ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚19

地下へ通ずる場所を知るアマゾネスを探す三人。白昼堂々と他派閥のホームの中に侵入して玄関ホールに足を踏み入れた。

 

「誰もいないようだね」

 

「いないなら誘き寄せればいいだけだ」

 

適当な場所へ気弾を放っては破壊活動を始め出す一誠。そうしていれば騒ぎを駆け付けてきた大勢のアマゾネス達が獲物を三人に突き付けて取り囲んだ。

 

「【ロキ・ファミリア】!?何しに来た!」

 

「単刀直入で言うよ。この派閥にいる三人組の男達がどこにいるのかを」

 

「っ・・・・・言えるか!」

 

「そうか。じゃあ、お前らの命日だな。このホーム諸共。喋ってくれるまで破壊の限りを尽くさせてもらう」

 

フィンの乞いを拒絶したアマゾネスの言葉は、他のアマゾネスの心意であることを認識して幾重の魔方陣を展開した一誠の魔法攻撃によるフルバースト。アマゾネスにも当ててホームの全てを蹂躙し尽くさんとする男を止めようとするアマゾネス達。が、容赦のない拳と蹴りは確実に相手の骨を砕く勢いで返り討ちにしていく。

 

「何の騒ぎだっ!?」

 

褐色肌の女神が玄関ホールに現れ、彼女の横の壁に魔法がぶつかったことで騒ぎの原因を察した。見下ろせば【ロキ・ファミリア】の幹部二人がいて女神は引きつった顔をした。

 

「ロキの眷族・・・・・抗争をしに来たというのかっ」

 

「神イシュタル。三人組の男がここにいることが分かっている。僕達の仲間を連れ去り、神フレイヤも拉致した。後に【フレイヤ・ファミリア】がここに攻め込んでくるだろう。あなたを捕まえるために」

 

「っ―――――」

 

「彼女達を連れ去った三人の居場所を、地下に通ずる場所を教えてほしい。さもなくば、このホームを壊滅させてまで僕たちは探すつもりだ」

 

フィンの話は冗談でもからかいでもない。隣にいる男が魔力で天井にめがけて砲撃を行い、それからも魔王ごとくの破壊活動を繰り返した。どんどん破壊されていくホームにイシュタルは堪え切れず叫び散らした。

 

「止めろ、教えるっ!奴らの居場所を教えるから私のホームをこれ以上破壊しないでくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【イシュタル・ファミリア】に隠し扉が存在していた。そこを通って地下への階段を下ると階段の終点から道なりに進むと、そこは一階の玄関ホールと同様といおうかという広大な地下空間が広がっていた。柱廊のごとく林立する太く長い柱。一〇M以上もの遥か頭上の天井を支える他、柱には怪しい紫光を放つ魔石灯が不規則に括りつけられていた。大規模の地下空間・・・・・そこに三つの巨大なキングサイズのベッドと、一人残らず生まれたままの格好で乳房の先端と下腹部にハートを模した入れ墨の様なものを付けられている女性達がいた。皆、三人の男達によって捕まりここへ連れ去られたという共通点を持っている。中にはフレイヤ以外の女神達までいる。特に名を挙げれば―――デメテル、ヘファイストスである。

 

 

入れ墨は魔法か呪いの類か定かではないがそれを施されて以来、本人の意思とは関係なく理性が失いかけそうな断続的に感じさせられる抗えない快感に苛まれ、同性しか見せていない裸体を無理矢理好きでも無い男達に晒されて屈辱と羞恥で顔が紅潮に染まっている。そんな彼女等にいやらしい笑みを浮かべ、全裸となって女達の体を一人一人いやらしい手つきで触ったり、揉んだり、舐めたりとしていくがお楽しみは最後に取っておこうと純潔は奪わなかった。しかし卑劣な物を幾人かの少女の口に銜えさせて、出した物を吐くことも飲み込むことも許さず放置。女神達には乳房から始め、腹部、背中、臀部、太股を触れ肌触りを堪能する。それを見ている女性達は悲哀と憤怒の形相で見つめることしかできない。動きを封じられ、満足に声も発することもできなくされているのだ。ただ、見ているだけしかできない現状に中には涙を流す女性団員がいた。そしてその後、男達に選ばれた女性達はそれぞれベッドの脇に立たせられ強姦を見せつけられる。

 

「あのフレイヤの身体をこの手で好き放題できるなんて夢みたいだぜ!」

 

「こっちはこっちで驚きだぜ?なんたってこの世界には存在しないはずのアリサがいるんだからな。調教のし甲斐がある!」

 

「へへへっ!巨乳じゃなかったのは残念だったけど、結構綺麗な形で中々大きいじゃないか?どうだ、触れられるだけでかなり気持ちいい刺激が全身に伝わるだろ?そういう魔法をお前達に掛けてあるから感じている筈だぜ。しかも快楽と快感を共感できる魔法だ」

 

男達はそれぞれ選んだ女をベッドに寝かせ女体蹂躙し始める。ハイエルフの女性の肩がビクビクと震え、顔が更に真っ赤に染まって発汗を流し―――翡翠の長髪を激しく揺らすほど一際大きく背中を仰け反らせる。涙を流し心の中で少年の顔を思い浮かべ助けを求める幼女達。睨みだけで人を殺しかねない程の殺意と殺気を向ける美の女神。

 

「ははっ、俺のテクで気持ち良くなったようだな。男冥利尽きるぜ」

 

「はぁ・・・・・!この滑々感は堪らない。元の世界じゃ一発で逮捕されるがこの世界はそんなことないから嬉しいこの上ない」

 

「こんなことができるなんて死んでよかったぜ!」

 

男達は嬉しそうに下品で笑う。そんな中、ハイエルフは鼻息を荒げ、絶対に屈しないと言う強い意志を込めた瞳を細め睨みつける。その睨みに「そうでなくっちゃな」と好戦的に笑みを浮かべ、ズボンを一気に脱いで下半身丸出し状態となった。ベッドの脇に立たされる女性達は絶句で見開き、そして青褪めた。

 

「受け入れる準備は整えた次は、俺のコレでイキ狂くなって自分から腰を振るまで快楽漬けにしてやる」

 

「よーし、どっちが早く満足させれるか競争だ!」

 

「うひひひっ、お互い気持ちよくなろうぜぇ?」

 

ソレを見せつけられた彼女等はここで嫌悪感を覚え、絶世の美貌の顔を歪めた。認めていなければ好きでもない男を受け入れるぐらいなら舌を噛んで自害したいぐらい嫌悪する。自害も出来ない、反抗も出来ない状態の彼女等をいいことに男は彼女の純潔を破らんと下半身を動かした―――その時だった。凄まじい衝撃と震動がこの空間まで轟いた。男や女性達は条件反射で天井へと意識を向けた。

 

「なんだ?この音」

 

「まさか、誰かがここを襲撃して来たんじゃないだろうな」

 

「おいおい、そんなことしたら相手はただじゃ済まさないぜ?ま、そんなこと俺達に何の関係もないがな」

 

今は己の性欲を優先だとさらに下半身を押した。体の中に入ってくる異物感に女性達は酷く嫌悪し、これから飽きるまで侵される絶望の運命に打ちひしがれる。

 

「見つけたぞ」

 

