ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
―――夏の到来。熱い太陽からの日差しを受け、猛暑が続く日を迎えたオラリオ。迷宮都市は熱せられたフライパンの中にいる様な息苦しさと嫌な汗を掻き民衆や冒険者、ギルド員と神々は熱さに参る時期を迎えた。日に日に気温が高くなっている中で大通りを行く市民は半袖など涼しげな薄着姿が目立ちつつあった。迷宮へ向かう冒険者はというと、いつも変わらず
「・・・・・この中に
「言ってなかったからな。まだまだ皆が知らない場所はあるし」
「いやはや、実に快適である。手前は泳ぐのは実に久しぶりである」
「「・・・・・気持ちいい」」
リヴェリア以外、水着を装着して―――
「アイズ、戦うこと以外お前は学ぶべきことが多くある。今日は水中戦を強いられた時の為に泳ぐ練習をするぞ。アリサもだ」
「泳ぎ?だったらいい場所あんぞ」
以下の流れでこの城の創造主たる一誠の案内で
「・・・・・私は泳ぎを教えたいのだ。どうして寛がせている」
「まずは水に慣れることから教えるべきだろ?つーか、泳ぎ方を教えるって言ったリリアがどうしてプールの中に入って来ないのが不思議なんだけど?まさか、口だけ言って泳ぎを教えるなんて考えちゃいないだろうな?」
ジーと見上げる一誠に「どうなの?」と金眼の少女も視線を送り始める。二人からの疑心に満ちた視線にハイエルフは「その通りだ」と言いたいところ、更に一誠からとやかく言われそうな気がして―――。
「もしかしてリリアって泳いだことが無いから泳ぎは苦手か?」
「馬鹿にするな。私が泳げないなど―――」
つい、条件反射で食って掛かってしまい。はっと気付いた時は既に遅し。論破される。
「じゃあ、さっさと水着に着替えて来い。教える者と教える側が同じ場所で指導するのが当然だろう」
最後の一言でリヴェリアは折れた。
「ロキに服を剥がされるか。俺に強制的に着替えさせられるか。オラリオ中にリリアが泳げないって吹聴されたいか。自分で着替えるか選べ」
「こ、このっ・・・・・!?」
悪魔っ、とかつて自分を
結果。親族以外見せなかったリヴェリア・リヨス・アールヴの裸体は、一誠達に晒す羽目になった。透けている黄緑色のベールを肩から纏い、緑一色の生地のビキニにパレオを腰辺りに巻き付け、6つの眼から送られる視線が妙に気恥しく、三人の視線から逃げるように羞恥で顔を赤らめ、局部を隠す様に両腕を交差するその仕草はとても美しく艶やかだった。
「リヴェリア、綺麗」
「ふむ。同じ女の手前でも称賛するほどの美しさだ。眼福眼福」
「色白の肌だなやっぱり。シミや汚れも無い。
「綺麗・・・・・」
四者四様の称賛に無視を決めつけ、さっさと教えてさっさと終わらすに限ると膨大な水の中に入ろうとするもそれすらジッと見つめられていることにまた羞恥で顔を紅潮させる。
「い、一々見るなっ」
「「入るところすらとても絵になるものだったからつい」」
「「・・・・・(コクコク)」」
ようやくリヴェリアが入ってきたことでアイズの水泳の練習が始まった。
「まずはアイズ、そこから出て泳ぐんだ。アリサは手本としてよく見ておけ」
「どうやって泳ぐの?」
「とにかく泳ぐ意識をすればおのずとできる」
マテ、と一誠は心中でツッコミを入れた。しかし、あのリヴェリアだ。口ではああだが、丁寧に手伝いながら教えるものだろうと自分がそうやって経験と体験をしたように、教えるかもしれないとしばらく様子見することにした。アイズは一先ず、小動物のように水面をばしゃばしゃと蹴って、浮き輪の浮遊力のお陰で少女でも足が付けれる場所まで進むことができた。浮き輪を外し、少し離れたところに立つリヴェリアに向かって『泳ぐ意識をする』を実行する。
