ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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一部書き直しました。


冒険譚10

早朝―――目覚めた一誠の視界に入る亜麻色の髪の少女の寝顔。情事後、体の上に跨がる風に覆い被さって体を重ねたまま寝てしまった彼女の髪に手を伸ばして撫でながら思う。付き合っていた男と別れた女と程なく事故で巻き込まれた形で体を交えてしまった。別れたとはいえ、友人の女を抱いてしまったのは裏切り行為だろこれと頭を抱える思いで苦悩する他所に、未だに鎮まる気配はない性欲の昂りの炎。目覚めてから局部へ血と熱が更に高まり自己主張し始めたことで寝ていた少女が「ぁ・・・」と反応を示したあと、じわっと顔を朱に染めた様子を見て胸の奥から沸騰する性欲が一誠を突き動かした。頭を撫でていた手をアスナの背中、もう片方は括れた腰辺りに回して共に起こした。その時に熱く潤った寝ぼけ眼が開き、至近距離で一誠の顔を朝一番視界いっぱいに映り込んだ。

 

「ん・・・イッセー・・・・?」

 

「・・・・・ごめん、また」

 

「・・・・・うん、いいよ」

 

顔が熱い、体も心も快感で震え、発火したように熱い中。お互い見つめあっていたら、一誠がアスナの頭の後ろに手を回し、アスナも一誠の頭の後ろに手を回しては顔を寄せ合い、互いの口を唇で塞ぎディープなキスをした。昨夜の内にすっかり快楽に溺れ染まった頭と心、体では抵抗などする気持ちも湧かず、幸福感を覚えながら口の端しから唾液が溢れるほどにキスを交わす―――。

 

「心の底から本当にごめんなさい」

 

小一時間後・・・・・服を身に包んだ女性達の前で床に頭が付くくらい「「綺麗な土下座」」と極東の女神達に感嘆と称賛させる土下座をする一誠の姿で朝を迎えた。誠心誠意の謝罪の念を伝える彼に誰一人女性達は責めなかった。

 

「大丈夫よイッセー。イザナミの悪巧みで起きた事故なんだから」

 

「その悪巧みで一番楽しんだのはそっちだと思う」

 

「うふふ、否定しないわ。今まで食べてきた男神なんかより最高だった。もうこの子以外じゃあ物足りなくなっちゃったかも」

 

「何時もいる眷族はどうなの」

 

心なしか何時もより肌が艶々している女神達は満足げな雰囲気を醸し出しながら、一誠がその気に望めばまた応じて身体を差し出すかもしれないほど瞳に色欲の色が宿っていた。

 

「神ヘファイストスの言うとおりだ。顔を上げろイッセー」

 

「それにこの場にいる殆どの者はお主のことを慕っている。お前が気に病むことはないぞ」

 

「いや、あるだろう気に病むこと!まだ幼い他派閥のアミッドとアイズとアリサ、友人の彼女だったアスナに手を出したんだぞ!?アリシアだって俺の存在を受け入れてくれても身体を重なるまでは許さないでいたはずだ!」

 

同じく艶々の肌で諭すような言葉を述べるリヴェリアと椿であるが、顔を上げて食って掛かる一誠の中では深い後悔と愚行をした自分に激しい怒りを抱き、顔の表情が複雑で皆に申し訳ないと左目を曇らせる。

 

「くそぅ・・・・・あの転生者の三人にあれだけ言っておいて俺までするなんて・・・・・」

 

ゴンッと頭を床に叩き付け、凄まじい悔恨に苛まれ頭を抱え「一生の不覚」「この不祥事を償う方法は・・・」とブツブツ呟く一誠の横でドラゴンを殺すに長けた封龍剣が発現した魔方陣から出て来て、その柄を手にするや否や自分の首に近づけた。

 

「皆ゴメン、俺はこの世界で死ぬよ・・・・・」

 

「ま、待ちなさいっ!?」

 

「早まるなイッセーッ!」

 

「死んじゃダメ!」

 