四人目の男の声が地下空間に浸透して一同の耳に届いた。まさか、と信じられない思いで男達はこの空間の出入り口の方へ視線を向けた。彼等の眼は可視化するほど濃い魔力のオーラを纏う真紅の長髪、右眼を覆う漆黒の眼帯を付けた金眼の少年が広大な地下に入ってくる様子を視界に入れる。彼の左眼は全裸の女性と、ベッドでこれから行為を及ぼうとしている丸裸の男と覆いかぶされている女性を見渡して状況を把握する。

 

「予想以上の女を捕まえてハーレム気取りか?男として羨ましい限りだ。知り合いの女神達までいるしな」

 

ニコリと笑うが目は全然笑っていなかった。おまけに魔力を纏うオーラが更に濃くなって一誠を包み込んでいく。たった一人、されど一人。どうやって隠し扉を見抜いて降りてきたのかそれはどうでもいい。自分達のお楽しみを邪魔する輩は誰であろうと容赦しないのが彼等の決まり。

 

「おいおい、勇ましく乗り込んできたのは良いけどよ。俺達のバックにいるのは誰なのか分かってるのか?」

 

「【イシュタル・ファミリア】なんだろう?今更つまらないこと言うなよ」

 

「こいつ馬鹿じゃね?」

 

「ああ、一人でノコノコと現れてな。おい、お前。【ロキ・ファミリア】の連中の間抜けな姿を見たか?」

 

一人の男が目から怪しい光を煌めかせた。その光を見つめていると、足から感覚が無くなっていく。視線を下に落とすと足が石化してあっという間に太股まで石化が進んだ。

 

「残念無念ってな。助けに来て負けちゃ話しにならねぇわな。そこでじっくり見ているといいよ。大切な仲間達が俺の股間でいやらしく喘いで絶頂する瞬間をさ」

 

成す術もなく、石化は首まで進んで少年は真っ直ぐ男を睨んだまま石像と化した。あまりにも呆気ないやり取りに、興醒めだと意識をこれから犯して体を蹂躙する予定の彼女へ戻す。

 

バキッ、と石化の呪いが破られた。

 

「はっ?」

 

己の魔法が破られた。それがとても信じられなく、鳩に豆鉄砲を食らったような面持ちの男は目を丸くする。首の関節を鳴らしながら淡々と言う一誠の顔は三人を嘲笑していた。

 

「俺の知り合いの魔法使いの方がよっぽど強力な魔法を放つ上にこの程度の魔法、何度受けても絶対に効かない」

 

「「「ッ!?」」」

 

男達は少年へ向ける意識を敵とみなして全裸のまま臨戦態勢の構えを取った。同じ転生者、それは間違いないだろうと「どんな特典なんだ」という謎と疑問を抱いて詠唱破棄した魔法を解き放った。

 

迸る雷。どんな能力を使ったか知らないがこの雷系統の魔法で見極めてやる、そう考えてはなったその魔法は少年に牙を剥いて襲い直撃する。直撃しても―――歩く足を止めない。

 

「(魔法抵抗力か?)」

 

だったら物理的な攻撃だ、間接的な攻撃ならダメージを与えれるだろう。空気中の水分を瞬く間に凍結させ、数多の螺旋状に展開する氷槍を台風の様に回しながら放った。見た事のない魔法に興味も関心の微塵も持たない少年は、前に進みながら横薙ぎに振るった。次の瞬間。全ての氷槍が一瞬にして蒸発した。

 

「(な、なんだとっ・・・・・!?)」

 

愕然と極限まで目を見開いた男。一体、何の能力で魔法を打ち消したのか理解に苦しんでいると、

 

「全然だな。無限の魔力と見聞したことのないアニメの魔法は」

 

「なっ・・・・・」

 

己の特典を看破された。他の二人もどういうことだと警戒する眼差しは虚空から発現した金色の杖が、金色の光に包まれ美しい女性と化して一誠の後ろに佇む光景を目の当たりにする。杖が絶世の美女になった!?愕然とする三人を他所に。

 

「メリア、皆を頼んだ」

 

「お任せを、我が主」

 

パチンと指を鳴らしたら、男達が連れ去った女性達がフッと虚空に消え、皆メリアの傍に現れた。動かされた彼女達も奪い返された彼等も揃って驚いた。

 

「なっ、て、てめぇっ!」

 

「お前も転生者かよふざけるな!」

 

「俺達の女を返せ!」

 

飛び掛かる三人。うち一人は肉弾戦に持ちかけ、もう二人は援護と魔法攻撃を繰り出す。虚空から出現する数多の刀剣類が射出、無尽蔵の魔力の弾丸が一斉に向かってくるのに一誠を掴みかかる男から異様な余裕を見せつける。

 

「―――我は無限と夢幻の神の龍也」

 

『『『―――我が宿りし覇と王道をも降す唯一無二の龍よ、汝じが赴くままに至れ』』』

 

突然紡ぎ出す謳。右眼の眼帯を外しながら謳う一誠の玲瓏に紡ぐ謳をこの場にいる全員が耳にする。【並行詠唱】!?と魔導士なら気付く一誠の行動を男達は気付くはずがなかった。単純に口を止めれば言えなくなるという考えで―――避けられ、かわされ続けられる。まるでワルツを踊っているかのように。

 

「―――濡羽色の無限の神よ」

 

真紅色の極大オーラが、一誠の全身を包み込んでいく。

 

『『『―――赫赫たる夢幻の神よ』』』

 

身体に宿るドラゴン達も詠唱を唱える。眼帯が外され、濡羽色の瞳が開眼した同時に無限を体現する黒きオーラが、さらに一誠を覆っていく―――。

 

「『―――際涯を超越する無垢な無限の希望と純粋な不滅の夢を抱く全ての運命(さだめ)を降す我らが真の禁を見届けよ』」

 

身体から迸り覆う真紅と漆黒の濃厚なオーラは身体に纏わりつき、上衣が堪え切れず弾け散って何かが体に浮かびあがる。

 

そして一誠達は、最後の一節を謳った―――。

 

「『―――原始の理で以って我らが無夢を解き放たん』」

 

呪文を謳い終わった時、真紅と濡羽色の龍を象った入れ墨が全身に浮かんでいた。真紅の髪も濡羽色と交ざっていながら入り乱れている。

 

「―――――ぁ」

 

魔力を有している者だからこそ分かる。爆発的にまで膨れ上がった魔力の圧力と威圧が、自分より上回っていることに気付かされ精神が押し潰される。同時に彼は無限の魔力を持つ男と同じ土俵に立っているだけで圧倒させた。

 

「お前等は竜の尾を踏んで逆鱗に触れた」

 

「「「っ!?」」」

 

「三人とも不死身だってな?そりゃ好都合だ。―――てめぇらを殺しても殺し尽くされないってなら遠慮なく攻撃ができるわけだからな」

 

奇しくもフィンとガレスが最後に言い残した同じ言葉を述べた一誠がフッと虚空に消えた瞬間。男達の目と鼻の先の距離まで瞬間移動して現れ口からドラゴンの咆哮が発せられた。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

「「「ヒッッ!?」」」

 

その叫びを聞いた、一誠の全てを知る者からすれば『キレている』と揃って言うだろう。比喩抜きで両眼から怒りで煌めく眼光を放ちながら、怒りの大咆哮を上げる。その大声量は地下空間全体を響き地上に轟かせるほどであった。

