ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚20

地下迷宮都市『オラリオ』の二大最強派閥への襲撃から翌日。これを好機と闇派閥(イルヴィス)の騒乱が昨日から日夜関係なく続き、本拠地(ホーム)が無くなっても鎮圧に精を出す【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の団員達。鎮圧活動後の後始末は全て【イシュタル・ファミリア】に押し付ける事が多くなった他、転生者達の身勝手な暴挙で街にも被害を出したことで他の【ファミリア】より肩身の狭い思いの生活を送る事になり、ギルドも面倒極まりない強制依頼(ミッション)を発行するので末端の【ファミリア】の活動量は過酷極まっている。

 

「イッセーちゃん。はい、林檎パイよ」

 

特権を大いに活用して食べ物で釣り、食べる際に可愛らしい姿になる食事中の少年を膝の上に乗せてホッコリ。豊穣を司る女神デメテルの朝からの来訪で一日が始まる。

 

「珍しいわね。朝から訊ねてくるなんて、この子に頼みごと?」

 

「私を助けてくれたお礼と、前から定期的に頼まれていた食材を持ってきたの。特に最近イッセーちゃんの家、たくさんのロキの子供が泊り出したでしょう?だからその分、予想以上早く食材の在庫が無くなり掛けているって聞いたの」

 

「んぐっ、だから野菜だけじゃなく肉の方にも集めてもらうように【デメテル・ファミリア】には『冒険者依頼(クエスト)』で頼んで持って来てもらったんだ」

 

「そ、そう・・・・・」

 

何時の間に二人の間でそんなやり取りをしていたのだろうか。デメテルの腕に嵌められている金色の装飾品、ヘファイストス達と同種類の魔道具(マジックアイテム)をチラリと視界に入れる。

 

「ありがとうデメテル」

 

「可愛いイッセーちゃんの頼みならいっぱい聞いちゃうわ。それにさっきも言ったけれど私を助けてくれたあなたには本当に感謝しているわ。ありがとう」

 

「・・・・・感謝されるのは良いんだけど、この姿で可愛くないと否定しても説得力が無いことを自覚する俺は複雑極まりない」

 

でしょうね、と林檎パイを食べる行為を止めない一誠に「可愛いわ」と慈愛に満ちた銀眼の美神と一緒に思いながら見つめる。もう直ぐこの生活も終わりを迎える。他派閥に転属する一誠の家に元主神であろうと理由もなく居候しては迷惑が掛るだろう。名残惜しいが近々、椿と荷物の身支度をしなくてはいけない。

 

「(その前に・・・・・言わなくちゃいけないわね)」

 

鍛冶神としてなくこの時だけ一人の女として一誠に伝えたいことがあった。

 

 

 

「んー、今日も育っているなー。こっちはもう少しか?」

 

【デメテル・ファミリア】に門の前で報酬を渡して見送ってから城に戻らず、敷地で育てている原料(アイテム)果物(フルーツ)等の冒険者達にとって道具の素材として使われる材料や宝石樹の実を採取してバックパックに詰め込んでいく。商人や商業系の【ファミリア】に売り出そうと動いている時であった。湖の中心部から浮かびあがる様に酒好きの主神と【ロキ・ファミリア】の女性団員達が姿を見せた。湖の乙女達のようだとロキの趣味で勧誘された目麗しい女性や少女達を尻目で見ながら思い―――。

 

「イッセー、何してるの?」

 

「採取?」

 

湖から跳躍して背中から魔法の翼を展開、一誠の傍に寄ったアイズとアリサに話しかけられる。

 

「売りに行こうと集めているところだ。そっちは?」

 

「壊れた【ファミリア】の本拠地(ホーム)に顔を出しに行くの。色々しなくちゃいけないから・・・・・」

 

「手伝いに行くの」

 

男性団員達だけ任せてはいけないと療養中の彼女達に副団長が発破を掛けて動かしたのだろう。

 

「久しぶりに戻るからお前等にとってはある意味里帰りみたいなもんだな」

 

「私はイッセーの家の方が好きだよ?」

 

「ん、私も」

 

「ロキには言うなよ?多分泣くと思うから」

 

他派閥の団員の個人の家が好ましいと知った主神は複雑極まりないだろう。苦笑いして綺麗な髪を撫でる少年の手は心地よいと身を委ねる幼女二人。

 

「アイズた~ん、アリサた~ん行くで~!」

 

「ほら、呼んでるぞ」

 

「うん・・・・・」

 

「またね、イッセー」

 

名残惜しそうに一誠から離れ、ロキ達の所へ戻り森の奥へ進む彼女等に一拍遅れて準備を整えた一誠も後を追うように続いて、敷地から廃墟だらけの区画へと出た。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

