ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
謎の仮面の男が
だが、ある日こと。
「おい、お前ッ!黒髪の野郎!」
人の執念は時に凄まじい結果を発揮する。怒気と敵意を剥き出しにするは、【ステイタス】の初期化の異常現象で第二級から下級冒険者に成り下がってしまい『異世界食堂』で物凄く落ち込んでいた男性冒険者だった。他に彼の【ファミリア】とおぼしき集団もいて男の行く道を阻む黒髪の男は平然とした態度で立ち止まり対峙する。
「お前だろう、俺の【ステイタス】を奪ったのは!」
「突然なんの言い掛かりだよ。俺はどこにでもいる至って力のない一般市民だぜ」
「忘れたとは言わせないぞ。お前が俺に話し掛けながら触れてきた時から【ステイタス】がおかしくなったんだからな!」
「知らねぇよ。その【ステイタス】の調子がたまたまおかしくなったんじゃねぇの?」
「また嘘ついたな」
男性冒険者の【ファミリア】の仲間から出てきた主神が男の真意を否定した。手にしている眼鏡を掛け男を見やるやニヤニヤと愉快げに笑みを浮かべたした。
「ほぉーお前がそうなんだな。異世界から来た転生者という子供は。眉唾で半信半疑だったが本当にこの街にいるとは」
「はぁ?転生者?なんのことだよ」
「惚けても無駄だ。この眼鏡はな?相手の情報をこれを通して見ることが出来る
「っ・・・・・」
真名を言われた男の表情が始めての変化した。それが肯定と受け取るのに十分だった。さらに深まる笑みを刻み、カラーボールを手にして掲げた男神に呼応して団員達もカラーボールを手に持って構える。
「あの転生者に当てろぉー!当てたら一億ヴァリスは俺達のものだぁー!」
「「「「「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」
「はっ?なんでこの世界にカラーボールなんてあるんだよっ。というか、捕まえる気よりも当てる気の方が強いのは何でだよ!?」
バベルの塔―――。
「おっ、例の転生者を見つけたようだ」
「意外に早く発見できたのね」
ヘルメスとヘファイストスの呟きで神々の眼の色が変わった。『第一回転生者を発見せよINカラーボール投げ大会!』と段幕と会場として設けられたバベルの塔の三十階にて神々は集っている時、件の転生者を発見したことでカラーボールが街中に投げ放たれる瞬間を円卓の真ん中に置かれた水晶から射影して浮かぶ四方形の立体映像に映った現場の把握を臨むロキ、フレイヤ、ヘファイストス、ガネーシャや『
「しっかしイッセーもとんでもないことを考えるもんや。まさかオラリオ中の【ファミリア】を巻き込んでいけ好かない子供を見つけ出そうなんてなぁ」
「まるで祭だね。一億なんて大金が、ただボールを当てるだけで手に入るから【ファミリア】もやる気十分」
「
逃げても逃げてもその先には他派閥の主神と団員達と鉢合わせし、また逃走を図る転生者。完璧に追われる者として逃走を繰り返す様子をよもやバベルの塔からも見られているとは露にも思っていないだろう。
「でも、オラリオから逃げられるじゃないかしら?もしくはダンジョンの中とか」
「ダンジョンの出入り口は一つしかなく、そこには第一級冒険者達が完全に待ち構えてる。オラリオの外へ行こうとするならば、イッセー君が何とかするって言ってたけど」
「ま、逃げ場はないっちゅうことや。うちらはこの祭を楽しませてもらうだけや」
精々逃げ回ればええ、と邪に目と口元が笑うロキの言葉に同意と他派閥の神々は無言で肯定する。
「いたぞー!こっちだぁー!」
「あの時の恨み、今ここで晴らすー!」
「待てー!」
