ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚18

極東から戻ってきて元の日常を過ごす一誠達。変化のない充実した生活を送っている、本人達もそう思っている筈の、自然と力を寄せ付ける一誠の体質を知らない面々は静かにオラリオの変化を感じるようになる。

 

―――変化その一、極東の三大派閥が戦力を高める絶好の場所とであるからと、数百人単位の規模でオラリオにやってきた。都市外から一度入ると出る時は困難なオラリオへ一度に多くの眷族達を引き連れたアマテラス、イザナギとイザナミに迷宮都市に永住する全ての者達は、大通りを埋め尽くす甲冑を着こんだ眷族達を目の当たりにして目を白黒させた。だが、一番驚いたのはギルドの職員達だった。突如の来訪にギルドは泡を食って【ファミリア】の申請と百人以上の冒険者登録に一日掛けて済ませたが、終わった頃には疲労困憊でこの時だけは、前触れも無く多勢を率いてやってきた神々に恨めしい気持ちを抱いたのは無理もなかった。

 

 

―――変化その二、一誠の夜食をたかりにくる神が増えた。【アマテラス・ファミリア】【イザナギ・ファミリア】【イザナミ・ファミリア】の他に【ディオニュソス・ファミリア】。すっかり味を占めた神々は週に何度か【ヘファイストス・ファミリア】の主神と団員が住まう別居へ足を運ぶ人数も多くなった。当然、夜中に大勢で歩けば人目を集め注目する。指定された時間内に別々の道から来て集うことになってもちらほらと見掛ける冒険者や民衆はいるものだ。何時しか色んな派閥の主神が眷族を率いて自ら巡回(パトロール)をしていると言う噂の煙が立った。

 

 

―――変化その三、一誠に新たなスキルが発動した。更新した主神は目を疑う。

 

「なに、これ・・・・・」

 

 

『恋愛一途』

 

・早熟する。

 

・懸想が続く限り効果維持。

 

・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。

 

 

『魅了成就』

 

・魅了する。

 

・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。

 

・神・老若男女、人種問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。

 

 

『三技一体』

 

以下の三つのスキルが一つとしてそれぞれの発動条件が満たされると一時発現する。

 

 

料理想達人(クッキング・マスター・シェフ)

 

・調理道具の装備時、発展アビリティ『料理』の一時発現。

 

・補正効果は『器用』と『敏捷』のアビリティ数値に依存する。

 

 

『神伝鍛冶』

 

・鍛冶道具の装備時、発展アビリティ『鍛冶』の一時発現。

 

・作製した武具の品質の向上は『器用』アビリティ値に依存する。

 

 

神秘希少(ウルトラ・レア)

 

道具(アイテム)の作製時、発展アビリティ『神秘』の一時発現する。

 

・一定以上の道具(アイテム)の製作時、スキル『幻想』が発現する。

 

「・・・・・」

 

更新したヘファイストス。長らくご無沙汰だったからか、相変わらず『アビリティ』は一つも伸びなかったが、色々と突っ込みたいスキルが具現化してしまった。なのでこれを伝えて良いのかロキと会い、『黄昏の館』の庭園で二つの椅子に座って羊皮紙をロキに向けて置いた(テーブル)を挟んで顔を突き合わせている。お互い眷族を連れず、たった二人きりで言葉を交わし合ったところ。

 

「なんやねんこれ」

 

「・・・・・そう思うでしょ」

 

一度に三つ(五つ)もレアスキルの発現を証明する写した羊皮紙に糸目を落としたロキは思わず漏らした声に呆然の色が籠っていた。目を疑うようなスキルだが、今までの言動を考慮すれば発現してもおかしくないものばかりだ。

 

「フィンと似たようなスキルが発現しよったかイッセーの奴も。これは教えてもええと思うでファイたん」

 

「じゃあ、これは?」

 

 

『恋愛一途』

 

・早熟する。

 

・懸想が続く限り効果維持。

 

・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。

 

 

『魅了成就』

 

・魅了する。

 

・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。

 

・神・老若男女、人種問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。

 

 

人差し指で当人が一番恥ずかしがるだろう『レアスキル』を示す鍛冶神から問われた女神は腕を組んで己の考えを口にする。

 

「んー・・・・・教えても問題あらへんと思うけど、問題が一つある」

 

疑問符を浮かべながら紅眼で「問題?どういうこと」という意味を込めた視線を送るとロキはヘファイストスにこう伝えた。

 

「これ・・・・・フレイヤもやけど、他の派閥の神連中が見た途端、絶対手放したくないと思うやろ」

 

特に女神や、とロキの指摘に沈黙して肯定と受け取らせるヘファイストス。レアスキルの塊を抱えさせられた眷族の女神は、特に性質の悪い女神の【ファミリア】に改宗(コンバージョン)を許してしまったら・・・・・。そう思うと困り顔になった。

 

「どうしたらいいのかしらね・・・・・イッセーは他の派閥に行くことを躊躇しないわよ」

 

「他の神連中に一年に一度は改宗(コンバージョン)するっちゅうことを知られてもうたし、できればうちらの間だけそうして貰いたいんやけど」

 

今度ダーツで決めるのはヘファイストスで女神の手腕が掛っている。そして運頼みになってしまう次の派閥に対する改宗(コンバージョン)。たかり仲間の間であれば悩みもしないがそれ以外の【ファミリア】も含まれている次の行き先に二人は悩む。

 

「で、イッセーの奴は家におんのか?」

 

「椿と貴女の子供と27階層の階層主を倒しに行くって言ってたわよ。【剣姫】、物凄く張り切っちゃってたわね」

 

「久々のダンジョンってのもあるけど、イッセーと戦えば戦うほど強くなるって嬉しいんやろうな」

 

「全然あの子のアビリティ数値は0のままなのだけれどね」

 

空は晴天。雲一つも無い天晴なほど空の彼方まで空色が続いている一方、太陽の光が絶対に届かない地下迷宮では―――。

 

 

「はぁああああああっ!」

 

風を纏い中層27階層の『迷宮の孤王(モンスター・レックス)』との戦闘中に酔狂かつ命知らずな冒険者達へ襲いかかるモンスター。小さな人間を四方八方から人間の腕を握って折ることができる両の手や凶悪な牙を生えている大口を開けて迫る『バグベアー』は、突然発生した幼女の全身を守る様に纏った激しい気流の風の塊に弾かれたその瞬間。更に風の気流が乱れ、迸った同時に全身を切り刻まれたその近くでは、左眼を覆う漆黒の眼帯を付けた褐色肌の少女が製作した『魔剣』を振って属性攻撃の猛威を大いにモンスターへ放ち続けていた。使用回数を超えて砕けた『魔剣』の意識を直ぐに背嚢の中に収納した新たな『魔剣』を手に性能と改良の把握を確かめる。炎を纏うロングブレードを振りまわし両断した銀髪の幼女のその瞬間を狙ったかのような他方向からの攻撃に、剣の腹で受け止め防戦一方に強いられる。力と数の暴力に耐え抜いて数秒後、体勢を崩されて地面に倒れた幼女を大口開けて押し寄せてくるモンスターであったが、一閃の軌跡が斬撃の光の筋を残したモンスターの体が二つに分かれて絶命する。黄金色の髪を揺らしその碧眼の視線は次の怪物へ襲う照準を定めていた。そのどの種族よりも小さな体で活かした『敏捷』と『器用』でモンスターとモンスターの隙間を針穴に糸を通す感じで潜りながら勢いよく振り回す槍の穂先で化け物を屠り続ける。逆に『力』と『耐久』が高い種族の筋骨隆々に髭を蓄えているドワーフは豪快に斧を振るいまくって斬り払い、薙ぎ払い、地面に向かってモンスターを真っ二つにしながら叩き付ける。