 

眼を限界まで見開き揃って上半身を仰け反った男達に腕を引く仕草をすると、ブレるほどの速さで後方にいる男の懐に飛び込み、頬に拳を突き刺して顔を粉砕。殴り飛ばされた男はそのまま壁と激突するまでに別の男は手から生やす光刃に両腕両足を一閃だけで切断され蹴り飛ばされ、最後の男は見えない壁の効果が無効化された状態で股間を潰され、目も潰され、零距離からの魔力の砲撃で地下空間の深奥まで吹き飛んだ。

 

「おい、どうした。不死身じゃなかったのか?」

 

嘲笑する一誠の問い掛けに男達の身体の傷とダメージを癒す回復力で示した。起き上がって集い肩を並べる彼等が一誠を見る目が畏怖の念が籠っていた。

 

「お、教えろよ・・・・・お前、一体何者なんだよ・・・・・どんな特典を・・・・・」

 

「俺を倒せたら教えてやるよ雑魚共」

 

「ふ、ふざけるな!俺達は雑魚なんかじゃねぇ!最強の力を持っている世界最強の人間だぞ!?」

 

「殺す、殺してやるよお前!」

 

威風堂々とした王のような気高く雰囲気を醸し出し、金髪に赤眼、装飾が凝った黄金の鎧を身に纏っている出で立ちの男の背後の空間から再び数多の刀剣類が顔を出したところで嘆息する一誠。放たれる数々の武器の前に腕を薙ぎ払って魔力で流れを操作、床に突き刺さるよう軌道を逸らし無効化して飛び掛かる。空間から刀剣類を放つ男に殴り掛る一誠を察して白髪の男が前に飛び出す。が、相手が誰であれやることは変わりないと拳を前に突き出し―――見えない壁に阻まれた。

 

「通じねぇな!おい、やれ!」

 

「おうよっ!」

 

動きを止めたその一瞬を魔法が襲いかかった。凍てつく嵐が発生して味方ごと渦に呑み込む。時間にして数十秒後、治まる嵐の中にいた一誠は氷漬けとなっていた。大して白髪の男の周囲だけが凍りついているだけ余裕の態度で佇んでいた。これで勝った、と男達は目の前の一誠の状態―――突然燃えだして氷解する光景を見るまでは疑わなかった。氷の牢獄から抜け出した男は背中から炎翼、臀部から尾羽を生やして纏う炎で地下空間を照らした。

 

「こ、このっ!」

 

魔法がダメならこれならどうだ!と白髪の男が掴みかかる。無防備な相手の首を掴み、締める気かと思えば一誠の体が四散した。その瞬間を見ていたリヴェリア達は絶望とショックで悲哀の色を顔に浮かべるがメリアだけは表情を変えず視線を宙に回る首へ送る。

 

「ご安心を皆さま。我が主は負けておりません」

 

その言葉を待っていたかのように四散した身体が炎と化して一ヶ所に集まると『再生』を始める。目を疑わずにはいられない。殺したと思ったら殺せず、今度は確実に殺したかと思えば―――奴はまだ死んでいない。なんだ、こいつは?何なんだ、あいつの能力は!?炎が人の形となり再生して身体が元通りになるや否や、また嘆息する一誠。

 

「つまらない。極東で戦った転生者の方がまだ楽しかった」

 

「なっ、俺達以外にも転生者がいるのか!?」

 

「井の中の蛙のお前等に言ったところで、どうなる?これから死ぬかもしれない時に他の事考える余裕があるのか」

 

「ふざけるなよっ、不死身の俺達に死なんて絶対ありえない!」

 

金髪の男が亜空間から手にする武器を持ってそれを上段に構えた時だった。剣身に光が集い、魔力が高まるのを魔導士やエルフ、一誠は感じ取った。

 

「このエクスカリバーでてめぇを殺して見せる!」

 

「・・・・・メリア」

 

畜力(チャージ)し始める男の言動に彼女へ話しかける。何を言いたいのか手に取るように分かり、防壁の結界を張ってみせたことで一誠の憂いを解消させた。

 

「くらぇえええええええっ!エクスカリバァアアアアアアア!」

 

溜め終え振り下ろした剣から放たれる極光の斬撃波が柱を呑み込み、薙ぎ倒しながら標的へ鋭く向かう。微動だにせず、迫りくる斬撃の波を前に佇み敢えて自ら受け入れるように攻撃を食らった一誠が光に呑み込まれてしまった。声を出せるならば名前を呼びながら叫んでいただろうアイズ達の目の前でだ。それでも―――。

 

「我が主はあのような者達に負ける事はありません」

 

安心させる言葉で語り掛けるメリアだけは微笑だ。過ぎ去った極光の斬撃波。崩壊した何本もの柱が床に倒れ込み、キングサイズのベッドも原形を残さず消え去っていた。これだけなら魔導士達が放つ魔法に劣らない威力だ。最高の必殺技を繰り出してこれで生き残れるはずが無い。

 

「なん、で・・・・・」

 

金髪の男の目が動揺の色を浮かべ、畏怖の念と戦慄で顔が引き攣り歪む。ザッザッザと近づいて歩いてくる足音を立たせ、立ち篭る煙に浮かぶ人影のシルエットに男は慄いて言う。

 

「なんで、今の一撃で死なねぇんだよっ・・・・・!?てめぇはぁあああああああああっ!」」

 

無傷の姿を晒す、魔力のオーラに包まれながら陽炎のように揺らめかせる一誠。威風堂々とした威厳のある風格を醸し出し、三人と対峙する彼は短く述べた。

 

「今度は俺の番だ」

 

 

 

あれが、自分に秘匿していた理由なの?ヘファイストスに秘密を明かさなかったイッセーの底しれない実力に瞠目した目が眷族の戦いぶりから離せないでいた。こうして全裸で立っていることよりも目の前の戦闘の方が意識してしまい、金髪の男に対して亜空間から見た事もなくこの世の物で作られた物ではない大剣を手にして斬り掛る彼を凝視する。数多の刀剣類を空間から放たれようと一閃だけで全て吹き飛ばし、恐れで顔を歪める敵と剣撃を交える。しかし、一度刃を交えた先から大剣の一撃に堪え切れず砕け散る金髪の男の武器。二人の仲間が加勢に入ろうとする動きを見せる。背後から攻撃を仕掛ける彼らには振り返って目を輝かせただけで終わらせた―――敵の二人が身体を硬直したまま床に落ちても動かなかった。

 

「お前らっ!ぐあっ!?」

 

動かない仲間に疑問をさせる暇も与えないイッセーは私でも目を見張る剣技を見せつける。駆け出しの冒険者とは思えない俊敏で鋭く、『技』と『駆け引き』を繰り出し続けられ相手は防戦一方、不思議な力を使ってもあの子の前では無意味のように無効化されるばかり。そうして戦い続けているあの子の顔はいつしかつまらないと書いてあるほど浮かんだ

 

魔剣想像(ソードバース)

 

床に突き刺しながら単語を述べた瞬間。男の足元から槍や長剣、斧槍(ハルバード)等の長物の武器が飛び出し黄金の鎧を貫き、肉体も貫きながら男を宙に浮かせた。

 

「ぎゃ、ぎゃああああああああああああっ!?」

 