しかし、リヴェリアの指導はスパルタであった事をアイズはともかく、一誠と椿も知らなかった。
アイズは足場から離れ、必死に顔を上げながら、足をばたつかせた。最初こそは数十cm前進したものの、徐々に体が水中に沈む。それでも懸命に足を忙しなく水面を蹴ってリヴェリアのところへ辿り着く前に―――完全に皆の前から消えた。
「・・・・・のぅ、一向に水面から出て来んのだが」
「・・・・・」
少女の顔が出てこない代わり、水面にはぼこぼこと気砲が出ている。水とは違う種類の水滴が少年少女の頬に流れ、二人して嫌な予感を覚えた。
「「溺れた?」」
数十秒後―――。
お腹をパンパンに膨らませた幼女が椿の両手で押され、心配をするアリサの前で何度も口から噴水のように出てくる図が出来上がっていた。一方その隣では。人型ドラゴンに正座されてガミガミと説教を受けているハイエルフがいたのだった。それを聞かされ、もう少し優しく指導させるようにしろと言われたロキ達は、ただただ苦笑いを浮かべる。曰く、彼女の性格ゆえにどうにもならないと。
「・・・・・よし、こんなもんか」
じゅうじゅうと、香ばしい匂いと火の通った豚肉の色合いを見て一誠は頷き、次の工程にかかる。先に刻んで下処理をしておいた野菜を入れる。人参、玉葱、里芋、大根・・・・・牛蒡といった食材に一通り火が通り、豚の旨みがにじみ出たところで鰹と昆布の合わせダシを効かせたダシ汁を入れてしっかり煮込む。そのまま灰汁取りを丹念に行い、煮えたところで・・・・・。
「イッセー・・・・・お腹すいた」
「あいよ。丁度出来上がったところだ。直ぐに用意するよ」
調理場に立って昼食用に作っている最中、物欲しげに見上げる少女達に空腹を訴えられた。頃合いが良い時に来た二人に準備していた料理を器に盛っていく。
「朝は水ん中にいたから温まるものだ。汁の方はトン汁、黄色い塊はオムライスだ」
「トン汁・・・・・」
「オムライス・・・・・」
団長の椿は一誠の工房に籠り出してから戻ってくる気配はない。アイズの保護者兼監督的なリヴェリアはホームに戻って留守。結果三人だけで昼食の時間を臨むことになった。眼前に置かれたできたてで湯気が昇る二つの料理の品、それに釘付けな二人の少女の喉がゴクリと鳴った。
「それじゃ、いただきます」
「「いただきますっ」」
もう待ちきれないと合掌しあと、それぞれスプーンを片手にトン汁とオムライスを食べ始める。
色鮮やかな赤い線が引かれた黄色い塊にスプーンを沈みこませると、驚くほどあっさりと切れて中身を窺わせる。中からたっぷりと詰まった赤い具がアイズの金眼に飛び込む。彼女が知らない食材ばかり、まるで宝箱の中を開けた様な感じがして味の期待感が更に高まった。赤みを帯びたオレンジ色の具。それとは対照的に色鮮やかな緑色の豆。塩漬けにした鳥の肉。椎茸に細かく刻まれた野菜。まだ幼女なアイズにとっては手頃のサイズのスプーンの上に渾然と多数の食材が乗っているそれを口に運ぶ。
「~~~っ」
美味が口の中に広がる。まず、最初に来るのはもちろん、焼いた卵。一体何をどうやって焼いているのか、絶妙の柔らかさの食感と共に乳とバターの風味がして、わずかに甘い。それが酸味が強い赤いものの味と合わさることで調和が生まれ、素晴らしい味となる。だがそれだけじゃない、その後くる中の具がまた、旨い。塩漬けの鳥の肉は塩気を含んだ肉汁を、異界の茸は豊富な旨みをたっぷりと帯びている。細かく刻まれ、炒められた野菜は甘みを帯び、それを複雑に味付けされたオレンジ色の粒がふわりと受け止める。
(温かい・・・・)