 

そんな地上を他所に空中で魔法の詠唱を唱えている翡翠の長髪の絶世の美女ハイエルフがいた。モンスターの爪や牙が届かない安全ば場所から魔力を高め一撃必殺の呪文を玲瓏な言葉で紡ぎ続けている。そしてこの階層の主こと『迷宮の孤王(モンスター・レックス)』、二つの首を持つ、白い『双頭竜』―――『アンフィス・バエナ』は真紅の竜を彷彿させる全身型鎧(フルプレート)を着込んだ冒険者に、一方的に攻撃を受けていた。十字架型の盾を二つ、鎖と繋げられた状態で使い手に振り回されるその防具に刻まれたり、防がれたり、打撃を受けたりと蹂躙されている。双頭の口から発せられる攻撃に対しても堪え切り、時間を稼ぐことしばらく・・・・・。

 

「イッセー、準備が整った!」

 

黄金色の髪に碧眼の小人族(パルゥム)の疾呼に、十字架型の盾を投げ放ってアンフィス・バエナの首に巻き付け突き刺す。そのまま鎖を思いっきり力のあらん限り引っ張って、己より巨大な怪物の体の体勢を崩そうとする意図を悟る階層主は、両足を踏ん張ろうともう一つの頭からでも攻撃を繰り出そうと―――下からの衝撃まで対応できず、虚空の感覚を知ったあと。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』

 

産まれて初めて空を飛ぶ感覚を体感しながら、まだいる数多くの同胞の真上から巨体で影を作って激しい衝撃を起こしながら叩き付けられた。体勢を立て直して起き上がる白双頭竜を中心に巨大な魔法円(マジック・サークル)が発動・展開していた。

 

「レア・ラーヴァテインッ!」

 

ハイエルフが放つ炎属性の魔法は幾つものの炎柱を発生させ、27階層の空間は炎と熱の地獄と化し、忽然と胸部に深い穴が穿った階層主を始めとした数多のモンスター達が灼熱の炎に呑み込まれ焼失していく様子は天井付近から見守り、見下ろす小規模でありながら精鋭のパーティの視界に映り込み続けた。

 

 

 

「えげつないな。リリアの魔法。オラリオを一日も掛らないで壊滅できるだろ」

 

「随分な言い掛かりだ。お前が私の魔法を見てみたいと言うから付き合ってやったと言うのに」

 

「儂もたまにそう思う時はあるぞリヴェリア」

 

「僕も受けたらこの体は灰燼すら残さず消失すると思っていた時があったよ」

 

階層主との一戦後、燃え尽きる前に回収した階層主の魔石をバックパックに収納し終え

転移式魔法陣であっという間に地上へ戻り、『幽玄の白天城』へと戻る一行は途中、都市最強の魔導師の魔法の威力の評価を零して彼女の綺麗な翡翠の柳眉を少し寄せさせた。

 

「今度、リリアの魔法に耐えきる防具を作ってみようかな。そしたら都市最強の防具の誕生だ」

 

「私を挑発しているなら、まずはお前からその鎧で試してみるか?」

 

「魔法勝負するなら何時でもいいぞ?」

 

すぐ傍で二人が魔力を高め合うその危なっかしさに「まぁまぁ」「よせよせこんなところで」と周りから制される。

 

「・・・・・いずれするぞ」

 

「ははは、その時が楽しみだなぁ」

 

どちらも相手の魔法には興味があった。リヴェリアは異世界の魔法とその種類と威力はどのぐらいなのか、一誠は最強魔導師の魔法とその威力を知りたかった。互いの魔法はどちらが上なのか興味無くはなかった故に珍しく好戦的になるリヴェリアに内心そんな一面もあるのだなと不思議さを覚えたフィンとガレス。

 

「そう言えばイッセーよ。主神様に頼んで【ステイタス】の更新をしたのでは?結果はどうなった?」

 

「・・・・・相変わらず各アビリティの数値は0のままだよ。だけど、主神の様子がちょっとおかしかったな。信じられないものを見る目で大きく目が見開いていたぞ」

 

「ふむ・・・?イッセーに新たなスキルでも発現したか?」

 

「さあ、確認しようにも直ぐに【ステイタス】は施錠(ロック)されてみることができなかった」

 

戻ってきたら料理を盾に問いだたしてやる。そう問い詰めることを付け加えたところで、自分の存在を伝える鎧をペチペチ小さな手で叩く幼女が口を開く。

 

「今日の夕飯、なに?」

 

「もう夕飯のこと考えているのか。この食いしん坊め」

 

「・・・・・食いしん坊じゃない」

 

時刻は昼前、しかもまだ昼食を食べても無いのに数時間後の食事を気にする彼女は、からかいの言葉で指摘され羞恥で頬を朱色に染めた。リヴェリア達も微笑ましげに口元を緩ました。好い傾向だ、強さを求めることは駄目ではないが人間らしい生き方を忘れては駄目だと気にしていたものの、一つの出会いで彼女の在り方が好ましい方向に変わって行く。【人形】と揶揄されていた時と比べると感情が表に現れている。

 

「イッセー、儂はカツ丼じゃ」

 

「私はピザを頼む」

 

「手前はカレーだ!」

 

「ンー、悩むねぇ・・・・・」

 

好き勝手に今夜の献立を決めつけるガレス達に「俺は料理人じゃない」と突っ込みを入れるも下から好みの料理を所望する声が飛んできた。

 

「コロッケ、食べたい」

 

「オムライス、オムライスが良い」

 

「ジーザス、お前等もかっ」

 

―――結局、事前にお願いされていた料理を含めてブツブツと愚痴を零しながら別々に指名された料理を全部作ってやって、フィン達を苦笑いさせたその日の夕食。牛肉を使ったハンバーグという肉料理をたかりに来た神々とその眷族達に振る舞って高い太鼓判を打たせた。

 

「このデミグラスソースとかいうもの、葡萄酒(ワイン)を使ってるかしら?」

 

「舌が肥えているな。その通りだ、他の肉料理にもソースとして葡萄酒(ワイン)を使っているぐらいは知ってるだろ?」

 

「・・・・・そうなの?」

 

オイッ、と本当に知らないのか首を傾げる美神に突っ込みを心の中でしてしまう一誠。ステーキだってソースに使っている筈だと異世界の料理知識で培った情報から教授するが、こうも自分の料理だけが凄いと言われるとこの世界の調理技術はそこまで遅れているのかと疑ってしまいそうになる。

 

「うーん、絶対店を構えたらオラリオで一番美味い飯屋になるなぁ~。イッセー君、どうだい。【ヘルメス・ファミリア】が出資する店で構えたくないかい?」

 

「それ、繁盛した分の利益はヘルメスんとこに流れるだろ絶対。俺が【ヘルメス・ファミリア】の団員になったら尚更だよな?」

 

