ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚21

自由で有意義な空間(フリーダム・バカンスルーム)』で『ステータスプレート』の作製に入って何度目でどれぐらい時間を過ごしていたのか分からない程没頭してた一誠の横顔を窺えば口元がつり上がったところを見受けれる。

 

「意外と作れるもんなんだな」

 

「・・・・・本当に完成したのですか」

 

作業部屋に入ってきた空色(アクアブルー)の髪と碧眼の少女に相槌を打つ。彼女が横から確認すると五枚の銀色の手の平サイズのプレートがあった。どれもプレート一面に魔方陣が刻まれていて将来道具製作者(アイテムメイカー)となる彼女の瞳は好奇心の光を放っていた。

 

「あとは改宗(コンバージョン)の状態の神の眷族の血をこのプレートに垂らせば発揮する」

 

「【ステイタス】がそのまま反映するとして・・・・・もしも『ステータスプレート』が誰かの目に見られるのでは?」

 

「そこも抜かりなく細工してあるよ。問題は俺の想像通りに出来上がっているかだ」

 

「そうでなかったら・・・・・?」

 

「わからん」

 

そうですか、ときっぱりと言われて何とも言えない気持ちとなったアスフィは一枚手に取って見て確認してみた。特に変わった材質のプレートではなく、表面に刻まれた幾重の魔方陣だけが特徴的だった。魔法の知識は自慢にもならないぐらい低く、単純に見ても理解できない。ならはも魔術師(メイジ)、あるいは魔法、『魔導』を極めた者ならば理解できるかもしれない。

 

「イッセーは上級冒険者になりましたよね。『魔導』の発展アビリティを持っているのですか?」

 

「『魔導』?いや、『幸運』だ」

 

「・・・・・『幸運』、ですか?」

 

聞き覚えが無いという反応をされて不思議そうに小首を傾げる。

 

「『幸運』の発展アビリティを発現している冒険者っていないのか?」

 

「私自身も冒険者となってまだ日が浅いので何とも言えませんが・・・・・たぶん、いないかと。もしよければ教えてくれますか?その『幸運』の効果のことを」

 

「別にいいぞ。隠すことでもないし」

 

【ステイタス】は冒険者の個人情報と同等の意味がある。その一部をあっけらかんに教えるその行為は認めた者以外してはならないが、一誠にとって【ステイタス】は重要視してない故、アスフィに教えたのだった。

 

「単純に運気が上がるだけ、ですか。もしかするとドロップするアイテムの確率が上がるのかもしれませんね。そう言うことならば少し、羨ましいアビリティです」

 

「あと『神秘』と『幸運』で物凄い道具(アイテム)が作れたりしてな」

 

「今、まさに完成したところですがね」

 

ごもっとも、と朗らかに微笑む一誠。

 

「そんなことを話していたら運気が上がる道具(アイテム)を作りたくなってきたな。よし、今すぐ作ろうっと」

 

「もしも完成したら値段は数百万ヴァリスはくだらないですよ」

 

手伝います、と自分から助手となって『幸運』の道具(アイテム)の作製に入るアスフィと一誠。それが後にとある少女を救うことになるがまだ誰も知らなかった。

 

「―――と、言うわけでアルガナ達の『ステータスプレート』が完成しました!それと『幸運』の道具もだ」

 

「マジで作ったんのか自分」

 

「しかも未確認の発展アビリティを付加してる道具まで作ったなんて・・・・・」

 

「やっぱり凄いわ私のイッセーは」

 

誰が誰のイッセーだ、と心中フレイヤにツッコミを入れる複数の者達と対照的にアルガナとバーチェ、ベルナスとエルネアにフィリアの『ステータスプレート』が手に渡りまじまじと見つめている。

 

「これを持ってると経験値(エクセリア)が前と変わらずに得られるのか?」

 

「ただ持ってるだけじゃダメだ。そのプレートに血を垂らせば小型の恩恵(ファルナ)として初めて完成する。それが一番苦労したところだ」

 

五本の針を渡すと各々と人差し指の腹に針を刺して血を出す。言われた通り垂らすとプレートに刻まれた魔方陣が反応して輝き始める。すると五人は目は怪訝な面持ちとなった。

 

「どうだ?初めての試みだけどどんな感じになった?」

 

「依然と変わらない【ステイタス】が浮かび上がった―――だけでも凄いのだが、他にも奇妙な項目が出てる」

 

「奇妙な項目?・・・・・『鑑定』」

 

エルネアの指摘にどんな物なのかプレートを見せてもらうと。

 

 

 

『ステータスプレート』

 

・疑似『神の恩恵(ファルナ)

 

・『ステータスプレート』の所有者しか以下の効果が発動しない。

 

・【経験値(エクセリア)】とLv.、全アビリティの熟練度は改宗(コンバージョン)後でも連動する。

 

 

エルネア・レーゼ

 

【ステイタス】

 

Lv・5

 

力 :A817

 

耐久:B712

 

器用:A837

 

敏捷:C799

 

魔力:I0

 

 

《魔法》

 

 

《スキル》

 

???