煮込みでスープに溶け出した肉の旨みとしっかり火が通って柔らかくなった熱い野菜。ちょっと癖のあるミソの風味と、それを柔らかく包み込むバターの風味。それらがアリサの口の中で充満、広がっていくのと同時に地下の
(・・・・・頑張る)
頑張って強くなる、その為には腹ごしらえだ。そう思いながらトン汁からオムライスにチェンジ。アイズもトン汁へ手を伸ばし、そして口に入れた瞬間に美味しさで顔が綻んだのであった。
「むっ!?手前を残して何を食べておったのだ!ズルいぞ!」
「昼頃には戻って来いと伝えたのに戻って来なかった団長が悪い」
「むぅ~っ!腹減った、手前にも何か作れイッセー!」
「もう作ってあるから。それを食べろ」
後に戻ってきた椿に食ってかかれ、余めに作っておいたオムライスとトン汁を食べさせて大人しくさせる一誠の手腕に、自分でもよく分からないがなんとなく拍手を送るアイズとアリサ。
「何で拍手?」
「「なんとなく?」」
その日の夜も異世界料理をたかりに複数の派閥の主神と護衛を兼ねて侍従する眷族達が大量の酒を何故か持参して来訪。「また来た・・・・・」と辟易の思いをしながらもこの場にいる全員にピッタリな料理を作った。
「おっ、丼ってことは今回は丼の料理じゃな?」
「カツ丼じゃないけど、皆にピッタリな料理であることは断言できるよ」
縞模様の蓋と容器を見て期待で胸を膨らませたガレス。自分達のために作りだした料理は自分達にピッタリな料理だと言われ、不思議に思いながら興味と好奇心が湧く。皆の前に丼が並べられると最後にアイズとアリサの間に空いている空席に腰を落として食事をする前の祈りを合掌と共にする。それから蓋を取る。ふわりと、甘さと塩気を感じさせる匂いが鼻をくすぐる。その香りに胃が締め付けられるのを感じながら、涎を飲み干して、銀色の匙を手に取り、その料理を見る。目に映るのは一面に染まった鮮やかな卵色。
「おー、なんやこれ?」
「親子丼っていう料理だ」
親子丼と呼ばれる、異世界の料理は純白の米の上に鶏肉の卵とじを乗せこんだ贅沢な料理である。ロキはその美しさを目で楽しみ、その匂いを鼻で楽しみ、その重さを手のひらで楽しむ。そこまでやったらもう、後は食うしかない。そっと箸を差込み、最初の一口を取る。銀色の匙、スプーンの上には大きめに切り分けられた、脂ののった皮付きの鶏の肉が適度に火が通って透き通った卵をまとい、茶色い汁を含んだ純白の飯が土台に敷かれている。鮮やかな緑と白の葱が彩りを加え、美味であるからすぐにでも食えと訴えて来る。我慢できぬと言うように親子丼を口に運んだ。口に運んだ瞬間、ほろりと親子丼がほどける。口の中に広がるのは、複雑な旨み。鳥の皮が持つ脂と、柔らかな肉の旨み、葱のシャッキリした食感と、米の甘みに、あまじょっぱい汁の味。それらが一体となり食べる者の舌を楽しませる。
「美味しい・・・・・」
その味に思わず口からこぼしながら、噛み締める。
「イッセー、この料理の名前って何かカツ丼と同じ由来や意味が籠められてあるのかな?」
「うーん、大したことじゃないんだけどな。個人的に言わせてもらえば親子丼って親と子、一緒に食べるもんでな。この丼が家だとして鶏肉は両親、卵は子供―――この家族が揃った状態でこうして家族と食事をする時間が更に美味しく感じると思うんだ」
「親と・・・・・」
「子・・・・・」
説明を聞いて自分達にピッタリな料理だと言った理由が何となく察した主神達は、愉快気に微笑みだした。
「子供達と食事をすることは当たり前なのに、改めてそう言われるとちょっとくすぐったいわね」
「でも、素敵なことだと思うわ」
「ふふ、言葉が籠っている料理なんて面白いわね」
「ガネーシャ、大・感・激ッ!俺の大好物にする!」