「イッセー落ち着いて!」

 

ここまで一誠を追い詰めたのは後にも先にも彼女達だけだろう。この世界で死を以って償う等、異世界にいる家族達が知ったら「一体なにを仕出かしたらそうなる!?」と問い詰めてたかもしれない。そんなことされることも露にも思わない皆は全力で止めに掛る。

 

「っ!?」

 

刹那、彼の少年の体が不自然なまでに震えた。そして、急に見たことのない光景が視界に飛び込んできた。神々しい、神秘的な輝きに包まれた空間。自分の愚行を止めに掛ってきた彼女達の姿はいない。持っていた筈の剣も消えてなくなっている。さて、ここはどこだろう?右も左も前も後ろも上も下も同じ景色で味気がない場所に自分のみ移動させられたような感覚もなかった。こんなこと出来そうなのは自分より格上の相手か神でしかないだろう。が、前者は有り得ない。精神を干渉する系の魔法など例えあってもここまで何も感じさせないのは不可能だ。後者はあり得なくないが下界に降り立った神々がこんなことして何の意味があるのだろうか。

 

『まさか自殺行為に及ぶななんて・・・・・あなたは色々な意味で目が離せませんね』

 

虚空からソプラの声が聞こえた。誰だ?

 

『声だけで申し訳ございません。私の名前は神です』

 

・・・・・この世界の神か?

 

『違います。転生を司る神と申し上げれば思いだしてくれますか?』

 

転生を司る神・・・・・あっ、元の世界で死に掛けた時に話しかけた神か!

 

『覚えてくれていたようで安心しました』

 

心なしか嬉しそうに声音が明るいけど、俺をこの世界にトばしたのはあんただよな。

 

『そうです。そして並行世界の数多のあなたも今現在異世界へ活躍を促しています』

 

活躍と言うより俺たちの生き様を娯楽目的で異世界に送り込んでいることだけはよーくわかってるからな?目の前にいたら女だろうと殴り飛ばしたい気持ちでどうしようもないんだけど。

 

『それは遠慮させてもらいます。もう一人の兵藤一誠に私の世界の領域にカチコミをしてきて数人の神を滅ぼしてくれた経験がありますから。今でさえどんな結界も罠を張っても掻い潜ってたまに侵入してくる始末です。本当にあなたと言う存在は宇宙が誕生して以来の異常存在(イレギュラー)です』

 

―――ナイス、もう一人の俺!溜飲が少し下がった!

 

『喜ばないでください。あの時は本当に産まれて初めて肝を冷やしたのですから。もうあのような事が無いよう今ではあなたにも対して厳重に警戒しながら結界を張っていますから二度目はないです』

 

異常存在(イレギュラー)の俺なら俺もできるとは考えないのか。

 

『・・・・・話しの本題に入ります』

 

あ、あからさまにはぐらかした。神のくせに格下の口に勝てないなんてそれでも神?

 

『その気になればあなたをその世界のゴブリンに転生させることも可能ですが?』

 

スイマセンでしたぁー!!!!

 

『その潔さは他の兵藤一誠には見当たりませんね。では、本題に入ります。あなたの自殺行為を止めたのは傍観者たる私の楽しみを失くさせないためです』

 

自分本位かよ。映画館に来た客気取りでいないか?

 

『あなたにも利益が無いわけではありませんでしょう?未知の世界で見聞して体験するという喜びやダンジョン攻略等の経験は楽しくないと言えば嘘の筈です』

 

まぁ、色々と楽しませてもらってるけどよ。いきなり俺の大好きな家族や世界から引き離されて異世界に来させられるのは誰だって困惑したり嫌がるだろ。それと他の異世界人もこの世界に来てしまった理由は十中八九、お前のせいか?

 

『原因と言えば私であります。直接的ではなく間接的な意味ですがね。もう一人の兵藤一誠がいる異世界の住人がこの世界に招いてしまったのはこちら側のミスです。働き詰めの部下が寝オチで・・・・・』

 

オイ・・・・・?