床から武器が飛び出してくるなんて・・・・・・。

 

「(イッセー・・・・・あなた、一体何者なの?)」

 

 

はっと意識を失っていたかのように覚醒した男の目の前では、長物の武器に突き刺され宙にいる凄惨な仲間がいた。

 

「不死身だから痛みはないと思ったんだがな。なんだ、あるのか。それも好都合だ」

 

「お、お前・・・・・っ!」

 

また地面から槍が飛び出して宙にいる男に突き刺さる。得物の柄に滴る紅い液体は床に広がって血の池を作っていく様を見せつけられ目が揺れる。

 

「お前等、生易しい死を迎えれると思うなよ」

 

全身から発する闇のオーラに包まれ出す。頭に角と紋様状の二対四枚の翼を生やし、臀部に黒い尾、両腕が黒い異形の手と化した一誠がまた姿を変えた。

 

「来いよ不死身。お前等の傲慢な幻想をブチ殺してやるからよ」

 

 

また姿が変わった。今度はとても禍々しい雰囲気を醸し出す悪魔のような姿に。私達ですら見たことが無いアレは異世界の能力なのか?無詠唱で強力な魔法を放ち続ける敵に悠然と近寄るイッセーは、自ら攻撃を当たりに向かっている挙動を示し―――男の魔法が奴に当たる直前で虚空に消える。言葉通り本当に消えるのだ。掻き消えて。もしやあの姿は魔法や魔力を無効化にするのか?だとすれば・・・・・イッセーの敵ではないことを意味する。

 

「何で当たらない、何で通じない、何で効かないんだっ!?無限の魔力が何で、なんでだよッ!!!」

 

魔法を主力とする奴にとって天敵だ。後退りながら枯渇する気配を感じさせない魔力を打ち続け、多種多彩な魔法を放とうがイッセーの前で虚空に消える。不意に腕の闇が蠢きだす。闇に意思が宿っているかのようにどんどん膨れ上がり、この地下空間の天井まで届きそうなほど両腕が巨大化した。それだけではない。イッセーの背後にも竜のような鎌首と頭部が具現化して男を睨みつける。まるで、イッセーが黒竜の姿をしているように錯覚してしまう。

 

「覚悟は、できてるな?」

 

「ヒッ―――」

 

睨みつけたのは蛇もとい竜で睨まれたのはゴブリンもとい蛙といったか。唯一の魔法が通じず、凄まじいプレッシャーを放つ出で立ちで眼光を鋭く睨まれれば恐れを抱くのは無理もない。―――一歩踏み込んだ瞬間、駆け出しの冒険者ではできない跳躍力で一気に迫る。闇の異形の手と竜の顔だけみれば獲物を襲い喰いかからんとするような光景だ。

 

「来るな・・・・・来るな、嫌だ死にたくないっ、絶対に死にたくない!」

 

顔から完全に不敵の笑みと余裕が剥がれ落ちて、代わりに恐怖で泣きじゃくる子供のように歪めていた男の足元に魔方陣が展開した。だが、奴の次の行動をイッセーは見逃さない。双眸を妖しく煌めかすと男の魔方陣が甲高い音を立てて砕け散った。それが信じられないと奴の顔は驚愕と絶望の色で染まり切った。そして・・・・・。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

「あ、ああああああっ、あああああああああああああああああっ!?」

 

奴はイッセーの体に纏う闇に呑み込まれた。実際に喰われたわけではないはずだ。予想した私の目の前で闇が霧散し、仰向けで倒れている男を冷たい眼差しで見下ろすイッセーの姿を目にする。

 

 

 

「さて・・・・・・残るのはお前一人となった。神から得た特典とやらはどうも大したことが無いようだし少々拍子抜けだ。まあ、しょうがないか?俺みたいに殺伐とした世界で生まれたわけじゃないんだろうお前らって」

 

覚醒した白髪頭に赤目の男は放心した。何時の間にか仲間が倒されている光景をいきなり見せつけられて平常心ではいられない。気付かないうちに何が遭った?何が起きたのか?理解できず苦しむ男に近づき対峙する。それに対して天使化―――更に限界突破して青白い天使と化した一誠は遠い目で語り掛ける。

 

「転生してこの世界に来て、最強の力を得て万能感に浸って・・・・・他の人間達をテメーの身勝手な欲望でどうこうしていいわけじゃねぇんだよ」

 

双眸が眦を裂いて怒りの青白い炎を燃やし、全身から迸る青白い雷が弾け、周囲の柱を破壊し荒れ狂う魔力で地下空間が埋め尽くしていく。それと同時に伴う力の圧力と一誠から感じる威圧で男の精神は今にでも途切れそうで心が折れそうになる。

 

「―――覚悟はできてるだろうな」

 

 

魂の色が変わった。力強く輝く青白い魂だけでなくあの子から感じる有り得ない力―――神の力(アルカナム)。私は今日、この瞬間を見て産まれて初めて驚いたと自負するわ。理由を言わずとも解るでしょう?下界の子供が【天使(テ・シーオ)】の姿で神の力(アルカナム)を放出しているのよ。下界の子供じゃ有り得ない異常な事。ロキ、あなたはあの子の力を知っているのかしら?知っていたとすればあなたに嫉妬して心から悔しいと思うわ。だって、私の目ですら見抜けなかったあの子の才能を知ってて隠し続けられたのだから。

 

「覚悟だと・・・・・黙れっ!」

 

子供の背中から三対六枚の純白な翼を生やしだした。だけど、ただそれだけ。イッセーのように凄まじい力を感じられない。ただ生やしただけなのかと思えば宙に浮いて、目を私達に向けて来る。

 

「女共を守りながら戦えるか!」

 

「―――俺を前に他の事できるのか?」

 

翼を羽ばたかせ、青白い光と成って子供に接近する。私達に何かしようとした子供の背後に回ってそう言うイッセーは無造作に純白の翼を引き千切って奪い取った後、その場で身体を回転しながら振り下ろした足で下へと蹴り落とした。

 

「ぐ、ぐうううっ、この、超電磁砲を食らいやがれ!」

 

裸の状態の子供が一体どこに隠し持っていたのか分からない手コインを取り出し、眼前に降り立った相手に照準を定めてバチバチと電気を纏い迸らせると弾いた。一筋の橙色の光がイッセーに迫る。馬鹿みたいに真正面からしか飛び掛かってくる相手にかわせる筈がないと高を括ったのか分からないけれどその考えは裏切られた。手刀でコインを床に叩き落とす芸当を見せつけた。あれだけ早い飛び道具を難なく払い落してバガンッ!と音を立てて穿って出来た穴がその証拠として痕を残し、子供に大きく口を開けた間抜けな面を晒した。でも、そうしていられる時間は短かった。イッセーが殴り掛った。

 

「うわっ!?」

 

条件反射で身体を縮める子供にあの子の拳が当たらなかった。あれは本当に厄介、見えない壁に阻まれてオッタルも近づけず魔法を使う子供に隙を突かれて石にされたのだから。イッセーにあの不思議な力をどうやって突破するのかしら?

