ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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ハイスクールD×D ソード・オラトリア ソードアート・オンライン

ゴッドイーター 俺のヒーローアカデミア 異世界食堂 グランブルーファンタジー

タグに入りきらなかったのでここで記載or以下のアニメ作品とキャラの多重クロス×キャラをします。

※後々他のアニメとキャラを増やすかもしれません


短い間だが【ロキ・ファミリア】に入った。9年~8年~。
冒険譚0


「ほい、終わったでー。これで自分はうちの眷族や」

 

女神の作業を終えるまで待っていた背部の鎧を晒し、背中に刻まれた道化が笑みを浮かべている徽章(エンブレム)を鏡越しでまじまじと一頻り見つめる少年は、朱髪に糸目の女神へ視線を変える。

 

「これが【ステイタス】・・・・・遊戯(ゲーム)めいた成長記録を綴ることが自身で体感できるとはな。何とも言えない気持ちだ」

 

「うちは興味深々やでー?これから自分の子供がどれだけ成長するのか楽しみにしながら見守る。それが神の勤めや」

 

特にアイズたんは楽しみや!と幼女の成長する姿を想像しながら、グヘヘヘ、と変態的な親父の笑みを浮かべる女神の第一印象が確定した。少年は「駄女神」と心の中で零して。

 

「そんじゃ、次はギルドに行って冒険者になるんやーって登録を済まさんとな。さっきの子と一緒に最大派閥(ここ)の副団長と行って来ぃや」

 

「わかった」

 

短く肯定し、女神の部屋を後にした少年がいなくなるまで見送り、傍に置いた二枚の羊皮紙に目を落とした。二枚分のそれは今先程、女神の眷族になった幼女と少年の【ステイタス】を写したばかりで基本的な能力値は全て0と記されているが女神は神妙な面持ちで呟いた。

 

「・・・なんやろうなぁ、この『スキル』」

 

 

そんなこんなで俺、兵藤一誠は理由も分からないまま異世界、しかも冒険者の一人となって生きることになった。しかもだ。俺が知る男のロキではなく女のロキ。最大派閥って主神の一柱とも呼ばれ、この世界の神は娯楽に飢えて下界に降臨したそうだ。解せん・・・・・大いに理解できない、神とは思えない人間臭さを醸し出してどこを敬えばいいのか首を傾げる。まぁ、こっちはこっちで派閥に迷惑掛けない程度に好き勝手させてもらうがな。そーいう契約の一つだから問題はないだろう。貢献しなくちゃならんが。さて、異世界のダンジョン、白亜の摩天楼施設の巨塔『バベル』が蓋として機能しているその真下に件のダンジョンがある。俺は同期の幼女と歳も冒険者としても先輩の副団長を務める肩口に切り揃えた翡翠の髪のエルフと『大穴』と長い螺旋階段を降りて『上層』1階層に足を踏み入れ・・・・・。

 

『ギィアアアアアアアアアアアアアッ!?』

 

飛び散る肉片、舞う血飛沫、打ち上がる断末魔の叫び。幼女がモンスターを、爆砕した結果を見て思わず唖然とする。その後、何かに駆られるようにして胸の奥から叫び同族の血の臭いに引かれ、モンスターの群れが迷路の先々に集まっているところへ向かって斬り掛った。

 

「・・・・・俺の出番、ないなこれ」

 

「すまないな」

 

「まぁ、強くなりたいって気持ちは痛いほど分かるけど・・・・・我武者羅で自分の事なんて二の次って感じするなー。あれ、放っておいたら早死にしそうだぞ副団長殿?」

 

新人の俺にまで言われてエルフの副団長は「わかってる」と幼女―――アイズ・ヴァレンシュタインへ歩み寄った。その背中を見送り、アイズに話しかけるその様子はどこか親子、無理を言えば姉妹のようにも見えなくない。

 

「強くなりたいその憧憬・・・・・もしかしたら俺以上かもしれないな」

 

その原動力は何なのか定かではないがな。と心の中でぼやきながら真後ろから襲いかかろうとしたモンスター『ゴブリン』へ振り向かず、管理機関(ギルド)から支給された大剣で頭に『ギッ!?』と突き刺し絶命させた。

 

「おい、お前の後ろにモンスターがいるぞ」

 

「ん?・・・あ、ほんとだ。何か刺さったと思ったら」

 

(偶然か・・・?)