「まさしくオレ達神々と子供達を表している一品だ」
「せやなぁ、ファイたんの言うとおり。子供と食事をするっちゅうことは当たり前なんや」
「だからこうして子供と食事を楽しむ一時は大切にしなくちゃいけない。いつ私達が天界に送還されても不思議じゃないから」
自然と眷族達に目と顔を向け、今まで自分を支え守って、付き添ってくれたことに感謝の念を言葉にして送った。ので、眷族達も様々な反応で返した。何を今さらだとか、これからもよろしくとか、色々と。そんな光景を見せられ一誠は元の世界の事を思い出した。
「イッセー」
アイズが話しかけてきた。
「私、ずっとイッセーと一緒にいるよ」
「アイズ?」
「私も・・・・・イッセーと一緒にいる」
「アリサ・・・」
テーブルで隠れて見えないが小さな二つの手が少年の服を摘んで言う少女達。気を遣ってくれたのか、本心から言ってくれたのか、もしかしたらその両方なのか定かではないがその気持ちに嬉しく思いフッと小さく唇を緩めた。
「よ~し、次は宴会するでー!イッセーはつまみをじゃんじゃん作るんや!」
「「オーッ!」」
「えっ?」
和やかな雰囲気の食事会の次はテーブルに足をだんっ!と乗せて突如言い出すロキの言葉で宴会ムードに成り代わり、ヘファイストス達を巻き込み持参してきた酒でやんややんやと大騒ぎ。つまみを作ってくれ~!とロキにしつこく乞われて酒に合うつまみを渋々用意する一誠よって、宴会は盛り上がり『幽玄の白天城』から笑い声は夜更けにまで絶えなかった。
「・・・・・この後の惨状、一体誰が片付けると思ってるんだ」
「「「手伝います」」」
「・・・・・許す」
「閉じたか・・・・・」
「くそ、一体何の〝個性〟なんだっ」
「ここがあの少年が言っていた異世界とやらの様だが・・・・・」
影達が自分達に立たされている状況を認知している風に言い、別の影達が不安そうに周りを見渡しながら訊ねた。
「せ、先生。・・・・・ここ、どこなんですか?」
「・・・・・信じられないだろうが、多分あいつが言うにはここは異世界のようだ」
「い、異世界って!?じゃあ、オイラ達はあいつのように知らない世界に来ちゃったってことかよぉっ!」
「それにアイツ、オイラ達を見捨てやがって!絶対に許せないぜ!」
「・・・・・それは違うぞ。あれは俺達がそうさせた」
「な、なんで!?」
「それが合理的だからだ。それに俺達のことを知らせる者が必要だった。お前達が信用しているように俺達もあいつを信用して道連れにするよりは、片方が残って迎えに来てくれる可能性が極めて高い者を残した方が俺達も希望を捨てることは無い」
淡々と憤怒を露わにするその影を諭す様に「だから責めるなら俺達を責めろ」と言わんばかり見下ろすその目は真剣な眼差しを送っていた。そこへ影が指摘する。
「で、でも先生。俺的には一緒に来てくれた方が心強いんだけど」
「素直に言えば俺もそうだ。だが、元の世界に帰りたいなら不都合なことも身に起きるものだ。どんな困難でも乗り越えるのがお前達が目指す夢と職業と同じだ。いいな、孤立無援の中あいつが迎えに来てくれるまでは俺達自身が何としてでも生き残る必要がある。弱音を吐いたところで結果は変わらん」
教師のように奮い立たせ、不安と緊張を完全に払拭できなくても一筋の希望は絶対に絶やさないと影が言う。
「それとあいつが残してくれたこの鎖こそ、俺達と常に一緒だって心に余裕を与えてくれる」
「え?あ・・・・・」
次元を超えて異世界に来てしまっても残っている物は確かにあった。体を今でも縛っている金色の鎖。それを触れて見ると力強い何かが秘められているのが温かさで何となくわかる。唯一、繋がりは決して絶えては無いと思わせるソレを感慨深く触れて、影達は気概を示す。