 

・???

 

 

《エクストラスキル》

 

『異龍の恩恵』

 

・早熟する。

 

・全アビリティの熟練度が超高補正。

 

・異龍の眷族となり続けることで効果維持。

 

・異龍の眷族となり続けることで効果向上。

 

 

「ッッッ!?」

 

なに、《エクストラスキル》って・・・・・!スキルの効果はともかく俺の想像を超えてる・・・・・。他の四人のプレートも見ると『異龍の恩恵』というエクストラスキルが発現していて、ロキ達にも試しに見せると言葉を失うほどに絶句した。

 

「イッセーの眷族って・・・・・」

 

「一体どーなってんのや・・・・・」

 

「不思議ね。でも《エクストラスキル》って初めて聞いたわ。『ステータスプレート』だからかしら」

 

女神達も驚きを隠せない新作の魔導具(マジックアイテム)。話についてこれてないアスナ達にも教えると信じられないと目を丸くする。中には羨望の眼差しを向ける少女達もいた。

 

「ま、まぁ・・・・・しばらくそれを持って探索に励んでくれアルガナ達。どこかの【ファミリア】に入りたいならそのプラカードに施錠(ロック)しないといけないけど」

 

「しないまま改宗(コンバ-ジョン)した場合はどうなるのかしら?」

 

「『ステータス・プレート』とは全くの別の恩恵だ。正常に恩恵が働くと思うけど、無難に片方の恩恵を封印した方がいいかもしれないな。あくまでもそれは主神がいなくても経験値(エクセリア)が得られる為に作ったんだ。エクストラスキルまで発現するとは思いもしなかったし、もしかすると作った本人の俺自身でも把握できない無限の可能性を秘めているかもしれない」

 

色々と驚きな結果を知ったが、恩恵を封印されてるフィリア、改宗(コンバージョン)状態のアルガナ達にとって虎に翼がついたものだ。この『ステータスプレート』を作った者に感謝をして何時か主神を得れるその日まで大切に保管する―――。保管?フィリアは素朴な疑問をぶつけた。

 

「あの、これはずっと持ってないといけないのですか?」

 

「そうだな。持てないなら俺が何か作ってやろうかって・・・・・バーチェ、胸の谷間に挟んでも零れ落ちるぞ。アルガナ、エルネアとベルナスもその手があったかと真似するな」

 

「うむ、そうであるな。胸で挟むのはやはりイッセーの―――」

 

「椿、それ以上は言わせないわよ」

 

「でも、イッセー様の大きくて長い、太くて逞しいアレを完全に包みこめるのはデメテル様だけですよねぇ。しかも凄い乱れ方でしたし・・・・・」

 

「こ、言葉をじ、自重してくださいっ!?朝からなんて卑猥な発言するのですか!やっぱりあなたは同じエルフとは思えません!」

 

ガハッと吐血したロキが崩れ落ちた他所に、豊満な胸の持ち主にしかできない事をされて一部の女性は大胆な行為を見て顔中に朱を染める。さらに一気に女性達が色の話を中心に騒ぎ始め、思い出すだけでも穴があれば入りたい衝動に駆られるほど恥ずかしい会話がヒートアップする。しかし、事実は変えようがない。互いが同意すればこれからも行われる行為は善悪、道徳か背徳かわからないが、後悔しなければ全て良し―――この場にいる一同の気持ち次第であろう。愛欲と愛情の有無に左右されようがされまいが、本人達が望み後悔しない生活を今後も続くのだと思うとアスナは。

 

「(状況は違うけれど・・・・・リズ達はキリト君のこと、キリト君もリズ達のこと好きだから・・・・・)」

 

複数の異性と関係を築いた元彼氏の男を思い浮かべ、身を以って体験と経験して彼の心境を考慮し、心に罪悪感が巣食うように湧き上がった。だが、今さら寄りを戻る事も戻そうとする気があるかどうか問われれば悩む。裏切りは裏切りなのだ。そう簡単に許してしまえば心も尻も軽い女だと思われてしまう。それだけは絶対に思われたくない―――故にアスナは行動に出ようと思った。久方ぶりにホームへ戻ってみようと。

 

 

「そう言うわけで俺も同行して欲しかったんだな」

 

「うん、ごめんね。・・・・・それとその銃はどうして持ってきたの?」

 

「シノンに見せびらかす為だ」

 

地上の迷宮こと『ダイダロス通り』の入り組んだ迷路のごとき道の中を歩き、アスナから理由を知って決着を付けようとする心意気を悟る。乞われた一誠は見届け人としてか一人では不安だからか定かではないが、そう言う事なら今さら踵を返して引き返すことはしないと隣の少女の歩調を合わせて廃墟と化した教会に向かう。何週間以上も帰らなかった家の帰路に迷う事も無く程なくして辿り着いた【アルテミス・ファミリア】の本拠地(ホーム)の外見は何ら変わっておらず二人を鎮座して出迎えた。現時刻は昼過ぎ、食事の場として設けられた木製の椅子やテーブルにキリト達の姿は見当たらない。アスナの不在の中でも街に繰り出して買い物か、ダンジョンに出向いて稼いでいるか、教会の中にいるか理由は限られているが二人は歩みを止めない。それから意を決したように扉を開け放とうと中に入ろうとした、その時だった。