 

腰に差している鞘に大剣を収めようと失敗して、丁度真後ろにいたモンスターに当たってしまったとエルフの副団長は多分そう感じているかもしれない。今はまだ・・・・・俺の実力を知られちゃ駄目だろうな。知られたら最後、面倒事になる。しばらくは手加減しておこう。

 

 

 

 

「で、どうだったん?あの子らの様子は?」

 

女神の問いかけにエルフの副団長がありのままに事を告げた。ダンジョンで小一時間も籠ることも無く、幼女の武器が荒く扱われたせいで耐久度が半日も保てず壊れてしまい、早々に本拠地(ファミリア)に帰還したのだった。

 

「アイズの方は大方予想していた通りだ。自分の危険を顧みない。己の目的のために力に執心しすぎている」

 

「もう一人の方は?」

 

「あの子に全部狩られてしまって一匹しか倒せないでいた」

 

終始、案山子のように棒立ちしていたと、女神を「あー、圧倒されたやろうなぁ」と苦笑する女神の他にも苦笑いを浮かべている金色の髪に碧眼の小人族(パルゥム)も「かもね」と相槌を打つ。

 

「『明日は一人でダンジョンに行く』とどこか悔しげだったが、あの子の心情を見透かしたような事も言っていたな」

 

「ほう?それは何じゃ」

 

筋骨隆々に伸ばして蓄えた髯をさする初老のドワーフにエルフはこう言う。

 

「『強くなりたいという気持ちは分かる』」

 

今まさにアイズと言う幼女が誰よりも憧憬していることだった。初めて出会い、初めて一緒にダンジョンに潜って、初めてモンスターを倒した幼女の気持ちを分かるものなのか?あの時は軽く流していたが改めてどうしてあんな言葉が口から出てきたのか不思議だったのだ。

 

 

「アーイズ」

 

自分の部屋に帰ろうとしていた幼女は声をかけられた。振り返ると、一緒にダンジョンにいたドラゴンを模した真紅の全身型鎧(フルプレート)の少年が朗らかな表情で近づいていた。

 

「お前の部屋はこっちか。俺もこっちだから」

 

それだけなら勝手に行けばいいと前に顔を戻した。たまたま行く道が同じなだけで他に何があるのかと興味も関心もなくして少年への意識を消した。

 

「強さの果てに何を望む」

 

「!」

 

望んでやまない渇望の核心を問われた。逸らした意識をまた向け直し、兜を外して顔を晒して見下ろす視線と見上げる視線とぶつかった。同じ金色の瞳であるが、どこか異なっていて改めて見ると・・・・・。

 

この人の目の・・・・・私と似ている・・・・・?

 

獣のような垂直のスリット状の瞳から覗ける強い意志の光。だがそれだけじゃない、更にその奥を見ていると、黒い炎とは違う鮮やかな真紅の炎を孕んでいた。

 

「アイズは強さの果てに何を望む?」

 

「・・・・・それってどういうこと」

 

「強くなったらお前は何をしたい?と聞いている」

 

何がしたい・・・・・?そんなの、もう決まっている!アイズの瞳の奥に黒い炎が燃え盛り、少女を焦がすようになったものを口から意思の強さと共に示した。

 

「大切なものを取り返したい・・・ただそれだけ」

 

悲願の為にと心の中で最後に付け加え答えてみれば少年は苦笑いを浮かべていた。

 

「ふーん、不思議な願望だな。俺とは大違いだ」

 

「・・・・・?」

 

俺とは大違い。この人も強くなりたいと思った時期があったのだろうか。他者に対して関心を寄せず強くなる事にしか頭にないようにしていたアイズはこの時だけは興味を抱いた。

 

「・・・・・あなたも強くなりたいの?」

 

「強くなりたくない奴なんていないほうがおかしいだろう。でも、その強くなりたいと言う気持ちの強さがお前と似ていた。それだけさ」

 

「じゃあ、貴方が強くなりたい理由はなに?」

 

何となく聞いてみたら少年は「あー」とどこか困って言い辛そうに苦笑い。でも、口を開いた。

 

「うーんと、ぶっちゃけ教えるとだな。俺はアイズと同じぐらい小さいときにな。同族の同世代の子供達の中で一番弱くて、よくイジメられていたんだ。実の兄にも兄弟の絆を捨てられるほど虐められた。しかも、その兄から殺されかける始末だ。だから弱い自分が許せず、見返す為にも強くなりたいと子供の頃から強くなる為の修行や特訓、鍛錬をし続けた。んで、現在もその最中で今に至る」

