ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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交渉へ3

食事後、謁見の時間になるまでオラリオを歩き回りながら観光させた。【ガネーシャ・ファミリア】の拠点の胡坐を掻く自身の姿の建物を見た時の三人の開いた口が塞がらなかった気持ちは分からなくはない。三人が時間が許されるまでオラリオを堪能したと思う。

 

オラリオを見てどう思っているのかは分からないが、謁見は俺の管轄外だ。ロイマンを納得させる交渉材料を持ってきていることを祈る。

 

さて、観光をさせている間に約束の時間が迫った。異世界食堂が閉店したその後にロイマンを迎えに向かい、また店に戻った。中には今回の謁見に好奇心と興味で集まった親しい神々や冒険者達が、二階に集まり一階の様子を隠れて俺の魔法で見守ることになっている。下の階には白百合と菅原、狭間が先に待っていて座っているが、俺とロイマンが店に入ると席から立ち上がった。

 

「彼等が異世界から来てロイマンとの謁見を求めていた人間だ。向こうは色々と取引や交渉の話をしてくると思うが、ロイマンの判断で決めていい。政治に関わる話もしてくるだろうからな」

 

「政治か。オラリオの利益を齎す話であることを願うばかりだ」

 

エルフとは思えないばかり肥満体で、『ギルドの豚』と蔑称の証である肥え太って肉が付いた腹を揺らしながら三人に近づくロイマン。

 

「待たせた。三人が会いたがっていたオラリオの代表者でギルドの長であるロイマンだ。で、黒いスーツの男が菅原、白いスーツの女が白百合、こっちの緑の服を着た男は狭間。主にロイマンはスーツを着た男女の二人と話し合うことになっている。席に座ってくれ」

 

俺も含めて全員が横長椅子に座り、俺が双方の通訳としてロイマンの隣に座る。

 

「菅原さん、自己紹介は軽く名前だけ言っておいたからすぐに本題に入ってくれ」

 

「わかりました。ではロイマン殿―――」

 

菅原から打診される内容をそのまんま共通語で伝えるとロイマンの眉間に皺が寄った。

 

「日本国とは何だ」

 

「極東みたいな島国のことだ」

 

「その国がオラリオと取引したいことは理解できるが、この世界の原産品と日本製品とやらを取引してオラリオに利益が生むと思うか?」

 

「一応、異世界食堂はその異世界の日本の料理を提供して商売は成功しているぞ。ロイマンもその料理の味を覚えているだろう?」

 

むぅ、と難しい顔を浮かべるが否定しない。

 

「お互いの世界にしかないものを売買して、時間を掛ければ必ず利益に繋がることは確かだ。実際、他の料理も作れば必ず売れるって料理はあるけど、事情があって作れないでいる理由があるし」

 

「それはなんだ?」

 

「すごーく手間暇がかかることだ。だからその手の料理しか作らない料理人に作って貰えば、異世界食堂の次に繁盛するって確信はしているぞ。逆にオラリオしかない料理を日本で作れば異世界の料理なんて珍しすぎるから食べに来る客が大勢集まる。この二人はそう言った双方の利益を必ずなる話をしてくる。取り敢えず話しだけは最後まで聞いてくれ」

 

「・・・わかっている。彼等の求めているのは何か聞け」

 

本人からそう言われたから日本語で話の続きの催促をさせた。

 

「兵藤君、ロイマン殿にダンジョン内の資源とオラリオの外の資源の採掘権と免税特権を求めることを伝えてくれないでしょうか」

 

「何を考えてそんな特権を求めているんだよ。それ、絶対に断られる。オラリオの利益を掠め取る認識をするぞ。あと魔石だけじゃなくモンスターのドロップアイテムと冒険者が集める全ての素材もダメだ。ダンジョンが自己修復する木と水、水晶や岩石に土ぐらいなら許される」

 

「では、それら以外の地下資源の採掘権ならば?」

 

「それも含めてオラリオの外の資源の採掘権と言ったけど、そこまでの規模になるとオラリオに対する見返りは相応だぞ?」

 

「日本製品の物資を提供します」

 

