ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
「やっぱり外国人の工作員がいたんだな」
「伊丹さん達がこうしているから接触はしてこないけど、そっちは接触したんだな」
「おう、お話をしたけど物分かりがよくて引き下がってくれたよ。手土産を持たせてな」
「(絶対に人には言えないことをしたとは言えないがな)」
「(言ったらチョン斬る)」
「(こいつ、頭の中にまで・・・!?)」
時間的に昼飯時なので光輝が望んで止まないラーメンを食べに向かう最中、携帯を見ながら先導してくれている伊丹に話しかけられる。
「しっかし、この世界に来て最初に食べたいのはラーメンなんて変わってるね」
「この自称勇者の要望だからな。いっつもラーメンはまだか、ラーメンを作れって店に来るたびに言うもんだから」
海童の言う通りだ。俺に直接言わない辺り、俺が居ぬ間に言っている様だがな。
「逆にオラリオに来たら伊丹さん達はどんな料理を食べてみたいんだ?」
「俺達でも食えそうな物なら何でもかな。キミ達にとっておすすめの異世界の料理は何かあるかい」
「おすすめってわけじゃないけど、割と知名度が高いのはコロッケみたいなジャガ丸くんって揚げ物だな。トッピングが数種類あるし」
「本当に美味いのかって疑いながら食べると、意外と悪くない味の組み合わせがあるよな」
「オラリオに来たら必ず食べてるよね」
「質素な食生活をする時は毎日ジャガ丸くんが食卓にあるほどにね」
雫の言葉に異様な説得力がある。俺は最初から質素な生活を送ってないから・・・・・。
「ラーメン屋はまだなのか」
「だ、そうだ伊丹さん」
「もう着くぞ。ああ、ここだ」
・・・・・店はおかしくないけど、中を覗いたら複数の猫が働いているってどういうこと? アスナ達も店内で接客、料理の提供をしている猫の姿に唖然としている。よかった、俺だけじゃないのか。
「伊丹さん。ここに来るのは初めてじゃない?」
「俺は初めてだよ。富田達は?」
「自分も同じく」
「え、知らないんですか? 食べたことはないんですけど、割りと有名ですよここ。知っててここに来たかと思いました」
有名なんかい! 取りあえずここに入りたい気持ちが沸いたからみんなで猫がラーメンを作る店の中に入ると。
「当たり前のように二足歩行で歩いてる・・・・・」
「猫がラーメンと餃子を作ってる・・・・・」
「可愛いけど、凄い何て言うか・・・・・」
「異世界食堂と負けず劣らずだわね・・・・・」
複数に分かれて座るみんなは働く猫を目で追いかけて見ているが、俺は猫だけでなく猫耳を付けた黒子の女性店員、なんならスタッフの部屋を透視してみたら・・・・・。
「( ; ゜Д゜)」
「えっ、イッセー。どうしたの、今まで見たことがないぐらい目と口を大きく開いて」
「・・・・・いる」
「え、なに?」
「・・・・・虎が麺を作ってる」
同じ座席に座っているアスナとシノンと雫、俺を挟むイザナミとアマテラスがキョトンとした顔で俺を見る。
「虎ってあなた・・・・・ラーメンを作る猫に驚いているのに虎までいるわけないじゃない」
否定するシノンに真実を突き付けるため、通り掛かった白猫に聞いてみた。
「あの中で麺を作っている虎の名前って?」
「クリシナですにゃん!」
「・・・・・本当に虎が麺を作っているの?」
「はいそうですにゃん。では、失礼しますにゃん」
白い長毛猫の言葉は真実であると、シノンにドヤ顔を浮かべた。
「嘘は言わないと言ったよな?」
「いやだって、虎までいるなんて想像できないわよ。二人もそう思うよね」
「「それは、確かに・・・・・」」
気持ちは分からなくはない。同じ事を言われたら俺も同じ気持ちになる自信はあるからな。運ばれてきたラーメンセットに合掌してから久方ぶりに食べるラーメンは最高に美味しかった。猫なのにここまで高い再現度を実現させるとは・・・・・恐れ入る。
「ちょっと、全メニューの味を知りたいな」
「さすがにそれは無理なんじゃない? 食べ切れるの?」
「あいつはその勢いで食べてるぞ」
光輝が座っているカウンターでは、最初からそのつもりでいたか三杯のどんぶりが置かれていて、一心不乱にラーメンを食っている。
「ということで・・・すみませーん。ここの店のメニュー、全部注文しまーす。あと、お持ち帰りできる食品も全て買いまーす」
「にゃ、にゃー!! かしこまりましたにゃん!」
それから小一時間掛け、食べ納めという感じで全てのメニューを一品ずつだけど食べ尽くした。ロキ達にも食べさせたい思いで冷凍麺とスープのパックを全部買い占める。