 

「アスナ?」

 

背後から声。アスナに向け放たれたその声の元へ揃って振り返ると、眼鏡を掛けた冷静(クール)な雰囲気を纏い黒のボーイッシュの髪の少女が目を丸くして亜麻色の髪の少女を凍結したようにその目で凝視していた。

 

「シノのん・・・・・」

 

「久しぶりね・・・・・」

 

「・・・・・うん」

 

アスナの隣に立つ一誠と交互に見て、理由を悟るや安堵で胸を撫で下ろす感じで息を漏らし、木製の椅子に座れと招き手で促し三人は腰を落ち着かせて話をする姿勢にはいる。

 

「俺からも聞いていいか?アスナがいなくなったあと、どうなったんだ?」

 

「最悪なまでとはいかないけれど、【アルテミス・ファミリア】の状況は良いとは言えないわ」

 

「キリトが主に原因で?」

 

「・・・・・そうね大半は」

 

キリトの浮気が発覚したその日から派閥の空気は変わったとシノンは告げる。バツ悪そうに顔を曇らせるアスナの隣で一誠とシノンは言葉を交わし続けた。

 

「私は今、この教会で一人住んでいる状況よ。アスナ、貴女が何も知らずに帰ってくる日を待ってね」

 

「他の皆は別の本拠地(ホーム)に移り住んだからか?」

 

「ええ、今まで稼いできたお金やあなたの店を手伝った報酬、それに生活費としてくれたあのお金と合わせて、新しい(ホーム)を得たのよ。だからあの日からいなくなったアスナは知らないだろうし、誰かがこの教会にいなくちゃならなかった。それを私が請け負ったのよ」

 

一誠とアスナは確かに知らなかった事だとシノンの話しに真摯で耳を傾けた。その場所も知らない、彼女の言うとおりアスナの帰りを待ち続けていたからここで鉢合わせをしたのだと悟るのに難しくはなかった。

 

「なら、シノンも皆がいるホームに帰れるんだな?」

 

「そうね。で、聞いたわよ。アスナに浮気していた事をバレて別れを告げられたって。アスナ、本当にキリトと別れるつもりなの?」

 

「・・・・・」

 

「キリト、あいつアスナに見限られて以来。最初こそは死んだ魚のような目で死んだ人間のように部屋に閉じこもって落ち込んでたけどさ、クライン達やリズ達が必死に慰めて何とか気力だけは取り戻した代わりに、何かを忘れたい一身で危険な冒険を繰り返したり、リズ達と同じ部屋にしてからあまり外に出なくなっちゃってるしさ」

 

今のあの家、というよりはどこか陰りがある暗い雰囲気の【ファミリア】の中で長居はしたくない、と付け加えたシノンの綺麗な柳眉は八の字に寄った。左眼でアスナの顔の表情を盗みをしてみれば、顔に影が落ちて暗くなっていた。そんな彼女に警告とシノンは告げる。

 

「だからアスナ。もしも別れるつもりでキリトに会いたいならお勧めはできないわよ。完全とは言えないけれど前よりマシな感じで立ち直ってきてるから。今のあなた達を会わせたらキリトがまた落ちるところまで落ち込むと思うし」

 

「・・・・・気まずい、どころじゃないよなそれって」

 

「ええ、予想できないから会うのは賛成できないわ。女に別れを告げられた男ってどんな感じなのか知らないし。イッセー、同じ男なら分かるのかしら?」

 

「知らん。生きる気力を取り戻したならまだ望みはあるんじゃないのか?」

 

背中に背負っていた銃をシノンの前に置いては残念そうに息を漏らす。

 

「せっかく面白い話を聞かせようと思ったのにな。会えないんじゃできやしない」

 

「・・・・・これ、どこで手に入れたの?イッセーが造ったの?」

 

「いや、買ったんだ。分厚い雲に囲まれた空の果てに存在するもう一つの世界でさ」

 

瞠目するシノンの手は了承も得ず銃を活き活きと触れては、人の話を聞いているのか怪しい程に水を得た魚のように彼女の目が輝いているのを一誠とアスナは窺わずとも認知した。

 

「目の色が完全に変わったんだけどアスナさん」

 

「もう知っているでしょ?」

 

この世界に来て銃と言う武器や概念は見聞したことが無い。だから二度と触れる事はないだろうと思っていた武器が目の前にあって、それに手を伸ばさずにはいられなくなったのだろう。真摯な無表情でありながら心なしか多幸感極まりない気配を窺わせながら銃を構える。ライフル型の銃の扱いに長けているのか、以前物騒な武器を作ってほしいと言った本人の持ち方が様になっていた。

 