 

「は、はははっ!ど、どうだ、この力の前では絶対にどんな攻撃でも全部反射するんだよ!お前の自慢の攻撃も全部反射してやる!」

 

「―――そいつは物理的な攻撃のみだろ?」

 

そう言いながらまた殴り掛った。何か策があるのか分からない。子供の方は絶対的有利な状況に浸っているのか余裕の笑みを浮かべ、イッセーに掴みかかった。二人の手は交差しもう少しで顔に触れそうなところで・・・・・全て反射する能力を持っている子供が信じられない事にお腹を殴られた。鈍い衝撃音、両目を限界まで剥いて全身を硬直した子供は自身に何が起きたのか理解できない顔でイッセーを見た。

 

「な、何でっ・・・・・何がっ!?」

 

また殴られる。今度は信じられないものを見る目で視線を送るが、鋭いアッパーを貰って地面から少し足が宙に浮いた間に鳩尾に一発、そして体を捻って右足の蹴りを食らって―――それで終わる筈もなかった。

 

「ま―――」

 

待ってくれ、と制止の呼びかけを発しようとした子供の気持ちは受け入れてくれなかった。すぐに次の行動を取れなかった。枝のように骨を折る打撃で吹き飛ばされたから。それでも終わらない。光の軌跡を残し先回して突き出した拳に殴られ吹っ飛ぶ。それからも男は宙で殴られ続けられ、時に鋭利な刃物と化した翼で切り刻まれたりもして柱やに血で赤く染め続ける。そうして繰り返していると子供の周囲を青白い光の帯が幾重にも覆い尽くしてしまった。その時間は数十秒も続いた。二人の姿を見えるようになった時は、全身が目も当てれない程に赤く染まっていながらも、傷が治っていく男の胸倉を掴む少年が宙に浮いたままの姿勢だった。

 

「し、死、ぬ・・・・・死ん・・・・・じ・・・・・う・・・・・」

 

「不死身なんだろ。死ぬことは絶対にない。が、能力を封じられたら本当にそうだろうな?」

 

傷が治ってもダメージは少なからず残っている他、意識が朦朧としている。それでもイッセーは攻撃の手を緩めない。もう一人の子供に近づき、掴み上げ、串刺しにされている子供に近寄っては二人を天井に向かって放り投た。そして手を掲げ青白い魔力光を集束した。

 

「己が不死身になったことを後悔して―――神の力を味わえ」

 

どこまでも冷たく淡々と言ったのを最後に青白い魔力を放った。その威力は【イシュタル・ファミリア】の宮殿からドンッ!!と凄まじい轟音とともに巨大な青白い光柱が天へ穿つように衝き上がって立ち昇るほどの威力であって何層以上の岩盤を貫いて物語らせ逆行する大瀑布の様に、天空に突き刺さる光柱はオラリオ中の神々や人類がその目で確りと焼き付けているでしょう。今の私達にはとてもどうでもよく気にしていられないけれど。それに打ち抜いた天井から静かに降り注ぐ太陽光に照らされ包まれるイッセーは、まるで天から祝福の光の輝きを受けているように錯覚する。私はこっちに来てくれるまで美しい【天使(テ・シーオ)】の姿のあの子に目を奪われ魅入った。子供や神々を魅了する私が胸の高鳴りをして逆に魅了させてしまうなんて・・・・・イッセー、あなたはとても罪深い子供になってしまったわよ?

 

 

 

「アイズ、アリサ、リリア。遅れて悪かった」

 

メリアに守られている幼女へ寄る。髪に手を触れると、乳房の先端と下半身のハートの紋様が音を立てて砕け散った。ようやく己の意思で動けるようになった体で最初に取った行動は、青白い【天使(テ・シーオ)】の少年の胸に飛び込んで抱き付いた。

 

「イッセー、イッセー・・・・・・ッ」

 

「ひっく、ひっく、ひっく・・・・・・!」

 

「悪かった。本当に悪かった」

 

少女の身体を翼で支えながら包み込みつつ髪を触れる。次は彼女の番だと翡翠の長髪と同色の瞳のエルフの女性の頭に触れた瞬間。紋様が消え去って、自由になった体は一誠の胸に倒れ込む。

 

「・・・・・すまない、イッセー」

 

「謝るのは俺の方だ。俺もお前達の傍にいてやれたらこんな目に遭わずに済んでいた」

 

「・・・・・それでも、助けに来てくれたのだから感謝する。他の娘達にも助けてやってくれ」

 

「そのつもりだから安心してくれ」

 

翼で持ち上げながら包み込み、フレイヤを始めとして彼女達の体にある忌まわしき呪印の解除を試みる。

 

「美し過ぎるのも考えものだなフレイヤ」

 

「ええ、そうね」

 

皮肉気に言う一誠の胸の中に身体を預け、翼に包まれるその心地よさは美神を微笑ませるほどよかったらしい。抱擁はすぐに終わらして呪いを解く作業に戻ったその最中。エルフの少女の呪印を消した直後、今まで我慢していた嘔吐感がようやくと解放された安堵感からその場で唾液と胃液、白い凝固の塊を吐き出してあろうことか助けてもらった少年の衣服に掛けてしまった事故が発生した。全員の呪印を解除した後は、人数分の羽を翼から抜き取って女性達の胸元にくっつくと、青白い外套(フーデットローブ)と変化して肌を隠した。と同時に男達が落ちて来た以外にもこの地下空間にフィンやガレス、オッタル達が現れた。

 

「フレイヤ様」

 

オッタルを筆頭に戦闘復帰した【フレイヤ・ファミリア】の団員達がフレイヤの前に跪く。その忠誠心に対してフレイヤは少しお冠で眷族達を見る目がちょっと厳しい。

 

「ちょっと遅かったわね」

 

「・・・・・」

 

「私の体、穢されちゃったわ」

 

ここで何があったのか、オッタル達は想像し難くなく重苦しい空気を醸し出し沈黙。中には己の不甲斐なさで凄まじい怒りを覚え、奥歯を噛みしめ手から血を流すほど握りしめる悔恨と怒気の気配を滲ましているのが分かる。

 

 

「見張りありがとう」

 

「問題なかったよ。というか、あれからアマゾネス達が消極的だったしね」

 

「うむ、途中あのフリュネ・ジャミールまでやってきて戦いを仕掛けて来るかと思えば、何かを察して薄気味悪い笑みを浮かべて去ったほどじゃ」

 

地下に邪魔が入らないようアマゾネス達を見張っていた二人。予想より苦労はしてないと言われ、なにそれ?仲間意識が殆どないんだな。と全裸で気を失っている男達の未来は真っ暗だろうと他人事のように思ったところである事を思い出した。

 

「イシュタルは?」

 

「歓楽街を襲撃し始めたオッタル達が真っ先に捕まえに行ってたよ。まあ、地上に戻れば拘束されていると思う」

 

「そうか。あーこの後の処理は大変そうだな」

 

「それはそうとお主、なんじゃその姿は」

 

「まあ、あれだ。本来の力ってことでよろしく」

 

 

 

その後―――【フレイヤ・ファミリア】が【イシュタル・ファミリア】に襲撃、抗争が勃発した。直ぐに主神が制止の声を振り撒き、【ガネーシャ・ファミリア】やギルド側の【ファミリア】達の介入によって戦いの戦火は鎮火する。それから石化していた【ロキ・ファミリア】他の団員達も呪いが解除されたことで復活を果たす。

 