メロスのように走り続ける男。路地裏に逃げ込もうが物陰に身を潜めようが、自分の縄張りだと言わんばかりにゴロツキやならず者達が待ち構えていて「見つけたぞ一億ぅっ!」と彼等からにも追いかけられ、数で武器する上に執念深さ、執拗に追いかけ回してくる追跡者等の気迫に舌打ちし息を整える暇も無く足を速く動かす。
北で逃走劇を繰り返し、仕方なく東へ駆けだして大通りに入ると、目の前から極東製の鎧、甲冑と槍や刀を装備した武士達が襲いかかってきた。応戦する男に大通りや路地裏、抜け目や隙間すらあっという間に埋め尽くして逃げ場も隠れ場も失い発見され東方にいる間ずっと追いかけ回された。
地上の迷宮『ダイダロス通り』へ向かえば、
「南のメインストリートに向かった!」
「聞こえたな南にいる連中!黒髪に黒い目の若いヒューマンが変態仮面だ、捕まえろぉっ!」
しかも深追いはせず、追いかける区画を分担している様子で足を止めて仲間に知らせる連携も備えているではないか。南方の区画に入るや否や、褐色肌の悍婦の集団が待ち構えていた。捕縛具や鞭、湾曲刀を携えて。
「ああ、聞こえたよ。こっちも少なくない数で仲間の【ステイタス】の初期化が露見した手前、主神様は大層怒り狂ってたからね。やられたらやり返させてもらうよ」
「ちっ、捕まえれるなら捕まえてみろよビッチどもが!」
艶のある黒い長髪のアマゾネスを筆頭に己の前に立ち塞がる全ての敵に容赦なく逃げの選択から攻撃の選択に切り替える男。そこに―――三人の転生者も強襲し歓楽街と繁華街全体を巻き込んだ戦闘が勃発した。
「っ・・・同類か丁度いい、お前等の特典を貰うぜ!」
「ざけんなっ!お前を捕まえりゃ魂を取り戻せるんだ!大人しく捕まれ!」
「相手に触れなければ【ステイタス】や特典を奪われないって情報も貰っているからな!」
「余裕で捕まえてやらぁ!」
空間から飛び出す数多の得物や金の鎖に火炎球、全ての力のベクトルを反射する能力を駆使して男を追い詰める彼らこそが本命だった。転生者同士の戦闘は数度程交え、流石に分が悪いと判断したか全速力で南のメインストリートから遠ざかる勢いの逃走を図った。
「(オラリオ中の【ファミリア】が俺を狙っているのかよ!くそ、だったらほとぼり冷めるまで
走りながら南方の巨大市壁を見上げ、そう決断した男は建物の屋根の上に飛び乗って何度も跳躍し壁へ目指す。そして一際大きく跳躍して市壁を越えんと臨みオラリオの広大な野原を視界に入れたと同時に、音も無く忽然と目と鼻の先に現れた真紅の龍を彷彿させる
「っ!?」
上半身を捻り、下半身を動かし鋭く振り払われる足の蹴りをする相手に反応する暇も無く男は決河の勢いで蹴り飛ばされ、南のメインストリートから
第一級冒険者オールメンバーに何時の間にか囲まれていた。しかも全員、眼鏡やバイザーを顔や目に装着して自分の何かを見透かそうとしている視線がヒシヒシ伝わってくる。
「やはり転生者の仕業だったみたいだね。しかも他の冒険者から【ステイタス】やスキルや魔法を奪って糧にしている、って仮説も間違いないようだ」
「そうだとしてもどれだけ【ステイタス】を奪ったんじゃ。Lv.5の上に全
「所属している【ファミリア】はないのが不思議であるが、ここまでだ」
武器をあらゆる方から突き付けられる。常人ならば圧倒的な実力者に囲まれるだけで降伏する、だが、男の目に諦めの色は微塵も染まっていなかった。顔を俯いて悔しげに呪詛の如く漏らし、水に向かって何度も拳を突き刺して敗者の癇癪だと彼等はそう認識した瞬間。
「ちくしょう!」
振り被った拳が噴水を破砕、弾ける膨大な水で一瞬だけ第一級冒険者達の視界を遮った。反射的に勢いよく突き付ける得物の切っ先からは肉の感触が伝わらず「あそこだ!」と言う声に反応して目で追えば、広場から西のメインストリートへ走り出していた男の背中が視界に映った。あの瞬間から都市最強の冒険者達の包囲網から抜け出した逃げ足は凄いと感嘆してしまうフィンだった。
「追うかフィン」