「よし!くじけずで何よりだ。では、早速合理的に行動をするぞ」
「と言っても、この世界はすっかり夜だ。じゃあ、どこか安眠できる場所を確保しよう」
「なるべく人が寄り付かなさそうな場所を探せねば」
宛ても無く行動に移そうとした影の一団に―――声が投げられた。
「・・・・・あんたら、ここで何をしているんだ?」
暗闇の向こうから黒衣に剣を携える少年を始め、武装した集団がこれからダンジョンへ向かおうと気配を窺わせている。そこへ影達と鉢合わせして怪訝に思ったのか声を掛けた。
「Oh、君達は?」
「・・・・・俺はキリト、冒険者だ」
「冒険者?」
影達と接触したのは【アルテミス・ファミリア】の団員であり異邦人達のキリト一行であった。アスナ達も影達の姿を奇異な目で見回し、観察する。
「それであなたは?」
「私はオールマイト。ヒーローをしているのだよ」
「ヒーロー?ヒーローって、あのヒーロー?」
「そう、そのヒーローだよ。困っている人々を助けたり平和を乱し、世に混乱を―――」
「オールマイト、相手に混乱を与える話はしない方がいい」
せっかくの話が通じる人間との接触を棒に振るいたくない影がオールマイトという兎の耳のように逆立てた金髪、筋骨隆々の大男を薄汚さが印象の首に布を巻いた無精髭の男が制した会話で、アスナが確信めいた言葉を述べた。
「もしかして、異世界から来た人達なんですか?」
「・・・・・何故だと聞いてもいいか」
彼女の察した風な言い方に聞かずにはいられなかった。真意を探る目付きとなった男にアスナはあっさりと告げた。
「私達も異世界から来た人間だからです」
驚くべきことに同じ境遇者がいたとは思いもしなかったオールマイト達は目を見開いた。しかし、それなら自分達にとってありがたい存在でもあった。同じ境遇者ならこの世界の事、もしくは元の世界に帰る方法を探しているかもしれないからだ。訊ねようと口開く男よりも彼女は白亜の摩天楼施設、バベルの塔に指しながら説明する。
「あの巨大な塔の下に迷宮、ダンジョンがあってダンジョンに棲息するモンスターを倒しながらお金を集める職業、冒険者がこの都市に沢山いるんです。でも冒険者になるためには、神様の眷族になってギルドに登録しないといけないけませんけど」
「そうして君達は今日まで生きていたのか。それで、君達は自分達の世界に帰れる方法は?」
「いや、まだ見つけてない。俺達もこの世界に来て一年目になるんだ」
元の世界に戻る手段を生きながら探しているキリト達の心情を悟り、自分達もそうして生きねばならないのだと察した。
「冒険者に成るために神の眷族に成る必要があるとはどういうことだい?」
「えっと、その前にこっちも聞きたいんだが・・・・・」
オールマイト達の背後、影達の容貌を一瞥して訊く。
「あなた達の後ろにいるのってモンスターなんですか?」
「いや、歴とした人間だ。俺達の世界ではどんな姿だろうと人間として産まれるんだ」
衝撃の事実―――【アルテミス・ファミリア】一行は戦慄、言葉を失った。
「・・・・・異世界って、千差万別なのかな」
「違うよキリト君。そこに注目するところじゃないよ。あの、悪い言い方をしてしまうのが心苦しいんですけど。モンスター、えっと人の姿してない人はこの世界の神や人達からすればモンスターと認識されるかもしれません。だから身体に何か隠さないといけないと思いますよ」
「「「「「・・・・・?」」」」」
何を言っているんだこの少女は?と数多の影―――少年と少女達の頭上に疑問符が浮かんだ。「どういうことだい?」とオールマイトの問いにキリトが説明に買って出た。
「この世界には色々な種族がたくさんいるんだけど・・・・・顔が鳥だったり、腕が何本も生やす種族、人間はいないんだ」