 

『ま、まぁ起きてしまったことは仕方がございません。お詫びとしてある条件を満たせば元の世界に戻せるように密かに設定してあります』

 

・・・・・それ、異世界から来た俺達にも同じだろうな。贔屓は許さないぞ。

 

『はい、共通の条件です。かなり厳しいですが知りたいですか?』

 

元の世界に戻れる、もしくは行き来できる方法があるなら是が非でも。

 

『簡単な事です。その世界の人種がダンジョンの最後の階層まで踏破すれば自動的に戻れる様になっています。ですが、異世界から来た者達と転生者達の協力なしです』

 

神レベルで長い話しになるな・・・・・俺以外の異邦人達や転生者達が帰れないじゃんか。

 

『そうとも限りませんよ。それ以外の独自の方法で元の世界に戻った人間がいます』

 

え、そうなのか?でもそいつらだけだろ。てか、それは何時の話しだ

 

『千年前ですね。最初の神々が下界に降臨した際に異世界から来てしまった人間が二人ほどいました。その二人のお陰で現在のオラリオがあると言っても過言ではありません』

 

そうなんだ。素直に感嘆するよ。会えるなら会ってみたいけど元の世界に戻ったなら死んでるだろ。

 

『・・・・・まだ死んでませんよ?しかも兵藤一誠と深い関係者ですその人間達は』

 

・・・・・マジで?え、そんな人俺の回りに・・・・・。

 

『案外あっさりと思い至るでしょう。そして納得もするかと』

 

まだピンとこないが・・・・・ま、帰れる方法が解っただけでも良しとしよう。俺達にはかなり厳しい条件だけどな。

 

『仕方がありません。世界のレベルが違う者が偉業を成し遂げようとする行為はチートであり、私好みの物語ではありませんからね』

 

ブレないな転生の神。じゃあ間接的な協力でもダメ?一気に目的の階層に送るとか。

 

『駄目です。ただでさえその手の道具を作ってしまったのに、あなた自身が協力するなど冒険者の本質が問われます。ですが、あなたが作ってる道具ならギリギリ許容範囲で認められます』

 

いいんだ?よっしゃ、それならあいつらの助けになるような道具を作って俺達の為に頑張ってもらおっと。

 

『・・・・・もっと駄々を捏ねるかと思いましたが、本当に潔いですね』

 

駄々を捏ねて最後の階層まで協力の許可を貰えるなら喜んでするけれど?もしかしたらお前を楽しませるような事が起きるかもしれないし。

 

『そうですか。魅力的ですが世界に干渉することはできません。あなた個人とならできますが・・・・・そう言えば、一つお聞きしても良いですか?』

 

なんだ?

 

『最近、興味を抱くようになりましたが。あなたの世界の料理はそんなに美味しいのですか?異世界の料理を人間や亜人(デミ・ヒューマン)、神々が幸福感を顔に出して食べている様子を見て不思議を感じていまして』

 

へ?まぁ・・・・人それぞれ?神それぞれじゃないか?というか転生を司る神達は食べる概念はないのか?

 

『私達は他の神、並行世界の神々と同じだったり違ったり食事を摂る必要性はないんです。その代わりに疲労が蓄積すれば睡眠を求めますが』

 

変わってるなー。じゃあ、試しに異世界の料理を食べてみるか?

 

『よろしいので?では、一日三食。毎日お願いしますね。あ、食べ終わったらちゃんと食器類は返しますのでご安心を』

 

あいよ。でも、どうやってそっちに届ければいい?そう言う手段、俺は知らないぞ。

 

『あなたの世界では神社や神棚にお供え物をする習慣がありますよね?それを応用に私が用意する神棚で祈りを捧げ送って下されば』

 

神通力的な感じか?でも、作るにも食材は無尽蔵じゃないぞ?現に月に一度だけ異世界から食料を調達しないと異世界の料理なんてできやしない。今じゃ大勢の居候がいるしお前に作る分も考慮するとなぁ・・・・・。