本拠(ホーム)と混合した純潔な白一色の石材で造られた建物には、【ディアンケヒト・ファミリア】を表す光玉と薬草のエンブレムが飾られている。主に回復薬(ポーション)や冒険者にとって役立つ物を製作している商業系の【ファミリア】だ。訪問しに来た冒険者を出迎えた少女(ヒューマン)は精緻な人形、という言葉が真っ先に浮かぶ。150cmに届かない小柄な体がその印象に拍車を掛けていた。下げられた頭からさらりと零れる細い長髪は白銀の色で、大きな双眸には儚げな長い睫毛がかかっている。服装は白を基調とした、どこか治療師を思わせる【ファミリア】の制服だ。アミッド・テアサナーレ。【ディアンケヒト・ファミリア】に所属する団員だ。

 

「本日のご用件は?」

 

原材料(アイテム)を売りに来た」

 

真紅の長髪に右眼を覆う眼帯、金色の垂直のスリット状の瞳の少年は少女の問いにバックパックを掲げながら答える。一ヵ月に一度、育てて売り出すまで保管していた原材料(アイテム)やダンジョンのモンスターの『ドロップアイテム』も含めて複数の商人や商業系【ファミリア】に売り出す。そうして資金を確保手段の一つとして定期的に売却しているのである。なのでどれだけ軍資金が減ろうと一誠にとっては痛くも痒くもないのだ。

 

「かしこまりました。では、商談室にご案内致します」

 

ロビーを隔離する個室へ手で指しながら言い、少年と小鞄(ポーチ)を持って共に移動。空いている状態の商談室に入って、ガチャリと鍵を閉めた後。

 

「イッセーさん、またお会いしたかったです」

 

「相変わらず綺麗な銀髪で抱きしめたくなる小ささだ」

 

「・・・・・まだ成長期ですから体はもっと高く伸びます」

 

実際に抱き締めず微笑ましく言うが、少女の方は今の身長を気にしている様子でちょっと不貞腐れて今まで蓄えてきた素材と原料材(アイテム)の鑑定に臨んだ。一対一で商談するための個室はそれなりに広いが必要のない物を置いていないからか、少し狭く感じる空間の中で商談が始まる。彼女の前で蓋を開け、慣れた手つきでバックパックから様々なダンジョンの宝物を取り出して(テーブル)の上に置きだす。

 

「『カモドスの泉』と『カモドスの皮膜』、『白樹の葉(ホワイト・リーフ)』、『一角獣(ユニコーン)の角』、『マーメイドの生き血』・・・・・」

 

滅多に市場に出回らない希少アイテムの材料をポンポンと出されて驚嘆の息を漏らし品定めをするアミッドの瞳は真摯に輝かせる。(テーブル)に置ききれない程大量に出されても鑑定に勤しむ。

 

「全て―――の金額で買い取らせていただきます。よろしいでしょうか」

 

「半額で取引しても【ファミリア】の私財は大丈夫なのかと思うほどの値段だな」

 

「当【ディアンケヒト・ファミリア】は他の【ファミリア】の冒険者達に贔屓して貰っておりますのでご心配はありません」

 

商談は程なくして終わり、後は買い取る同額の金と引き替えにアイテムを渡すだけ―――。

 

「アミッド」

 

「はい・・・・・」

 

―――の、前にアミッドは立ち上がって一誠に近寄り、二人の間で密事の時間が始まろうとしている。ソファーに座る異性の膝の上に跨り、対面の形で白い制服に包まれている可愛らしい臀部を下ろして落ち着く。男の胸に白磁のような頬を小柄な体と一緒に寄せると規則正しく鳴る心臓の鼓動を感じ、異性に身を寄せるなど彼しかしないだろうアミッドは無意識に笑みを零し出会った当初を思い出す。他の冒険者と同じように原材料(アイテム)を売りに来た一人として対応したまではいいが、希少性の高い物ばかり目の前に出された時は酷く動揺した。慌てて団長と主神(ディアンケヒト)も交えさせたが、総額は当時の【ディアンケヒト・ファミリア】の全財産を上回る程だった。その為、喉から手が出るほど欲しい品々の前に全力で必死に買い取り金額の交渉の舌戦を広げた。本来の買い取り価格の値段を極力下げて格安で手に入れる―――彼等の意図を読んだ上で提案した。

 

―――ここで売る度に彼女(アミッド)を一日貸してくれるなら半額で換金してもいい。

 

少年のその提案に主神と団長は怪訝な思いを抱いたが、邪な気持ちを抱いて言っているわけではないと身の潔白を伝え、治療師(ヒーラー)の技術を学びたい好奇心を主神に向けた言葉でようやく説き伏せた。

 

それから交流を始め、他の冒険者とどこか違うと次第に理解し、触れ合う度に訪問してこない日はあの冒険者はどこで何をしているのだろうかと思う日々が多くなった。そして極めつけは―――買い物帰りの最中、昨日の転生者達の目に留まって慰み者として捕まり、連れ去られた。全裸で立たされこれから無理矢理犯される運命に悲観している時に目の前の少年に助けられ、アミッドの瞳は圧倒的な力で転生者達を倒し退けたその強さと青白い天使の姿、そして安心させる人懐っこく浮かべる笑みを映して淡い恋慕の念を抱いたのだ。