「キリトが浮気をして以来、今でもクライン達は変わらずいつも通りに接するけれどアスナがいなくなってから前のような感じじゃなくなってるのも事実。キリトの隣にいたアスナがいなくなって、その開いた穴を埋めるようにリズ達がいるようになった。彼女達も気にしている節もあるし負い目を感じているみたい。心配しなくても放っておけばその内に調子を戻るわよと言っているのだけれど」

 

「・・・・・キリト君の事、嫌いになっちゃった?」

 

シノンもキリトを慕っている節がある。アスナはそれを理解した上で訊ねると彼女は肩を竦めた。

 

「別に。男って浮気しちゃうときもあるんでしょ」

 

「俺を見ながらそれを言うの止めてくれないか?俺の世界は一夫多妻制だから浮気云々は語れないから」

 

「へぇ、そうなんだ。世界が違えば世界観も本当に違うんだね」

 

「まあ、それに関しては同感だがな。俺を慕ってくれる女は一人残らず愛する信念はある。こんな化け物の俺を心から好きだと愛を注いでくれる女が傍に居てくれると嬉しいからな」

 

元の世界に一誠を慕う女性がいる事は知っている二人。だからこそ蔑む言葉も罵る言葉も発する真似はしない。それでもシノンは言う。限度を覚えろと。

 

「どれだけハーレムを作るのか知らないけれど程々にしなさいよ。それと、まだ聞いてなかったけどアスナ。貴女は【ファミリア】から脱退するの?」

 

「・・・・・」

 

皆には会えなかったが、現在の【アルテミス・ファミリア】の現状や状況を知り得る事が出来たアスナ。【ファミリア】の脱退をして一誠と同棲生活を送るのかと意味合いが含んだシノンの問い掛けに対して苦悩の色を顔に浮かべた。しかし、口を閉ざして自分の中で考えを至るまでの時間はそう長くはなかった。

 

「・・・・・うん、私はしたいことができちゃったから」

 

「したいこと?」

 

キリトと顔を会わせたくないが為に脱退するのだと思っていたのか、予想が外れたシノンだけじゃなく一誠の瞳は真意を求めていた。アスナに追及するシノンの耳に聞こえた返事は。

 

「イッセーの世界に行きたいの。彼の世界には―――ユウキが生きているの」

 

だから、シノのん達と元の世界にはまだ帰れない。と理由を述べる少女に目を見開かずにはいられなかった。キリト達の世界に存在していた少女の存在と名がこの世界で聞く事になろうとはシノンは露にも思わなかった。

 

「ユウキが、別の世界にもいるの?本当に?」

 

証拠とばかり一誠はユウキの姿に魔法で変身した。シノンから見ても見間違いの認識は有り得ない程、己が知るユウキと酷似していたのだった。

 

「私、ユウキと約束したの。違う世界でもまた会おうって。彼の世界にいるあの子との約束を果たす為にイッセー君の世界に行きたい」

 

「・・・・・」

 

アスナの心情を知り、その決意は自分が良しとせず説得をしても揺らがないかもしれない。ならば、彼女は問題なく元の世界に戻って来られるのか、と黒い眼を元の姿に戻った一誠に向ける。

 

「仮に私達が先に元の世界に帰ったとして、後からアスナはちゃんと帰って来られる?」

 

「・・・・・分からないとしか言えない。まだ別の世界と確実に行き来できる術を得てないからな。無責任や期待を抱かせる答えは言えない」

 

自分が不甲斐ないばかりに申し訳ない、と二人に謝罪の念を伝えながら息を一つ零したらやんわりとしたフォローを受けた。

 

「気にしないで、私達は何時か元の世界に帰れるのならばそれでいいから」

 

「うん、今の私達はイッセーしか頼れないからね」

 

「ん?神様だから何とかしてくれるって言わなかったか?総意だったんだろ」

 

二人から寄せられる期待感に疑問をぶつけてみれば、「私、現実主義者だから」「は、ははは・・・・・」と違う反応と答えを返された。もはやこの世界の神に期待をしなくなったようだった。

 

「そ、そういえばイッセーの世界には凄いゲームとかないのかな?VRMMOみたいなとかある?」

 

「ゲーム、ねぇ・・・・・。『レーティングゲーム』しか思いつかないな」

 

二人揃って『レーティングゲーム』?と鸚鵡返しした。当然の反応だと具体的な説明を語り始める。

 

「元々は悪魔が天使と堕天使相手に世界の覇権を巡って三大勢力戦争をした折に激減した数と種を補いつつ戦力を増強する目的で―――」

 

「あなた、本当に一体どういう世界から来たのよ」

 

話の腰すら入ってない時に遮られ、「最初から教えなきゃ駄目か」と内心溜息を吐き、言い改めて自分の世界の事を打ち明け始める。聞けば聞くほど、ゲームの域を逸したものでアスナとシノンを感嘆の息を漏らさせた。

 

「人が役割を担っている駒として相手と戦うゲーム・・・何だか凄いね」

 