「ふはー、久しぶりにラーメンを食ったわ」
「本当に制覇したわね・・・・・まだ食べられると言わないよね?」
「言うぞ。戦闘時はカロリーがたくさん消費するから食える時は食わないと。料理店の長としていつか作る際に味も覚えておきたいし」
待望のラーメンを食った光輝も、満足に食べられて幸せそうな雰囲気を醸し出しているし。
「戦闘って・・・・・この世界で戦うことが起きるのか?」
「そりゃ、外国人の工作員がいる上に伊丹さん達が銃を所持しているんだ。銃撃戦あってもおかしくないだろ」
マジか、ってカズマと海童が反射的に反応して、伊丹は苦笑いをする。
「あはは・・・そんなことならないから信じて欲しいかな」
「ふーん? ああ、そういえばシノン。アメリカ人からもらったこれがあるんだけど何て名前かわかる」
銃をあっさり掌に置かれたシノンは、困った反応をするも歩きながら弄る。
「アメリカ製のオートマグシリーズの銃ね。って、マグナム弾が装填されたままじゃない」
「それって威力はどのぐらいあるんだ?」
大和の質問の答えは、当然のようにシノンが答えた。
「アメリカにいる熊を倒すほどよ」
「グリズリーって熊な。日本の熊より二回り大きくて力も強いぞ」
「おいおい、そんな熊を殺してしまう銃を持ってきてるのかよ」
なお、ダンジョンのモンスターにも通用する。内心そう思ってると栗林が素早く銃を取り上げようと動いたのを見て、それより早く俺が回収して亜空間に仕舞った。
「で、伊丹さん達はどこまでついてくるんだ?」
「キミ達がオラリオに戻るまでだよ。そもそも、俺達抜きで行動されるとこっちも大変だからさ。行きたい場所とか知らないでしょ?」
「それが冒険者なんだよ俺達は。知らないからこそ、知らない趣を楽しむ醍醐味をしたかったんだがな」
「親切な人が実は悪人だったらどうするのよ?」
「そりゃ、なぁ?」
栗林の質問にはアスナ達に答えを求むと、俺の質問の意図を酌んで最初に言い出したのは光輝だった。
「逆に返り討ちするまでだ」
「殴り倒す」
「正当防衛が成立した時に対処します」
「以下同文」
「私も正当防衛をします」
「一人だけなら逃げるけど、みんなとだったら足手まといにならない程度に動く」
「俺は魔法で何とか乗り越えるぜ」
一人危ういが、なんとかできるのは冒険者の強さでもある。なお、アマテラス達は守られる側だから万が一でもそうなった時は、なにもさせず相手を無力化にするがな。
「・・・・・冒険者って、本当に強いんだな」
「私達っていりますか?」
「念には念を入れなきゃ。狭間陸将からも言われてるし」
あの人か。以外と心配しているんだな。でも、今日一日は土産物を買い込んだり異世界の東京の観光に洒落込む俺達だ。動物園や水族館にも当然足を向けた。現代人の俺達はともかくアマテラス達は見たこともない生物がたくさんいる光景に・・・・・。
「凄い。動物達がこんなにいっぱいいる場所があるなんて!」
「モンスターでもできそうだね」
「ふむ・・・私達の世界にも動物以外の何かを子供達が近くでも目に入れられるような催しができるならば・・・・・」
「見て見て! 変な顔の魚達が! あ、この世界にもあの不気味なタコがいるのね!」
「未知で溢れている・・・・・」
「興味深い物ばかりで見飽きたらないな」
始終ものすっごいはしゃいだ! アマテラスは顔を輝かせて、イザナミは全てに関心を向け、イザナギは異世界の技術に目を光らせてばかりだった。そんな神々の言動を見守っていた俺達は、すごく楽しそうだなぁと達観しつつ、観光を楽しんだ時間はあっという間に夜まで過ぎてしまった。
「キミ達、明日にはオラリオに戻るんだろう? 今日は温泉がある旅館にでも泊まって寝ようか」
「そんな、裸の付き合いをしたいって・・・・・あんた、そんな趣味があったのか!」
「勘弁してくれっ、俺は純粋に女が好きなんだ! 近寄らないでくれ!」
「俺の貞操を奪われてたまるか!」
俺とノリがいい海童と一緒に大和まで伊丹からあからさまに遠ざかり、焦りながらツッコミをいれる伊丹をからかう。
「イッセー、みんなもからかっちゃダメだよ。私達のために気を使っているんだから」
「これもコミュニケーションだアスナ。この人、伊丹さんだって解っててツッコミをしてくれたんだから」
「それにしては、割りと本気で言ってませんか?」
「可能性は捨てきれないからな。人は見掛けによらないって言うだろ? 実はこの二人がデキているって可能性も・・・・・」
「「違う!!!」」
伊丹と富田が異口同音で全力の否定の言葉を言い放った。わかってる、それこそ冗談だ。そうだよな? そうであってほしいぞ? スクランブル交差点の前に立ち止まり青信号になるまで待つ。
