ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
バスが動いて程なくして、異なる世界の日本に到着した。とは言っても、俺達が出てきたゲートと今いる場所にはぶ厚い車庫のような屋根付きの建物が神殿を覆い隠すように囲っていた。
「しばらくお待ちください。検問で許可を取ってきますんで」
バスの中にいた自衛隊の3人の男女の一人がそう言って外へ出ていった。
「検問なんてあったのか」
「異世界と繋がっているゲートだから、あるのは自然じゃないか?」
それだけでなくゲートからモンスターが湧いて出てしまった経緯があるからな。その経験と体験を経て、検問所の外に武装した自衛隊が壁際に直立していて警備している。
「お待たせしました。そんじゃ出発するんで」
戻って来た自衛隊の言葉と同時に眼前の壁が横開きに広がって、俺達を乗せるバスは見慣れた建物と街並みの中を走りながら日本を見せてくれた。さらにバスから見えるビルにも自衛隊関係者らしく緑色の服を着ている人間が見える。アマテラス達は上京した田舎の人間のように窓の外をずっと見えるもの全てに興味と関心を寄せている。
「すごい、見たことがない建物が当然のように建っている」
「極東でも作れる技術なのか気になるところだ・・・・・」
「確実に技術の発展が遅れているということだけはわかるわ」
唸り声を上げる三柱の声にどこも抱く感想は同じなんだなーと他人事に思いながら、懐かしさは覚えるがそれ以上の感動の気持ちにはなれないといった具合のアスナ達を見回してみた。
それからバスは真っ直ぐ国会議事堂の前に停止、俺達は自衛隊に促されてバスから降りれば何人も待ち構えていた中年から初老の男性達に出迎えられ、俺を見るや否や一人の男性が近づいてきて手を伸ばしてきた。
「あなたが兵藤一誠殿、イッセー殿ですね。お会いできて光栄です」
「この世界の本位 慎三総理とお見受けする」
握手に応じ、固く握り締める。おや、携帯を構えて撮影かね。俺と本位は携帯を向ける一人に向かって顔を向け合った後に背後にいる面々を軽く紹介する。
「イッセー殿、彼等彼女等が異世界から来た・・・・・」
「一部の日本人だ。それからこの三人は異世界から同行してもらった日本神話の神と同じ名前のイザナギ、イザナミ、アマテラスだ」
「っ!?」
本位が弾かれるように三人の前で深々とお辞儀をした。
「お初にお目に掛かります異世界の神々よ! 私は本位慎三と申します。以後お見知りおきを・・・・・」
「「「???」」」
日本語が理解できない三人に翻訳すると、納得したと頷き揃って本位にお辞儀した。
「それでは、貴賓室へご案内致します」
「よろしくお願いします」
総理自ら案内役を買って出るとは恐れ入る。
―――貴賓室。
政府の重鎮達が両壁際に居座り俺とアマテラス達が前、アスナ達が後ろの席に座る形で落ち着き、目の前に総理と彼の背後にいつぞやの菅原と白百合が同席していた。まず総理から話を聞くと、会談は生放送される公式で行うつもりでいて、全国民の前で異世界ではどんな生活をしているのか、異世界はどんなところか、政府関係者から様々な質問に答えてもらいたいと・・・・・。
「俺が思っていた会談じゃない!? え、まさかこの後に?」
「すみません。特地に住む日本人がいるとは思わぬことに、これは千載一遇ということもあり、我々も国民も生の情報が求めてるところなのです」
「マジか・・・・・会談が終わったら、オラリオから持ってきた物質を買い取ってもらって、その金で観光とお土産を買いたかったんだが」
「異世界の物資・・・・・? この場で出せるものですか?」
論より証拠とカードケースから出した束のカード。その中から一枚取って「アデアット」と呪文を唱えると、淡く輝くカードから高級そうな瓶を出した。
「異世界で限定的な場所でしか実らない果実を材料に作ってもらったワインだ。度数がどれだけあるのか調べようがなくてわからないけど、この世界でなら調べてほしくて持ってきた」
「その果実はどんなものですか?」
「これ」
またカードから巨大な虹の実を出すと本位達は開いた口が塞がらず、天井まで届く大きさを誇る果実を見上げる。