 

アイズにとってくだらねー理由だろ?と自嘲する少年の話は馬鹿に出来ないと小さく首を横に振った。強くなる為にこれからも自分と同様モンスターを狩り続けるのだ。くだらなくもおかしくもない。理由は違えど自分(アイズ)と同じ似た気持ちを抱いているならこの人は理解者だ。

 

「・・・・・少しだけ、分かった」

 

「そっか。ありがとうな」

 

無造作に頭を撫でられたその瞬間。父親に撫でられる時に感じる温もりが甦った様に温かかった。撫でられても不思議と嫌じゃなかった。

 

「んじゃ、強くなりたいアイズちゃんに強くなれる方法を教えようか?十代ぐらい成長していたらかなり強くなっているぐらいのな」

 

「!」

 

「同期でこの派閥に入っても人生の方は俺が一番経験している。何より世界中旅していたから強くなる方法は理解している。どうだ、聞きたいか?」

 

この次にどんな反応をするか分かり切って心の中で盛大にいやらしい笑みを浮かべている少年の目には、一生懸命身を乗り出そうとつま先を立たせて少年から強さの秘訣を聞き出そうとする少女が映った。

 

「教えてっ!」

 

「ああ、いいぞ。まず一番大事なのは戦いに関する知識だ。それもモンスターの情報がアイズを強くしてくれる。要は勉強しろって事だ」

 

「・・・・・勉強」

 

期待していた強さの秘訣とは全然違う。と、そう不満げな顔を隠そうとしないアイズは、聞いた私が駄目だったと歩き始めたその背中から。

 

「アイズ。強くなりたいなら、強くなりたい自分にとって必要な強さを色んな所からもらっておいても悪くない。強くなれる勉強は無駄かどうか、一度ぐらい勉強してから決めてもいいんじゃないか?」

 

「いい、勉強しなくてもモンスターは倒せる」

 

「確かにな。でも、相手を知らないで自分のことすら知らないアイズは―――一生、強くなった後に成し遂げたい悲願を達成することはできないな」

 

聞き捨てにならない事を言われ、歩みを止めて強く言い返す為に振り返った先に跪いてアイズと同じ視線を合わせている少年がいた。

 

「仮にお前の両親は冒険者だったとして訊くぞ。無駄だと決めつける勉強も含め、きっとお前の両親だって誰でもするような事をしていた筈だ。両親でもしていた事を冒険者になったアイズがしないのはおかしいだろう?」

 

「っ」

 

「母親も料理を作る時は誰かに教わっていた、父親も冒険者になったばかりは強くなる為にも勉強をしていた。お前の両親に限らず皆が何かしらの勉強をしているんだ。それをしないというのは生きるのも強くなるのも嫌だって拒否することだぞ?」

 

分かりやすく諭され、言い返すこともできない。両親をダシに使われて、悔しげに少年へ睨むように見つめるアイズは拳をギュッと握った。

 

「もう一度言うぞ。強くなりたいなら強くなるために大事な事は全てやらなきゃ駄目だ。しなきゃ一生弱いままのアイズでいることになる。それでいいのか?」

 

嫌だ、強くなりたいのに弱いままなのは嫌だ。でも、勉強はもっと嫌だと子供らしく心の中で駄々をこねるアイズ心情を露にも知らない少年は困ったように眉根を寄せた。

 

「どーせあの副団長の事だ。お前には心構えが必要だーとか言って勉強させられるかもしれないぞ。勉強しなきゃダンジョンの出入りを禁止だーとかも言われるなんて、それこそ嫌だろう?」

 

「うっ・・・・・」

 

確かにそれは嫌だと呻く。悲願の為に強くなりたい願望を、更なる高みへの渇望の根源が禁止されることになれば本末転倒だ。しばらく考え込むアイズは何が大事で何が大切か自分なりの天秤を計って・・・・・頭を垂らした。それから翌日の朝食後、翡翠の髪のエルフの自室にて何冊もの分厚い本が置かれたテーブルの前に座り嫌々そうな面持ちで勉強をする幼女とそれに付き合う若い少年がいたのであった。

 

当初、アイズの反抗を予測していたが意外な方、少年から「ついでに読み書きできないから教えてほしい」と乞われてしまい、二人の面倒を見る羽目になってからアイズは大人しくエルフの教授に従っているのだ。これには少々面を食らい、ペンを持って白紙のノートに書き留めていくその様子に不思議と怪訝な気持ちになるが取り敢えず良しと判断した視線の端では。

