ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚13

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【ヘファイストス・ファミリア】の支店に椿の手伝いもあって実務はほどこおりなく進めていた。団員達が打ち上げた作品の売上金と予約、補充する素材の点検諸々目に通す鍛冶神の背後から差し込んでくる太陽の光は晴天の証であった。それでも室内に冷気が滲むように入ってくるので暖炉に火を点けて整った環境の中で筆を走らせる。

 

「主神様よ、今度はどの【ファミリア】になるのかの」

 

「藪から棒にどうしたのよ」

 

「決まっておろう。また手前らの【ファミリア】に成り、再び常識を超えた作品を打ってもらいたいのだ。最近あやつは、魔道具(マジックアイテム)やら店の事やらで武器を打っておらんではないか。手前は少し不満である」

 

鍛冶師(スミス)としての性か今の生活に満喫してなくはないが個人的に不満を抱いていた様子に紅髪紅眼の主神は息を吐いた。

 

「あの子にはやることがたくさんあるのよ。そのおかげで私達はまた新しい作品の可能性を見出したじゃない。空の世界で手に入れた武器は真に興奮を覚えたわよ私は。まだまだ神匠と称されるのは早かったかしらね」

 

「天界で主神様は神々にどう呼ばれておろうと、手前の二つ名は大いに不満だ。モンスターの名前のようでな」

 

書類の束を執務の机に置いて腕を組む椿は不貞腐れていた。当時、常識神としてもっと無難な二つ名を得たかったヘファイストスは一日の長と数、権力と地位の前に成す術もなく椿にとって不名誉な命名が決まってしまった時は申し訳ないと謝った頃が懐かしい。

 

「なら、【ランクアップ】するよう頑張りなさい。今ならマシな二つ名を付けれるようにできるから」

 

「そういうことならばイッセーとダンジョンに参るとするかの」

 

楽しみだと口角を吊り上げるハーフドワーフの団長に短い応援の言葉を送りながら仕事を没頭する。一年後になればこの場にいない男の次の【ファミリア】の改宗(コンバーション)先が決める催しが始まる故に、ちょっぴり期待する鍛冶の女神の仕事中にノックの音が聞こえた。

 

―――『中層』17階層。

 

テルスキュラからやってきたアマゾネス達の腕試しが行われていた。四人だけで潜在能力(ポテンシャル)LV.4の『迷宮の孤王(モンスターレックス)』を相手取っている様子を一誠達は四人の邪魔をさせないよう湧いてくるモンスター達の駆逐を専念しながら見ていた。

 

「フィン、複数の第一級冒険者が格下の階層主を倒すのはイジメに見えてくるぞ」

 

「ンー、僕個人に言わせてもらえば君と戦うのに第一級冒険者は100人いても足りないぐらいだよ。オッタル位の実力者だって精々その数倍が欲しいぐらいだ」

 

「ん、俺から言わせれば全然足りないと自負させてもらう」

 

体勢を崩し地面に倒した所から乱撃(ラッシュ)。視界を奪い、極太の足から独楽のように回りながら切り刻み、体術で巨躯の体にダメージを与え、一誠からの願いで『魔石』の直接破壊をせず二組の姉妹は救援の要請を乞わず自分達だけで十分以上経った頃に階層主ゴライアスを倒してみせたのだった。

 

「強いね彼女達。彼女達のような強い者が【ファミリア】に入ってくれれば今後の『遠征』が順調だろうに」

 

「フィン、アマゾネスは強い男に惚れる性らしいからお前を惚れる奴が現れたら苦労するんじゃないか?」

 

「ふむ・・・妙に現実味ある言葉を言うではないか」

 

「【勇者(ブレイバー)】と称されてる者が女に追いかけられる姿など想像もできんが。アマゾネスを入団させるなら覚悟しなければならないぞフィン」

 