「悪魔の眷族になると悪魔に転生するどころか半永久的に生きれる様になることも驚いたわ」

 

二人の感想を耳にし、この世界で見せることはないだろう代物を亜空間から取り出してテーブルの上に置きだす。

 

「転生したらしたで光属性や聖なる力が秘めた道具や武器に滅法弱いデメリット付きだけどな」

 

取りだしたそれはアタッシュケースであった。アスナとシノンの意識と好奇心を釣ったまま開けると、赤いクッションに包まれている17のチェスの駒とトランプのカードが収まっていた。

 

「これは?」

 

「悪魔に転生する悪魔の駒(イーヴィルピース)と天使に転生することができるカードだ」

 

「え、転生って悪魔だけじゃないの?天使もなれるんだ?」

 

「ああ、天界に住む神と天使達が悪魔の技術を元に転生天使になれるよう編み出したんだ。この駒とカードは魔王と神から貰ったもんなんだ。因みに天使に転生した場合。欲望に負けると天使から堕天使に堕ちてしまうデメリットもあるんだ」

 

「空想上の種族にもやっぱり弱点があるのね」

 

興味を抱いた様子で「触っても?」とシノンの訊ねに「胸に当てなければ」と一誠から了承を貰いそれぞれ駒とカードを手にし、探る様に眺め出した。アスナはアタッシュケースのチェスの駒を視界に入れたら、ある疑問が浮上した。

 

「ねぇ、チェスって16個なのにどうしてもう一つあるの?」

 

「それは『変異の駒(ミューテーション・ピース)』の分だ」

 

その駒を摘み取って説明口調で語る。

 

「悪魔に転生する駒にも上限があるんだ。転生する際に一つだけ済むこともあれば一つ以上、複数の駒を用いなければ転生できないこともある。その場合、この駒一つで複数以上の価値が宿っている変異の駒(ミューテーション・ピース)が必要になる」

 

「そんな設定もあるんだ。じゃあ、イッセー君の場合って・・・・・」

 

「ん、『変異の駒(ミューテーション・ピース)』が必要になるな。『(キング)』だったら問題はないだろうが、『女王(クイーン)』、『僧侶(ビショップ)』、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『歩兵(ポーン)』の駒は確実に許容オーバーする。もしもアスナとシノンも転生する際に必要な駒の数は一つで十分だろうな」

 

奥深い『レーティングゲーム』の設定。まるで神の代理戦争、戦争遊戯(ウォーゲーム)みたいだなぁーとアスナは更に問い掛けた。

 

「悪魔と天使に転生できるなら・・・・・イッセー君みたいにドラゴンに転生とかできるの?」

 

「いや、ドラゴンを宿すだけならともかく。正真正銘のドラゴンに転生できる技術はまだ元の世界に居た頃でもなかった。例外を除いてだけど」

 

眼前の少女達に翳した手の平の上で一瞬の閃光が迸り、一つの杯が光から具現化した。

 

「神をも滅ぼす可能性を秘めた神器(セイクリッド・ギア)、『神滅具(ロンギヌス)』の十七種の内の一つ『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』。この杯は生物の命の理を覆す力―――驚異的な再生、治癒力や死者を甦らせたり、種族の弱点を克服や強化、そして別の種族に転生する力を秘めている。これでドラゴンに転生する事もできるぞ」

 

「「っ!?」」

 

とんでもない代物を見せつけられながら説明を受けたアスナ達は瞠目しないでいられなかった。これ一つで生命の理を覆すことができる杯なんてと。もしも快楽主義の神々が聞けば、外見も恥も殴り捨てて全力で奪いに掛るかもしれない可能性は大いにある。

 

「でも、こいつにもデメリットがある。乱用すれば使用者の精神が汚染され、やがて廃人にもなりかねないんだ」

 

「・・・イッセー、あなたでも?」

 

「多分な。でも、それは一度に百人や千人級の死者を甦らせたりしたらの話だ。滅多に使わんよ」

 

心なしか安堵で胸を撫で下ろすアスナ。便利なモノにはデメリットやリスクが付き物。万世界共通である事を判りながら好奇心が覚えて、一誠にある事を訊ねる。

 

「その杯で転生したら、元の種族に転生できちゃうの?」

 

「生命の情報があれば何度でも可能だ。アスナ、興味があるのか?」

 

「うん、ドラゴンの君でも私達と何ら変わりない人の姿だしもしかしたら魔法が使えるかなーって」

 

「できるぞ。この世界の魔法に縛られず俺みたいにバンバン魔法を使えるが、転生した種族のデメリット付きだ」

 

そうなんだ、と首肯するアスナ。シノンの中で「まさか」と考えが浮上した時、彼女の口から―――。

 

「じゃあ、私も転生してみたい」

 

「・・・・・マジで?」

 

「うん、マジ」

 

心なしか期待に満ちた亜麻色の瞳にキラキラと輝いている。逡巡してしまう一誠にシノンも訊ねた。

 

「聞くけれど、どれだけ転生できるの?」

 

