数ほどの犠牲者と数多の英雄を犠牲にして、今のオラリオと平和を齎してくれたんだ」
「そういう歴史があるのかこの世界にも」
「千年・・・数百年ぐらい前に完成したと思えば、凄まじい耐久度を誇っているのですね。一見して劣化しているところは見当たりません」
「一度は外部に壊されたらしいけど、それでも完成させた人類は凄いよな。あとバベルの中には冒険者向けの店や、特別な存在の居住スペースがある。そこに連れて行くことはできないけど、他に見所がある場所はたくさんあるから案内するよ」
三人からよろしくお願いすると異口同音で言われた。なので早速案内を始める。
「はい、ここ白亜の施設は『冒険者ギルド』。ここで魔石の売買を行い、商人や同じ冒険者が主に依頼を発注し、全ての冒険者をサポートしてくれる。三人が謁見を求めるオラリオの代表者はこのギルドの長であるよ」
「ギルドの長ですか。今はお会いになられないのですよね?」
「多忙な故にな」
数多の冒険者がカウンターにいる見目麗しい受付嬢と会話し、依頼を受けたり依頼の達成の報酬を受けたり、ランクアップの報告をしたり依頼を発注している冒険者が見受けれる。
「イッセー君、冒険者になる条件は?」
「ああ、それは―――お、丁度いい」
橙黄色の髪を持つ、飄々とした旅人風の優男がナンパしている様子だが、薄紫色の髪のエルフの受付嬢に冷たくあしらわれている。三人に待っていてもらい優男を回収に向かった。話しかけて暇なら同行してほしいとお願いすると二つ返事で了承してくれた。
「待たせた」
「彼は?」
「彼もとい、彼と同じ存在がオラリオに多く住んでいてな。彼のような存在を大黒柱にしないと冒険者になれない条件がある。それが、神の眷族になって神の派閥に入ることだ。彼は神ヘルメス―――そっちの世界にも神話が存在するなら、彼はギリシャ神話のヘルメスと同じ神の名を持つ神だよ」
「ん? 聞き覚えがない言語で話すねイッセー君。どこの種族の言葉なんだい?」
「今ヘルメスのことを交えながら冒険者になる条件を教えているところだ。この三人は異世界から来た俺と同じ日本人だよ。異世界の言語で話している」
教えた途端、ヘルメスが新しい玩具を見つけたような目となって顔も輝かした。
「異世界人キター!!! 初めまして、オレは―――」
「だから、この世界の言葉がわからないんだってば。ヘルメスを紹介したくて呼んだんだよ」
「おっと、そうだったね。で、彼等も保護をするのかい?」
「いや、ロイマンと謁見したがっている。目的は十中八九、この世界の物資や資源の確保と買い取りに有限ありの互いの世界の交流の交渉、話し合いの会議だ」
「へぇ、もしもそれが本当ならオレもその会議に参加したいな。ダメかな?」
「元より呼ぶつもりだよ。この世界を誰よりも自由な風の如く回っているヘルメスの知識と情報は、この三人の背後にある国にとっては一億ヴァリスよりも価値がある。夜になったらロイマンと合わせる予定だから閉店後の店の前で待っていてくれ」
意味深に笑みを浮かべながら頷き俺達から離れるヘルメスを見ていた白百合が訊く
「彼と何を語っていたのですか?」
「ギルドの長との謁見に参加したいと。それを許した」
「イッセー君、彼が神・・・あの日本神話のような神々と同じ存在の神というのは本当なのかね?」
「見た目は普通の人間のように見えるけど本当に神だよ。このオラリオ以外にも世界各地で色んな神々が天界から降臨して自分の眷族を増やしたり、眷族と国を築き上げたり、神であることを隠して人類とスローライフをしていたりして下界と呼ぶこの世界に永住するんだ」
「「・・・・・」」
うん、信じられないって気持ちが顔に出ているな。それ、すごーくわかるわー。
「因みにそういった神々の大半は快楽主義者が多くて、真面目で誠実、まともな神は少数派だ。さっきのヘルメスはどっちかっていうと快楽主義の神側で、いつも自分の眷族達をブラック企業並みの仕事のごとく振り回している」
「そ、そうなのか・・・・・」
「だからそんな神の眷族になってしまったら、色々と大変で苦労する事が多い。冒険者になる条件として神の眷族にならないといけないから、自分の主神となる神を選ぶ時は、知っていたら最初に選別とか慎重にならないといけないが、何にも知らない純粋無垢な人間は神の甘言に騙されてハズレを引くことは多い。もうそこで自分の命運が決まったも当然かもな」
「じゃあ、兵藤くんの主神はどちらですか?」
「俺? 前回は女神の眷族だったけど今は脱退しているぞ。さっきのアイズとアリサも一時的に脱退してる」
それであの強さ? と口にする白百合の疑問を解消してもいいが、今は案内だ。
「次行こう。まずは西だ。ああ、腹が減っているならどっかの店で食うか? それとも馴染みある日本の料理を食べたいか?」
「この世界で日本の料理が食べられるのですか?」
「というか、俺がその店の店長をしているんだ。どうする?」
顔を見合わせ、どっちにするか俺の目の前で話し合った結果。馴染みある料理を食べたいと決まった。三人を連れて西の、北西のメインストリート、通称『冒険者通り』へ案内しながら擦れ違う店を紹介する。
「ここだ」
「異世界食堂・・・・・」
「日本の文字で漢字の看板で、とても分かりやすい店の名前で構えているのですか」
「我々のようにこの世界に来た日本人からすれば分かりやすいな」
扉を開けて中に入ると、常連客達が自分の好物である料理と酒を飲食しながら腹を満たしている姿が視界に入る。来店した俺達の対応には海童が来てくれた。