 

共通語(コイネー)すら読み書きできへんなんてどんだけ田舎の中で育ったん?」

 

「うっさい、そーいうのと縁がないところで育ったんだよ俺は。悪いか」

 

「逆に珍しいわーって感心やー。後それ、違うでー。ええ歳して間違うなんてダサッ」

 

「・・・・・女神とは思えない貧乳駄目神に言われた。すんげーショック」

 

「誰が貧乳駄目神やぁッ!?」

 

アイズと少年以外に一人、この部屋にお邪魔させてもらっている女神が、少年に共通語(コイネー)を教えていたが売り言葉買い言葉、喧嘩にまで発展してしまい最後は五月蠅いとエルフの拳骨を(少年は主神を盾にした)もらった勉強の日は騒がしかった。

 

そんな勉強会が終わるとアイズはリヴェリアと共にダンジョンへ直行したのに対して少年は町へ繰り出した。そこで改めて気付いたことがあった。どこか気を張っている住人や巡回(パトロール)しているギルド職員や冒険者の姿。

 

まるでテロリスト、暴徒に対して警戒しているような雰囲気がヒシヒシと肌に伝わる。この都市に集団規模の騒動を起こしている輩でもいるのかとダンジョンの出入り口、『摩天楼施設(バベル)』がある中央広場(セントラルパーク)から『冒険者通り』という東のメインストリートへ進んだ時。無遠慮過ぎる強い視線を感じ取った。

 

(この視線・・・・・あの女神と似ているなぁ)

 

向けてくる無遠慮な視線を感じる方へ、白亜の巨塔の最上階へ鋭く睨みつけた。

 

 

真紅のドラゴンを模した全身型鎧(フルプレート)の者を、銀髪の女神は壁の窓張りに手を添えて 今も尚無遠慮な視線を注ぐ。

 

「見たことのない魂・・・・・多種多彩な数多の魂を持った貴方の魂は色ではなく風景を見せてくれるなんて」

 

どこまでも澄んでいる美しい空、どこまでも広大でどこまでも深い大海原、どこまでも広く自然豊かな大森林、そして何ものにも照らし包む暖かい光を発する太陽・・・・・。それらを囲むのは複数の漆黒、金色、紫、赤、透明、深緑の魂達。

 

女神の銀瞳は愛玩具を得た子供のように輝き始める。今まで見たことのない本質を、才能を、輝きを『魂』に―――一目で魅了されてしまった。魅入ってしまった。見惚れてしまった。この美の女神とあろう神がだ。故に―――欲しい。久しく感じていなかったこの感覚。全身がぞくぞくと打ち震え、下腹部は疼き、恍惚の吐息が喉の淵から溢れ出してくる。あの魂を持つ者を今すぐ手に入れたい。そして死ぬまで傍らに置きたい。この胸の奥底から湧き上がる高揚感を抑えることはできない。否、抑える気は毛頭も無い。

 

「・・・・・関わるのも面倒かもな。ぶらりと町中を歩きながらギルドに行ってダンジョンの地図を貰いに行こ」

 

 

と、目的を零し広場を後にする彼を最後に見た【ファミリア】は半年になってもいなかった。

 

 

 

「今日も、帰って来ないでいるちゅうわけやな」

 

「他の団員達に聞いても『そんな人いましたっけ?』って逆に聞かれてしまうほどにね」

 

執務机の上で胡坐を掻き独り言のように呟く女神は腕を組んで椅子に座っている小人族(パルゥム)から本拠地(ホーム)を留守にしている一誠の存在感の無さを伝えられ「マジで?」と反応した。

 

「この【ロキ・ファミリア】に入団して二日目以降からだったかな?戻らなくなったのは」

 

「気付いたんのはアイズたんの一言やったなー。『鎧の人、今日もいないの?』って言われてうちらが揃って顔を見合わせてからや」

 

「そうだったね。『闇派閥(イルヴィス)』や強制任務(ミッション)で忙しかったから―――なんて言い訳しても意味がない」

 

「それ以上に危ういアイズたんのことを結構気に掛けていたもんな。あの子は他の子供達と同様に扱って他の子供達より特別にアイズたんに接していたもんなうちら」

 