そうなった未来を思い浮かべ「あざとい」と一誠にそう言わしめる優男神の腹黒さの企みはあっさり看破されても当の男神は朗らかな笑みで「そんなことしないよ~。あ、ハンバーグとライスのお代りいいかな?」と軽くはぐらかす。

 

「せやなぁ~ファイたんの眷族になってからイッセー、自分の料理を食べにくる神や子供も多くなっとるで」

 

「―――それはどこかの女神がその原因の一端であることを気付かせてやる必要があるらしいな」

 

銀色のフォークをグニャリと折り、出す声に威圧が籠って朱髪朱目の女神を睨みつける少年の視界で一柱の女神は、蒼白になっていた顔のままだらだらとすごい勢いで汗を流している。

 

「イッセー怒らないの。落ち着きなさい」

 

「俺は冷静なんだが、原因のもう一因の主神?」

 

お前も他人事じゃないんだぞ、と右眼で睥睨されて少年の隣に座っていた紅髪紅眼の鍛冶神は、バツ悪そうに左眼を彼から静かに反らす。「まったく」と言い返すこともできない女神等に呆れ、折ったフォークを何事もなかったように戻して豪快にハンバーグを齧る様に食べ、ご飯も口の中に放り込む。一瞬不穏な空気が醸し出していたが直ぐに消え去り、他の面々も程なくして自分のペースで食事を再開する最中、質問された事を忘れず口を開きだす。

 

「お代りは用意してあるから、セルフサービスで自分でしてくれ。ハンバーグは一つな」

 

「ああ、分かったよ。用意周到だねイッセー君」

 

キッチンの方へフォークで指す。お代りの了承を得た神が現れると、自分もと皿を持って立ち上がりお代りをしに行く者が続出する。

 

「そう言えば、皆知ってたかい?」

 

「何をだヘルメス」

 

「なに、他愛のないことだけど」と一度皆に問い掛けたヘルメスは濡羽色の髪に緋眼のエルフの少女と団長に挟まれる位置で座っているディオニュソスから問われ、席に座りながら世間話をするように口する。

 

「イシュタルのところのアマゾネスが男を囲って街中を歩いているところを見掛けたのさ」

 

「なんや、その程度のことなら別にどうでもええ話や」

 

「いやいや、そこが本題じゃないから聞いてくれよ。その子供さ、突然武装したあの第一級冒険者のアマゾネスの子供に襲われたんだよ街中で」

 

酒の肴にすらならんとどうでもよさげに持参した酒を飲むロキに苦笑いで話しの本題を切り出した。アマゾネスの第一級冒険者、それだけで一誠の全身が震えた。アイズもアリサもとあるアマゾネスだと思いだして眼を揺らす。

 

「・・・・・それがなんだと?」

 

「いやほら、あの子供って二つ名も相まって同じ身内でも襲いかかりそうな感じなのに、本気で襲いかかってびっくりしたんだよ。まぁ、他派閥に干渉したら面倒事が起こるだろうから遠目で見守っていたから驚くべき光景を見ちゃったんだ―――その襲われた子供が、第一級冒険者のアマゾネスを無傷で倒したのさ」

 

ヘルメスから普通に信じられない世間話を聞かされ場は一瞬静まり返った。その瞬間、一誠を見つめる神と眷族がいた。

 

「フリュネ・ジャミールといったかそのアマゾネスの子供は。自分、その子供が誰に倒されたか覚えにあるんか?」

 

「いや、完全に無名の者だ。特徴を覚えてギルドにも調べたんだが、【イシュタル・ファミリア】どころかほかの【ファミリア】にすら属していない無所属(フリー)の子供であることぐらいしかわからなかったよ」

 

「・・・・・いやいや、おかしいやろ。ヘルメス、旅に出過ぎて幻を見たとちゃうん?『下級冒険者』ならともかく、無名の無所属(フリー)の子供が冒険者の位の中で一番高い第一級の子供を倒すなんて無理な話や。それこそ、うちら神が神の力(アルカナム)を行使して肉体を改造しない限り絶対に有り得へんぞ」

 

ロキは真正面から否定した。しかし、それが本当だとアスフィもこの目でヘルメスの隣で見ていたと証拠を告げられて、事実を突き付けられた神々。

 

「ヘルメス、あのおっかないアマゾネスはどうやって倒されたんだ?」

 

「おっ、イッセー君も興味深々なんだね?とても不思議な攻撃だったよ。何もないところから多種多様な武器が出て来て矢のように鋭く、そして速く放ってフリュネ・ジャミールの体を刺したんだ。オレから見てもヘファイストスが驚くような綺麗な武器だったよ」

 

「何もないところから武器を放つ?」

 

「私でも驚く武器を持つ子供なんて、聞いたことないわね」

 

ヘファイストスもヘルメスから聞かされただけでは何とも言えない面持ちで、フリュネを倒した謎の男に疑問を抱く。冒険者登録されていなければ非戦闘員として【ファミリア】にいるのであろうが、新たな謎の人物の登場に一誠はアマテラスと共に来た転生者に首だけ動かして促した。二人は適当な理由を述べてリビングキッチンから出て、扉から少し離れた場所の通路で口を開く。

 

「冒険者でもない奴が冒険者の中で最高クラスの輩を倒せるとは思えないな。しかも武器を何もない空間から放つって魔法も尚更だ」

 

「つまり、俺みたいに神に転生させられた奴が貰った特典でやったと?」

 

「俺達とキリト達みたいに別の世界から来た奴がいる可能性はあった。だからオラリオにいても不思議じゃない。だが、問題はお前が都を乗っ取ろうとしたように騒動と異変を発生させることだ」

 

身内同士で起こす騒動なら身内で片づければ問題ない。そう思う一誠であるが。

 

「お前が死んだ直後のように、何の力も無い分不相応な力を得た一般の人間は力に驕って万能感から傍若無人な言動をする可能性は絶対にはないと断言できない」

 

「・・・・・自分にとってイメージした最強の力を振るえる感覚と喜びは、確かに何とも言えない心地よさだったな」

 

この世界に来て特典の力を初めて振るった時の記憶を思い出した男が漏らした言葉を、否定する風に首を横に振るう一誠。

 

「俺はそれを味わう暇も無く子供の頃から修行していたがな。だからこそ、俺は不愉快に思っている」

 

―――努力もせずあっさり強くなって、最強気取りをする連中を見ると虫唾が走る。

 

「・・・・・耳が痛い話だな」

 

「当然だろう。いきなり最強になられちゃ、血と汗と涙、時間と労力、経験や体験を培って鍛錬をし続けた俺達に、無駄なことをしているんだと侮辱するのと同じ話だ。だからこそ、そんな力で別の世界から来た部外者の俺らが有名になろうが金持ちになろうが英雄になろうが絶対にしちゃいけないことがあるんだよ。これは正義感でも義務感でもない。欲望の赴くままに生きる獣がいれば、俺はそいつを―――俺の大切な家族にまで手を出すなら殺すつもりだ」

 

背筋が凍る冷たさを覚える。己より年下の少年から殺気と殺意が左眼から滲み出て、感じるプレッシャーで鳥肌が立つ。別の世界から自分と同じく来た少年が元の世界でどんな生活をしていたのか見当も付かない。

 

「ところで話が変わるけどさ。お前、気をコントロールできるようだけど他になにかできるわけ?」

 