「こ、これが果物ですか・・・・・想像していた物より大きい・・・・・それに、果実から芳醇な香りがします」
「いい香りだろ。しかもこの果実でゼリーと香水まで作れるけど、香水の方は使い方に気を付けてほしいかな。甘い香りに誘われて虫が集まる可能性が高い」
酒と果実をカードに仕舞う様子に本位から予想通りに指摘される。
「そのカードは何ですか?」
「個の状態になっている一つだけなら重さも関係なく何でも収納できる魔法のカードだ。俺の作品の一つで、冒険者の間でも人気の商品だよ」
「何でも・・・ですか。大きさはどのぐらいまでなら?」
「地面と繋がっていない状態で単体一つなら何でもだ。レールから外された電車のようにな。加えてマトリョーシカの要領で、冷蔵庫の中に食品を詰め込んでも冷蔵庫丸ごとこのカードの中に収納できるから引っ越しにも便利だ。ただし、生きた人間、生物は収納できない。死体だったら可能だけど、犯罪者の手に渡ったら証拠隠滅に使われかねないがな」
この世界では販売し辛い作品の一つとして数えているカードだ。俺の気持ちを他所に本位は顎に手をやって思考の海に飛び込んだ様子で視線を下に落としたまま黙ってしまった。何を思っているのかバニル以外分らないから見守って待っている俺達のいる部屋の扉が開いた。
「総理、お時間です」
「わかりました。イッセー殿。今日はどのぐらい滞在しますか?」
「そもそも、取引の交渉の会談のつもりできたから、会談が終わったら観光する予定だったんだが?」
「重ね重ね申し訳ございません」
国会参考人質疑―――始まった。世界各国の首脳陣達も生中継される国会議事堂の中で行われる前代未聞の異世界同士の人間の質疑を見ている中、総理に追従する俺達の姿がテレビに移すカメラがずらりと構えているのを見える。
俺達と対峙して幸原みずき、という野党の議員が俺達に質疑を問うらしい。
「単刀直入にお尋ね申します。特地怪獣、通称ダンジョンのモンスターを一体どんな管理方法でしているのですか?」
「「「「???」」」」
「「「?」」」
何を言っているんだこの人はと思う俺達と、日本語がわからないけ三柱は首を傾げた。彼女の質問の真意に疑問を抱いたが察することはできた。
「そう言うことね」
「オラリオのこと、殆ど知らないからモンスターを管理しているんだって思ってるのね」
「だから本位は俺達にこの場で説明させようとしているのか」
異世界の共通語だ話し合う俺達。事前に相手の話に対して気になることがあったら、共通語で話し合おうと決めておいた。
「言ってくる」
「お願いね」
挙手すると「兵藤一誠参考人」と呼ばれてマイクが置かれたテーブルに寄った。
「幸原さんだけでなく、この場のいる全員の認識を訂正させてもらう。俺達が異世界で暮らしている地下迷宮都市オラリオは、モンスターを管理しているのではなくダンジョンを管理しているだけだ」
「モンスターはダンジョンから産まれると生物ではないのですか? ダンジョンを管理するならば、モンスターの管理をするも当然のはずですよね」
「しないな。オラリオはモンスターの地上への進出を阻止するために建立された都市であって、モンスターを管理は一切しない。人類の天敵であるモンスターは倒すのであって好きこのんで管理することはない。一部を除き例外はあるがな」
「でしたら、この世界の日本に現れたゲートから出てきたダンジョンのモンスターによって、多くの尊い命を落とした人に対してオラリオは一切の非もないということでしょうか」
「ゲートに関してはオラリオも寝耳に水の話だ。あれは超常現象で発生したもので、モンスターがこの世界の人類の命を奪ったことに関しても、自然災害の類いと受け入れてもらうしかない」
政府の人間達がざわめきだし、幸原が死者の数値を示した板を今さらテーブルに立てて、怒りを露にした。
「超常現象と自然災害で片付けていい話ではないでしょう! ゲートに関しては超常現象かもしれませんが、ダンジョンを管理下に置いているオラリオも責はあるはずです!」
「では、今回の一件と同じ事件がこの世界の国同士で起きた場合・・・例えば日本のどこかの動物園の気性の荒いライオンが、アメリカのホワイトハウスの中で繋がってしまったゲートを通って大統領を襲って殺してしまったら、それは日本の責任になるのか? それとも超常現象と自然災害?」