「ンー、
何かを悟った目で自分達の役割を最後まで勤めようと踵返してバベルの方へと戻る。
男は西のメインストリートの『冒険者通り』の中を掛け抜けていく。北と東と南とは違い、追いかけてくるのはならず者とゴロツキのみ。冒険者が隠れている気配すら感じられず疑問に思い浮かべながらもここならばと路地裏に移動して奥へと向かい、バベルの塔の次に高い建造物の方へと無自覚に進んでいく。そして、人々から忘れ去られた廃墟の区画に足を踏み入れた瞬間。
「よぉ随分と疲労困憊のようだな。主に精神的に」
真紅の長髪に右眼に眼帯を付けた男が廃墟の教会の屋根の上から声を飛ばした。眼帯の男に苛立ちで睨みつけ「お前か」と零した。以前取り逃がした男だと思いだして上から目線で見下ろしてくる相手を見上げて啖呵を切る。
「てめぇの仕業か。俺を追い詰めて捕まえようなんざそうはいかねぇぞ!」
「俺の仕業か否かと答えれば、是だ。だけどお前の自業自得だろ?冒険者達から【ステイタス】を奪い続ければ遅かれ早かれこうなっていたさ」
肩を竦める男を見ていた男の足元の周囲の空間が水の波紋のように揺れ、そこから金色の鎖が飛び出して脚に絡み縛りつけた。もがく男の体に幾重の鎖が飛び出して全身に雁字搦めしていく。戦いらしい事もせず一方的に蓑虫みたいな感じで縛られて地面に横たわった。
「こんのぉっ!?なんだ、この能力!お前の特典にこんな力は表示していなかったぞ!」
「それは【ステイタス】だけ見ているからだろ?俺の場合は【ステイタス】以外でも色んな能力があるんだ。お前等転生者からすれば隠しチートかもしれないな」
屋根から飛び降りて男の前に飛び降りた時・・・・・人ではなく二対四枚の翼を生やしたドラゴンと化して正体を明かした。鎖に縛られて身動きできない男を掴みあげ目線を合わせるように顔を近づけた。
「な、はっ・・・・・?」
『この状態の俺をもう一度見てみろ。俺とお前が見ているモノの違いがわかるかもしれない』
半ば放心する中でも男は目の前の存在に信じられないと、今までしてきたことを同じように行い・・・・・次第に顔が引き攣って青褪め、口唇が震えだした。
「な、何なんだよお前・・・・・何者なんだよっ、なんだよ、この異常な【ステイタス】はよっ!」
『さぁな。お前等転生者が見た物は全て現実だとしか言えない』
俺自身は全く変わらない【ステイタス】しか見れないと嘆息し、男を掴む腕力が発揮する。
『取り敢えず、気絶でもしとけ』
「はっ?」
下から唸り上げるように振り上げた腕は―――そのまま男の頭を地面に叩き込んだ。
―――†―――†―――†―――
ズルズルと
「手こずった様子はなさそうだね」
「そっちは逃げられたようだな?第一級冒険者が揃いも揃って何してんだよサボったのか?」
「ハハハ、返す言葉も無いよ。で、訊くけどイッセー。何とかなるかな?」
フィンの言葉の意味、今まで奪われ続けた冒険者達の【ステイタス】を元に戻せないか。問われた男は難しい表情を浮かべ言い返す。
「形ある物ならともかく、
どうする?と問い返されたフィンは一先ず何故か気を失っている男を起こす選択をした。壊れた噴水に顔を押し付け、水責めする一誠に制止の言葉を掛けた時は意識を取り戻したのだが。
「こ、殺す気かてめぇっ!?」
「最悪、モンスターの餌にして殺す気だけど質問に答えろ」
「はっ、どうせ奪った【ステイタス】を返せれるかって聞きたいんだろ?無理だな。奪ってきた力は俺の【ステイタス】の糧となって蓄積しているんだ。今更返還なんてできねぇよ」
案の定予想通りの返事をされて、これじゃあ俺もお手上げだとフィンに肩を竦める仕草をした一誠。
「となれば、奪われた冒険者達はまた零から這い上がってもらうしかないってことか」
「申し訳ないけど僕等には直接どうすることもできない」