「ああ、特典でできるように願ってある。例えば分身を作ったり、遠くの場所へ瞬間移動したりとか色々な」

 

「なんだよ。何であの時色んな力を使わなかったんだよ」

 

全力で戦っていれば戦況はもしかしたら変わっていたかもしれないのにと、この世界で久しぶりに体術や格闘術を主体に戦う相手は技を出し切らずにいたことに不満を持った。愚痴を零す様に拗ねた風に言った一誠に男は。

 

「いや、使う必要もないほど弱い相手ばっかだったし・・・・・待て、この肩に置く手はなんだ?何故そんなスマイル顔なんだ?」

 

「―――ほうほう、使う必要もないほど弱い相手とは、俺もその類だったから使わなかったとは。これはアレだな。俺の強さの真髄をお前の骨の髄まで叩き込む必要があるようだ」

 

「ま、待てッ。お前は俺より強いということは体で覚えたからだだだだっ!?肩に力を入れるな!って、どこに連れていくっ!引っ張るなっ、俺をゴミの様に掴んだまま引っ張るなぁあああああああああっ!」

 

廊下から聞こえる男の悲鳴に、一応気になったが、気にするほどのことでもないだろうとあっさり意識を反らして夕食に集中する神々であった。その後、片方の肌が艶々していて、片方の肌がゲッソリと疲れ切った表情で戻ってきた二人。

 

「・・・・・イッセー、何してたの二人で」

 

「楽しいこと。ああ、ヘルメス。さっきの話の男の特徴、俺達にも教えてくれ。興味湧いた」

 

「もしかしてイッセー君、そっちの気があるんじゃ・・・・・」

 

「―――アスフィ、今度から一人で来てくれるか?ヘルメスなんて神は出入り禁止にするから」

 

「ごめんなさいっ!(ジャンピング土下座)」

 

「「「何て凄い土下座を・・・・・っ(極東三神)」」」

 

出入り禁止されては異世界の料理を食べられなくなる。その昔、とある武神が謝っていた姿勢(ポーズ)を真似して見せたその行為は、極東の三大派閥の主神を慄かせたのだった。だが、一誠は呆れた。

 

「そこ、反応するところか?」

 

 

褐色肌の足が大股で通路を歩くその歩調は苛立っていることが表していた。その足に装着しているのは金銀を使った装飾品の足輪の他に、腕輪、胸飾り、耳飾り、(サークル)。衣料と呼べるものは腰帯と腰布、憤りで鋭く動かす足に呼応して腕を振るう際揺れる豊満な乳房を隠す僅かな帯しかない。瑞々しい姿態にくびれた腰を始め、男を誘惑する褐色の肌を惜しみなく晒す姿は、国を滅ぼすとされる傾国の美女―――それをも上回る美貌を誇っている女神の今の顔は怒りで歪んでいた。時折擦れ違う眷族を怯えさせ、目的の最上階の部屋に訪れると扉を壊さん勢いで開け放って―――一糸纏わず生まれた格好の愛らしい少女から肉感的な女性達を囲って肉欲を貪っている真っ最中の三人の男へ張り叫んだ。

 

「おい!フリュネが使い物にならなくなる寸前だったぞ!どうしてあいつに攻撃をした!?」

 

「・・・・・ああ?んなもん、決まってるだろ」

 

激しく水音を立たせた後、ヒューマンの女性が甲高い色が籠った嬌声を上げてぐったりと倒れ込んだ。全身で息をしてこれ以上は堪え切れないと気配を醸し出す女性の気持ちなど知ったるかの勢いで再度激しい行為に及んだ。

 

「この【ファミリア】に不細工はいらねぇんだ。俺達を満足させる肉欲をそそらせてくれる女だけいればそれでいいんだ」

 

「ふざけるなっ、あいつを倒せばお前達の存在だって知られるのだぞ。もしもあの女神の耳に入ったら―――」

 

「うっせねぇな。それ以上喚けばお前を先に殺すぞイシュタル」

 

金色に波紋が浮かぶ空間から神秘的な剣が顔を出して、女神の首筋に突き付けた。

 

「【フレイヤ・ファミリア】の打倒に力を貸す代わり、俺の要求を全て呑み全ての行動に目を瞑る契約で眷族になってやったんだ」

 

「大体、俺達の様な人間が三人も集まれば、オラリオ最強なのに何時まで手をこまねいているんだよ?さっさとあの最強派閥と戦おうぜ」

 

「そしたら俺はまっさきにフレイヤを襲ってやるぜ?イシュタルより良い喘ぎ声で啼いてくれそうだ」

 

「あ、ずりぃ俺が先だぞ!」「何言ってんだ。同時に相手すれば同じだろ。始めは俺からだけどな」「「オイ」」等と好き勝手に言いながら女達の体を貪る行為を一切やめようとしない。相手が壊れようとお構いなしに己の性欲を満たす使い勝手の良い捌け口の道具として楽しみながらこんなことも言う。

 

「そういや、リヴェリアってエルフもいるんだっけ?そろそろこの女共の相手には飽きてきたぞ」

 

「ああ、絶世の美女だ。まだ小さいけどアイズって金髪の幼女も成長すれば美少女になるぜ」

 

「そいつはいい!小さい体から調教しまくって俺達の肉奴隷(ペット)にしてやろう!」

 

「で、他にはどんな女や女神がいる?」「ああ、それはだな。酒場にも~」「ははっ、犯し甲斐が漲ってきたぜ!」

 

主神である自分の存在を完全に無視して眷族達を犯す三人の男達に奥歯を噛み締める。当初の出会いの時、フリュネを一対一(サシ)で戦わせ、Lv.5の団長を軽く倒しのけたその実力を目を付けたのが間違いだったのか。【ファミリア】の非戦闘員扱いとしてギルドにすら秘匿し、準備が整うまで好き勝手にさせて目も瞑っていたが、あまりにも傍若無人な振る舞いをし続けられて銀髪の女神と同じ美の神、イシュタルは堪忍袋の緒が切れかかっている。

 

「(こいつら・・・・・ッ!)」

 

眷族に入れたのが間違いだったか、出会った時点でこんなことになると知っていれば・・・・・いや、どれだけ考え否定や拒絶しようとこの三人は【イシュタル・ファミリア】に居座る気満々でいた。強い雄に惹かれやすい眷族達も無尽蔵の体力と精力の前では忠実な雌になり下がるばかりだ。それでも極一部、彼らの言動に忌避して肌を重ねない眷族がいることは救いか。元は己の部屋だった場所を自分の部屋のように占領して毎日朝から晩まで飽き足らず眷族を犯し続ける三人から踵返して最上階の部屋を出た。

 

「(いいだろう。だったら今直ぐにでもフレイヤに抗争を仕掛けてやる。今まで楽しんだ分をキッチリと払いてもらうぞガキ共ッ)」

 

 

†―――†―――

 

 

秋季は終わりを迎える直前。【ヘルメス・ファミリア】団長アスフィ・アル・アンドロメダはお暇を貰って腕輪の転移式魔法で『幽玄の白天城』の扉の前に一っ飛びを果たす。彼女の背中には道具(アイテム)を製作するための多種多彩で大量の材料が詰まったバックパックを背負っている。主神ヘルメスの宝物として重宝している空飛ぶ魔法の絨毯やこの相手と通信、指定場所へ歩くことも無く魔法による瞬間移動(テレポート)で向かうことができる腕輪は、『神秘』の発展アビリティを持ってるアスフィでも製作することはできない優れ物であることを認めている。彼の者の技術を学び、更なる可能性を見出そうと堅牢そうな扉に来訪者が来た合図で中にいるだろう者達を呼んだ。