 

『確かに、食材はダンジョンから得られる鉱石や金属、ドロップアイテムのように無尽蔵に湧きませんね』

 

と、こっちの意図を察して転生の神の彼女は考えてるのか声が聞こえなくなった。というか、どこまでダンジョンのことを知っているんだ?この世界の神でもないのに他の世界に干渉してもその世界や神に何の影響もないのかきになるところだ。

 

『―――わかりました。あなたには迷惑を掛けている事も考慮し、あなたにも特典を捧げましょう』

 

特典?転生者達から何度も聞く単語だな。それってどんな能力でも願えば得る物なの?

 

『神になること以外であれば何でもです。元の世界とこの世界と行き来できる能力ですら可能ですよ』

 

だったら俺が一番望んでやまないそれが良いんだけど!?

 

『あなたには既に元の世界と干渉できる魔法があるじゃないですか。それは欲張りですよ』

 

それ、俺以外の異邦人達が望んでも同じこと言えるのか?

 

『・・・・・では特典を捧げますよ。これならば食材の調達の問題も解消するでしょう。他にもあなたが喜ぶようなものと役立つものも与えておきます』

 

あからさまにはぐらかすな!と叫んだところで俺の体が光に包まれたと同時に意識が遠退いて・・・・・!

 

『では、明日から「五年間」お願いしますよ兵藤一誠』

 

その声を最後に視界がまた暗くなって・・・・・次に視界に飛び込んできたのは剣を持つ腕を掴んで抑え込んだり、剣と俺の間に入って首を切り落とさせないようにしたり、押し倒して動きを封じるなど馬鹿な真似をさせないようにした皆の姿だった。

 

 

 

 

「馬鹿なことをするな!」

 

「死んで償う考えをするなんておかしいわよ!それであなたが会いたがっている家族を悲しませちゃ本末転倒でしょう!」

 

転生を司る神と出会っていたことをリヴェリア達気付かない。彼女達からの強い説得力に自殺を図った自分に戻ってきたことを冷静になって大剣を持つ力を緩めた。それに彼女達はホッと安堵の息を漏らし諭す言葉を掛ける。

 

「イザナミの薬のせいで苦しんだあなたを助けたくてした。それは私達の意志よイッセー」

 

「・・・・・アリシアとアスナはどうなる」

 

場の空気を呼んで話しを進める方針で、自分の愚行に苛みながら訴えるような目付きで問うとハイエルフが口を開いた。懺悔を言う風に。

 

「私達のせいだ。あの時冷静な判断がままならず、後先考えず興に乗って無理やりさせてしまった。だからお前が気にするなと言っても無理があるだろうが・・・・・」

 

リヴェリアから向けられる視線に当人達は複雑な表情を浮かべる。

 

「二人ともすまなかった。いかなる罰を受けても私達は文句など言わない。アリシアに至っては純潔を無理矢理散らさせたようなものだ。本当にすまない。」

 

「い、いえ・・・・・苦しんでるイッセーを何とかしたいと言う気持ちはありました。それに彼も私達を気遣ってくれて・・・・・」

 

「複雑ですが・・・・・彼等三人のように欲望のまま身体を求める行為ではありませんでしたし、あんな状態でも優しさが残っているイッセーさんに純潔を捧げる事に嫌ではなかったです。それに彼は自分が犯した行いに深い悔恨と苦しみを抱いています。あの三人と違うところを見て好感を抱いています」

 

昨夜の一件は許すと言外するアスナとアリシア。それでも一誠の中では自分を許せないでいて暗い影を顔に落としていたところ、アミッドが真正面から話しかけた。

 

「イッセーさん。私は【ディアンケヒト・ファミリア】の団員アミッド・テアナサーレではなく一人の女性としてあなたのことを慕っています。ですから、このお城にいる間は私のことをただのアミッドとして接して愛してくれると嬉しいです」

 

「・・・・・あの主神にバレたらどうする」

 