「で、どこの温泉宿泊?」
「箱根だよ」
「そこって、政府の管理下?」
「その通りだ。そこに俺達がいることを日本政府以外の人間は知られていないから安心して寝られるよ」
ははは、面白い寝言を言うな。その政府の人間の中に情報を漏洩している裏切り者がいないと断言できるとはな。
「悪いが信用も信頼もできない。そこに泊まるぐらいならもうオラリオに戻った方が安全だ」
「えらく、俺達を信用も信頼もしてくれないんだな」
「伊丹さん達だったらしてるよ。していないのは日本の組織の方だ。はいカズマ。その理由は何なのか答えてもらおうか」
いきなり話を振られて「へっ?」と間抜け面を晒す少年。俺が日本の組織に信用も信頼もしていない理由のことあと改めて訊いた。
「そりゃあ、お互い出会ってすぐだからじゃないのか?」
「雫は?」
「それは・・・ごめんなさい、わかりません」
「最後に大トリの海童」
「俺達を狙っている外国の工作員に対して、日本も対工作部隊を派遣して俺達を陰ながら護衛していはずだ。でも、政府が俺達の護衛を解除するせざるを得ない弱みを他国に握られる可能性がある。それどころか情報を横流しにしている政府の人間もいてもおかしくない」
以下三人の答えの中で、海童が正解だと拍手を送った。海童が大正解だ。理解したか伊丹さん達よ? と訴える視線を向けられた俺達の護衛を勤める自衛官達は神妙な顔を揃って浮かべる。
「キミ達、どうしてそこまで考えられるんだい?」
「俺は常に最悪な想像をして可能性を見出す現実主義者なもんで」
「俺はそういうファンタジー系小説をたくさん読んだからこそ、次の展開が予想できるぜ。例えば、この人ゴミに交じって仕掛けてくるとか―――」
自慢げに未来予知という想像と予想を口にした海童に呼応して、不自然な白煙が発生した。あっという間に煙に包まれた俺を含めるアマテラス達の足元に転移用魔方陣を展開して、ゲートの中に転移して避難した。
「海童の予想通りに仕掛けて来たな。まったく、大衆がいようとお構いなしか」
「えっと、聞いてもいい? 私達さっきまで渋谷にいたのに、いつの間にゲートのところにいるの?」
「別の場所に一瞬で移動できる魔法の力だ」
「魔法ってそんなこともできるのか・・・・・」
できるんですよ。魔法って凄い便利だよなー?
「ということで伊丹さん。俺達はオラリオに戻る。したい事とやりたい事は一通り果たせたからこの世界に長居する理由は無いし、俺達が居るせいで迷惑をかけるわけにもいかない」
「・・・わかった。今から申請を―――」
「ああ、その必要はない」
【異世界扉】を使って鏡のような魔方陣が浮かぶとオラリオの世界と繋げた。こっちの世界は夜だが、オラリオの世界の時刻は朝だった。
「そんじゃ、今日はありがとうな。またいつか遊びに行かせてもらうよ」
先に俺が潜ればアスナ達も続いてオラリオに戻り、唖然としている伊丹達を残して扉を消したその後。
―――本位side
「この資料はどうやって・・・・・」
『マスコミに持ち込まれる前に取り押さえられたのは幸運だった。我が国の調査機関によれば、貴国の閣僚の不正・裏金・汚職行為が記されているじゃないか』
「・・・・・ありがとうございますッ」
『なーに我々の友情の証だよ。そこで何だが頼みがある』
「頼み・・・ですか。どんなことでしょう」
『そちらに特地から賓客が来日しているそうじゃないか。私としては是非合衆国に招待をしたい』
「・・・申し訳ございませんが、それは叶えません」
『何故だね?』
「賓客の方々は我が国の護衛を振り切って予定より早め、賓客の一人の魔法で特地に帰られてしまったのです。こちらとしても対応できない想定外な事が起きてしまうのであればどうすることもできません」
『なるほど、止める暇もなく帰ってしまった、と』
「その通りです。友情の証をご用意して頂いたのに申し訳ない。しかし、貴国の調査機関の苦労を無駄にしないことはお約束いたします」
―――もしもどっかの国が日本政府・閣僚の弱みを握る証拠を建前にして俺達を差し出す交渉をしてくるなら、さっさと他国に弱みを握られる原因を、また遊びに来るまできれいに掃除をすることをオススメする。
「ああ、そういえば貴賓から特地しか手に入らない素晴らしい物を友情の証として譲ってくれましたよ。今後はその中に合衆国の分も少ないが用意するからよろしくと頼まれましてね」
『ほう、それはどんなものか楽しみだ』
「何時送られてくるかわかりませんが、届いたら贈呈品をお渡しします」