そして、都市二大派閥と街への襲撃を起こした【イシュタル・ファミリア】の主神と三人の男達(能力を封印されている)は咎人扱いで多くの主神達と眷族に囲まれていた。

 

「よぉ、イシュタル。自分、フレイヤならいざ知らずうちらにまで好き勝手にしてくれたんや。天界に送還されてもええっちゅう覚悟の上で喧嘩売ってきたその度胸は買ってやるで」

 

糸目がちな瞳が怒りで見開き、その手には神の体に致命傷を与えんとするナイフが握られていた。ギルドからは膨大な罰則と罰金(ペナルティ)を科せられた他、ロキとフレイヤの本拠地(ホーム)の修繕費全額請け負い、闇派閥(イルヴィス)に対する鎮圧活動は【イシュタル・ファミリア】も強制的に参加も科せられた。だが、それだけでロキ達の心は納得できない。

 

「流石にうちは許す気はあらへんでイシュタル。自分の子供等がうちの可愛い子供に欲望のまま蹂躙しようとしてくれようとおったらしいし?訊けば可愛いアイズたん達まで手に掛けようとしたなんてもー絶対に許さんわっ!」

 

「そ、それは私の指示ではないっ、本当だ信じてくれっ!それにあの連中には私だって―――」

 

「じゃかあしいっ!関係あろうが無かろうが自分のせいでいらん被害と傷を負わせられた子供の心と体は、これから一生う背負っていくことにされたんやで!全部非が無いとほざくんなら、その顔を八つ裂きにして二度と表に出れへんようにしたろうかああんっ!?」

 

イシュタルから短い悲鳴が漏れる。ロキの怒りは留まる事を知らないまま怒声が褐色肌の美神に槍の如く突き刺さり責められる。これでは話が進まないと雰囲気で感じ取り、第三者が介入しない限り夕方まで続きそうな怒りぐらいだ。誰もがそこまで付き合いたくもないのが心情。

 

「(おいフィン、どうにかしてくれないか?)」

 

「(ンー・・・・・あそこまで怒ったロキは初めてだから僕等が止められるかどうか分からない)」

 

「(・・・・・あの場にロキがいなくて良かったかも。言葉で伝えるより現場に居合わせたら今の三倍は怒っていたかもしれない)」

 

「(そうか・・・・・イッセー?)」

 

徐に転生者三人を縛る鎖を掴み、神々の輪から抜け出した一誠は極東の転生者を呼んで会話を聞かれないように防音の結界を張って、彼等に問いだたした。

 

「さてとお前等を生かしているのは他でもない。この世界にどうやって来たのか聞かせてもらおうか?」

 

「・・・・・そんなこと聞いてどうする。お前も俺達と同じ転生者なんだろ」

 

「こいつはお前等と一緒で転生者なんだがな。俺は別に死んで神に転生されたわけでもない。生きたまま別の世界に放り込まれたんだよ」

 

三人の目が極東の転生者に向けられる。肩を並んで立っているのは彼の味方側であると行動で伝えさせている。

 

「お前、特典に何を望んだんだ?」

 

「とある戦闘民族の体質と全ての技を使えるように頼んだ」

 

「ああ、あのアニメと漫画のか。何でそんな馬鹿みたいに殴り合う前提のもんを望んだんだよお前」

 

「格好良いからに決まってんだろ。そーいうお前等は何なんだよ。明らかにアニメキャラの顔をしてる奴もいるし中二病かよ」

 

「「中二病じゃねぇよっ!」」

 

転生者同士の話が花を咲かせ、あーだこーだと会話が弾む。だが、スパンッと三人の頭を叩いて話を中断させた。

 

「お前等、話を楽しんでいるが状況は最悪のままだってことを忘れちゃいないよな?もう一度聞くが、どうやってこの世界に来たのか教えろ」

 

「教えろってそこの転生者と同じだろ。元の世界で死んだと思えば神と名乗るジジイにもう一度人生を送らせてやるって言われたんだ」

 

「爺・・・・・?俺は胸が無い女神だったぞ」

 

「はっ?俺はネットで検索したら何時の間にかここに来てたぞ」

 

それぞれ異なっている事を知り、不思議そうに顔を見合わせた。極東の転生者は「なんそりゃ?」と小首を傾げる。

 

「ネットはともかく、その爺と女神はこの世界の神々だったか分かるか?名前は何だった?」

 

「・・・な、名前は聞いてない」

 

「あ、名乗ってた。確か、爺はクロノスって言ってた。この世界の神かどうかわからないけどよ」

 

クロノス・・・・・・ギリシア神話で『時』を司る神。ここで異世界と異世界を通じることができる可能性が挙がり、後でロキ達に訊ねようと思ったところで。結界を解いた。

 

「情報提供ご苦労さん。さて―――と」

 

徐に跪き、鋭く男の胸に突き刺す。絶句する四人を他所に胸から腕を引き抜いて光る塊を取り出したら、男の胸は血を流すことも痛みを与えないまま何事もなかったかのように穴が閉じる。この男は何をしたんだ。その塊は何だと念が籠った視線を向け開きだす口から発せられる言葉に耳を傾ける。

 

「お前等の力だけは確かに常識を逸脱した力だ。このまま封印しておいてフリュネや男娼に犯しても悪くないがロキの様に俺も許す気はない。故にお前等の魂を預からせてもらう」

 

光る塊に握力を込めると、抜き取られた男が激痛に襲われて悲鳴を上げた。

残りの二人の胸に突き刺して魂だけ抜き取って意識だけは残すその芸当は常識を覆して逸脱している。

 

「能力は封印しないでいるが・・・・・お前等、また自分勝手に強引で俺の仲間や知り合い、家族の女を犯そうとしたら―――わかるな?」

 

弱みもとい魂を握られ痛みで絶叫を上げる三人。極東の転生者も自分もドラゴンの逆鱗に触れていたら、三人の様になっていたのかと戦慄と安堵感の気持ちが同居した顔で冷や汗を掻いたところ、背後から近づいて青白い外套(フーデットローブ)から手を伸ばし、少年の肩に置いたハイエルフが開口一番に言った。

 

「イッセー、頼みがある。どうか聞いてくれるか」

 

「ん?」

 

 

その日の夜―――。

 

 

『幽玄の白天城』に招かれた【ロキ・ファミリア】の女性団員達が十人十色の感想を述べながら入って行く。リヴェリアが一誠に頼みごとをしたこととは―――。崩壊した本拠地(ホーム)の復興までの同居、彼女達の傷心を少しでも癒してやりたい想いで一誠の家に招く許可を貰うことだった。具体的に彼女の頼みごとを知らされておらず、ただ扉を開けて欲しいとだけ願われたのでその通りにしてみたら。

 

「・・・・・俺の家は、とうとう宿泊施設か何かになってしまったか・・・・・」

 

覇気がない声音で言葉を零す一誠は何とも言えない気持ちを抱いて、彼女達を背後から見つめる。真隣に立つハイエルフは「すまない」と申し訳ない念を込めて謝罪の言葉を吐露する。

 

「まー、ゴブニュに直してもらうだけでも一ヵ月かそれ以上掛るらしいからその間、よろしゅうなイッセー」

 

「ロキ、何でお前も泊る気満々でいるんだっ。おい、そこのフレイヤとオッタル―――と知らない女達。その荷物は何なんだよ!俺は泊らす許可をした覚えはないぞっ!?バベルの塔で泊れよ!」