「えーと、悪魔に天使、堕天使、ドラゴンに人間だろ。他は吸血鬼やエルフ、猫魈って見た目は猫人族(キャットピープル)の妖怪と狐の妖怪、エルフとドワーフ、人魚にその他諸々」

 

「ファンタジー的な種族ばかりね・・・・・妖怪もいるなんて嘘みたい」

 

「別の世界から来たシノン達にとっては当然だろうな。ああ、さっき言った種族の中で魔法が使えないのもあるから。妖怪に関しては妖術だし・・・アスナ、因みに聞くけど何に転生したいんだ?」

 

妥当な種族であってほしいと一誠の心知らずのアスナは転生できる種族を心の中で復唱しながら考え、口にした。

 

「エルフって魔法を使える?」

 

「使えるけど、天使じゃないんだな」

 

「欲望に負けちゃうと堕天使になっちゃうんでしょ?」

 

「なるけど弱点は他の種族と違ってないぞ」

 

「あ、そうなんだ。でもやっぱりエルフが良いかな」

 

お願い、とジッと視線を向けてくる彼女に止める理由はないとばかり『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』の能力を発動した。杯が輝きだせばアスナの全身も呼応して光に包まれ・・・・・耳が細長く変化した程度で変わらない出で立ちで一誠とシノンに見守られた。

 

「終わり」

 

「え、もう?」

 

「何に期待していたのか分からないけど、耳触れてみ」

 

指摘を受け、そっと片手で耳を触れてみると人の耳より異様に長く尖っていた事に気付き、用意周到で前から突き出される鏡の中の自分はエルフ特有の耳になっていた事に気づく。

 

「耳が長い・・・・・」

 

「加えて身体の中から不思議な感覚があるはずだ。それが魔法の源こと魔力。練習すれば魔法を使えるようにもなるさ」

 

両手を握ったり開いたりして新たな己の実感を、人の理を超えた事を確かめる風にしている少女に安堵で息を吐きながら一誠は言う。

 

「正直、ドラゴンに転生したいって言われたら断ったところだったぞ。この世界の人類の敵は俺一人で十分だからよ」

 

―――正しい選択を選んだアスナ。選ぶ気は無かろうが安心した。

 

心中で語る一誠の心情に二人は気付かなかったが、それでも構わないと男は小さく笑みを浮かべた。左眼をシノンにアスナから変える。

 

「シノンもこの世界にいる間だけ別の種族に転生してみるか?その後すぐに戻すからさ」

 

そう言われシノンは―――時間を置いて気持ちを口にした。

 

 

 

それからの三人は廃墟の教会、『ダイダロス通り』を後にし【アルテミス・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ足を運ぶシノンの家は、今まで貯えたきた金で購入した小さいながらも豪邸であった。彼女の帰還に出迎えるのは鉄の柵の扉で、そこにキリト達以外にも新たに入団した駆け出しの団員らしき二人が扉を守護していた。近付いてくる彼女等に呼応して開けられ、潜り真っ直ぐ豪邸の中へ入っては真っ直ぐ主神の神室へ足を運ぶ。別の世界から来て三年目で豪邸を得たキリト達の努力は並ではないことを悟るのに難しくない。どこまで成長をするのか見守りたい半面、今の少年少女達の関係の不安定に懸念するが心構えと時間が解決するであろうと主神の部屋に辿り着きながら思い馳せた。アスナとシノンが部屋の中に入っていき、一誠は当然のように改宗(コンバージョン)が終わるまで壁に背中を預けて待つ。

 

アスナの登場に主神アルテミスは久しぶりの再会に喜んだ。しかし、彼女がエルフに転生していた事も含めて【ファミリア】を脱退したい願いを乞われて驚かずにはいられなかった。

 

「・・・・・アスナ、脱退したい程【ファミリア】が嫌になった?」

 

「嫌ではありません。でも、元の世界に帰る前にしたいことができたんです。脱退したからと言ってシノのん達との絆は断ち切ったとも思っていません。主神様の恩も忘れません」

 

意思が堅い少女の目も真剣な眼差しをしており、冗談やふざけ、嘘を言っているのではないとアルテミスは察した。何を彼女にそこまで駆り立てたのか定かではないが、決める前に女神として聞きたいことがあった。

 

「元の世界に帰るよりもその強い憧憬(おもい)を抱く理由は何?」

 

「交わした約束を果たす為です。遠い場所で生きている友達と再会する約束を」

 

「キリト達と一緒にではなく個人的に?」

 

肯定した。神の前では人類は嘘をつけない。彼女は嘘を言っていない。正直に願望を叶えたいアスナの憧憬は言葉としてアルテミスに伝えたのだ。キリト達を眷族にしてから元の世界に帰るこそが第一の望みである事を知っている故に、その望みよりも優先することができた切っ掛けは何なのか分からない。だがしかし、真摯に思いをぶつけてくるアスナを無下にすることは女神としてできない。

 

改宗(コンバージョン)をする前に更新をするわ。背中を見せて」

 