ドワーフの老兵ガレスと都市最強魔導師のリヴェリアも話に加わり、何故か親指が震えたのは気のせいだと素知らぬ顔で苦笑いするフィンが振るう槍の餌食となったモンスターが最後で、死屍累々と化した空間に立っているのは一誠達冒険者のみ。ゴライアスから魔石とドロップアイテムを回収したアルガナ達が戻り手渡してくる。

 

「手応えが無い。もっと強い獲物はいないのか」

 

「大丈夫、後は中層の更に下にいる階層主がいる。お前等と同じLv.は5だ」

 

「そうか、ここは色んな獲物がいて楽しいな」

 

長い舌で唇を舐めて好戦的な光を瞳に宿すアルガナ。二人が流暢に話し合っているのだが、共通語(コイネー)に翻訳している耳飾りを付けているから会話が成立しているものの、フィン達はちんぷんかんぷんだった。それでも一気に『下層』まで移動して『アンフィス・バエナ』の出現を待つ。

 

「そういや、『改宗(コンバージョン)』の状態でも【ステイタス】に経験値(エクセリア)や熟練度って貯まる?」

 

「いや、あくまでスキルや魔法、諸能力が変わらず発揮できるだけだ。改宗(コンバージョン)の状態は一時的に停滞してどこかの派閥に入らない限りは成長できないんだ」

 

「逆にお前のように一年毎他の【ファミリア】に異動するほうが珍しいんじゃ。特別理由が無い限り普通はその【ファミリア】に居続けるのが当たり前じゃ」

 

フィンへの質問にガレスも話に加わる。目の前でこの階層に来た冒険者を圧倒させる緑玉蒼水(エメラルドグリーン)の大瀑布は海の彼方から来た強さと狩りだけしか知らないアマゾネス達でさえも驚嘆させた。

 

「そうか、じゃあアルガナ達はフィン達にとって宝の持ち腐れ?」

 

「ああ、Lv.5の実力者がどの【ファミリア】にも属さずにいるなんてオラリオじゃあ絶対にあり得ないことだよ?」

 

そうさせているのはどうやら君が原因らしいけれど、と意味深に付け加えるフィンの指摘に一誠は別の考えをしていて思考の海に没頭した。不自然な静けさに皆は視線を一人に注いで言葉を待つこと一分、一誠はアルガナ達四人へ視線を向けとんでもないことを言いだした。

 

「―――【ステイタス】、作ってみようかな」

 

「「「・・・・・」」」

 

神のなせる業を作る・・・・・だと?

 

 

 

「~♪」

 

四人の第一級冒険者が死闘を繰り広げ、フィン達もフォローをして『アンフィス・バエナ』の討伐に成功した。次は自分達だけで倒してみせると意気を示した後は転移魔方陣で『幽玄の白天城』に戻り次第、転生の神にお供えをして工房に籠り出す。作業している少年の邪魔にならないよう斜め後ろ、真横、机を挟んで見学と称した視線を一誠の手の中で弄ばれてる薄い金色のプレートに落とす。その側には赤い液体が入っている瓶が二つ置かれている。それを見てリヴェリアは気にした風に作業している者に話しかけた。

 

「この赤い液体は血か?」

 

「うん、神血(イコル)だ」

 

「なっ・・・・・」

 

神々の血が目の前に置かれていることを瞠目するほど絶句したハイエルフ。一体どの神から採取したのか。神の血を献血する行為はギルドでも禁止しているほどだ。仮にも神々の神血(イコル)をもとに作製した道具(アイテム)は非合法として扱われる。

 

「お前・・・・・どこでこれを手に入れた・・・・・」

 

「ロキとガネーシャに頼んだ」

 

「ロキと神ガネーシャにだと?一体何時、神血(イコル)を・・・・・」

 

「千年もののワインの対価にブランデーと仮面で俺が済ませると思ったかリリア?」

 

―――あの時か・・・・・。

 