「その資料はある?」

 

白百合から事前に用意したらしい資料を受け取り、ロイマンに地下資源の採掘権と免税特権を欲する代わりに日本製品の物資の提供の話を伝え、一緒に資料の確認する。

 

「何が何だか分からぬものばかりだ。これでオラリオが得る利益と釣り合うのか」

 

「ちょっと待ってて。白百合さん、この日本製品はこの世界でも使える物だけ選出したんだよな?」

 

「そのつもりです。実際に使用してもらわないとわからないですが、もしも希望の製品があるなら追加します」

 

「じゃあ、その後のことは?」

 

「その後・・・・・?」

 

おっと、そこまで深く気にしていなかったか。

 

「この世界のゴミ処理事情は日本と違って整っていないんだ。瓶は問題ないけど燃やせば有害ガスが出る物や燃えないゴミを持ち込むのはよろしくない。ダンジョンの中でそんなゴミが捨てられるだろうし、そうなると他の冒険者の活動の妨げにもなる」

 

「「・・・・・」」

 

「今日まで知らなかったから仕方がない部分があるにしても、洗濯洗剤と漂白は洗濯機がないこの世界では使えないからボツだ。それと食料は早過ぎる、調味料の方がいいと思う。見たことが無い食材に物珍しさで買うだろうけど、どんな料理に適した食材なのか誰も分からないしそこまで教えておかないといけない手間も掛かる。他にも数十種類、オラリオでどうやって使って売るんだというばかりだぞ。これじゃそっちが求める特権に見合う価値じゃない。そもそも―――」

 

生産性が無い製品ばかり過ぎて、オラリオだけが大損すると断言させてもらった。

 

「それとオラリオの外の資源って際限がない。仮想として数百億の利益があると思うのにこの資料に載っている物資だけってのもなぁ」

 

「毎月その数の物資を提供する予定です兵藤君」

 

「毎月かぁ・・・・・売れずに残った大量の在庫をどうしてくれる?」

 

「こちらで回収いたします」

 

「最初からそうする前提なら、オラリオでも長期の生産性が保て、こっちでも永続的に日本で作れる生産性がある日本の物資が欲しいな。それ以外はただゴミを溢れさせるだけ。取り敢えず、ダンジョンのモンスターのドロップアイテムと魔石、冒険者の稼ぎを減らすことになる物以外の資源はロイマンが許さない」

 

さらに言うならばだ。資料を人差し指でトントンと突く。

 

「これら、モンスターが出るダンジョンの中を運び来ないといけないよな?」

 

「ええ、その通りです」

 

「今日、二人はその足で地上まで歩いたけどさ。実際に人も製品も一つも欠けなく運べると思うか?」

 

「「・・・・・」」

 

何度も危ない経験をしないといけない物資の搬送。特に自衛隊がその任務を全うするだろうが、とてもじゃないが彼等だけじゃ無理だ。

 

「狭間さん。牛の怪物は重機関銃でないと倒せないんなら、陸上自衛隊が使用している銃器で倒せる自信は?」

 

「・・・・・悔しいが、難しい。運搬する隊員の数は足りるだろうが、モンスターを相手にしながらでは狭い洞窟内での爆発物はかえって隊員に危険が及ぶ」

 

「絶対にそれだけは止めてほしい。周囲が崩壊するから。というわけで白百合さんと菅原さん。自衛隊だけでは心持たないという結果もあるから残念ながら・・・・・」

 

ロイマンにこの資料の日本製品だけでは釣り合わない、向こう側がまだこの世界の情勢を網羅していないために再度改めて交渉をと告げると。

 

「話にならん」

 

と一言残してロイマンが店を後にした。目の前の三人は少し肩を落として残念そうにしているが・・・・・。

 

「じゃあお二人さん、次に行こうか」

 

「次とは?」

 

「俺はそっちの望みを叶えたが異世界の物資を欲しがる相手は他にもいるわけでな」

 

二階から降りてくる多くの男女の姿。中にはヘルメスもいて誰よりも早くこっちに来た。

 

「次はオレ達の番ってことで構わないよなイッセー君」

 