苦笑いを浮かべる女神に自嘲的な笑みを浮かべる小人族(パルゥム)も否定しない。よく見ていればアイズを贔屓している事がよく分かる筈だが、それを気付けないでいる他の団員達は多忙の真っ最中であり、今でも本拠地(ホーム)から出払っている。

 

「ロキ、彼は生きているかい?」

 

「んーと、ん、まだ生きとるで。どこにいるかまではわからへんけどまさかダンジョンに籠っているわけ無いやろうな」

 

眷族達の背中に神の血(イコル)で刻んだ【神聖文字(ヒエログリフ)】の【ステイタス】の気配を感じ取っている女神―――ロキは生存を認知した。眷族の一人の生存を確認できた小人族(パルゥム)はいない者の話を打ち切り、アイズの事に話を切り変えた。

 

「アイズはアイズで相変わらず、強くなる事に執心中か」

 

「いまはガレスとダンジョンに向かっておるでー」

 

 

 

ダンジョン7階層。正規ルートから外れた行き止まりの『ルーム』で監督兼サポーターも兼任しているドワーフの大戦士と共にアイズはモンスター狩りに没頭していた。その際の彼女は普段から感情が豊かではないが、ダンジョンにいる時は無表情に拍車がかかる。凍てついた相貌で、モンスターを屠り続けるのだ。

 

『人形姫』。

 

それは返り血を浴びてもなおも表情一つ変えず、ひたすらモンスターを狩り続ける少女を同業者がその戦い方を見て、嘲りつけた渾名だった。一誠がいなくなってからこの半年間、感情を削ぎ落として徹底的に怪物どもを殺戮する【ロキ・ファミリア】の新団員の存在は、『ギルド』や下級冒険者の間では噂になっている。

 

同時に今年の大型新人冒険者(スーパー・ルーキー)候補の最有力だとも。しかし、少女はそんな事に関して興味もなければ意識もしていない。あるのは〝強さ〟を求める想いが具現化した黒い炎のみ。金眼の奥に燃え続け幾度も小さな幼女を死地へ追い立てる炎しか感じられず、強さを求め死ぬまで狩り続け屠って来た化け物たちの死骸の上に孤独で立ち続けて行くだろう。

 

(・・・・・足りない。これだけじゃ、まだ足りない)

 

最後のモンスターが地に倒れるのとほぼ同時に、音を上げたように短剣が罅割れ、剣身を折る光景に視界が映る。アイズは乏しい表情の中で僅かに眉根を歪めた。

 

(・・・・・直ぐに壊れる。壊れない武器が欲しい。そうすれば・・・・・)

 

もっとモンスターを倒せて強くなれるのに、と壊れる武器に対して嘆息するアイズはドワーフの大戦士から予備(スペア)の武器を手渡される。因みに、本日のダンジョン探索の中で三本目だ。作る側の鍛冶師がアイズの武器の扱い方を見ていたら「武器を何だと思っているんだ」と嘆いていたかもしれない。

 

数年後、【ロキ・ファミリア】のクラッシャーの一人と呼ばれることになっているが今のアイズはそんなこと露知らず。引き返すぞと言うドワーフの戦士に不満の色を浮かべ欲求すら取り合ってもらえずますます不満顔を露わにする。

 

(このドワーフもケチ)

 

翡翠の髪のエルフも最近もっとうるさくなってきた。小人族(パルゥム)は一人でダンジョンへ行かせてくれない。ロキは変な名前で呼ぶ。と、日頃の負荷(ストレス)が蓄積していく中で脳裏に浮かぶ。

 

(鎧の人・・・・・どうしているのかな)

 

自分と同じ悲願を持ち、アイズの理解者の真紅の鎧の者を見なくなってから半年以上が経つ。どこで何をしているかなど分かる筈も無く、ただ一瞬だけちらっと思って終わりだ。背後からついてくるドワーフを尻目に道中警戒して現れるモンスターの気配を探って帰路に着こうとしていた時だった。

 

『うわぁああああああああああああああ!?』

 

突如、迷宮の奥より複数の悲鳴が轟いた。顔を振り上げ弾かれたように駆け出すアイズとともに、ドワーフの戦士も叫び声の発生源に急行する。辿り着いたのは正規ルート上、6階層の連絡路前であった。

 

「だぁぁぁぁ!?畜生っ、ふざけんなっ!」

 

「多過ぎる!」

 

「誰かっ、助けてくれええええええええ!」

 