「な、何を言って・・・・・! 今はあなた達オラリオの管理について―――!」
「管理問題の話を追求するなら、俺が言った子供でもわかる例え話を答えろ幸原さん。答えられないなら、こちらもこれ以上の質疑に答えるつもりはない」
毅然な態度で言い返したら幸原は肩を震わせ、唇も震わせた。
「大統領はどう思いますかね? 今回の一件の責任の追及をするならこの例えを国民に答えてほしいんだが。もちろん後で構わない。今は彼女に答えてほしいからな」
「し・・・質問を変えます」
「言った筈だぞ幸原さん。答えないならこっちもあなたからの質疑を絶対に受けない、答えないと。そっちから振ってきた質問を答えられないでどうするんだ? 言っておくがこの場にいる議員全員にも言える事だからな。彼女の代わりに答えられるならどうぞ遠慮なく言ってくれ」
ただ傍観や静観をする姿勢で決め込む中年以上の男性や女性達は俺に視線が合うと押し黙るか視線を逸らすばかりで何一つ言おうとしない。
「話にならねー。誰一人として俺の質問を答える責任を負う覚悟を持っていない人間が一堂に集まっていたのかよ。それでよくこの国の政治に関われるな? 自衛隊の方が日本と日本国民の事を重視しているから彼等の方が政治に関わるべきだぞ」
「わ、私達に侮辱を・・・・・!」
「あ?」
「ひっ!?」
軽く睨んだ上に圧力を掛けたら面白いぐらい怖気づいて尻餅をついた。
「お前、この質疑で俺達側に非がある事を認めさせることが目的なんだろうが、こっちだって地下何百、何千メートルの下にある迷宮の中で起きたことをその逆の地上にいる俺達がどうやっても気付くわけないだろうが。その上で日本には当然のようにある文明の利器、通信機器なんて異世界のダンジョンには無いことを知ってる上でこの質疑をしているんだろうな」
「・・・・・」
「は? 知らないのか? 総理、自衛隊からの報告・情報の浸透はそこまで広がっていないのか?」
信じられないと心境の俺に総理はこう答えた。
「異世界の情報は規制しております。国民にもお伝えられる範囲の情報しか流しておりません。また幸原さんにも今回の質疑に必要なダンジョンの関することしかお伝えしておりません」
「情報統制か。それじゃあしょうがないと思う所はあるが、もう少し深く考えてほしいもんだな」
パチンと指を鳴らすとオラリオの風景を移す立体的な映像の魔方陣を複数も展開した。
「これは現在の異世界のオラリオの風景を俺の魔法で映している。AIだとか映画の撮影だとか思うのは勝手だが、そう言う認識して自己完結する人間の思考は単に目の前の現実を受け止めれない大バカ者の証拠だ」
一つはオラリオから遠く離れたところでも天を衝く巨大な白亜の摩天楼『バベル』を写し、もう一つは大通りに闊歩している一般人や武装している冒険者、異種族である亜人、人間に見える神々を写し、オラリオとダンジョンを管理・運営しているギルド内の様子を写し、ダンジョンの中でモンスターと戦っている光景を映している。
「見ての通りこの世界には機械という概念があまりない。特に通信機器は普及されていないから人力で連絡を届けなければならない世界だ」
この映像に釘付けで、中には携帯で録画している議員もいる。
「地下迷宮なんてアリの巣みたいに通路や部屋の空間が入り組んでいて、その中でこの世界と繋がったゲートなんてダンジョンの中にいようと、ゲートがある場所まで行かないと絶対にわからないことだ。仮に日本へ進出するモンスター達の大移動を見たとしても一定の強さを持つ冒険者以外は、絶対に関わろうとしない。それはなんでかわかるか幸原さん」
「・・・・・」
「わからないだろう。だってモンスターの大移動とは群れだ。この世界だって銃じゃない刀剣類の武器を持ってライオンの群れに飛び込めって言われても自分の命が惜しいから、死にたくないから誰も見守るかと多くへ逃げるんだ。それが冒険者の生きる術の一つで間違っていない選択だ」
映像を消して幸原さんに語り掛ける。