他の神々や自分達に内密で、二柱の神の贈り物に大変不満を持った一誠が絶対に物では変えられない物を後で要求したのだろう。それが神々の血だ。千年熟成したワインに匹敵する物は、異世界から来た一誠にとって異界の神の血なのだった。要求された側の女神と男神は戸惑ったものの今後のことを考えて受け入れ、後日溜めた血を渡したのだと推測した。

 

「イッセー、とんでもない要求をしたな・・・・・お前を恐ろしく思ったのは今日が初めてだが、誰もが耳を疑うような物を本当に作れるのか?擬似的に神の恩恵(ファルナ)を作製するなど聞いたことが無い」

 

「宝の持ち腐れにしたくないからな。主神無しでも【ランクアップ】ができるならあの四人も御の字だろう。それに作り上げれるかどうかは俺の技術次第だ。これは紛れもなく神の御業だ、不老不死を与える『賢者の石』並のな」

 

瓶を手に取り中から一滴だけプレートに垂らし、『神秘希少(ウルトラ・レア)』のスキルを全力全開で発揮する。幾重もの魔方陣を展開して神の血を宿したプレートに魔方陣を刻んでいく―――。

 

 

 

 

 

「若、そろそろお戻りにならねば日が暮れます」

 

「まだ見回ってない店があるのだが仕方ない」

 

ダオス達がオラリオに来てから今日も美味な酒を出す店や見聞したことがない料理を出す店、変わった店、ならず者やゴロツキが屯するような店まで訪れて飲食し続けた。が、許された時間は気付けば残り短くなっていた。西に沈みかける朱色に染まった太陽と空が蒼色に移り変わろうとしてる時間帯、ダオスと老従者は西と北西の方角へ体を向け帰路に着こうとする。

 

「如何致します。やはりあの店主に決めますか」

 

「第一候補としては考えてる。が、まだ時間が残っている限りはもう少し他の店を見て回りたい」

 

「畏まりました。では今夜の食事場は・・・・・」

 

「『異世界食堂』だ。あの店はまだまだ食べたことが無い異世界の料理があるのだからな」

 

王子と従者が食べに行く場所は他の客も、足を運び今日一日の締めとして異世界の料理と酒を堪能しに、空腹を訴える腹の虫を抱えながら向かっていることを二人は気にしない。

 

そんな中、今年になって一誠、アイズ、アリサが【ランクアップ】を果たしたことでロキとガネーシャは三ヶ月に一度行われる神々の会合、暇を持て余した老若男女の神々がこぞって出席し、名ばかりの諮問機関こと『神会(デナトゥス)』が開催されようとしていた。

 

「それじゃ、進行役は私でよろしくね?」

 

「「「「「ハーイッ!」」」」」

 

柔和に微笑む銀女神に男神の大半が異論なんてあるか、寧ろある方がおかしい、と笑顔で認めた『神会(デナトゥス)』の進行役に異論を唱える神は約一名。

 

「って、どうしてさんざん神会(デナトゥス)に参加するどころか司会進行役も興味無いと言い抜かした色ボケが仕切るんや!己、オキニの子供の二つ名を優先的に決定するためやなっ!?」

 

「あら、誰のことを言ってるのかしら。私には身に覚えがないわ。ねっ、そうでしょう皆?」

 

「「「「「そうでぇーす」」」」」

 

反論するロキに何時もより心なしか顔が楽しげに微笑んでるフレイヤを見て、男神達は今までの三倍は色めき立っている。もう、あの笑みを見たらご飯が三杯おかず無しで食べれるアレの男神を多く味方に付けた美神を止められる神は1柱も存在しない。

 

「・・・・・イッセー、ごめんなさい。止められないわ」

 

「あら、ヘファイストス。イッセーちゃんは【ランクアップ】したの?」

 

懺悔のごとく吐露した鍛冶神の隣に、たまたまいた蜂蜜色でウェーブが掛った女神の耳に入ってしまったがそれどころではない。今回司会進行役を買って出たフレイヤがし切っていく。まずは都市内外の情報交換を主にした定例報告会。