 

もう泣きそうになってる一誠の身の回りは騒がしくなりつつあった。食事も何時もの十数倍も作らなければいけない羽目になり、泣く泣く作っては彼女達の舌に「なにコレ、凄く美味しいっ!」と太鼓判を打たせた。

 

夕餉の時間の終わりを迎えたら次は風呂の時間。初めてこの城の浴場に入る彼女等は圧倒された。限られた時間の中での入浴とそれなりに広い湯船と対照的に、ここは交代する仲間のことを気にせず心行くまでのんびりと入浴を楽しめる。湯船は一つだけでなく、多種多彩な源泉と多種多様の形をした湯船を目の当たりにして開いた口が塞がらなかった。

 

「リ、リヴェリア様・・・ここは本当に浴場なのですか?噂に聞く女神の神聖浴場のような・・・・・」

 

「ああ、30人入浴してもまだ余裕のある程広い。時間も昼夜問わず気にせず入っても構わないのだ」

 

そう言われては、その通りに入りたくなる団員達は各々と湯船の中に体を沈ませ、今でも記憶に残るいやらしく触れられた男の手の感触を忘れたいが為に何時もより長く体を洗い続けた。

 

対して女湯の隣にある男湯はオッタル一人だけ。もう一人の男、一誠はというと。

 

「・・・・・女神揃って何用だ?」

 

ロキ、ヘファイストス、フレイヤが部屋に訪れていた。膝の上に金属製の板を載せて弄っている少年は手を止めて三柱の神へ左眼を向ける。まだ風呂に入らず眷族達が先に入っている間に今回の事件を解決に導いた一人の少年に話を求めたい思いの前に気になることをぶつけた。

 

「それ、何なん?」

 

「空飛ぶ絨毯と同じく飛べる金属製の板を作っているところ」

 

「また凄いの創ろうとしているわこの子・・・・・」

 

「ふふ、良いじゃない。凄ければ凄いほど私は好きよ」

 

カチャカチャと完成させようと手を動かしながら用件を促す彼にロキが代表として言い放った。

 

「イッセー、あんな自分勝手に喧嘩売ってくる子供は今後も現れると思うんか?」

 

「断言はできないが、可能性は高い方だと思う。あんな奴らをいち早く見つけて対処できればいいんだけど三人から見てどうだった?」

 

「他の子供と大して変わらん気配やったな。うちとフレイヤの子供を倒す力を持っているなんてどうなっているんやって話や」

 

「その謎はギルドが聞き出している筈だ。それを俺達も聞いたところで変わらないと思うけど」

 

ならばどうするか?結局のところは知るのと知らないとの差が違うだけで対して何も変わらない。無名だったり下級冒険者なのに有り得ない程強いと言う情報が入らない限り見つけることは困難に等しい。神から見ても大して変わらない子供として【ファミリア】に知らず知らず入団させてしまえばとんでもないことが起きかねない。【イシュタル・ファミリア】のように爆弾を抱えて自爆でもしたら笑えない話だ。

 

「今回みたいに第一級冒険者が破られるなんてことがあったらヤバいだろうな」

 

「それってイッセーよりも強いのおるかもしれんっちゅうことか?」

 

「人じゃなくて能力次第で俺もオッタルも死ぬかもしれないってことだよ。物理的な戦闘系の能力の他に、裏から相手を洗脳して操ったりされたらいくらロキ達でも気づけない。認識阻害なんて能力を使われたら透明人間になれるようなもんで見つかりっこない」

 

能力は無限にある。魔法もスキルもそうだ。フィン達が行使している魔法とスキルは無限にある中でその一つでしかない。人の性格にも相性の良し悪しあれば能力同士の相性の良し悪しだってある。

 

「ああ、そうだ。天界にクロノスって神様いるか?」

 

「クロノスって・・・・・あの?」

 

「いるんだ?どんな神なんだ?」

 

女神達は一度、顔を見合わせると「「「変な神」」」フレイヤまで言わせるほどクロノスは変神のようだった。「一人でよーわからんこと言っとる」とロキ、「何時も不気味に笑っていたわ」とフレイヤ、「以下同文」とヘファイストスが答え、どうしてクロノスの名を知っているのか聞こうと口開き掛けた時、部屋の扉を開け放ち顔を覗きこんでくる椿が彼女達に向かって話しかけた。

 

「ここにいたか主神様達。手前らは出たから風呂に入るといい」

 

「そう、分かったわ」

 

眷族からの促しに素直に受け入れ、この場を後にしようと動き出す。

 

「イッセーも作るのはいいけれど風呂に入りなさい?」

 

「後でこの部屋の風呂に入るから問題ない」

 

「あら、私も一緒に入ってもいいかしら?隅々まで洗ってあげるわ」

 

銀髪女神が首根っこを掴まれて鍛冶神に連行される姿に爆笑する無乳女神が扉を閉まるまで見送った後、製作する作業を開始した。その集中力は皆が寝静まっても完成に至るまで続き―――深い吐息。

 

「・・・・・よし、ようやく完成した」

 

「そうか。それはよかったな」

 

「ああ―――って、リリア?それに、と・・・・・誰だっけ」

 

何時の間にか部屋に入って来て真後ろに佇んでいた女性の存在に初めて気づいた風に反応した。助けた一人のエルフの少女であることは分かっている者の名前は知らない彼に王族(ハイエルフ)のリヴェリアが紹介する。

 

「アリシア・フォレストライト。見ての通り種族はエルフだ。お前が一度ダンジョンで助けた娘でもあるぞ」

 

「ああそっか、そう言えば見覚えがある。俺はイッセー。【ロキ・ファミリア】にいた時は全然他の団員と交流もしてなかったけど、何でここに?」

 

「お前に感謝と謝罪がしたいそうだ」

 

「謝罪?」自分に対して何かしたかとそんな覚えはないと首を傾げるが、彼女は申し訳なさそうにポツリと言った。

 

「その、貴方の服を汚してしまったことを謝罪に・・・・・」

 

「・・・ああ、あの時か。いや、あれはどうしようもなかっただろ。吐かずにはいられなかっただろうし、責められる理由は無い。お前は犠牲者だったんだからな」

 

「ですが、助けに来てくれた者に対してあまりにも・・・・・それにあの時もまだ助けてくれたお礼もしていません」

 

「あの時は当然のことをしたまでだから気にするな。それに俺の服なんかよりも、お前の心と体の方が心配だって。冒険者以前にリリア達と同じ一人の女だ」

 

完成した作品を机に置いて立ち上がり、アリシアと対面する。

 

「エルフは潔癖を気にする方なんだろう?それなのに無理矢理好きでもない知らない男に穢されて何とも思わない筈がない。服なんていくらでも代えが利く、が、心と体はそうじゃない。一生経験した事実は死ぬまで付き纏う。これからも冒険者として生きるお前の方が辛いんだ」

 

だから、と一誠は助けるのが遅かったことに対しての謝罪をした。頭を垂らして深く申し訳なかったって伝えた。

 

「助けに遅れてごめん。フィンとの連絡で俺もいれば助けられたのに相手は闇派閥(イルヴィス)だと思ってた。そんな傲慢な考えをしてたからお前達の心に一生消えない傷と記憶を残してしまったんだ。だからごめん、許して欲しいとは言わない」