「即脱退しましょう」

 

躊躇いもなく断言したアミッドに度肝を抜かされた。自分の【ファミリア】に未練はないのかと思わせうほど清々しく言い切った彼女に言葉も失った。

 

「私とあなたの関係に気づいたら、この件について脅してディアンケヒト様は強要するでしょう。イッセーさんの回復道具(アイテム)は喉から手が出るほど欲しております。ですからそうさせない為に脱退しましょう。脅してでも」

 

そこまで金にがめついのか、と初老の男神のことを思っている一誠の頬を両手で包み込むように添えるアミッド。つぶらな瞳が真っ直ぐ金眼を見据え、言葉を語り続ける。

 

「私は一瞬たりとも後悔していません。寧ろ幸せでした。好きな人に全てを捧げる事が出来ましたから。だから私達の為に自分を許せず後悔するなら、全力であなたを支え愛します。まだ身体は成長していませんが必ず幸せにしてみます」

 

白銀の少女の告白と一緒に重なる唇は、確かな気持ちを伝えるのに十分過ぎたところで金と青の目を持つ二人の少女の顔が近づいてきた。

 

「私も、私もイッセーのこと、すき、だよ?」

 

「強くなること以外したいことができたよ。私、イッセーのお嫁さんになるっ」

 

彼女達もアミッドに見習うよう小さな唇を少年の唇に押し付ける。そして三人が揃って告げた。

 

「「「大好き」」」

 

愛の言葉を向けられた。純粋無垢なまだ幼い子供の言葉は遠からず成長を果たした時でも変わらず言ってくれるか分からない。だが、一誠は知っている。体験も経験もしている。過去に出会って交流した少女達が成長しても変わらない気持ちを抱いたまま自分のことを好意を向けて来ることを。それがどれだけ嬉しい事だろうか、どれだけ救われているのか彼女達には教えない。自分だけの秘密として大切に胸に抱くのだ。この幸せで温かい気持ちを独り占めするために。

 

「・・・・・三人とも」

 

両腕でアイズ達を抱きしめ「こんな俺を好きでいてくれてありがとう」と感謝の言葉を送ると愛しい少年の腕の中で花が咲いた様に微笑んだ少女達。

 

「むっ、手前だってお主のことが好きだぞイッセー。仲間外れはズルい!」

 

飛び掛かる椿が一誠を押し倒した。それが契機となってヘファイストス、フレイヤ、アマテラス、イザナミから愛の言葉を送り始め一種の告白大会に発展してしまい静観するリヴェリア、呆然とするアスナとアリシア、苦笑いする一誠達を呼びにロキが来るまで続いたのは余談である。

 

 

 

―――今日は『異世界食堂』の休店の日。事前にミア達に教えておりながら分身体達に仕込みの教え方をレイラとアスナにも伝授している間、オリジナルの一誠は騎空挺を造る造船所にいた。下部の船はほぼ形として出来上がっており、その騎空挺を飛ばす役割を担う翼も巨大なクレーンで運ばれる作業が行われている。空の世界で発見したあの騎空挺と似た船は何時しかオラリオの上空を飛ぶことになるだろう。断言する。世界が同じでありながら誰も手を伸ばしても届かない空の世界にしか造られている乗り物が今、地上でも在ろうとしている。もしも完成した暁には、ギルドが黙っておらず強制依頼(ミッション)を発令し、量産型の騎空挺を造らせるつもりだろう。あの、ギルド長のエルフならしかねないと船と翼が結合した瞬間を目の当たりにしながら思い更けるリヴェリア達。

 

「・・・・・さて、これもようやく完成だな」

 

一人、空を駆ける大型の騎空艇の甲板に立ち周囲を見渡す。空の世界の空を駆ける船を地上の世界でも作り上げた一誠は満足げに見つめ、これまでの苦労を走馬灯の如く思い返し感傷を浸って間もなく船の中へ入り込む。最後の最終調整の仕上げに取り掛かるために。