異なる徽章(エンブレム)をつけた複数のパーティが相手取っているのは、蟻のモンスターの大群であった。『上層』の中でも滅多にお目に掛れない規模の敵勢に、下級冒険者達が大苦戦している。

 

「『キラーアント』の大群!仕留めそこなった冒険者が、『怪物進呈(パス・パレード)』でもしたか!」

 

ドワーフの戦士は直ぐに事態を察した。巨大蟻(キラーアント)は体を傷付けられ窮地に陥ると、仲間を呼び寄せるフェロモンを発散する。大方詰めの甘い冒険者の失敗がことを大きくさせてしまったのだろう。正規ルート上、おまけに連絡路の前を塞がれては逃げの一手も打てない。興奮状態のモンスター達を見てドワーフの戦士は参戦しようとしたが、

 

「―――ッ!!」

 

状況分析もせず飛び出したアイズの視界にも―――真紅の光が飛び込んできた。

 

『ギッ!?』

 

一匹の『キラーアント』の首が宙に舞う最中、真紅の光が残す軌跡が『キラーアント』の大群に飛び回り首だけを刎ね飛ばす。アイズが戦闘に介入する暇も与えない程、最初に宙に舞っていた蟻頭が地面に落ちた時は大群の『キラーアント』は絶命していた。

 

ドワーフの戦士の目も張る一瞬の間、全てのモンスターを屠った光はやがて止まったのを見届けた。一滴も蟻のモンスターの血を浴びてなくても血の様に真っ赤な真紅の龍を模した全身型鎧(フルプレート)の姿を視認できてますます目を張った。

 

見覚えのない金色の剣身を虚空に切り、蒼い鞘に納めると助けを求めた冒険者達を他所に屠った『キラーアント』の身体から魔石と灰燼と化したモンスターからドロップアイテムを採取する作業に取り掛かった。

 

「お主・・・・・」

 

「ん?あ・・・・・アイズ」

 

声を掛けられようやく気付いた―――半年も本拠地(ホーム)を留守にしていた一誠が反応して振り向いた。硬直する鎧の冒険者と言い逃れはできんと睥睨するドワーフの戦士、そして少女は目に焼きついてしまった。願ってやまぬ己が望む『強さ』に。

 

(この人なら私を・・・・・っ!)

 

 

「やぁ、随分と長くダンジョンに潜っていたそうじゃないか?」

 

「どーせ俺の事なんざ忘れていただろうから問題はないだろ」

 

「否定はしないよ」

 

「マジで忘れていたのか。まぁ、新人に対してその程度の認識だということはよーく分かったよ」

 

「【ファミリア】の皆を率いる頭領だからね。上に立つ者としてやる事は色々と忙しいんだ」

 

「その割には極一部の団員のことを気に掛けているようだな俺みたいなのと違って」

 

「まだまだ心と体が未熟だから仕方ない。この【ファミリア】に入ったからには皆平等に家族として受け入れる。アイズも家族だ、面倒見なきゃね」

 

一誠と小人族(パルゥム)、ドワーフの戦士に翡翠のエルフ、主神ロキ、アイズが同伴して二人の会話を見守っていた。あの後ダンジョンから本拠地(ホーム)の執務室にいた小人族(パルゥム)の前に連行されたのだった。

 

「てか、副団長は分かっていたがお前が団長だったのかよ」

 

ドワーフの戦士も知らないと付け加える一誠は小人族(パルゥム)の団長を苦笑いさせた。

 

「【ロキ・ファミリア】の団長を務めているフィン・ディムナだ。改めてよろしく」

 

「ん、よろしく」

 

「じゃあ、今までダンジョンに籠って何をしていたのか教えてもらえるかな?」

 

「普通にモンスターを倒していただけだし」

 

「半年も?」

 

「オラリオの街並みを見て回って道具(アイテム)と食糧の補充もしていたから半年も、かな。何度かギルドに顔を出しているから確認してもらえばすぐに分かるし」

 

本当か嘘か・・・・・ロキに流し眼で確認の意を求めると・・・・・糸目がちな目は薄らと開き、話に耳を傾けていた。

 

「ロキ?」

 

「ん、嘘は言っておらへん」

 

真っ直ぐ一誠に視線を注ぐ姿勢は変わらない神の言う事は絶対。ならば信用してもいいと断定し、次の問いを投げた。

 