「はははっ!ざまーねぇーなガボボボボボボッ!?」
生意気な男に容赦なく、今度は魔力で水を集めて巨大な塊と化にするとその中へ男を押し込んで水責めをする。
「フィン、第一級冒険者でどのぐらい長く水中にいられる?」
「水の適性のあるスキルや発展アビリティがある者とない者の差の違いはでるけど、まあ僕でも軽く三十分以上は潜れるよ」
「ん、じゃあ雷撃と熱も加えるか」
右手に炎、左手に雷を纏わせ水の中に突っ込む。雷で水の中が電導し、炎で急激に熱せられて高温度の熱湯となった中は男を苦しませるのに十分過ぎた。流石にこれはと苦しんでいる男に憐れと思いフィンがやんわりと窘めた。
「・・・・・イッセー、やり過ぎじゃないかい。彼、死ぬよ」
「今まで十数年も冒険者してきた血と汗と時間と労力を一気に奪われた連中は、こいつを殺したいほど恨み憎んでいるはずだぞ?これはまだ可愛い方で序の口だ」
そう言いつつ男を顔だけ水球から出した。
「もう一度聞くけど、本当に元に戻すことはできないんだな?」
「で、できない・・・・・できないから、頼む・・・・・助け・・・・・」
「ンー、駄目」
水の中に押し戻して再び地獄のような激痛を味わわされる。目を見開くフィンにの隣で淡々と述べ―――。
「お前は奪っちゃいけないものを奪ってきたんだ。フィン、簡単に許したらそいつらの心は晴れないだろ?」
朗らかに笑う一誠。が、左眼は笑っておらず怒りの炎を燃やしている。
「―――だから苦しめ、それがお前の一番の罰だ」
『―――――――ッッッ!!!!!』
炎と雷の威力を更に三倍与えた矢先、目をかっと開き水中で絶叫を上げようと聞こえない。そして熱湯と雷の水球は瞬く間に凍りつき、巨大な氷塊となって広場に鎮座する。広場は静まり返り、一誠の所業に誰一人口を開けず閉ざしたまま見つめることしかできないでいた。寧ろ今まで抱かなかった畏怖の念をこの瞬間、抱いてしまった。
「お主、殺したか・・・・・」
「仮死状態にしただけだ。死んで無いから心配するな。砕けば解放されるし生き返る。でもこんな奴、殺しても別に構わないけどな。俺、こういう奴は嫌いだし」
始めて知る一誠の嫌いな人物。だから過酷なほど痛みを与えたのかと察したが、やり過ぎだと思うのは自分だけだろうかとフィンはそう考えた。
「それで、こいつはどうする?腐っても第一級だけど閉じ込める空間あるのか?」
「いや、多分ないよ。そもそも第一級冒険者の犯罪した者を捕まえたことは今まで一度も無いんだからね」
「『恩恵』無しで第一級だぞ、大丈夫なのか?」
「イッセー、君が何とかできないかい?」
「このまま地下牢に置いておけば無難じゃね?」
「それは・・・・・少し彼に同情してしまうね」
解放してやってほしいと目で言われ、渋々デコピンで粉砕する。氷塊から解放した男の胸にすかさず突き刺しては、三人の転生者のように魂を抜き取って握り締め、精神的ダメージを与え起こされた男は絶叫する。
「おい」
「ひっ!?」
「また何かやらかしたその瞬間は・・・・・わかってるな?」
魂に爪を立てて握り締めると男の体に激痛が走り「わがっだ、わがりまじだ!二度どじまぜんがらもう止めでぐださいお願いじまず!」と泣きながら完全に屈服した姿勢を見せる男。あの強気な態度はどこへいったのやら、子供のように泣きじゃくって心が折れているようにも見えて、それが人の成せる業なのかととても信じられなかった。
「・・・・・お主、容赦ないの」
「徹底的にやらないとまたツケあがるか、調子に乗るからな。こういう転生者がまだオラリオにいるかもしれないと思うと辟易もんだぞガレス」
返す直前で魂に魔方陣を刻み込んだ。男は安堵で胸を撫で下ろすよりもこの場から、一誠から一刻も早く離れたい一心で泣きながら駈けつけてきたギルド員に手錠をされどこかへ素直に連れ去られていった。
「今彼の魂に何をしたんだい」