 

 

「・・・・・そう言えばイッセー。【アポロン・ファミリア】に何も要求せずに終えたようだがよかったのか?」

 

ダオスと従者がオラリオのグルメを食べ回りに行って城の中は何時も通りのメンバーしかいない昼食の時間帯。異世界の料理の味に舌鼓を打ち、どう作ればこんな料理ができるのかと【ロキ・ファミリア】の女性団員達から相談を受けている一誠に素朴な疑問をぶつけたリヴェリア。

 

「ああ、したぞ。だけどまだ駄目だった」

 

「まだ駄目だった?」

 

意味深な返事をされ鸚鵡返しをしたハイエルフに当時のことを教える。

 

「あの【ファミリア】に欲しい冒険者がいたんだけど、最近入団したばかりだと言われたから一年後改宗(コンバージョン)をする約束を取り付けた」

 

「お前の目に適ったその冒険者は・・・・・もしかして女か?」

 

「うん、そんで俺が予想していた通りの能力を持っていたから是が非でも引き抜きたかったよ。残念」

 

また女を増やすのかと思った矢先、一誠が欲する能力=スキルか魔法のどちらかを保有している冒険者だと認識を改めた。

 

「【アポロン・ファミリア】にレアスキル、希少魔法(レアマジック)を持つ冒険者がいたと?」

 

「というより、個人的で一方的に知っているからこそ解ってしまうんだ。彼女を信じればどんな災いでも乗り越える事が出来るからな」

 

名も知らぬ冒険者を絶賛する一誠にそこまで言わせる。とても珍しくリヴェリア達も興味が湧いた。加えて災いを乗り越える等と一体どういうことなのだろうか?

 

「さて、俺はちょっとガネーシャのところに行って来る」

 

「何をしに?」

 

「【ステイタス】の更新をしにだよ。あの船を完成させたから新しいスキルが発現しているかもしれないし」

 

街に出かけようとならば私達も行くと気配を醸し出し、腰を上げた一部の少女達は残念そうに座り直した。すっかり少年に恋し自分の気持ちを素直になった彼女達。元の世界にいる家族達と同様に可愛らしいと心の中で微笑んで出かける支度をする。

 

「・・・・・結果、出てると良いんだがな」

 

 

イッセー

 

Lv.2

 

力:I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力:I0

 

 

 

《魔法》

 

 

真・異世界扉(ネオ・ワールド・ドア)

 

 

・移動系魔法。

 

・継続時間と大きさは魔力数値に依存、憧憬によって過去・現在・未来の異なる望む世界へ行き来できる。

 

・強い憧憬である程、成功率上昇。

 

 

(特典)『鑑定』

 

・ありとあらゆるものの価値を見定める。

 

 

《スキル》

 

 

異常不明(イレギュラー・アンノウン)』 

 

・戦闘時のみ発動。階位(レベル)、『基本能力(アビリティ)』が反映・真価を発揮し、全能力の超高補正する。

 

 

『恋愛一途』

 

・早熟する。

 

・懸想が続く限り効果維持。

 

・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。

 

 

『魅了成就』

 

・魅了する。

 

・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。

 

・神・老若男女、人種問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。

 

 

『三技一体』

 

以下の三つのスキルが一つとしてそれぞれの発動条件が満たされると一時発現する。

 

 

料理想達人(クッキング・マスター・シェフ)

 

・調理道具の装備時、発展アビリティ『料理』の一時発現。

 

・補正効果は『器用』と『敏捷』のアビリティ数値に依存する。

 

 

『神伝鍛冶』

 

・鍛冶道具の装備時、発展アビリティ『鍛冶』の一時発現。

 

・作製した武具の品質の向上は『器用』アビリティ値に依存する。

 

 

神秘希少(ウルトラ・レア)

 

道具(アイテム)の作製時、発展アビリティ『神秘』の一時発現する。

 

・一定以上の道具(アイテム)の製作時、スキル『幻想』が発現する。

 

 