 

 

「すまないな。イッセーは今手が離せないと言われて迎えに行けなくて」

 

「い、いえ。こちらも貴女に出迎えさせてしまい申し訳ない気持ちです」

 

「そう畏まるな。同じ冒険者だ」

 

少女を出迎えた都市最強魔導師のハイエルフの女性。最強派閥の副団長自ら城の中に招き入れられて心臓が飛び出しそうになったほど驚いた。大きな城の中は静まり返って無人の家なのではないかと思いながら進んで作業場に案内してもらう最中。

 

「イッセーは何をしているのですか?」

 

「極東で入手した大麦と言う穀物で作る酒の製造に没頭中だ」

 

「お、お酒まで作ることができるのですか?」

 

「さぁな。ここしばらくダンジョンに行かないがアイズの相手をして籠っている事が多い。四苦八苦しているのだろう。素人がしたこともない酒造など簡単にできる筈も無いからな」

 

玄関ホールからまっすぐ歩いて直ぐアスフィの手荷物を作業部屋の前に置き、一誠がいる同じ階の部屋へと赴く。

 

「ここだ」

 

「・・・・・前来た時は扉なんてなかった筈ですが」

 

「この城はイッセーが創った。新たに増設することなど訳も無いのだろうさ」

 

作業部屋から数M離れた壁に見覚えのない両開きの扉にこの城の構造は一体どうなっているのだろうと疑心を抱いて、中に入ればアスフィの碧眼は驚愕で見開いた。

 

扉の向こうは工場と呼んでも過言ではない、広大な空間に身の丈を超える何らかの装置や管が壁や天井付近、床にまで埋まっていると思わせる巨大な釜が設置されている。下に降りる階段があり自分達は高い位置から見下ろせる所に立っていると知った後、生まれてからもオラリオに来てからもこれほどの複雑で精密的な言葉では言い表せれない何かを独りで作ったのか、どうしてここまで作れるのか心底愕然と衝撃を受けた少女は、碧眼をリヴェリアに言いたげに視線を送る。隣のハイエルフはその視線に込められた意図を察して口を開いた。

 

「私も初めて見た時は驚かされた。あいつのスキルを考慮してもこれは逸脱していると思う」

 

「スキル・・・・・?」

 

「一時的に『神秘』の発展アビリティを発現できるスキルだ。ここ最近そういうスキルを得たらしくてな。それを知ってこの工場を作ったのさイッセーは」

 

自分と同じ『神秘』のアビリティを発現していた。つまり同じ土俵に立ったと思えばあっさり抜かれていたことになる。これほど大規模な工場をたった一人で・・・・・。

 

「はは、競い合う前に負けた気分です。凄過ぎですイッセーは」

 

失笑するアスフィに同意と小さく苦笑を浮かべるリヴェリアの耳に突如聞こえてくる会話。

 

「―――も、もう一杯飲ませてくれイッセーッ!」

 

「―――駄目だ。残りはアマテラス達に飲んでもらう」

 

何やら騒々しくなった工場の向こうからチラリと真紅と黒、金と銀が見え隠れしつつ話声がどんどん大きく近づいてくる。そして、上階にいる二人の目の前に件の少年と最上級鍛冶師(マスター・スミス)の少女に金髪金眼と銀髪青眼の剣士の幼女がやってきた。少年の肩に何やら小樽を担いでいて、その樽を物欲しそうに紅隻眼の視線を熱く送っている少女。

 

「ん?あっ、いらっしゃい。悪かったなリリア、代わりに出迎えさせちゃって」

 

「それはいいがイッセー。この場に連れてきたが構わなかったか」

 

「構わない。見られたって直ぐに真似して創れるようなものじゃない。壊されたら堪ったもんじゃないがな」

 

「あの、その樽は一体・・・・・?」

 

アスフィの問いに「酒だ」と短く答えた。

 

「聞いているかどうか知らないけど、大麦と言う穀物を原料に使って完成させた。喉越しが良くてキレのある味かどうか分からないから・・・・・」

 

「イッセー・・・・・もう一杯だけ飲ませてくれぇ」

 

「初めて完成させた酒を味見役として椿に飲んでもらったら、気に入ってしまった」

 

「飲ませてやれ。目も当てられん」

 

少年の胴体に手足を巻き付け、しがみついて未練がましく強請る鍛冶師(スミス)に最強の魔導士も呆れたのだが。それ以上に一誠の方が呆れ顔で零した。

 

「十杯分も飲ませたんだぞこれでも」

 

「・・・・・この場にロキとガレスもいないだけ幸運か」

 

酒豪の女神やドワーフも加われば完成した酒がその日の内に飲み干されていただろう。比喩抜きで現実的にだ。だからリヴェリアの零した言葉には深く同意と力強く頷く一誠もその時の光景を瞼の裏に浮かべたくもなかった。

 

「最後の一杯でもいい、飲ませてやれ。後でヘソを曲げられては神ヘファイストスも困るだろう」

 

「・・・・・椿、最後だぞ」

 

「うむっ!」

 

どこからともなく取り出す向こうまで透き通って見える筒に取っ手をつけただけの、飾り気のない硝子の杯を意気揚々と受け取る椿は、樽の蓋を開けた瞬間零れ出る琥珀色の酒を零さないように空の杯に注ぎ込む。硝子の杯の縁まで入れ終えると白い雲のような泡がぷちぷちと音を立てるそれごと、彼女は思いっきりゴクゴクと音を立たせて飲み始める。

 

「―――プハァッ!美味いっ!ドワーフの火酒や他の酒とは異なってるわこれはっ!冷やされた酒はこうも美味いなど手前は知らんかった!」

 

たった一回で上唇に泡を付けたまま飲み干しては、心から美味しそうに眼を細めて感想を述べる。彼女をそこまで言わしめる酒は上質であることを示すそれは異世界の酒なのだと後に知るリヴェリアとアイズ。

 

「さて、アイズとアリサ。お前は勉強だ。椿、もう満足したのだからイッセーをこれ以上困らせるな。二度と酒を飲ませてくれなくなるぞ」

 

場の空気を読み一誠とアスフィの時間を邪魔させない配慮で指示をする。それを察して感謝の念を抱きつつ、一誠はアスフィに付き合ってもらい、先に用件を済ませたいからと東部や北部へ向かった。そして四人の主神と出会い、転生者の男に約束通り最初に穀物で作った新たな酒、ビール(ラガー)を飲ませたことで。

 

「くぅっ・・・・・!久々のビールがこんなに凄く美味しく感じる・・・・・っ!」

 

「清酒と異なる方法で作るなんて凄い。もっと大麦を寄付するから私達の為に作ってくれない?」

 

「イッセーちゃん、大量の大麦が必要じゃない?【ファミリア】からビールってお酒をたくさん作れるだけの大麦を用意するから受け取って?」

 

膨大な量の大麦を得る予期もしなかった結果に、ビールの貯蔵槽を増やさなければいけなくなったのだった。

 

 