「つまり、君達にとって異形の姿をした者はモンスターと認識してしまうのか?」
「私達と言うより、この世界の人間や冒険者がです。だから討伐対象・・・・・冒険者達に殺されかねませんから身体を隠した方がいいですよ」
冒険者達に殺される。異世界のシビアさを知った少年少女達は顔を青褪め―――上着を脱いで下着姿になった一人の少女の体から布が出てくる光景を見てキリト達は愕然とする。が、男性陣から「おおっ!?」と予期せぬ嬉しい出来事に喜色の声を上げ、女性陣から白い目で見られたり一部、手で視界を遮る者がいた。される者も。
「キリト君、見ちゃ駄目ッ!というか、何で体から布が出て来るんですか!?」
「えっと、君達は知らないけど私達の世界には『個性』という摩訶不思議な能力が存在するんだよ」
「摩訶不思議な能力?特異体質とか超能力的な?」
首肯するオールマイト。程なくして全身を包めるほどの布は人数分手渡され身体を隠し終えた。
「さて、君達の助言があって私達は助かったけれどもう少しだけ手助けしてくれるかな?」
「はい、いいですよ。ね、キリト君」
「ああ、異世界から来た者同士として助け合わないと」
ホッと安堵で胸を撫で下ろす。【アルテミス・ファミリア】の現在のホームは廃墟の教会であるが、雑魚寝をすればなんとか住めなくも無いだろう考えで異世界から来た集団の受け入れを了承した。
「俺達の家はまだ廃墟の教会だけどいいか?」
「この際、雨を凌げれる場所があるなら文句など言わない。それに不備があるところはこちらで整える」
任せてくださいっ、と胸を張って拳を握る身体から布を出した少女が気合を入れた。
「じゃあ、今夜はダンジョンの探索は中止だね」
「うん、また明日だな」
「何だかすまないね。それとまた聞きたいことがあるけれど、君達以外にも異世界から来た人間はいるかな?」
そう訊かれて二人の脳裏に浮かび上がる少年と幼女。頷いて首肯すると「そうか」と納得した面持ちで相槌を打った。
「その人達も元の世界に帰る方法を探してるのかな?」
「探しているとは思います。でも、私達と一緒でまだ方法や手段も見つけてないみたいで」
「・・・・・異世界から元の世界に戻るというのは思った以上に大変のようだな。まさか、俺達があいつのようにその側になるとは思いもしなかった」
深い溜息を漏らす薄汚い無精髭の男の気持ちを知っては、深く同感とキリト達は内心揃って頷いたあと「うん?あいつ?」と疑問を抱いた。
「あいつって誰の事だ?」
「私達の世界にもね。別の世界から来た少年がいるんだよ。その子も私達の世界でヒーローを目指しつつ元の世界に帰る方法や手段を探しているんだ」
「そ、そうだったんですか・・・・・別の世界に来てしまったその子も大変だね。私達のように苦労して」
「まぁ、色々と常識はずれで最強のヒーローのオールマイトより越えてしまうぐらい色々と凄くて強い。苦労しているのかすら判断しかねるがな」
「「さ、最強のヒーロー!?」」
素っ頓狂に揃ってオールマイトを見る目を変えた。HAHAHAHA!と笑った後―――骸骨のように身体が縮んで痩せこけた姿になり替わった最強のヒーローを見て絶叫したのはその数秒後であった。
「・・・・・異世界、色々と凄いな」
「・・・・・うん、凄いね。あ、ねぇ、教えた方がいいんじゃない?」
「ん?ああ、そうしよう。でも、全部落ち着いてからだな」
後に新たな異邦人の来訪と登場に【アルテミス・ファミリア】の団員数は五十人と超え、零細派閥から中堅の派閥に成長するのはそう時間も掛らなかった。同時にキリトとアスナの紹介で一誠は―――真に奇妙な出会いを果たすのであった。