 

「(貴方のことが好きという想いを抱くぐらいなら、主神(ディアンケヒト)様も許してくれるでしょう)」

 

密かに彼を慕う想いは誰にも打ち明けていない。こうして回復薬(ポーション)類を製作の技術を教える約束を守りながら少年の要求に従って誰にも邪魔されない一ヵ月に一度だけの密会を過ごす。

 

「イッセーさん、今日は外のお店で教えます。よろしいでしょうか?」

 

「分かった」

 

外で食事をしながら回復アイテムの製作技術を教える=デートという公使混合の気持ちで少年を誘う少女の楽しい時間は始まったばかりだった。

 

「(誰かに教えると言うのは楽しいなんて知りませんでした。相手がイッセーさん、あなただからですよね?)」

 

 

アミッドからの教授を終えたその後、西のメインストリートの人気のない深い路地裏にある日当たりが悪く軽くジメジメした場所にポツンと建つ一軒家に足を運んだ。その建物には五体満足の人の身体を模した【ファミリア】のエンブレムが、看板のように飾られていた。木製で両開きの扉を開け放ち、店内に侵入する。

 

「失礼しまーす」

 

薄暗い店内に入ると一人の犬人(シアンスロープ)の少女が戸棚の中身を物色していた。彼女は来訪者の存在に気付き、半分瞼の下りた瞳を向けてくる。

 

「いらっしゃい」

 

あまり抑揚のない声音とその眠たげな表情もあって寝起きのようにも見えてしまう。尻尾の生えたスカートに、半袖の上衣を着ている。来訪者が一誠であると知ると獣の尻尾をパタパタと喜びを表現する様に振るい始めた。

 

「久し振り、ナァーザ」

 

「ようやく来てくれた。寂しかったよイッセーさん。今日は何を持って来てくれた?」

 

「前と変わらないかな。それで変わった道具(アイテム)とかある?」

 

「イッセーさんは【ミアハ・ファミリア】の店に来る度、何で普通じゃない変わった商品を求めているのか時々分からない時がある」

 

心底そう思っているようで眠たげな顔に呆れが浮かんでいるが「人体模型のような看板を掛けられたら、ただの店じゃないって思うのが当然じゃないかな」と心中語ってることを知る由もないナァーザ・エリスイス。変わった商品を作ってくれるかもしれないという期待で【ミアハ・ファミリア】に物資の提供をしている一誠であった。

 

「お客の要望(オーダー)を応えるのが商業系【ファミリア】の義務だと思う」

 

「当然の様に言うけれど、お客に変な物を売らないようち」

 

「じゃあ、真っ当な薬。体力と魔力を同時に回復できる回復薬(ポーション)も無い?」

 

「・・・・・新商品になりそうなことを軽く言うね。でも、材料が無いと作れないのはどこも同じだよ」

 

しかしその後、主神ミアハの耳にも二人の会話の内容が入ってきて「二属性回復薬(デュアル・ポーション)か、作ってみる価値はあるのではないか?」と新たな製品を作り出し、後の世の【ミアハ・ファミリア】の人気商品として、とある少年の機転を利かせた言伝も相まって最大【ファミリア】が買い占め、とある初老の神を悔しがらせたのだった。

 

「それと、ナァーザに贈り物があるんだ」

 

長細い木箱をどこからともなく出して、彼女に手渡す。中身は何なのか「開けていい?」と気になって聞き、首肯されるとぱかっと蓋を開けて中身を見た。白銀に輝く鎖に繋がれた青い宝石のネックレス。一見、綺麗な装飾品に見えるが宝石を凝視して見ると、海を結晶と化した宝石に閉じ込められている白く輝く光が無数に動いているのがわかる。

 

「これ、なに?」

 

「お守りだ。これから上級冒険者になって中層へ進出するかもしれないナァーザに死んで欲しくはないと真心を込めて作った。効果は保障するよ」

 

ネックレスを手に取り、ナァーザの首に真っ直ぐ彼女の顔を見ながら付けてやった。

 

「ん、似合う」

 

「・・・・・ありがとう」

 

気恥ずかしそうに尻尾を丸め、顔を赤らめる少女は感謝の念をぶつけた。他派閥の団員なのに乙女心をくすぐるのが上手い、女の扱いに長けているほど複数も付き合っているのかなぁとナァーザは背中を見せて店を後にしようとする少年を見ながら感想を抱いた。

 

 

「さて、次はキリト達の方に行くか」

 

【ミアハ・ファミリア】のホームの前で直接空間に干渉して『ダイダロス通り』の場所の空間に穴を繋げた矢先に―――廃墟を取り囲む冒険者達が臨戦態勢で緊迫してる光景が目に飛び込んできた。

 

「・・・・・何事?」

 