「また悪事をしたその瞬間。体の内側から爆発するように仕込んだ。救いようのない馬鹿はもうどうしようもないって意味でな」
そんなこと知らない彼の転生者は、ゾッとするような爆弾を抱えて一生を過ごすのだろう。フィンはこの時の一誠に畏怖の念を抱かずにはいられなかった。自分の嫌いな人物に対して徹底的に懲らしめる性があるようだと知った。
【ステイタス】初期化の異常現象の原因で元凶たる犯罪者は捕らえられ、冒険者達の間で緊張の糸が緩みホッと安堵した。しかし、初期化された冒険者達の【ステイタス】は元に戻すことは叶わず主に被害に遭った第一級冒険者以外の者達は落ちぶれたりまた前向きに励もうと、様々だった。そして今回の元凶の転生者を捕まえた一誠に一億の賞金を貰い受けたが、カラーボールを当てた『ダイダロス通り』の
「本当にあの額のヴァリスを与えたのだな」
「俺は一度決めたことは最後までやり遂げるほうだからな」
「そうなんだね。あとイッセー、なんだか嬉しそうな感じがするんだけど何かあったの?」
自然体でいるつもりだろうとそれなりに傍らで過ごしてきた異性からすれば、些細な変化でも敏感に感じ取れた。亜麻色の髪の女性から指摘されて否定せず首肯した。
「ああ、人知れず褒章を貰ったからな」
「褒章?一体誰から?」
「あの転生者の男、今まで色んな冒険者から【ステイタス】を奪って蓄積した結果、全
「・・・・・まさか、奪ったのか?」
翡翠の柳眉を寄せるハイエルフ。転生者と同じことをしたと思い問い詰める目線で一誠を見るが首を横に振られた。
「いや、コピー、【ステイタス】を複製させてもらった。色々と調べたり試したりした結果でな。あいつの【ステイタス】は異世界風の【ステイタス】だから俺の力でも可能だったよ。で、あいつの特典は『ステイタステイカー』っていって、触れた対象の【ステイタス】を奪う能力だった。俺の予想通りだけどな」
金色の『ステイタスプレート』を取り出して見せつけると、二人の目は絶句で丸くなった。
「複製して得た俺の【ステイタス】だ」
イッセー
Lv.2
力:I0→SSS1349
耐久:I0→SSS1301
器用:I0→SSS1322
敏捷:I0→SSS1389
魔力:I0→SSS1379
幸運:I
《魔法》
『
・移動系魔法。
・継続時間と大きさは魔力数値に依存、憧憬によって過去・現在・未来や異なる世界へ行き来できる。
・強い憧憬である程、成功率上昇。
(特典)『鑑定』
・ありとあらゆるもの価値を見定める。
《スキル》
『
・戦闘時のみ発動。
『恋愛一途』
・早熟する。
・懸想が続く限り効果維持。
・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。
『魅了成就』
・魅了する。
・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。
・神・老若男女、人種問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。
『三技一体』
以下の三つのスキルが一つとしてそれぞれの発動条件が満たされると一時発現する。
『
・調理道具の装備時、発展アビリティ『料理』の一時発現。
・補正効果は『器用』と『敏捷』のアビリティ数値に依存する。
『神伝鍛冶』
・鍛冶道具の装備時、発展アビリティ『鍛冶』の一時発現。
・作製した武具の品質の向上は『器用』アビリティ値に依存する。
『
・
・一定以上の
『運命協同体』
・同恩恵を持つ者のみ効果を発揮。
・懸想の丈の度合いによって【
・『運命協同体』の副次効果―――懸想の丈の度合いによって良好の同恩恵を持つ以外の者も共同することで【
・
(特典)『
・ヴァリスを払うことで異世界の物資を購入可能
・