「凄い評判でしたね、神々から直接太鼓判を打たれた酒は。初めて完成した物だと言うのに」

 

「これでもかなり苦労したほうだからな。だけど、俺なんかよりソーマって神に造って貰った方がもっと美味しくなる筈なんだけどなぁ」

 

「神ソーマ、ですか・・・・・あまり知れ渡ってない名の神ですね。オラリオに永住していますが」

 

話をしながら一誠は少女と横長のテーブルを挟んで道具(アイテム)作りに没頭していた。『幽玄の白天城』に戻り、作業部屋で彼女と共に互いの道具(アイテム)を作る作業を見せ合いながら手を動かし続ける。

 

「(彼が素材に使って創っているのは・・・・・・カード?)」

 

手の平に収まる賭け事(ギャンブル)で良く使用される遊具の一つに意匠を凝らしている。幾何学的な六芒星の魔法円(マジックサークル)を札に描く時間は3分も費やし、それを描き続けていく目の前の少年に思わず声を掛けてしまった。

 

「そのカードは一体何に使うんですか」

 

「主に使うとすれば収納だ」

 

「収納?」

 

カードと収納の関係が上手く結べない。あんな小さなカードに収納なんて、と訝しがるアスフィの目の前でその証明をしてやろうと一誠の仕草に注目する。この部屋に置いてあった万能薬(エリクサー)をカードの上に置いた。その後は彼の口から「アベアット」と紡ぐとエリクサーが光に包まれカードの絵柄になってしまった。

 

「アデアット」

 

似た言葉を直ぐに発するとカードから発する光からエリクサーが出てきた。アスフィは大いに不思議がって「ど、どうなって・・・・・」と碧眼の瞳を丸くする。

 

「見たとおり、このカードで収納するのさ。収納された物は半永久的に朽ちることも無く保存ができる」

 

「それは、魔力の有無も関係なく?」

 

「ああ、この魔方陣に魔力を込めてあるから子供でも扱える。収納できるのは精々一つだけなのと、このカードに触れた物だけだったり、あと収納できないのは生きた生物や人間だ。使い勝手は微妙なところだろうけど、これでもっと手軽に荷物を運べれる様になる」

 

そのカードを束になるまで作り続ける気でいる一誠はアスフィの手元を見つめる。興味深々の眼差しを送って見つめる。

 

「アスフィのは何を作ってるんだ?」

 

「ええ、これは・・・・・」

 

 

同時刻―――南のメインストリート界隈、繁華街のほぼ中心にその建物は建っている。神殿にも似た荘厳な造りの巨大な屋敷。盛り場である繁華街の中にあって庭を始めとした広い敷地と高い四壁を有するその光景は巨富と権力、そして栄誉の表れでもあった。南と南東の大通りに挟まれた第五区画、年北部に居を構える【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)、『黄昏の館』と対をなす位置にあるその館の名は『戦いの野(フォールクヴァング)』。都市最大派閥の双頭である【フレイヤ・ファミリア】、その本拠(ホーム)が―――白昼堂々と燃え上がって、何者かによって襲撃されている真っ最中だった。主神と団長不在中でも第一級冒険者は片手で数え切れない程いる他、銀髪の美神に見初められた精鋭達も【ロキ・ファミリア】に負けない程の人数がいる。が、しかし。たったの三人によって第一級冒険者を除いて殆ど全滅状態となっていた。燃焼する本拠(ホーム)に雪崩れ込んでくるは褐色肌のアマゾネス達。必死に抵抗する僅かな美神の眷族等。

 

「貴様等ッ・・・・・!」

 

「我等【フレイヤ・ファミリア】に抗争仕掛けてタダで済むと思うなよっ」

 

四つ子の小人族(パルゥム)、エルフ、ダークエルフ、猫人(キャットピープル)の第一級冒険者。彼らだけが、自分達だけが【フレイヤ・ファミリア】の最後の要と眼前の敵対する【ファミリア】の三人の団員に飛び掛かった。対して嘲笑う口端を釣り上げて、攻撃の構えをしたその数十秒後・・・・・。

 

「はっ、あっけなっ!これが最強派閥の冒険者の実力かよ!」

 

「俺達が強過ぎただけだって。それよりフレイヤは本拠にいないようだぜ?」

 

「あのバカでかい塔にいるんだよ。目的も達成したことだし、俺達もこの街の目ぼしい女共を捕まえに行かね?」

 

圧倒的な実力で無様に地面へ血塗れや血みどろの最強の冒険者を平伏させた無名の相手達は、崩れ落ちる最大派閥の本拠(ホーム)だった建物を後にして欲望の赴くままの獣が動き出す。

 

 

『と、いうことだ。闇派閥(イルヴィス)か、彼の【ファミリア】と敵対している【ファミリア】なのかもしれない。まだ【フレイヤ・ファミリア】の情報の詳細は把握してないから収集している最中だが、本拠(ホーム)が炎上しているからただ事ではないと推測している。未だに信じられないけれどね』

 

「・・・・・まあ、フレイヤの傍にはオッタルがいるんだし問題はないと思うがそれでも警戒するんだろ?リリア達は?」

 

『ああ、緊急事態だからこっちに来てもらってる。アイズとアリサもね。一応同じ派閥の団員としてこういう状況に関してこちらに控えてもらわないとダメだからさ』

 

「そっか、一つ警告する。一応気をつけろよ」

 

『ふふ、イッセーに心配をしてもらえるなんて明日は槍の雨が降るかな?』

 

そう言われた後、フィンに通信を切られる。話しが終えるまで待っていたアスフィは申し訳なさそうに口を開いた。

 

「イッセー、今の話を聞いてホームに戻らないとダメかもしれません」

 

「ん、そうだな。俺もそうした方がいいと思う。相手が闇派閥(イルヴィス)なら【フレイヤ・ファミリア】も問題ないだろうが、まさかホームを全焼させられるとはな」

 

「ええ、彼の美神に喧嘩を売る様な【ファミリア】は殆どいませんから私も驚きです。・・・・・では」

 

 

 

街中の騒乱を聞き付け駆けつける冒険者達。この騒ぎに乗じて闇派閥(イルヴィス)が強襲してくる可能性を考慮してギルドと連携する【ファミリア】は出動した。だが・・・・・肝心の闇派閥(イルヴィス)の姿が見当たらない。

 

「どういうこと?連中の仕業じゃないの?」

 

「わかりません。ですが、こうも立て続け騒ぎが起きているのに姿を現さないのは不自然です」

 

「とにかく火を消そうっ」

 

【アストレア・ファミリア】も街の治安を守るために走った。そして、正義と秩序を司る神の眷族の前に不吉な影が現れた。

 

「おー、ここにもいたぜ」

 

「だな、釣り甲斐があるってもんだ」

 

「逃がさないようにしようぜ。逃げた女は犯し甲斐があるんだからよ」

 

ゲスな笑みを浮かべ、近づく三人の少年。彼女等は直ぐにこの騒ぎの元凶だと察して臨戦態勢の構えに入った―――。

 

 

闇派閥(イルヴィス)かなキリト君」

 

「多分、あの派閥以外こんなことしないだろう」

 

逆に出しゃばらないよう行動を控えている【アルテミス・ファミリア】は街の異変に気付き、成り行きを見守る姿勢でいる。であるが、それを良しとしない異世界から来たヒーローの異邦人達が抗議をする。