 

「ハイハーイ!まずは俺から。誰も知ってるあの空飛ぶ巨大な船の所有者が分かったぜぃ!なんと異世界食堂の店主だったー!あとついでに今絶賛、商人達がこぞって船の売買を求めているそうでーす」

 

「「「なにぃー!?」」」

 

「あの子供が・・・・・」

 

「やべぇ、オラわくわくしてきた!」

 

「あの船欲しいィー!」

 

「面白い道具(アイテム)を作るし美味い飯と酒も振る舞える上にあれって・・・・・」

 

「ぐふふ、イケナイ子だなぁ・・・・・これはあれだよね?あれしかないよね?」

 

「お、おい!フレイヤ様の満面の笑みからかつてない殺気(オーラ)迸っているから変な考えはよせ!?」

 

「ヒィイイイイ!?」

 

「ごめんよ、話しの腰を折るようで悪いんだけど、変な話、最近うちの子供の【ステイタス】が初期化しちゃう奇妙な出来事があった。何か知らない?」

 

「あ、俺んとこもだ」「私の子供も」「なんだ他にも怪奇現象があったのか」

 

「何それ?」「しるわけねー」「恩恵がバクるなんて有り得ないですー」

 

「じゃあ今度は俺の真面目な話を聞け。王国(ラキア)がまたオラリオに攻め込む準備をしているらしい」

 

「ほんと突然だな」

 

「まーた軍神(アレス)かよ」

 

「前回も返り討ちに遭ったってのにこりねー男神だな」

 

王国(ラキア)の子供達がたまに憐れに思う」

 

ふざけた内容から真剣な話まで、円卓の上で行き交う話題は忙しなく、二転三転していく。弛緩した空気はそのまま、神達は各々好き勝手に喋っては他の意見に噛み付く。中には目の前に置かれた『料理』に夢中で話しに加わらない神もいる。そんな状況の収拾など、とてもではないがつきそうもなかったが―――「わかったわ」とソプラノ声を発する司会の声に周囲の声は嘘のように静まり返った。

 

「皆の話しを纏めれば、【ステイタス】の初期化の怪奇現象に王国(ラキア)の進撃、この二つを気にするべきね。オラリオ侵攻についてはウラノスのことだから、独自に王国(ラキア)の情報を把握していると思うけれど、ここにいる皆の【ファミリア】は招集掛けられるかもしれないから、頑張りましょ?」

 

『はーいっ!』

 

フレイヤは提供された情報を簡潔にまとめ、要点だけを抽出していった。神会(デナトゥス)はオラリオの主要な【ファミリア】の主神が集まるだけに、注目度の高い情報を伝達する役割も持っている。

その後もフレイヤは粛々と進めていき、もうあらかた話題が出尽くしたことを確認すると・・・・・彼女は一拍あけて、ニコリと口を緩めた。

 

「それじゃあ、皆お待ちかねの命名式をしましょう?」

 

フレイヤのその発言を皮きりに、それまで口を閉ざしていた数名の神が一気に顔色を変えた。

ニマァ、と。

神会(デナトゥス)常連である一部の神々が、これみよがしにゲスな笑みを作った。悲劇(うたげ)の始まりである。因みに―――神会(デナトゥス)を開催している会場は都市中央に位置する摩天楼(バベル)、その地上三十階、一つの(フロア)を丸々使った大広間の中央にぽつんと置かれている巨大な円卓を囲んでこうしてただ駄弁ったり、最新(ホット)な情報の共有をし、意見を交わすのだが今回の催しは変わってた。

 

老若男女の神々が現在開催している場所は・・・・・『異世界食堂』の二階である。なので、密かにその様子と神会(デナトゥス)の光景を覗き見しようと店主の計らいで、店の中は各テーブルに置かれた大きな水晶玉に映し出され神々の会合を観覧できるよう設置されている。その席に座る客達は物静かに食べる事も忘れ、また食べながら音声有りの水晶玉へ目を向け続けていた。従業員達も注文されるまで見物状態だ。