「この国で起きたモンスターによる襲撃とも進撃とも言える事件は、ゲートが出現したから起きたものだ。オラリオの魔法使いでも神でもできないことを、碌にこちらの事を知りもしないで一方的に責任の追及をするのは止めろ。こちとら元の世界に帰りたがっている日本人なんだぞ。何で別の世界の日本に来てまで政府にとやかく言われなきゃならないんだ意味が分からねぇよ。ふざけんなアホがって気持ちだわ」
「も・・・・・申し訳、ございません・・・・・」
謝罪する幸原さんをつまらないものを見る目で見ながら中指を立てて席に戻った。
「お、お前ぇ・・・! なんてことを言ってるんだよ・・・!」
「おっかねぇなお前・・・・・政府の人間相手に口で負かすなんてさ」
「ふん、俺は同感だ。相手ばかり責任転嫁させようとしているのが気に食わんからな」
「結城明日奈参考人」
「は、はいっ・・・・・」
呼ばれたアスナが緊張気味でマイクの前に移動した。
「結城明日奈さん。あなたは異世界に住むようになってから何年目ですか」
「五年、もう少しで六年になります」
「それだけ長い間だと、生き別れしたご両親の事が心配でしょう。今すぐに安心させるために元の世界に帰りたいとは思いませんか?」
「確かに思います。しかし、もう私は子供ではありません。私は元の世界で暮らすより今の生活の方を大切にしたいと思います」
「異世界にいる親しい友人、住み慣れた生活を捨てきれないからですか?」
「それも含めて、私が私でいられ、大好きな人達と暮らし、一度死に別れた元の世界の友人とまた会いたいからです」
「・・・・・すみません。それはどういうことなのでしょうか」
「ごめんなさい。話が長くなるのでご説明はできません」
お辞儀をして俺の隣の席に座るアスナと薄く笑い合ったところで、カズマの番になった。
「佐藤和真さんは、どういった経緯で異世界に住むことになったんですか?」
「え、え~と・・・・・交通事故で死にました。その後、女神と名乗るムカつく、ではなく女性に違う世界へ転生させてくれる機会がありましてですね。そこで出会った仲間達と生活をしていたんですが、突然また違う世界に、オラリオに転移していたんですよ」
「元々いた異世界からまた別の異世界に? そんなことがあるのですか」
「さ、さぁ・・・・・俺も初めての経験なんでわかりません。俺以外にも死んでしまって元の世界から来た転生者や生きたまま異世界に来た人間もたくさんいますけどね。転生した人間の殆どは、神から特典って最強の力とか魔法とかもらった状態で」
「では、佐藤和真さんもその特典というものを貰ったのですか? よろしければ教えてください」
「ごめんなさい言えません! 失礼します!」
そりゃ、カズマの特典はあの駄女神だから言えるはずもないわな。羞恥で赤くなった顔に涙目で震えてるから尚更な。お次は大和大輔。
「大和さんは普段何をしていらっしゃいますか」
「今は罪滅ぼしをしているところだ」
「罪滅ぼし・・・・・異世界で犯罪を?」
「犯罪っちゃあ犯罪だな。詳細は教えられないが個人的な事情で、神が統治している国を三つ巴の戦争に仕立てて潰しあわせて、その隙に国を乗っ取ろうとした」
「なっ・・・・・!」
「途中までは成功していたんだが、秋の旬の松茸とタケノコを求めに来たオラリオの冒険者に邪魔されたどころか、一度死んで転生する際に手に入れたチート能力を以てしても戦って負けてな。そう言うわけで罪滅ぼしをしている最中だ」
懐かしいなー(棒読み)。
「つまりあなたは国家反逆の罪を清算をしている仮釈放中の身ということなのですか」
「そんなところだ。元の世界だったら死刑か、一生牢屋の中で過ごす終身刑、無期懲役だったろうに異世界は法律がない上に色々と緩いから助かっているぜ。こうして異世界の日本に来れたんだからな」
「国を乗っ取ろうとした犯罪者とは思えない発言ですね。罪の意識はないのですか」
「いや、俺は運がよかっただけだ。俺を邪魔した相手が違う相手だったら、今の俺はここにいなかっただろう。話は終わりか?」
「・・・・・はい、結構です。次は海童剛さん」
あーあー事情を知らず、敢えて本心を隠すと誤解したままになるのに。まぁ、今更当事者でもない赤の他人に教えようが終わったことだから。