冒険者を見れば、【群衆の主】ことガネーシャの派閥の団員であることが把握できる。当然いつの間にかいる一誠の存在にも気付き警戒が籠った視線と武器の矛先が向けられる。

 

「貴様っ、一体どころから現れた!」

 

「えっと、これ、どういう状況?というか、俺は【ヘファイストス・ファミリア】の冒険者だから怪しい者じゃないぞ」

 

鍛冶神の眷族と名乗る不審な人物に胡散臭そうに眼を細める。周囲の団員達も疑わしいと分かりやすく顔に出ている。本当かどうか問い詰めようと武器をさらに突き付け尋問を始めようとしたところで第三者が介入してきた。

 

「その冒険者は【ヘファイストス・ファミリア】の者だ。傷付けたら彼の【ファミリア】の反惑を買う。武器を収めろ」

 

藍色の髪はうなじの位置で切られた短髪(ショートヘアー)に、整った怜悧な顔立ち。手足は長く、同世代の少女達と比べても高い身長を誇っている。戦闘は肉弾戦を主眼に置いているようで長い手足に拳装(メタルフィスト)金属靴(メタルブーツ)を装着している。そして手には身の丈を超える三つ叉の槍を握っていた。【ガネーシャ・ファミリア】の団長・シャクティ・ヴァルマ。飯をたかりにくる主神ガネーシャに侍従している彼女の事はもはやお互い名乗り合う必要が無いほど顔を突き合わせている。

 

「しかし団長。この周辺一帯は我々が封鎖しているにも拘らず、突然何もない空間から出てきたのですよ」

 

「そう言う魔法なのだろう。何をしにここへ来たのか分からないがこの者は信用できる。何せ私達の主神がよく飯をたかりに行くほど美味な料理を作る冒険者だからな」

 

「・・・・・ガネーシャ様がよく外出なされているのは食事をしにですか」

 

身内でも不思議がっていたのか、団長の言うことは嘘ではないと信頼する目で主神の行動の理由に納得したようで武器を収めた。

 

「・・・・・もう話は終わったか?」

 

「ああ、一応な。だが、今度はお前の番だ。どうしてここにいる?今の状況を知らないのか」

 

「ん」

 

首肯する。武装した物々しい集団がどうして知り合いのホームを囲っているのか、ガネーシャとアルテミスは一度極東料理を食べに来た際に顔を合わせていた。一時の食事仲間に対してこの対応はどういうことなのか説明を求めたところ。

 

「昨日の【イシュタル・ファミリア】の暴挙は覚えてるな」

 

「すぐに忘れられるものじゃないんだけど、それと【アルテミス・ファミリア】とどういう関係が?」

 

「あの騒ぎの中で【アルテミス・ファミリア】が治安維持と住民の救助活動をしていた。それだけなら私達もありがたいことなのだが・・・・・」

 

彼女がこの後何を言おうとしているのか、嫌な予感を覚えたと同時にわかってしまった。

 

「ヒューマンでも亜人(デミ・ヒューマン)でもない、獣人ですらない。顔や体がモンスターみたいな異形の姿をしている者達を目撃してな。流石に無視できず引き渡しの要求をしたのだが、拒まれ話しに応じてくれず戦闘に発展してしまい、何人か確保しているのだがまだ確保していない者達があの中にいるのだ」

 

「・・・・・」

 

頭が痛い話しどころではない。―――一体何を考えているんだあの異邦人達は!?と心から叫びたいが今の状況ではできず、「そうなんだ」と何とも言えない気持ちでそれしか答えれなかった。

 

「そして現在見ての通りガネーシャの命で他の異形の者達も連行しようとしているところだ。先に捕まえホームの牢屋に閉じ込めている彼等は、モンスターとは思えないほど大人しく流暢に言葉を話し、信じ難い言葉を口にするが主神様の前で虚言をしていないところ事実の様でな。話し合いができるなら事を穏便に済ませれると思っているのだが」

 

「話し合いに応じず、引き籠ってこう着状態ってわけね」

 

「相手が闇派閥(イルヴィス)であれば簡単に押し入ることが可能なのだがな」

 

扱いに困っていると言外するシャクティ。団員達も見た目はモンスターとそれを匿う【ファミリア】に何時まで待機すればいい?攻め込まないのか?そんな気配も醸し出しているところを彼女も感じ取っている様子だった。

 

「で、尋問した連中の話しは信じているのか?」

 

「全て鵜呑みにすることはできない。それでも嘘を吐いている感じではないし何よりガネーシャがな」

 

『他の者達も皆に内緒で我々が保護しよう!』

 

「―――という感じで他の【ファミリア】やギルドに対して秘密裏にこうして行動をしている」

 

こいつら、破天荒な主神で色々と苦労しているのか・・・・・。同情を禁じ得ない一誠の心情を察してシャクティは「いつもの事だよ」と力なく口にする。この状況を理解した。強引な手段もできず長らく膠着状態が続いている。穏便に事を進ませたいシャクティであるが異邦人達は彼女等の言葉をすぐに信用できない。その上、仲間を捕らえられているのだから話し合いに応じたら自分達も捕まえるつもりなのだろうと恐れ、籠城している。そこへタイミング悪く一誠が来てしまったのだ。