「ガレス・・・・・このドワーフから聞いた話じゃあ『キラーアント』の群れを倒したらしいじゃないか」

 

「アイズだって倒せるだろう」

 

「うん、倒せるだろう。だけど、君の戦い方とアイズの戦い方は明らかに異なっているようだ。君は下級冒険者であるにも拘らずどうして上級冒険者並みの実力を発揮したのか気になるんだけど?」

 

「オラリオに来る前に小さい頃から武者修行をしていたからだろう。その最中に色んなモンスターと戦いに明け暮れていた」

 

「成程、既に『恩恵』を得る前から戦い慣れていたということか」

 

前の【ファミリア】で培った『技』と『駆け引き』・・・・・では無く自然に培ったソレだと主張する一誠。それでフィンは納得―――する振りして碧眼を二つの筒型のバックパックに向けた。

 

「半年間、ダンジョンに籠っている割には戦果は普通の様だけど」

 

「ああ、これはちょっとしたからくりがあって・・・・・」

 

一つの筒型のバックパックの蓋を開け、逆さまにして中身を落とす。

 

ドッ、ガラガラガラガラガラガラ・・・・・・。

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

規格外な大きい魔石から欠片サイズの魔石まで大量に山積みとなりながら執務室の床を占めて行く。長期遠征でもしない限り得られない大量の魔石にフィン達は言葉を失った。半年でたった一人でここまで集めたのかと信じられなかった。とてもバックパックに入れる容量を超えている程の魔石は、ようやく出尽くしたようで出なくなった。床の3分の1も占めた魔石。一体どこまで階層を潜って行ったのか定かではない。フィンは質問した。

 

「君は・・・・・一人で何階層に行ったんだい」

 

「えっと・・・・・18階層を拠点にしていて、そこから希少だったり貴重なアイテムを探索したり・・・・・」

 

もう一つの筒型のバックパックの蓋を開け、取り出した綺麗な純白の一本角を見せつけた。

 

「レアモンスターを探し回っていたな」

 

「「「・・・・・」」」

 

この瞬間、フィン達は一誠の実力は【ステイタス】で計っていいものではないと悟った。何故、どうして下級冒険者が一人で『中層域』まで進んで上位モンスターを倒すことができるのだろうか。床一面に広がる魔石をバックパックに入れ直す一誠から・・・・・。

 

「見ているだけで手伝ってくれないか?」

 

肝が据わった図々しい催促を受け、この場にいる全員でせっせと集め始めて十数分後。一誠は退室した。

 

「ロキ、彼の【ステイタス】に何か異変は?」

 

「一切無いで。寧ろあんのはアイズたんの『スキル』の方や」

 

「戦闘能力を向上させる『スキル』が発現していないで我々の想像を遥かに上回る実力を隠していただと」

 

「武者修行をしていたからとは思えないほどにな」

 

納得できない。だが、嘘を言っているようにも思えない。ここにきてイッセーという冒険者の出生が謎のベールに包まれ始めた。故に確かめなければいけなくなった。最悪、自分達の敵に回ると言うならば処置をしなくてはならない。

 

「・・・・・フィン、どうする」

 

「ンー、アイズに影響が無いといいけどね」

 

「無理じゃな。ダンジョンからずーっとあやつのこと見ておったぞ」

 

「私を鍛えてください何て言うかもしれないって?」

 

ンなアホな、と冗談交じりに述べるロキだったがフィン達三人は・・・・・有り得るかもしれないと気持ちが一致した同時刻。宛がわれた部屋がある塔の最上階へ半年振りに戻る一誠の後を追うアイズ。

 

「ねぇ」

 

「なんだ?」

 

「ずっとダンジョンに籠っていて強くなった?」

 

純粋な気持ちで半年間の成果を実感したか訊ねたアイズに首を横に振って否定で返した。

 

「全然、俺より強いモンスターを何度も倒さなきゃ駄目っぽい。【ステイタス】の更新はまた今度だ」

 

「強いモンスターを倒せば、私も強くなれる?」

 

「人の成長の時間と速度は個々によって違う。けど、アイズも強くなれると思うな」

 

自分より強いモンスターを倒す。そうすれば強くなれるという情報を得て、〝強さを求める〟意欲がフィン達の知らないところで増してしまった。四人の杞憂は終わらず、共通の想いを抱く者同士としてアイズはもっと話が聞きたいが為に部屋の中まで付いて来てしまった。

 