「・・・ありがとうございます」

 

謝罪と感謝を籠めた念を示し、上衣を脱いでアルテミスに背中を晒す。針を人差し指に刺して出てくる神血(イコル)を媒介にし、【ステイタス】の更新の作業に入る。

 

 

 

「・・・・・」

 

部屋の外で待つ事しばらくして、待ち人が扉を開けて出てきた。顔の表情を窺うと問題無く脱退の儀式は終えた様子だったので一誠は話しかけた。

 

「終わったか?」

 

「うん。終わったよ」

 

神室を後にしたシノンも現れ、二人を交互に見る。

 

「アスナはこれで【アルテミス・ファミリア】の眷族じゃなくなったけど、ずっと友達だからね。イッセー、彼女の事よろしく頼むわよ」

 

「シノのん・・・・・」

 

「なんならシノンも来ても構わないぞ。色んな銃があるし使い放題だ」

 

「・・・・・とても魅力的な提案だけれど、私までいなくなったらクライン達に負担が掛るだろうから遠慮するわ。逆に譲ってくれない?」

 

「気が向いたらそうしてやるよ」

 

朗らかに笑って言う一誠に「期待しているわよ」と柔和に笑むシノンの目が―――あるものを視界に入れた途端に凍結したように固まった。その小さな違和感に気付く一誠も彼女の黒い眼が映している何かがある方へ振り返り、釣られてアスナも静かにゆっくりと振り替えた先に―――。

 

「・・・・・アスナ」

 

黒髪黒眼の少年キリトと三人の少女が複雑極まりない面持ちと当惑の目でアスナを見ていた。

 

「(シノンさん。これは・・・・・)」

 

「(成り行きを見守りましょう)」

 

ある意味修羅場が起きてもおかしくない何とも言えない空気となった一堂がいる場。シノンが言った成り行きを見守る姿勢で蚊帳の外に立ち、息を殺し様子を窺う。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

どちらも口を開こうとも喋ろうともせず数十秒が経過した。

 

「ア、アスナさん!」

 

小柄な体から発するシリカの悲痛の叫び。頭を垂らして謝罪の念を全身から伝える少女を視界に入れた。

 

「ご、ごめんなさいっ・・・・・アスナさんからキリトさんを奪うつもりじゃ・・・・・」

 

「・・・・・アスナ、ごめんなさい。許して欲しいとは言わない。けど、この異世界にきてあたし達・・・・・」

 

「お兄ちゃんのことますます好きになっちゃって・・・それに、元の世界じゃないから日本の常識や結婚の法律や制度なんて通用しないと判っちゃうと・・・・」

 

異世界故に抑えられていた理性の歯止めが利かなくなり、同じ異性を慕う者同士が結託して半ば強引でありながらも自分達の思いを身体も一緒に伝えてしまったのだと、キリト自身もこの世界なら皆を幸せにできるとアスナに相談することを疎かにしてしまいながら三人の思いを受け止め続けたのである。

 

「・・・・・」

 

彼女達の懺悔の言葉に耳を傾けていても無言を貫く。亜麻色の瞳には怒りも悲しみも宿っていない。純粋に他者を見つめる瞳だった。そして目線がキリトに変わったことに本人も気づく。

 

「キリト君、三人を幸せにできるの?私に隠れて浮気していた君が」

 

「アスナ・・・・・」

 

「できるの?できないの?」

 

話を逸らすことは許さない、自分の問いだけを答えろと暗に訴えるその目を見るキリトは何時の日か再会して話し合う時が来たら、自分の気持ちをぶつけようと待ち望んだこの瞬間を台無しにしないとキリッと真剣な眼差しでこう言った。

 

「スグハ達だけじゃない、アスナお前が許してくれるなら俺はお前も幸せにしたいんだ」

 

「・・・・・」

 

「今までお前に隠れて三人と浮気していたことは全面的に俺が悪い。お前を裏切って本当にごめんアスナ。まだ俺を許して【ファミリア】に帰って来てくれるなら・・・・・」

 

徐に一誠の手を徐に華奢な手が掴み取った。

 

「―――――」

 

そして―――自身の胸に抱き寄せてキリトにアピールをする。

 

「桐ケ谷君、紹介するね。私の新しい恋人、兵藤一誠よ」

 

「「「「っ!?」」」」

 

「・・・・・え?」

 

「・・・・・アスナ?」

 

三者三様、アスナの突然の告白に驚きを隠せなかった。

 

「イッセーの城に住んでからずっと悩んで考えた。彼を通じて君の気持ちを考えたら『仕方が無い、しょうがないんじゃないのか』って気持ちが浮かんでくるの。私も人の事言えなくなっちゃったから」

 

最後の一言で一誠の胸に罪悪感と言うロンギヌスの槍が突き刺さった。「本当にゴメン」と暗い顔で謝罪する一誠に彼女は「気にしないで」と返答する。

 

「人の事言えないって・・・・・どういう意味なんだ・・・・・?」

 