「大いに結構だ。はいよ、翻訳道具だ。耳に付けた状態で話し合ってくれ。菅原さん達もこれを付けてくれ」

 

「これは?」

 

「異世界言語を翻訳するイヤホンみたいな道具だ。これでスムーズに話合いできるだろ」

 

本当か。と疑いの眼差しで向けられるが試して成功したんだから機能は問題ない。騙されたと思って付けろと催促し―――。

 

「やぁ、オレの言葉がわかるかい?」

 

「っ!? え、ええ・・・先ほどと違い、この道具を付けているのと付けていないのでは、不思議なことにこの世界の言葉と私達が知っている言葉が同時に聞こえて、どのように申しているのかしっかりと翻訳されています」

 

「オレも同じだよ。イッセー君はこんなマジックアイテムを作ることができる凄い子なんだ」

 

「この道具を兵藤君が?」

 

「ああ、その通りだ。そしてキミ達の望みを十全に叶えてくれる策もあるはずだ。その前に神々のオレ達が異世界の日本のありとあらゆる物資や資源には興味があってね。よければこちらの言い値でそちらが用意できる限りの物を全て買わせてもらいたいんだ。さっきの物資のリストに載っていた物も含めてだ」

 

「何ですって・・・・・兵藤君、彼が申している事は本当ですか?」

 

ロイマンとの交渉は失敗したのに神々相手だと向こうから買わせて欲しいと乞うてきたんだ。白百合が目を丸くするのに十分な理由だ。

 

「言っただろ。神々の大半は快楽主義者だって。神ですら認知していない異世界でしか手に入らない物は神々にとって娯楽の一部だ。新しい玩具が欲しい子供のように金に糸目を付けぬほど欲しがるよ」

 

「ではロイマン殿の場合は?」

 

「あっちは都市全体の利益を重視している。二人が用意した交渉材料はオラリオを知らなかったのと、ゲートの場所が場所でコストが非常に釣り合わないからだ。地上にゲートが出現してたらコストの問題はなかっただろうに」

 

「確かに・・・・・モンスターに襲われながら18階層分も毎回行き来しなければならない上に、モンスター相手に消費する武器弾薬と人件費が高くついてしまう」

 

はいはい、それも簡単に解決する方法はあるんだよなー。

 

「冒険者を雇えばいい」

 

「・・・冒険者を?」

 

「そうそう、依頼なら引き受けてくれる冒険者はいるぞ。報酬は異世界食堂と関連している異世界の酒とか食べ物だったら食いつくと思うし。ヘルメスが言ってたように異世界の物資が欲しいから誠心誠意で依頼を受けてくれるだろうよ」

 

そうだろ? と俺から視線を受けたヘルメスは口元を緩ませながら頷く。

 

「イッセー君の言う通りだ。キミ達の異世界のありとあらゆるものを見てみたいし手に入れたい。異世界の物資だらけのマーケットなんてあったら、絶対に繁盛するとオレが認めるよ」

 

「その利益の一部を得られる事業にヘルメスも噛ませてもらいたいもんなー」

 

「オイオイ、イッセー君。オレはヘルメスだぜ? 異世界の商売に興味津々なだけだよー」

 

独り占めは許さない、と一部の神々がそんな心境で優男神を厳しく見るが興味ない俺は、象頭の仮面を付けている男神を紹介する。

 

「もしも頼むなら冒険者を多く抱えているこの男の神がおすすめだ。しっかりと自衛隊の護衛を勤めてくれるはずだ」

 

「俺がガネーシャである!」

 

「そ、そうですか。ガネーシャさん、依頼を引き受けてくれる際にはよろしくお願いするかもしれません」

 

「任せるがいい! 超・優秀なアイアムガネーシャの子供達にぃー!」

 

「「「うるさい!」」」

 

数人の女神からど突かれ、グホェー!? と悲鳴を上げながら床に倒れるガネーシャ。

 

「時にイッセー君。オラリオで空き家に住む場合に住民登録はギルドで?」

 

「いいや、空き家があったら勝手に居座って住んでいいんだ。でも、神と神の眷族はどこに拠点という名のマイホームがあるのかギルドで登録しないといけない。あと税を払わないとダメな」