 

「なぁ!街で何か起きているなら俺達も助けに行こうぜ!」

 

「ダメだ。勝手なことをすれば他の【ファミリア】の邪魔になる。それに俺達はただの冒険者じゃないんだ。注目を浴びるような真似はできれば避けたい」

 

「自分の身が可愛いから助けにも行きたくもねぇってか」

 

「お前達のために言っている。それにまだイッセーから姿をごまかす道具だって貰っていない奴まで人がいる前に出てみろ。更に混乱させるだけだ」

 

「では、団長の君のような姿をしている我々なら表に出ても構わないのだね?」

 

「いい意味でも悪い意味でも注目されますよ。駆け出しの冒険者に見合わない力を発揮したら・・・ってお前、勝手に行くな爆豪!」

 

「うるせぇ!誰がてめぇの指示に従うかってんだ!」

 

「悪いけど、俺達はヒーローを目指しているんだ。異世界だろうと危険な目に遭っている人がいるなら助けに行かなくちゃヒーローになれないんだ」

 

「おうよ!」

 

キリトの説得も虚しく、口の悪い異邦人を皮きりに異形の姿のままの異邦人達までホームを後に騒乱の中心の街へ駆けて行ってしまった。

 

「・・・・・ダメか」

 

「どうしよう」

 

「どうするも何も・・・・・俺達も行くしかないだろ。連れ戻すんじゃなくて加勢にな」

 

「・・・・・うん!」

 

とある酒場の中では、【アストレア・ファミリア】と一戦交え終えた三人の少年が押し掛け、数人の女性の店員を捕縛した後に怒りで殴り掛る恰幅の良いドワーフの女性を圧倒した。

 

「あなた達、絶対に後悔しますよ・・・・・っ」

 

「それどころか俺達はお前達に絶頂という快楽を教え込んでやるぜ」

 

店から出てすぐ手の平から火の球を発現して店員達の目の前で、店を豪華の炎に呑み込ませた。中にまだドワーフの女性がいるにも拘わらずだ。その行為に目を見開く店員の口から悲鳴の叫びが三人と共に転移式魔方陣で消え失せた。そして次に三人が現れたのは【ロキ・ファミリア】のホーム。丁度フィンが一誠との通話を切った直後であった。まず行動したのがホームの破壊。これで冒険者達をあぶり出した矢先から攻撃を仕掛け、目的の人物に対しては動きを封じる以外は行動不能に陥れる。そうしていると直ぐに小人族(パルゥム)の勇者が槍を本気で振るってきた。

 

「おっと!」

 

が、狙った対象には自動(オート)だったのか見えない壁に阻まれて槍の穂先が貫くこともできず防がれた。これが一誠が言っていた。最強の能力なのだろうか。距離を置いてガレスとリヴェリア、アイズとアリサを筆頭に集まった団員達の前に立つ。

 

「ははは、効かねぇなチビの攻撃なんざ」

 

「さて、それはどうだろうね。それと教えてもらえるかな?どうして僕等に攻撃を仕掛けてきたのかを」

 

「ああ~?そんなもん、決まってるだろ?―――目ぼしい女共を捕まえて性奴隷にするためだ」

 

邪な目的を告げた少年に対してフィンから温情が消え失せた。仲間を奪い蔑にする敵に容赦する以前に二つ名に懸けて生死問わず倒さなければならないと判断した。

 

「男共には用はない。女だけよこせ」

 

「断るよ。僕の大切な仲間と家族に手出しはさせない」

 

「雑魚共が調子乗ると恥ずかしい目にあうぜ?」

 

「試すかい。僕等が雑魚がどうか」

 

「戦いは面倒だから遠慮するぜ。もうこっちの用件は終わったからな」

 

不敵な笑みを浮かべる男を見つめるフィンの耳に女性団員達の悲鳴が聞こえた。振り返れば虚空に生じる穴から出ている鎖に身体を縛られ、彼女達は穴の中に引きずり込まれ消えていった。

 

「リヴェリア、アイズ、アリサ!」

 

彼女達まで穴の中へ消えてゆき、女性だけ狙った犯行から救おうと行動に移ったが一歩遅かった。残されたフィン達男性冒険者は何時の間にか空高く浮いている三人の男達に対する敵意と怒りで得物を握る手に力を籠める。

 

「そんじゃ、女達は責任を持って可愛がってやるよ」

 

「じゃあな、無能な勇者さんよ」

 

「待てっ!」

 

「―――と、その前に邪魔な連中はこうだ」

 

双眸を妖しく煌めかせた少年。その煌めく光を見たフィン達は次に絶句する。手足が、身体が無機質な石に覆われて行く。

 

「石化じゃと!?ぐっ・・・・・!」

 

「ぎゃははっ!第一級冒険者も案外チョロイな!次オッタルを倒したら俺達がオラリオどころか世界最強の人間になるぜ!」

 

見下して嘲笑う男の言葉に次々と石像と化する団員達を尻目に、首まで進む石化の呪いに対してフィンは言い切った。

 

「君達は気付いてないようだね。僕達よりも強い冒険者は何もオッタルだけじゃないよ」

 

「お主ら・・・・・踏んではならぬ竜の尾を踏んで逆鱗に触れたぞい。この後のお主らの事を思うと不憫でならんわ」

 

ニッと大胆不敵な笑みを浮かべた状態でフィンとガレスの石像と化した。結局こいつ等は何が言いたかった?顔を見合わせる三人は肩を竦めて次の標的へと向かった―――のを怒りと悔恨で睨みつける糸目で朱色の神の女神が腕輪を操作して・・・・・龍に通信を入れた。

 

「イッセー、お願いがあるんや」

 

†―――†―――†

 

「・・・・・マジかよお前等」

 

コンコン、と軽く石像と化した彼等を小突く。反応は当然のごとく無い。どうしてこうなっているのか、連絡をしたロキから説明を受け直ぐ来たらこの状況。この場にいなかったことに若干後悔したが後の祭りである。フィン達に対する罪悪感の念を向けた一誠に石化を免れた団員達を背後に元主神が乞うた。

 

「イッセー・・・・・フィン達を元に戻せれん・・・・・?」

 

珍しく弱弱しい声音で最後の一縷を藁に縋る気持ちのロキはそう訊いた。真剣な眼差しでフィン達の状態をくまなく調べて訊ねた。

 

「ロキから見てフィン達の石化はどんな感じでなった?」

 

「どこの子供かは知らんけど、こう目からピカァッーって光ったのを見た途端に石になってしもうたんや」

 

「目から光・・・・・邪眼の類か」

 

「それって魔法なん?」

 

訊いたことが無い単語に問うロキに肯定と頷きながら説明する、

 

「邪眼ってのは対象を石にするモンスターの目玉や能力を差して言う。まあ、ぶっちゃけ言えば魔法や異能、呪いの類だな」

 

「それで、石になったフィン達は?まだうちの刻んだ『恩恵』が消えとらんから不思議でしゃあないんや」

 

「なら、文字通り生きているぞ。石化は対象の動きを封じるか封印する呪いのようなものでな。その呪いを解けば元通りになる」

 

右手に黒と紫が入り乱れた、血のように真っ赤な宝玉がある籠手を魔力で具現化して「久々に使うな」と思いつつ―――フィンの石像に触れた。

 