 

「それって昨日からずっと?」

 

「そうだ」

 

よく他の団員達はシビレを切らさないでいるな。【ガネーシャ・ファミリア】の団員達の質は思った以上に高く忍耐力もあるようだ。

 

「話が逸れたがお前はどうしてここに来た?」

 

「あー、【アルテミス・ファミリア】に用があって来たんだよ。その異形達のことでな」

 

「・・・・・知っていたのか」

 

「【ロキ・ファミリア】の一部の幹部達も知ってるぞ」

 

最大派閥も黙認している事実に少なからず驚いたが顔に出さなかった。だが、顔見知りならもしかしたらと提案を持ちかけた。

 

「お前から説得できるか?」

 

「あいつらの身の安全は?一応、連中は訳ありなんだけど」

 

「できる限り保証する。さっきも言ったがこの一件はギルドにも打ち明けていない。闇派閥(イルヴィス)の潜伏地を探る名目で動いている」

 

ギルドに目を付けられていないならなんとかなるか。と思いながら了承した。奇異な視線を集めながら廃教会の方へ足を運び、扉の前に近づくと無造作に開け放った―――。

 

「死ねぇえええええっ!」

 

「殺気と敵意丸出しの気配で隠れても意味ないだろ」

 

金色の爆発頭に赤目の少年が天井から奇襲を仕掛けたが、ワンパンであっさりと返り討ちにしてみせた。教会の奥まで殴り飛ばされた仲間を物陰に隠れていたキリト達が目を丸くした後、出入り口に立つ一誠を見て瞠目する。

 

「キリト、色々と言いたいことがあるがこの際後回しだ。異形の連中を引き渡してもらおうか。身の安全の保証はされている以上、籠城はしなくてもいい」

 

その一言で全員信じられないと顔に驚愕の色を浮かべる。中には異論を唱える者もいる。

 

「待ちなよ!常闇達が捕まっているのに身の安全なんて僕等が信じると思うのかい!?」

 

「まだ道具を完成していないのに勝手に捕まる真似をしたお前等が起こした事だろう。バカなのか?」

 

「バ、バカって僕達は困っている人達を助けようと・・・・・!」

 

「はぁ、見た目がモンスターの相手に助けられれば恐れられるのがオチだってことが分かんなかったのか。キリト達から言われていないのか?この世界はどういう世界なのか」

 

一誠の周囲の空間から数多の鎖が飛び出し、問答無用に異形の異邦人達だけ狙って捕縛した。

 

「相手は俺の顔が利く主神の【ファミリア】だ。お前等を殺すような事は絶対にないから安心して出て来い」

 

「縛っておきながら安心しろって無理な話ぃっ!?」

 

「何時までも抵抗するお前等が悪い」

 

「ま、待って兵藤君!皆を連れて行かないで!」

 

ズルズルと引きずられる仲間を放っておくことも見捨てる事も出来ない他の異邦人達が動き出して―――彼等彼女等も縛り、道連れの形で【ガネーシャ・ファミリア】の団員達の前に連行された。

 

「はい、連れてきたぞ」

 

「問題なくか?」

 

「一応、問題なく。あ、鎖はこのままにしてくれ。奇妙な能力を封じている鎖だから」

 

肯定するシャクティの指示に従う団員達が動き出す。大小様々な亜麻袋に喚いたり抵抗したりする異邦人達を中に入れた上に荷台に乗せる。更に動いているところを見せないように蓋で隠して連れていくと言う徹底したやり方に少し驚嘆する。【ガネーシャ・ファミリア】が引き上げるまで見送り続け、完全にこの場から遠ざかったのを探知したところでキリト達が尋ねてきた。

 

「いいのか・・・・・?あいつらを引き渡して」

 

「お前がもーすこし団長として強く説得してくれれば、こんな面倒な事にならなかったと思うが?」

 

「人を助けたいと言う気持ちが強くてな・・・・・人として確かに見過ごせなくて」

 

「それが人の甘さなんだろうな。だから後先考えず行動をした結果がこれだ、キリト」

 

ゴソっとポケットから装飾品を掴み取り、キリトの手の中に置いた。今更これが姿を変える道具なのだと伝え一誠も『ダイダロス通り』を後にした。『幽玄の白天城』へ戻りに建物の上から移動して西のメインストリートへ向かう。今のところ襲撃されている気配を感じない街の大通りに降り立ち、目的の場所へ―――。

 

「あの―――」

 

足を前に運んでいる途中、自分に向けられた言葉であると認識して振り返った。誰だと思った左眼は、エルフの少女と赤髪の少女―――【アストレア・ファミリア】の眷族達であると気付く。

 