 

「お前さんとんでもないことを考えたもんだねぇ」

 

「許可も貰ってあるから覗き見ができるってもんさ」

 

Lv.2、上級冒険者になった眷族達の命名式が始まる瞬間を誰よりも真剣な眼差しで見つめる店主にミアは苦笑しつつ自分も水晶玉に目を通す。見ていると始まった命名式にぎらりと眼を煌めかせて、「店主が本気(マジ)な眼をしてる」と他の従業員達を戦慄させる。

 

「さーて、トップバッターは・・・・・お、アマテラスの子供か」

 

「黒髪に黒眼、極東の子供は皆可愛い子でいいなー」

 

「一応、言っておくわ。変な二つ名を付けたら潰しに掛るつもりだから。総勢三百人の眷族でね」

 

「「「あ、はい」」」

 

極東で増やし続けてきた団員達は伊達ではない。今では最大団員数を誇る【ガネーシャ・ファミリア】をあっさり超えた【アマテラス・ファミリア】と【イザナギ・ファミリア】、【イザナミ・ファミリア】の三柱の存在はかなりデカい。古くから神会(デナトゥス)の常連だろうと武力と兵力の数には最大派閥以外敵わない故に格下の【ファミリア】は逆らえない。

 

「えっと、じゃあ・・・・・【黒雛】はどうか?まだ幼さが抜け切れてない印象だ。後々成長する意味で・・・・・」

 

「無難ね。それで結構よ」

 

『痛恨の名』を頂戴せずにいられる方法は、最大派閥ほど大きい【ファミリア】であることや他の神々に多額の賄賂で回避するかだ。極東の三柱の【ファミリア】の規模は最大派閥として数えられているのでそうすることができ、アマテラスは無難な二つ名を得られて内心ほっとした。続いてイザナギとイザナミの番になって太陽神と同じ方法で無難な称号を獲得する。だが、そうすることができない発展途上の【ファミリア】の主神達は『痛恨の名』が続々と大量生産され、悶絶する神がいれば頭を両手で抱え慟哭を散らす神もいるし、血涙を流して打ちひしがれる神がいたらその逆、性根の悪い特定の神達が、酸欠に陥りかねない笑いの衝動を得たいが為に、子供達に畏敬さえ抱かれている二つ名を連発して新参者の神嬲りをする。絶叫してはバタバタと崩れ落ちていく者達と、ゲラゲラと笑い声を上げる者達、両極端の陣営を見て、一階にいる従業員や客達は「うわぁ・・・・・」とドン引きする。

 

「さてさて次!あ、アルテミスの子供が複数!」

 

「ほほう、これはこれは・・・・・」

 

「決め甲斐がありまするなぁ・・・・・」

 

性根の悪い神々にロックオンされた最初の生贄は・・・・・キリトだった。

 

「特徴は黒髪に黒眼、剣を武器にしているか」

 

「黒尽くし・・・・・黒い剣士?」

 

「なんか普通だなぁー」

 

「黒い剣と呼んで黒剣(こっけん)!」

 

「それ武器の名前じゃん。黒騎士も中々捨てがたいと思うぜ?」

 

「真っ黒黒助!」

 

「黒から離れようぜ」

 

「黒から離れたら何が残るって話なんだけど」

 

「悩むな・・・・・いまいちピンとこない」

 

考えに考えて、キリトの二つ名はあーだーこーだと考えた二つ名が行き交い、無難な二つ名であるようただひたすら願うアルテミスの気持ちなぞ露にも思わず、気にせずに最終的に決まった称号は。

 

『―――決定。冒険者キリト、称号は【終焉の漆黒剣士(ラスト・オブ・ダークソードマン)】』

 

「・・・・・ひ、酷過ぎる」

 