 

自分が一番非があるのだと告げる少年を困惑気味に見下ろすアリシア。何時までも下げる頭を見つめ、意を決したように伸ばした手で頬に添え、優しく上げる。

 

「貴方はとても真っ直ぐな方なのですね。感謝されるべきなのに非を認め贖罪すら臨む。団長と同じ純粋で真っ直ぐ・・・・・」

 

エルフが妖精の様に綺麗だと言われる理由、綺麗な笑みを浮かべて真っ直ぐ瞳を金眼に向けるアリシア。

 

「私が貴方に責める言葉も殴る拳もありません。それでも申し訳なさを覚えていらっしゃるなら罰とお願いがあります」

 

「何だ?」

 

「私はお前じゃなくてアリシアと呼ばれたいです。元【ロキ・ファミリア】の団員なら、おこがましいですが私達は仲間の筈」

 

いきなり名前で呼ばれたくないだろうと、失礼ながらお前呼ばわりしていた一誠はそう求められた。素直に彼女の願いを聞き受ける。

 

「アリシア」

 

「・・・・・はい」

 

これで良き関係を築けるだろうと見守っていたリヴェリアは優しい眼差しで見守っていた時、エルフの少女は体を揺すった。

 

「あの、それともう一つ・・・・・・あの青白い天使になって貰えませんか?」

 

何でまた?と思いつつも力を解放、覚醒して望まれた姿になってみれば「翼で私達を隠して下さい」と促されその通りにし、お互い翼に包まれた。二人だけの空間が出来上がりぶつかり合う視線の中でエルフの少女は青白い光に照らされる顔に朱を散らばせた。

 

「これからする罰(=お願い)は、リヴェリア様に見られたくありませんので」

 

「うん?」

 

何されるんだ自分は―――と受け入れる準備をする前に首の後ろまで華奢な両腕が回され、アリシアの整った顔が零距離まで近づいた。

 

「私と―――口付を交わして下さい。あの男のモノで穢されたこの口を【天使(テ・シーオ)】の姿の貴方の唇で上書きして欲しい」

 

おぞましく汚らわしいモノを無理矢理、心から慕う異性に捧げる筈だったファーストキスを穢されたその口唇で少年の唇に重ねた。あの感触を紛らしたい、あの嫌な味を忘れたい、穢れた唇を「この人になら」と思う男の唇で上塗りにしてもらいたい一心でしたキスは、後に一誠の鍛えられた口付の技法によってその考えは霞んでいくのだった。

 

「あ、ありがとうございました・・・・・っ」

 

顔を赤らめてリヴェリアの横をそそくさと通り、「あ、あんなに、す、凄いなんてっ」と初心な反応を窺わせながら退室した。

 

「・・・・・何をしていた」

 

「本人に聞いてくれ」

 

彼女の名誉の為にと敢えて教えないが、綺麗な柳眉を寄せて腕を組む姿勢で無言の威圧を放ってくるハイエルフの服装が違うことを指摘する。

 

「その服、婚儀に着るドレス・・・正装みたいで綺麗だな」

 

あからさまな苦しいはぐらかし等通用する筈も無い相手は「・・・・・ああ」と口を開く。王族(ハイエルフ)としてでなくても寝間着にしては綺麗過ぎるものであった。豪華にちりばめられた宝石は無いものの意匠が凝っていて体や腕を通し、紐で結ぶスタイルのワンピース型。繊細な生地で編みあげられている純白には金色の刺繍で十字架を模して縫ってあり、紐解けば十字架が真っ二つに分かれる出で立ちとなっている。まるで今まで硬く守り抜いていた何かを破棄する背徳を表現して作り上げられているかのようだった。

 

王族の里(わたし)の故郷から飛び出す際、世界を旅する私に必要のないと思っていたのだがな」

 

「?」

 

「この服はな、イッセー。お前の言うとおり、王族(ハイエルフ)同士が婚儀を結ぶ為に着る服と同時に相手に心と体を晒して全てを差しだすという意味が担っている。この儀をせず同族異種族問わず体を重ねる行為、異性に体を触れられたら王族(ハイエルフ)としての婚儀はできず、異端なエルフとして全てのエルフ族から忌み嫌われる存在となる。誇りと掟を軽んじた恥知らずの卑しいエルフであると」

 

リヴェリアは転生者に体を触れられ、純潔を奪われそうになった。その時点で自分は否が応でも卑しいエルフとなってしまったのだと言外する。

 

「故郷から飛び出して肩書など捨てたつもりでいたが、やはり私はどこにいても王族(ハイエルフ)として同族に接せられている。だからこそ、いずれ今回のことで私の身に起きた事は同族に知れ渡るだろう。同族か認めた者しか触れさせない肌はアリシアと同じく穢れたも当然と言える」

 

「・・・・・」

 

「お前が気にすることでは無いイッセー。今話したことは王族や同族としか肌を重ねない者達の意見と認識だ。私自身は心と純潔を守ってくれたお前に深く感謝をしている。もしも、認めても無く好意を寄せて心から抱いてもいない男に捧げるぐらいなら、私はお前に全てを捧げたい」

 

申し訳なさそうにバツ悪い面持ちで顔を曇らせる彼に真っ直ぐ諭して、前の紐を解きながら衝撃的なことを言いだすリヴェリア。

 

「リ、リリア・・・?」

 

「お前が異世界のモンスターであろうと関係ない。イッセーという個の存在として私の心と体、純潔を捧げる。だからお前も私の想いに応えて欲しい。こんな堅物で悪いがな」

 

女性として自分は魅力は無いとどこか思い込んでいたハイエルフは自嘲的な笑みを浮かべながら正装の紐を全て解き、改めて一誠に己の全てを晒した。

 

「・・・・・俺はモンスターなんだぞ。モンスターに抱かれて間違って子供ができたらどうするんだ」

 

「育てるさ。お前の様に逞しく立派にな」

 

「お前は俺がモンスターの姿でも体を重ねたいと思うのか」

 

「それはお前次第だ。どんな方法で私の体をお前のだけの物にするか任せる。私はイッセーのことが好きになってしまったのだからな」

 

全裸のまま歩み寄って自分の頭一つ分高くなった少年を抱きしめ、口を耳に寄せた。

 

「―――頼む、私の体に染みついたあの男共の感触をお前の全てでリヴェリアと言う一人の女の心を救ってくれ」

 

そう願った彼女の視界は反転して、天蓋付きのベッドに寝かされたと気付いた時は、自分を覆い被さる少年の体と目がぶつかっていた。誰かに押し倒される初めての経験を実感するよりも力強い眼差しで見下ろす一誠の顔が更に寄ってくる。鼻先と鼻先が擦れる一度止まり口開く。

 

「止めてくれって言っても俺が満足するまで止める気はないぞ」

 

「最初は優しくな。私はこういうことをするのは初めてだ」

 

「分かっているよ、俺以外触れられても感じないよう徹底的に俺だけの女にしてやる」

 

「ふふっ、どれだけ私の体をお前色に穢してくれるのだ?」

 

期待と喜色、緊張と不安が混濁した翡翠の双眸で少年を見つめながら首の後ろへ腕を回して引き寄せる。二つの影は静かに一つとなった以降、愛を濃厚に貪る行為を朝になるまで行われた。

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