『運命協同体』

 

・同恩恵を持つ者のみ効果を発揮。

 

・懸想の丈の度合いによって【経験値(エクセリア)】の分配が変動する。

 

・『運命協同体』の副次効果―――懸想の丈の度合いによって良好の同恩恵を持つ以外の者も共同することで【経験値(エクセリア)】の分配が変動する。

 

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

(特典)『異世界買物覧(ネットスーパー)

 

・ヴァリスを払うことで異世界の物資を購入可能

 

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

「「・・・・・」」

 

ガネーシャの口があんぐりと開いたまま間抜けな面を晒す。ナニ、コノ特典トカ言ウ魔法(マジック)トスキルハ。羊皮紙に写した自分の【ステイタス】を見た一誠も神妙な面持ちで押し黙る。神部屋の中は不自然なほど静まり返り、二人とも一言も口にせず互いの顔を見合わせた。念願の【ランクアップ】。これだけならまだ両手挙げて喜べただろうが、見聞したことが無い魔法(マジック)とスキルを見て。

 

「ガネーシャ、超ビックリ」

 

「イッセー、超ビックリ」

 

お互いの心境を打ち上げながら発展アビリティ、『狩人』『幸運』『調理』のどれか―――『幸運』を選んで冒険者となって四年目にしてようやくアビリティオールIのまま【ランクアップ】を果たしたのであった。そして城に戻って自分の変化を教える一誠に、リヴェリア達は何とも言えない面持ちで「まあ、それでも頑張ったじゃないか」的な労いの言葉を掛けるのであった。

 

 

 

そんな結果が起きてからあっという間に深夜。アスナだけ応接間に誘って重大な話を打ち明けた。

 

「アスナ、分かったことがあるんだけど・・・・・俺の話しを聞いてから信用するか否か決めてくれ」

 

自殺しようとしかけた時、自分は意識だけ別の世界に引き込まれてそこでこの世界に自分達を招いた元凶と話しを交わし、ダンジョンの最後の階層まで踏破できれば元の世界に戻れると言う方法を告げた。耳を傾けていた彼女は亜麻色の瞳を丸くして彼の少年の言葉は真実だと信用することで受け入れた。

 

「だけど、私達が協力してもダメなんて・・・・・それこそ何時帰れることができるのかわからないよね」

 

「俺だったら一年以内に踏破する自信はあるんだけど、あの傍観者気取りの神がそれを許さないんだ。俺達の存在自体がチートだからつまらないって理由でな」

 

「ちょっと嫌な感じだね。異世界の神様もこの世界の神様の快楽主義者みたいに私達で面白がっているなんて」

 

転生を司る神に対する印象は低めのアスナと諦観の一誠。どうしようもない現実にこの湧き上がる気持ちはどこにぶつけていいのやら・・・・・と思いながら疑問をぶつけた。

 

「そう言えば、最後に五年間って期間を言ってたな」

 

「五年間?それってお供え物を五年間すれば私達でも最後の階層まで踏破したら元の世界に戻れるってことなのかな」

 

「わからない。まぁ、彼女にも異世界の料理を食べさせる約束をしたからには、作らんとダメだ。取り敢えず特典で貰った能力で早速試してみるとするけど」

 

「特典?」

 

死んだ人間が転生する際に必ず神から望めば何でも叶える魔法やスキルのようなものだと説明した。教えられたアスナは信じられないと前にも教えたがやはり驚きを禁じ得ない様子で。

 

「それなら、元の世界に戻れる願いを叶えられるよね?」

 

「俺もそれを願ったら欲張りだって言われて叶えてくれず、このネットスーパーなる特典のスキルやあらゆるものを鑑定する『鑑定』の特典を貰った」

 

「鑑定はともかく、それって実際にどんな物なの?」

 

「金を払えば異世界の物資を購入できるって―――ネットスーパー」

 

呪文を唱えた一誠の前に光る四方形が。そしてパソコンの画面のように見慣れた文字と絵が浮かび上がって思わずとアスナが漏らした。

 