テーブルに突っ伏す女神を見てしまった眷族の女性は物凄く同情を覚え、店主も他人事ではないと無言で彼女の肩に手を置いて慰めたが、シリカの二つ名は【萌え萌え子(マスコット)】、シノンは【絶対必中少女(エース・ヒロイン)】、クラインが【燃える暁の零落侍(バーニング・ラスト・ファイター)】等と・・・・・。

 

「み、皆の称号が・・・・・」

 

「・・・・・お前もいずれ、とんでもない二つ名を・・・・・な」

 

「っ・・・・・!」

 

悟った目で店主に指摘されて肩を震わせるアスナ。恥ずかしい二つ名で街中や同業者達から当然のように言われる日々を思い浮かべるだけで穴があったら入りたい衝動に駆られる。無論、それは彼女だけとは思っていなかった。

 

「よーし、残る冒険者は・・・・・ガネーシャの眷族、そしてこの異世界食堂の店主や!」

 

「「「「「待ってましたぁ!」」」」」

 

ロキの言葉に期待の新人(ルーキー)の出番で神々が湧いた中、顔つきを変えた一部の神々がこれだけは譲れないというオーラを醸し出す。フレイヤも笑みが一層増した。

 

「それじゃ、決めましょうか?私は【美神の伴侶(ヴァナディース・オーズ)】だけれどね」

 

異議ありとフレイヤの二つ名を覆せんと我先と既に決めている二つ名を口にする神々が出現する。

 

「【道化の玩具(ロイザラス)】!これ以外あらへんでぇっ!」

 

「あの子の為に無難な二つ名として【鍛冶師の双頭(スミス・ツインヘッド)】でお願いできない?」

 

「【魔導の錬金術師】で頼むよ。彼が作る魔導具(マジックアイテム)は常識を覆していることを皆知っているんだからさ」

 

「【天照の従者】!」

 

「【蒼熾天使(ガブリエル)】」

 

「私は【愛玩狐】が絶対いいわよ」

 

「【象神の料理番長】だぁああああっ!」

 

「「「「「【神々(おれ)達の料理人(コック)】に決まってらぁ!」」」」」

 

フレイヤの思惑に反して男神達が異口同音で店主の二つ名を挙げたことで命名式は混沌と化した。騒がしい二階に対して一階まで聞こえる神々の喧騒に客達は、厨房で燃え尽きたように真っ白になった店主に対する同情が芽生えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「【終焉の漆黒剣士(ラスト・オブ・ダークソードマン)】・・・・・?」

 

「な、なんですか【萌え萌え子(マスコット)】って・・・・・」

 

「私は【絶対必中少女(エース・ヒロイン)】?まあ、呼び名だけ聞けばマシな方かしらね」

 

「チョイ待て!俺の二つ名が【燃える暁の零落侍(バーニング・ラスト・ファイター)】って落ち武者みたいなイメージじゃんかっ!?」

 

「ごめんなさいっ!」

 

 

 

「イッセーの二つ名が・・・・・保留だと?」

 

「なんか、神全員がこれでないと駄目だとお互い譲らなくて・・・・・結局決まらなかった」

 

「私達自身も滅多にない事例だから珍しいと思ってるわよ」

 

「もう、せっかく私好みの二つ名が決まると思ったのに・・・・・」

 

「阿呆言え、そんな簡単に決まると思うたら大間違いや。快楽主義の(バカ)連中を侮ったなフレイヤ」

 

「「残念・・・・・」」

 

帰ってきた主神から恥ずかしい『痛恨の名』で呼ばれるようになった二つ名の報告を聞き、神と同様身悶える様な気持になったのは言うまでもない。

 

「それはそうとアイズたんの二つ名は変わらず【剣姫】、アリサたんは【煌銀炎姫】にしといたから!」

 

「・・・・・興味無い」

 

「・・・・・炎姫?」

 

無難で格好いい二つ名で今後呼ばれようと二人はさほど興味が無い。あるとすれば強さと仲間、慕っている一誠のことだろう。

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