「ん、もう大丈夫なのか?昨日の今日なのに」

 

「『暗黒期』の真っ只中で何時までも落ち込んだり気落ちしている暇ないわよ」

 

「そうか、強いなお前達の心は。それで、どうしたんだ?」

 

「あなたの姿を見かけたので・・・・・この後、時間はありますか?」

 

「家に帰るつもりだ」

 

「じゃあ、家に上がらせてくれない?あなたとは一度ゆっくり話をしたいと思っていたところなのよね」

 

予定を教えたら二人から同行を求められた。特に断る理由はないと了承した二人の少女は思い出したように自己紹介を始め出した。

 

「そう言えば碌に紹介もしてなかったわね。私はアリーゼ・ローヴェルよ。【アストレア・ファミリア】の団長を務めてるわ」

 

「リュー・リオンです」

 

「もう知っているだろうけどイッセーだ」

 

手を伸ばしあって握手を交わす一誠とアリーゼ。続いてリューにも握手を求めたが一歩退いた彼女から手を伸ばされず申し訳なさそうに顔を曇らせた。

 

「すみません。私は他者との肌の接触は安易にできないのです」

 

「俺、警戒されてる?てか、不可抗力とはいえ、二人の裸を見ちゃったしされて突然か」

 

「い、いえ、そんなことありませんっ。あなたは私達を助け尊厳も守ってくれた恩人です。ですが、私から他者と肌を接触することが難しく・・・・・」

 

「なるほど、ほら」

 

自分から触れないならこっちから触ってやる、と無造作に手を出して年下のエルフの少女の手を取り、優しく包み込むように握り締めた。突然の触れ合いに肩が跳ね上がり、空色の瞳は瞠目―――次に純粋に肌と肌の接触を試みた一誠の手を何時までも払い除けない自分に驚く。感嘆するアリーゼ。

 

「ん、どうやら問題なさそうだなリュー。それじゃ行こうか」

 

「へえ、あなたやるじゃない。私以外でリューと手を握れたのはあなたが始めてよ」

 

「それは光栄だ。しかしこんな華奢な手で冒険者を生業するなんて大したもんだ」

 

握られたままの状態で、アリーゼからも手を握られて今の自分の心境と気持ちに向かい合う暇もなく『幽玄の白天城』へ向かいだした。まるで自分のことを友人のような扱いをしてリューは更に当惑する。

 

「それを言うならあなたの作る料理は本当に美味しいわよ。冒険者で料理を作るなんて珍しくないけれど、今まで食べた事が無い物ばかりで、今じゃイッセーの料理を食べる事が楽しみの一つになっちゃったわ。あ、主神様は今夜も食べに行く気だからよろしくね?」

 

俺を料理人と勘違いしていないか?とアリーゼに何か言いたげな面持ちをしたら「申し訳ございません」とリューが謝罪の言葉を述べた。その意味は自分達も今夜たかりにやってくる意味も含まれていたのだが、当の本人はそれを気付かない。

 

「・・・・・あ、あの」

 

リューは不意にこう口を滑らした。

 

「あなたにお礼がしたい。私にできる事なら何でも言って下さい」

 

「お礼?・・・・・じゃあ、翼の手入れの手伝いをしてもらおうかな」

 

 

 

「「「ゴクゴクゴクゴクッ・・・・・」」」

 

その日の夜―――。椿がビールなる新酒を飲み仲間(ロキ、ガレスを始め)に軽く口滑らしたことで食事だけでなく酒までたかるようになった。

 

「かぁっ~!この喉越しにこの切れ味、たまらんっ!エールじゃ絶対に味わえへんでこれっ!」

 

「ドワーフの火酒より強くないんじゃが、ロキの言うとおりたまらん味じゃな」

 

「であろうであろう?このビールは真に美味しいのだ。冷えた硝子杯(ジョッキ)が琥珀色の酒を更に美味しくさせてくれる!だから―――」

 

揃って空のジョッキを突き付ける三人の目線の先には真紅の少年がいた。

 

「「「イッセー、ビール追加」」」

 

「だから俺は料理人じゃないってなんべん言わせんだてめぇらっ!?」

 

「そう言いつつ料理の追加を作るイッセーはその手の人になっているよ」

 

パン粉と卵で付けて油で揚げた肉や魚のフライ、小麦粉と水、マヨネーズで付けて揚げる野菜や魚介類を別々の皿に盛り付けて持ってくる言動の一誠は、に苦笑いするフィンからの指摘を受ける。

 

「料理の技術が向上する『スキル』も発現しちゃうほどだものね」

 

サクッと出来たてのトウモロコシとクリームが入ったコロッケの未知の味の美味しさに食べて頬を僅かに綻ばせるヘファイストス。極東から輸出してもらった魚介類のフライは極東組の神々とアスフィ、野菜はデメテルとディオニュソス、肉はガレスと椿を中心に平らげられていく。油も極力抜き取った揚げ物はソースや醤油、マヨネーズ等の調味料やソースを付けながらご飯と食べると更に彼らの食欲が後押した。