「お、店主・・・後ろにいる三人が新しい異世界の日本からきたっていう人か?」
「そうだ。四人分の席はあるな? あと日本語で挨拶しておけ。この世界の言葉を理解できない方だ」
「そうなのか! それは初めてのパターンじゃんか。―――ええと、初めまして。俺は海童剛っていいます。俺も日本人です、よろしくお願いします」
「白百合玲子です。海童君は、この世界に来て長く住んでいるのですか?」
「そうっすね。店主の店の扉を壊した弁償で働いて一年以上は。っと、空いている席に案内します」
さっさと通せって目で俺に催促された海童が案内した席は、多数の少年と少女達が食事している席の横だった。その一人と目が合う。
「あ、イッセーさん・・・と、その三人は・・・・・」
「異世界から来た日本人だ。御三方、この学生達と他にもこの場にいない他にも同じ高校生が大勢いるがこいつらも別の異世界から来た日本人だ」
「本当にこの世界が異世界なのかと疑うほど日本人と会いますね」
「わ、日本語だよ南雲君!」
「その制服・・・・・もしかして自衛隊の人ですか?」
「その通りだ。私以外にも自衛隊の隊員が拠点にいるよ」
「拠点だって!? それはどこに!」
悪いが話はそこまでにしてもらおう。うるさくなってきた。さっさと三人を座らせて、さっさとメニューを選ばせる間にも、もっと話を聞きたいって視線を向けてくる南雲達。
「イッセーさん。自衛隊が他にもいる話は本当ですか」
「本当だ。ダンジョンの中に拠点を構えている。今この場で言えるのはそれだけだ」
「・・・・・わかったわ。後日教えてくださいね」
「な、香織?」
物分かりがよくて助かる少女だよ。
「イッセー君、この世界の通貨は・・・・・」
「ヴァリスって通貨だ。オラリオの場合はな。他の世界に行けば俺が知らない紙幣通貨があるかもしれない」
その硬貨を数枚見せて三人はそれぞれ手に取って眺める。
「これ一枚で日本円に換算するといくらぐらいに?」
「気にしなかったから考えたことが無かったな」
しばらくして注文した料理が運ばれてきて、異世界でも日本料理が食べれる変な経験をした三人と食事をする。
「この店の店員達はイッセー君が雇っているんですか?」
「一緒に住んでもいるぞ」
「労働基準法はどのように?」
「そんなの無いぞこの世界には。日本の法律、日本がある異世界の法律は通用しない世界だし」
「では、犯罪者達をどのように取り締まるのですか」
「捕まえて一定期間過ぎるまでは牢屋に入れるだけ。それからオラリオから追放する」
「死刑のような重い罪を犯した犯罪者でも?」
「そうだな。ま、そう言う奴は他の冒険者に殺されるか勝手に死ぬことが多いし、どこかに隠れ潜んでいるかオラリオから逃げていることもある。賞金首を狩る生業や暗殺の家業をしている神の眷族も、今や足を洗ってどっかの店の店員として働いて金を稼いでいるしな」
ヘックシュン! と揃ってくしゃみをしたヒューマンの女性と獣人の女性がいることに気付かなかった俺は、頼んだステーキを切り分けながら言う。
「治安はどうなっていますか?」
「正義と秩序を司る冒険者達が積極的にオラリオ中を巡回している」
「警察機関のような組織は存在しないのですね」
「オラリオは実力主義で成り立っているからな。犯罪者はならず者や荒くれ者、ごろつきの一般人や冒険者だが、そいつらは格上の冒険者には絶対敵わないから逃げるし、陰でコソコソ隠れて人には言えないことをしているのが常だよ」
「ということはダンジョンの中で悪事を働いたら、誰も気付かれないのでは?」
おや、鋭い。
「正解だ。故に誰も気付かないし残った死体はモンスターが食い荒らすから証拠は残らない。殺し合いがあっても誰も犯人を見つけることは困難を極めるし、首を突っ込まない限り誰も事件に足を踏み込むことも深く関わらないこともある。犯人の首に賞金が掛かっているなら別かもしれないがな」
「ダンジョンは時に犯罪の証拠を残さない隠すにうってつけの場所にもなり得る、か」
「そう言うことだ。ギルドに報告してもダンジョン内で死んだら冒険者の責任と片づけられる。記録は残されけどな」
うむ、今日も美味しいな。この世界で手に入る食材は異世界の食材ばかり頼らず作らないと。
「ところでこの食材、野菜や肉はどこからか輸入されているのですか?」
「大体はオラリオの外で育てられている。魚貝類もオラリオから離れた港町から運ばれてくる。ここ最近じゃあ日本みたいな島国、極東って島から海列車で運ばれてさらに食材が運ばれてくるようになったし」
「「「海列車?」」」
「海に敷いたレールで走る列車だよ」
想像は容易いが、絶対に実現できない類と認識したのか苦笑いを浮かべる。
「兵藤君、列車は海を渡ることはできないですよ」
「そっちの常識と物差しで押し付けないでくれるか? ここは異世界で魔法も存在する。無限の可能性があるしその可能性を実現するのだって俺達次第だ。現に異世界なんて存在する筈がない常識は、今はどうだ白百合さんよ?」
「・・・・・それは」
「あらゆる可能性を最初から否定するのが人の成長を止める愚かな原因の一つだ。であれば、一度でも試したことが無いのに否定する根拠はもちろんあるんだろうな? 口だけで簡単に否定を済ませるつもりなら交渉も成功できないだろうよ」
実際―――謁見が始まると菅原と白百合から持ち掛けられる案件の数々をロイマンは。
「話にならん」
と一言で謁見を終わらせるのだった。