「そのまんまの意味だよ桐ケ谷君。でも、先に浮気をした君に対して後ろめたさも罪悪感も覚えなかった。神様の悪戯で巻き込まれたって思ってるから。ね?だから君も被害者側なんだから謝る必要はないよ」

 

アスナが何を言いたいのか悟り、言われて罪悪感を抱いていた一誠はそれでもキリトに顔を合わせれないとバツ悪そうにしていた。

 

「今さっき正式に【ファミリア】を脱退しました桐ケ谷君。これで私に気にせず三人と幸せになってください」

 

自分の思いを否定されるよりも【ファミリア】を脱退したアスナに驚きを隠せなかったキリトとスグハ達。もう彼女の中での真意はすでに定まっていたのだ。

 

「そんな、アスナさん・・・・・」

 

「ま、待ってよっ。【ファミリア】を脱退したって、それにイッセーと付き合ってるって」

 

「イッセーさん、どういうことなんですか?まさか私達のせいで心に傷つけてしまったアスナさんを・・・・・」

 

動揺、困惑するキリト達。シノンも一誠と付き合っていると言うアスナの発言で「説明しろ」という眼差しを向け、一誠は付き合ってないと首を横に振る。全力で。その時、階段を急いで駈け上る足音がしてきた。

 

「アスナさんが帰って来たんだって!?」

 

「って、イッセーまでいるぞ?」

 

ヒーロー組の異邦人達が六人を挟む形で現れた。この複雑な状況にも拘らず気付かずに。どうするんだコレ、とアスナの言動でキリト達との関係が良くも悪くもなってしまう。

 

「私、元の世界に帰らずイッセーの世界に行く理由が出来たの。だから【ファミリア】を脱退したの」

 

「別に脱退することでもないじゃない!それに一緒に元の世界に帰らないってどうしてなのよ。私達がキリトを奪ったから嫌いになっちゃったってこと?」

 

「違うの。イッセーの世界に会いたい人がいたの。だから私は―――あの子との約束を守るために異世界に行く」

 

「あの子との約束を守るためって、イッセーの世界に一体誰が・・・・・」

 

キリトの当惑する顔から眼を逸らし一誠に目線を送る。その視線の意味を察して目を瞑る一誠の全身が一瞬の光に包まれ―――黒みがかかった紫の長髪に赤い瞳、童顔が抜けきってない小柄な少女へと変身した。

 

「「「「っ!?」」」」

 

四人の目は信じられないものを見た。限界まで眼を丸くして目の前の少女に釘付けとなるがヒーロー組の異邦人達は誰だ?的に小首を傾げる。これは当人達しか知らない人であり蚊帳の外に置いてかれても仕方が無いことだった。

 

「ユウ、キ・・・・・?」

 

「うん、そうだよキリト。この姿の女の子がボクの世界に生きているんだ」

 

「嘘、だってあの子は死んじゃって・・・・・」

 

「並行世界、パラレルワールドは似て異なる世界がたくさんあるんだ。ボクと同じ姿をした人がそんな世界のどこかにいる可能性も君達は否定できるのかい?」

 

「で、でも。ユウキさんと同じ姿をしているだけかもしれませんよ?」

 

シリカのその指摘にアスナは首を横に振って更に否定した。

 

「イッセーの世界にいるユウキも『マザーズ・ロザリオ』を使えるわ」

 

「っ・・・・・」

 

「私達が知っている、私達を知っている最強の剣士でもなくても、私達が知っている最強の剣士の技を使える。私はそれだけでも十分過ぎるほど嬉しい。だから私は約束を果たすためにイッセーの世界に行きたいの」

 

「私は必ずもう一度あなたと出会う。どこか違う場所、違う世界で絶対にまた巡り合うからその時に教えてね。ユウキが見つけたものって」

 

だから皆とは一緒に元の世界には帰らないと、言い告げるアスナに何も言えなくなった四人は口を閉ざしてしまう。その瞬間が決別の意を示した行動のようにシノンは一誠もろとも転移式魔方陣でいなくなるアスナに対して思わずにはいられなかった。『幽玄の白天城』に転移を果たした矢先に彼女の胸の中に抱きしめられた。淡々とキリト達に別れを一方に告げたアスナの気丈は二人きりになるや否や、脆くなって悲しみで嗚咽を漏らした。別れを言う方も言われる方も心が痛み傷つく。本当は別れたくなかった筈だ。それでも、アスナの気持ちに何かが拍車が掛って止まるに止まれなかった。結果、悲しみの結末を迎えてしまった。

 

「・・・・・ごめんね、君のこと付き合っても無いのに付き合ってるって言っちゃって」

 

「気にしないで。ボクは誰かに恨みや怒りを向けられようが気にしないよ」

 

「・・・・・もう、真似しなくてもいいよ?」

 

「アスナが泣き止むまでこの姿でいるよ」

 

そう言って手を取り、城の中へと歩いて行くユウキの姿をした一誠に連れられるアスナは心から感謝の念を抱いた。

 

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