 

「いやー、モグ、本当に、モグモグ、んぐっ、イッセー君の料理は、モグモグモグ、美味しい物ばかりだね」

 

食べるか喋るかどっちかしろよという雰囲気が醸し出しても、気づいていないのか気づいていても気にしないでいるのか分からないままヘルメスは食べ続ける口と喋る口を止めない。

 

「イッセー君、やっぱり店を構えてくれない?オレ、毎日通っちゃうからさ!」

 

「ふふ、そうね。働くあなたの姿を見てみたい」

 

「せやせや、もっと色んな料理食いたいわ」

 

何でそんなことを俺がしなくちゃいけないんだ、と呆れながら神の願いを拒絶するだろう。そんな予想が出来るほど付き合いは短くないと自負する彼等彼女等の考えは、裏切られるとは思いもしなかった。

 

「・・・・・そうだな。いつまでもたかりに来られるとこっちも考えなきゃいけないな。食費はタダじゃないんだし」

 

半ば投げやりに答えたそれは、一同の手を止めさせ視線を一身に集めるほどの効果を秘めており、奇異の視線を向けるロキ達は「本気か?」と聞かずにいられない。

 

「えっと、イッセー君・・・・・本当に?」

 

「毎度毎度そう望んでいるんだろ。さっきも言ったように食費はタダじゃないんだ。この先ずっとたかられると俺の金が皆が食べている料理と一緒に全部食べられて無くなる一方なんだけど?」

 

稼いだ金は必要なこと以外使わない主義であるが、必要だと思った事にはとことん使う。食費=食材や調味料を買い占めるその金も決して安くない。指摘を受け言及され何も気にせずに未知の料理をたかりに毎週、特定の神や人問わず最高四日も訪れる神々や眷族達からバツ悪そうな呻き声が聞こえた。

 

「すまない、イッセー」

 

「謝って済むならギルドや【ガネーシャ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】はいらないぞフィン。ああ、そう言えばその二つの派閥の主神と眷族がここにいたっけな」

 

都市の治安と規律を守る正義の旗を掲げる【ファミリア】へ皮肉の言葉を送り、体を硬直、委縮させる効果は抜群だった。

 

「と、神々から熱い要望に応えようと思うが―――今さら冗談なんて言うなよ。言ったら無断で葡萄酒(ワイン)を飲まれた次に怒るからな」

 

『ハ、ハイ・・・』

 

こうして、何とも言えない理由で異世界で異世界の料理を作る異世界食堂が爆誕するのであった。誰もが心待ちにしていた―――とは言えない者達は密かに何人かいる。その内の二人が自分の主神を不満げに睨みつけている。

 

「え、なんやアイズたんアリサたん・・・・・すっごく不機嫌そうな顔で睨んで・・・・・母親(ママ)に説明してくれへん?」

 

「誰が母親(ママ)だ。・・・イッセーと過ごす時間が更に他で割かれてしまって、構ってくれなくなる。その作った原因がロキだからだろう・・・・・二人とも、言いたいことがあれば言った方が良い。スッキリするぞ」

 

「ロキ、すごく大嫌い」

 

「ロキ、大嫌いだよ」

 

この日、精神的に一柱の女神が死んでしまったが、周囲の神と眷族達は関係ないと蚊帳の外まで意識を置いた後。「(ホーム)から近い西沿いのメインストリートにしない?場所も確保するわ」と珍しくバベルの塔へ帰り際に言う美神が何故か張り切っていたことに、一誠は首肯も否定もせずただ疑問符を浮かべて首を捻る。そしてその後、翼の手入れの手伝いをしてもらう約束の時間を迎えたのだが。

 

「薄々思っていたけど、やっぱりこうなったか」

 

アリーゼとリューにお願いした事は主神の耳にも入ったことで、先に風呂に入り待っていると正義と秩序を司る女神アストレアまで裸体にタオルを巻いて入ってきた。

 

「ごめん、やっぱり主神様には隠し通せなかったわ」

 

「いや、秘密にすることでもないから気にするな」

 

リューも謝罪した。きっと黙っていられなかったのは彼女かもしれないと何となく察した一誠にアストレアが話しかけた。

 

「私の大切な眷族達を救いだしてくれて二人にお礼をさせるのに、主神の私が何もしないわけにはまいりませんし許せません。私も二人と共にあなたの望みを何でも叶えるつもりです」

 

「女神とは言え、男相手に何でもすると言うのはダメだぞ」

 

「本気ですよ。眷族を助けただけでなく、結果や経緯がどうであれ彼女達の純潔や尊厳を守ってくれたあなたの行いは軽くないのです」

 

マジだ、本気と書いて本気(マジ)で言っている。冗談もふざけてもからかってもない。アストレアの目から窺える強い意志が心から言っているのだと一誠に伝える。

 

「―――私の体を求めるならそれでも―――イタッ」

 