 

「一般人は住民登録をしなくていいとは、随分と管理がずさんであるな」

 

「そーなんだよ。だからギルドもオラリオの人口が何十万人もいるのか把握できていなかったんだよ。知っているのは神の派閥の構成員とその数に派閥の強さだけ。それでも一部の神々はギルドに正規の情報を敢えて伝えず、隠して情報を偽っている。黙っていればギルドも気付かれないし、バレない。なぁーヘルメス」

 

「そうだねーイッセー君」

 

ハハハ! と一緒に笑い合う俺達を神妙な顔で見つめてくる狭間達。

 

「とまぁ、ロイマンとの交渉は失敗したけど再度交渉したいならオラリオの情勢を知ってからだな。今回はヘルメス等と互いの紙幣通貨を手に入れる交渉をすれば無意味ではなくなるはずだ。この世界の金はそっちも必要だろう?」

 

「ええ、その通りです」

 

「じゃあ、この資料の物資は全て破棄。最初の取引は今この場にいる神々が求める日本の品。それを日本で揃えたら持ってきてほしい。狭間さん」

 

「ああ、イッセー君がくれたこの通信用の腕輪で伝えればいいのだな?」

 

袖を捲って腕に付けた宝玉がある金の腕輪。その通りだと頷き、ガネーシャに頼む。

 

「ガネーシャ。日本の品を運ぶ異世界の人達の護衛を、シャクティ達に頼みたい」

 

「任せろ!」

 

共通語で自分が欲しい品を、俺が日本語で翻訳して書いた紙を白百合に渡す。

 

「それじゃ、ダンジョンに戻ろうか」

 

「また、あの中を歩くのか」

 

「うんや、帰りは俺が送るよ」

 

この場で18階層にある日本の拠点と繋げる空間の穴を広げる。丁度目の前に自衛隊の人達がいて、目を丸くして固まってた。

 

 

 

 

異世界―――日本

 

 

 

「オラリオの代表、ギルドの長との交渉は失敗したもの、人間界に永住している有力な神々との接触と交流、交渉は成功した・・・・・ですか」

 

「報告書だけ見ても信じられぬことばかりですね」

 

「冒険者と言うのは、神々の眷族になることで一般人より身体能力が向上、さらに成長を促すと同時に老化を抑えることも記載されてますが本当でしょうかね」

 

「確実に人間を超越した超人を育成できる話ですからね。神を一人だけでもこの世界に招いて国民に眷族となってもらえば自衛隊の替わりとなる戦力、武力となりますよ」

 

「・・・・・恐ろしいことを考えたくないものですよ」

 

「これらの情報、他国に漏洩してはならないですよ総理」

 

「そうですね。では、手元にある報告書は私自ら集めさせてもらい、全て焼却処分します。この報告書の内容は我々の頭の中だけに記憶として覚えてください。これでこの中から他国に情報を横流しした犯人の特定をするものだと認識してください」

 

「わかりました。それから今後のオラリオとの関わりは?」

 

「友好的かつ、資源の採掘の特権ではなく売買という形で取引する方針でいきましょう。強いて言えば、我々と特地の住民の緩衝材となってくれている兵藤一誠君と商談を兼ねた会談をしたい」

 

「自衛隊に確認を取ってもらいます。彼も日本人であるならば、一度は足を運んでみたいと思っているかもしれません」

 

「そうであることを祈るのみだよ」

 

 

 

 

 

 

 

「と、総理からお誘いの声があるのだが・・・・・どうだろうかイッセー君」

 

「俺達にちょっかいをかける全ての人間に対しての対応は、全て正当防衛として認めてもらえるならいいって総理に伝えてくれ。それと何人までならいいのかも」

 

「わかった」

 

「あと、お土産持っていった方がいいか?」

 

「私の一存では決定できないが、イッセー君の判断に任せる。ただし、生物はダメだ」

 

「研究用として持っていっても?」

 

「ふむ・・・・・それならいいかもな」

 

「であるなら、大量に持っていってやろうかね」

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