「ん、何だ?俺の部屋に来ても何も無いぞ」

 

実際にそうだった。椅子と机、寝台のみの部屋は質素の一言に尽きる。珍しいものは一つも存在しない。こういうところも自分とそっくりだった。強さを求めるものに必要最低限なものしか用意していない感じはアイズに親近感を覚えさせた。バックパックを寝台の傍に置き、腰に佩いている剣を机の上に置く彼に言葉を投げた。

 

「その剣・・・・・」

 

「これか、俺の大切な愛剣だ。名前は『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」

 

「勝利の、剣・・・・・」

 

恐る恐る、興味深々でその剣の鞘に触れ使い手が見ている目の前で少し鞘から抜いてみた。アイズと一誠の目と同じ色の金色の剣身が蒼い鞘から覗き、綺麗だと目を丸くして見つめ続けた。自分が使っている短剣とは違い丈夫そうな剣。『キラーアント』の群れを斬っていた剣に刃毀れは見当たらず、半年間も使い込まれていた剣とは思えない鋭さが光っている。

 

「・・・・・これ、頂戴?」

 

「だが断る」

 

何時の間にか鎧を脱いでいて真紅の長髪を背中に流し、右目に眼帯、金色の左眼から本気で譲らないと言う意志が籠っていたのをアイズは感じてしまった。非常に残念極まりない。

 

「団長達に言えばいいじゃん」

 

「言っても、別の武器を渡されて使っても直ぐに壊れる」

 

「それは単純にアイズの剣の扱い方が大雑把過ぎるからじゃないのか?手入れもしてないなら尚更だ。剣はただ相手を倒し斬るもんじゃないんだぞ」

 

剣は使い手の半身だ、とアイズには分からない言葉を送った。

 

「半身・・・・・ってなに?」

 

「もう一人の自分って思ってもいい。剣を一度握れば使い手を守る為の半身となる。でもアイズは強くなる為の道具としてしか見てないだろ?だから直ぐに壊れる」

 

スッと一誠はアイズの右腕を取った。子供の細腕ということを加味したとしても、細過ぎる。余分な肉が全くない。しなやかな筋肉と皮、後は骨だけ。まるで細剣(つるぎ)のようだ。本来ならば美しい筈の金の髪も、今や荒れきっている。半年間もこの本拠地(ホーム)を留守にしていた一誠でもこの幼女がどんな生活を過ごしてきていたのか察するに難しくなかった。

 

「全く、俺ん時とは大違いだな。あの団長達は食生活まで面倒見てないのか」

 

「・・・・・」

 

呆れた風に顔を顰め、研ぎ澄まされた若干こけている頬に両手を添えて視線を合わせられる。

 

「もっと自分を大切にしろ」

 

頬を添える両手が淡い光を纏い、幼女の全身を包み込んだ。すると次第に荒れきった金髪は潤い、研ぎ澄まされた頬は細過ぎる腕と一緒に健康的な肉体へ戻っていく。

 

(温かい・・・・・)

 

その心地のいい温もりに瞑目してより実感する。誰かに抱きしめられるような感覚と似ていて、それは今この場にいない父親と母親の抱擁のようだった。幼女は温かく懐かしくて無意識に頬を綻ばせ、強さを求めさせる黒い炎がこの瞬間だけ消失した。

 

「で、何時まで聞き耳を立てている」

 

腕の中で小さな寝息を立たせて年相応の寝顔を浮かべる幼女から扉へ視線と言葉を向けた。一拍遅れて扉が開き、肩口に揃えた翡翠の髪の絶世の美女と言えるエルフの副団長が入ってきた。

 

「アイズが心配で来たか?」

 

「・・・・・寝ているのか」

 

「疲れが溜まっている証拠だろ」

 

入って来る前に一瞬で鎧を着直した一誠は部屋に訊ねてきたハイエルフに「用件は?」と急かす様に問うた。

 

「お前が隠している実力を知りたい。明日、ガレスと模擬戦をしてもらう。断ればダンジョンの出入りも禁止せざるを得ないとフィンからの命令もある」

 

「勝手にしろ」

 

断固として拒む相手に副団長の綺麗な柳眉は寄り、取り付く島も無い会話の平行線は夢の中のアイズを受け渡され部屋から追い出される形で終わってしまった。

 

「さぁて、行くか」

 

面倒事がまた来る前に。とバックパックと剣を所持し、窓を開けて躍り出る様にして抜けだす。

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