「これ、よく見るネットスーパーのサイトのままだよね?」

 

それには一誠も同感だと頷く。そして二人の前に浮かんでる画面に触れて検索することで分かったことがある。飲料水、食材、調味料、生活用具や調理器具など異世界で存在している物が何でも購入できる事を。仕舞には船や車、武器、更には飛行機までこの世界に必要なさそうな物までもがあった。

 

「・・・・・ぜってぇ飛行機を買う必要ないだろ」

 

「うん、そうだね・・・・・武器に関してはシノのんが欲しそうな銃もあるけれど、この世界じゃね?」

 

「世界観を壊すもんは世に出しちゃいけない」

 

城の中だったら考えるけどな。と付け加えながら検索をし続け―――地方の郷土料理も販売されていることを知り「「へぇー」」と関心の声を揃って上げる。物珍しいものもあり中にはとんでもないものもあった。年齢制限がされていない夜の営みに使うような薬や大人の道具まで確認するとアスナの顔がボッと火が噴いた様に耳まで紅潮した。

 

「・・・・・買ってみるか?」

 

「か、買いませんっ!」

 

「でも、避妊具とか避妊薬は必要だろ」

 

そう言われると真っ赤な顔のまま俯いて、この先のことを考えたようで小さく頷いたアスナであった。それから気を取り直して興味津々で検索する一誠の横顔を見ながらアスナは提案した。

 

「ねね、何か買ってみてよ。これ価格がこの世界の単価になっているみたいだからきっと買えるよ」

 

好奇心に擽られたアスナに促され画面を消す。自室に戻って保管庫から金を調達する。その際、部屋にはアイズ達がいた。皆既に風呂あがりか火照った顔に身体から甘い香りが立っている。

 

「何をしようとしている?」

 

「買い物。ネットスーパー」

 

もう一度呪文を唱え、サイトの画面を展開した様子を彼女達は目を丸くして追究しようと近づいてきた。しかし、一誠とアスナしか読み取れない文字でこの世界の住人たる彼女等は何て書いてあるのかチンプンカンプン。

 

「この摩訶不思議な映像で買い物をすると?」

 

「うん、できるみたい。するのが今日初めてだけど」

 

「また異常(イレギュラー)な魔法を発現したのね・・・・・」

 

前回はヘファイストス、今回はガネーシャ。きっとあの男神も見たことのない魔法を目の当たりにしてびっくりしただろうと推測を立てながら「それと」と言葉を続ける一誠に耳を傾けた。

 

「俺、【ランクアップ】を果たしたよ」

 

『・・・・・』

 

静かになった彼女達を他所に、選んだ物をカートに入れて購入手続きの画面になると、『残金が不足しています。チャージしてください』と表示された下に四角い枠があった。そこに恐る恐るヴァリスをその四角い枠に近づけると・・・・・枠の中にヴァリスがスッと吸い込まれていった。そして注文を確定させると、目の前に光の粒子が集まって徐々にその姿を現した。注文すると配送されてくるのは、この世界には存在しない段ボール箱である。懐かしい段ボール箱を開けると中にはさっき注文した物が入っていた。

 

「おおっ、アスナ。注文した食材がちゃんと届いたぞ!」

 

「すごいっ!じゃあ、さっき雑誌とか本とかあったから今度はそれを私のお金で買ってくれる?」

 

異世界から来た異邦人達だけ花が咲いた様に笑って盛り上がる。なんだろうか、この蚊帳の外に置いてけぼりにされた感じは。自分達だけ楽しげに私達の存在は忘れてないだろうか?だからこそそれが絶対に面白くないリヴェリア達は獲物を狙う猛禽類のような気配を醸し出し―――。

 

『イッセー・・・・・』

 

「うん?あ・・・・・・」

 

彼女達の表情と伝わってくる気配に「やべ」と危機感を覚えた一誠のその後・・・・・根掘り葉掘り聞きだされたのだった。

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