女神の頭に手刀を叩きこんで黙らす。

 

「女神の体は好き勝手にできるほど安くないだろうが。アリーゼ達を助けて身体を求めるぐらいなら―――俺を異性として愛してくれる、神じゃなくて一人の女のアストレアとしたい」

 

金色の翼を背中から生やしながら言う一誠に不意打ちを食らったアストレアはどきりとしてしまう。初めて見る【天使(テ・シーオ)】の象徴の翼を間近で目の当たりにし言葉も失う。

 

「・・・・・あなたは、本当に下界の子供なのですか?」

 

「他派閥に内部事情を教えるのは規則(ルール)違反だろ?」

 

尤もな事を言われてそれ以上は何も言えず、一瞬押し黙ってはまた尋ねた。

 

「なら・・・・・ヘファイストスは何か知っているのですか?」

 

「何一つ知らない。いや、教えていない。俺の抱えている問題は他者に教える事が出来ない深い事情だ」

 

「それは一体・・・・・」

 

「知らない方が幸せだって言う時もある。話しは以上、そろそろ手伝ってもらおうか」

 

話しを半ば強引に打ち切って翼の手入れを催促する。椅子に腰を下ろし鏡越しで後ろにいる三人に向かって指示する。

 

「そこに置いてあるボディソープでタオルに付け泡立て、翼に優しく押しつけながら梳かす感じで洗ってくれ。俺は内側を洗うから」

 

「・・・・・わかりました」

 

これ以上の詮索はできなくされた。自分達の事を信用・信頼していない。あるいは本当に抱えている秘密を教えたくない。そのどちらか、両方かそれを断定することができないアストレア達は―――。

 

「えっと、タオルってどこ?」

 

「身体に巻いているのがあるだろう」

 

「「・・・・・えっ?」」

 

全裸になって翼の手入れをする羽目になって恥ずかしい思いをするのであった。

 

 

 

「・・・・・」

 

三人に手入れをしてもらってからその二週間後。フレイヤに誘われて付いていくと西のメインストリートに構えていた筈の建物が3、4軒分も更地となった場所の前に辿り着いた。意味深で綺麗な笑みの美神に初めて戦慄を覚えたのは余談である。

 

「こ、ここにいた人達は・・・・・?」

 

「正式な取引とお願い(みりょう)してそれ相応のお金で買い取ったの」

 

絶対、魅了したな。と魅了され家を追わされた人達に対して物凄く申し訳ない事をしたと罪悪感と謝罪の念を深めた。これはもう絶対に後に退けれない、と頭の後ろで汗を浮かべ直ぐに準備に取り掛かり完成したその店は、『暗黒期』のオラリオに良くも悪くも神や冒険者、民衆達から注目と関心を寄せて大いに賑やかせたのだった。

 

 

 

「イッセー、一人で大丈夫なのか?【ゴブニュ・ファミリア】に依頼した方が早いぞ」

 

自室で店の設計図を描き込み始める一誠を後ろから覗きこみ、フレイヤとの交わした話を教えられたリヴェリアはそう提案をしてみたが否と返ってきた。

 

「異世界の魔法や力を以ってすればお茶の子さいさいだ。それに他人に創らせるよりは自分で創りたいんだ。俺の想像した通りの店になるからな。それが終わって完成したら食材集めと食材を寄付してくれる商人と【ファミリア】の恩恵を確保しなくちゃな」

 

「お前一人で働くのか?」

 

「異世界の料理を主に作るんだぞ?俺以上に作れるやつはこの世界にいない。俺以下だったら心当たりがあるがまずは俺一人でやるつもりだ」

 

「・・・・・私達も手伝ってやろうって言ったらどうする」

 

「三人のウェイトレス姿、ロキが興奮して暴走しかねないのとリリアは副団長でアイズとアリサはいずれ幹部にまで成長する。【ファミリア】から脱退しない限り、休み以外の仕事の途中で抜けだされるのは少し困る。働く店員が充実していない時は特にだ」

 

「・・・・・そうか」

 

申し出を断られ、正論で論破もされて少し残念そうなリヴェリア。一誠もできれば一緒に働いてもらいたいと思うが【ロキ・ファミリア】は他派閥だ。同棲をしても本拠地(ホーム)と変わらない生活を送れているが、それ以外の事まで同じ時間を割いてしてしまえば彼女の立場や仕事等に支障が出る可能性がある。迷惑を掛けたくないが為に正論で断った。

 

「(確かに料理の腕前と荒事の対処ができる冒険者のような料理人は欲しいと思うが、そんな人間そうそういないだろう)」

 

 

だが【ヘファイストス・ファミリア】に所属して、ついに一年目が経ってさらに店が完成した数週間後―――恰幅の良いドワーフの女性を始め、転生者達から助けた女性達が店に上がり込まれ、半ば強引な押し掛けで共に店を切り盛りすることになるのを一誠はまだ気付いていない。

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