「こんな風にな」

 

籠手を装着した手で触れてから一拍遅れて、ビシッと石に亀裂が入った。その個所を中心に石が蜘蛛の巣の如く罅割れて全身にまで行きわたると呪いの石化から解き放たれたフィンが生身の姿で立ち尽くす。

 

「フ、フィ~ンッ!」

 

「・・・・・ロキ?いや、僕は石化にされていたんじゃ」

 

「全く、言った傍からやられるなんて阿呆か」

 

「イッセー?そうか、君が助けてくれたんだね」

 

ガレスの石化の呪いも解除してフィン同様に救いだす一誠を見ながら状況を把握した。主力の二人の復活に団員達は声を挙げて喜び、ロキと一緒に取り囲んだ。

 

「悪いけど解除してやれるのはお前らだけな。なんかフレイヤを捕まえに行ったらしいし。二人を石化にしたんならオッタルも危ういだろうから」

 

「・・・・・ロキ」

 

「構わへん。まだ生きておるなら優先的に連れ去られたリヴェリア達を連れ戻して来て欲しい!」

 

「とはいっても石化を長い間しておくのは危険だ。魂が何時までも肉体に定着していると限らないから」

 

「フィン、ガレス。ソッコーで救いに行くんや!あとはうちらが何とかする!」

 

と、そう言うわけだからよろしく。フィンの指摘に二人の腕を掴んで背中から魔法の翼を生やし、中央広場(セントラルパーク)にある摩天楼施設『バベルの塔』の最上階まで飛翔した。そして三人が目にした光景は―――一誠の予想通り、何かを掴みかからんとしている石像と化したオッタルが静寂の雰囲気を醸し出していた。流石のフィンとガレスは目を丸くせずにはいられなかった。オラリオの冒険者で唯一Lv.7を誇る武人の敗北を目の当たりにすることなど絶対にあり得ないのだから。

 

「オッタルまでやられただなんて・・・・・イッセー、彼等の事何か知っているかい?」

 

「会ったこともない奴だが、心当たりはある。俺の知り合いじゃないと言わせてもらうけどな」

 

「お主が住んでおった異世界でもこんなことできるのか?」

 

「うん、できるぞ」

 

恐ろしい世界だ、気持ちを揃って抱く二人の心情を知らないまま、大きく割られている壁張りの硝子を潜ってオッタルの石化の呪いを二人と同じやり方で解除する。解放された猪人(ボアズ)の獣人は足元に石の破片を落としながらガレスとフィン、一誠がいる様子を視界に入れ呪いを解いたことだけ教えられた。すると、彼は一誠に向け短く体を曲げて頭を垂らした。

 

「・・・・・感謝する」

 

【フレイヤ・ファミリア】の団長からの感謝の言葉はとても軽くない。ましてや頭も下げての感謝の言葉だ。生涯誰かにそうすることは主神以外しないだろうオッタルの言動から改めて訊かれた。

 

「フレイヤ様がどこぞの痴れ者の手によって浚われた。奴らの居場所を知っているなら教えてもらおう」

 

「生憎、僕等も仲間を連れ去られているんだ。君のように石にされてね」

 

「じゃから儂等もお主と同じなんじゃよ」

 

三人とも居場所は知らない。ただ一人、ジッと南方へ目を向ける一誠を除いて。それに疑問視するオッタルが問いだたす。

 

「お前は知らないのか」

 

「フレイヤの気は感じられないから分からないが・・・・・彼女とリヴェリア達と一緒なら見つけることはできそうだな」

 

「どこにいるのか、もう突き止めたのかい?」

 

確信したような一誠の言葉に真剣な眼差しを向けるフィンとガレス。オッタルもどうなのだと無言の視線を送ると唐突に三人は尋ねられた。

 

「南の方角で他派閥はあるか?」

 

「【フレイヤ・ファミリア】の他だと【ガネーシャ・ファミリア】に【イシュタル・ファミリア】、他にも様々な【ファミリア】があるよ」

 

「んじゃあ・・・・・そのどこかの【ファミリア】の中にリヴェリア達はいるな。あいつらの気を感じられる」

 

「なんじゃと?気というなにかで見つける事が出来るのか。しかもここから」

 

「論より証拠、一見に如かずと言うことで南に行こう」

 

三人の足場を魔方陣で用意し、壁張りの窓ガラスから数百Mもある塔から飛び降りる一誠に続き、足場を利用して降りるフィン達も数十秒で広場に降り立った。そして先に駆け出している一誠の隣まで走り肩を並べて南に向かう最中。得物を持っていないオッタルの真横に展開した魔方陣から武器の柄が飛び出してきた。

 

「『アダマンダイト』製の大剣だ、受け取れ」

 

説明を受け無言で手にするオッタルが更に速度を上げて一誠達を追い越す。Lv.7の足の速さは伊達ではない。全力で跳躍した彼はあっという間に姿が小さくなるほど移動しておっかなびっくりで届いているか分からないが叫び散らした。

 

「ちょっ、どこの【ファミリア】にいるのか分からないのに勝手に行くな!」

 

「いや、多分他の団員達を呼びに行ったと思うよ」

 

「あやつのホームも南方にあるからの。儂等はリヴェリア達を捕らえている【ファミリア】のところに行こう。辿り着いたら居場所を何らかの方法で伝えればよい」

 

ガレスの提案でそうする一誠達も速度を上げて駆ける。その途中、騒ぎに乗じて街に混乱と混沌を齎す闇派閥(イルヴィス)と遭遇し、フィンを指名する謎の女団員を完璧に無視する。

 

「って、いいのかよ?俺一人でも大丈夫だぞ」

 

「ここは申し訳ないけど【ガネーシャ・ファミリア】に任せるよ」

 

「街の治安も蔑にできんが、昔から付き合いのある頭でっかちなエルフを取り戻さんとな」

 

そう言いながら辿り着いた場所は、閑古鳥が鳴いてる様な戸締りしている店ばかり歓楽街で構える【ファミリア】のホーム。周辺一帯で間違いなく最も巨大な建物―――宮殿だ。広大な砂漠にそびえる王宮を彷彿させるほどの威容。金に輝く外装はとにかく豪華だった。円形の前庭を通って宮殿に近づけば、正面の大扉の上に見えるのは、他派閥(ファミリア)のエンブレム。履紗(ヴェール)を被り顔の上半分を隠す裸体の女性・・・・・娼婦が刻まれた徽章を見て、フィンは目を丸くする。

 

「まさか、【イシュタル・ファミリア】のホームだとは・・・・・」

 

「え”それって・・・・・フリュネがいる派閥ってことだよな」

 

「奴と出くわしたら儂が相手をしてやるから安心せい」

 

嫌そうな顔をありありと浮かべる一誠に「オッタルにもここであると教えんと」と催促した。後ろで魔方陣を展開し、天を指す光柱を発した。これでオッタル達にも気付き、ここを目指しにやってくるだろうと意図を察して称賛する。

 

「君の魔法は本当に便利だね」

 

「それで儂等は何度も驚かされ助けられたことか」

 

気を取り直してホームを見上げる。

 

「さて、イッセー。皆がいるところはどこだい。上かな」

 

「それともこの歓楽街のどこかか?」

 

二人からの質問に対し指で示す。宮殿の―――下に。

 

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