(特典)『ステイタステイカー』
・対象の【ステイタス】を奪う。
・奪った【ステイタス】の全てが上書き・蓄積し糧となる。
・
この事実にリヴェリアは心底驚き、言葉を失った。
「す、すごい・・・・・アビリティがSSSなんて」」
「俺が欲しかった魔力もこれだ。この数値なら・・・・・今度こそ元の世界と繋げられるかもしれないんだ」
「あっ!」
魔法『
「だから、リヴェリアとアスナ。俺の世界に行き来できたなら一緒に来てくれるか?」
「うん、勿論だよ」
「完全な未知の世界。ロキ達と同じ名を持つ神々がいる世界だ。行けるならば是が非でも。お前と共に行こう」
前向きに一誠からの誘いを受け入れ頷く二人に微笑み、魔法の詠唱を紡ぎ始める―――。
「んじゃあ早速あいつらで実験しようかな」
「あいつら、で・・・・・?」
「もしかしてあの子達?」
思い当たる人物達を思い浮かべ、問うアスナに無言で首肯する一誠は腕輪に触れて通信を繋げた。程無くして、緊張の面持ちをしている少女の顔が立体映像に映った。
『あ、あの・・・・・なんですか?』
「今から会えるか?お前等しかできないことだから協力してもらいたい」
『私達にしかできないこと?』
「ん、そうだ。今暇ならお前だけ今すぐ来てほしいがどうだ?」
一誠からの提案に少女、一佳は何度も首を振って首肯した。
『わかりました、直ぐに行きます。場所はイッセーさんの家でいいですね?』
「ああ、そうだ」
待っててください。と言い残し通信を切る前の一佳のテンションは心なしか高かった気がしなくもない。
「嬉しいのかな、イッセーのお手伝いができて」
「知らん」
「身も蓋もない感想を言うな」
十数分後、茶髪のサイドテールに軽装の
「シノンも来たんだな。矢を買うか?」
「異世界の買い物をしてみたいわね」
「・・・・・アスナさん?」
いつの間にかそんな話を己の知らぬところでしていたのかな?と生暖かい目―――プレッシャーを向けられるアスナは苦笑いをしたあと「ごめんなさい」と頭を垂らした。
「大丈夫よ、今のところ私と彼女しか知られてないから」
「え?えっと、何の話でしょうか・・・・・?」
「・・・・・まぁいい、減るもんじゃない話だ。それよりも俺に付き合ってもらうぞ拳藤一佳」
「え、あ、はい、何をすればいいですか?」
緊張の面持ちで尋ねる。変なことじゃなければいいけど、と思いながらもどこか期待する自分がいることに気づかない一佳は促された。
「目を閉じた状態で元の世界のことを強く思い浮かべてくれ。それがお前にしてもらいたいことだ」
「それだけ、ですか?いったい何のために?」
「お前らには言ってないことだけど、異世界に繋げる魔法を覚えているんだ」
「それって、イッセーさんの世界でも?」
「その通りだ。でも、その魔法に必要な魔力が全然無くてな。発動はできても一方的に見ることしか出来ないでいたんだが、その問題も解消したからまず最初は拳藤一佳達の世界にも繋げる事が出来るのか試したい話なんだよ」
それは、是非とも協力しなくてはいけないことだと力強く首肯する一佳。もしも成功したら皆で元の世界に帰れるのだ。協力して成功する。その強い意気込みで望む少女に見つめ自然体で両腕を伸ばす。添えるように伸ばした手を一佳の頭を掴み額と額を重ねる。鼻先がくっつきそうなほど至近距離で見つめ合う両者。
「始めるぞ。強く頭の中にイメージを思い浮かべるんだ」
「は、はい・・・・・っ」
真面目に取り組もうとする一誠と対極的に、乙女心が高なって紅潮する顔で肯定する一佳の二人の足元に魔方陣が展開した。瞑目する男を見て一佳は一拍遅れて目を瞑って元の世界の記憶を思い起こす。
「イメージは、何でもいい。思い出のある場所か家族でも友人でも誰でも構わない。お前と言う存在が異世界の存在を証明している時点で、お前が浮かべたものが俺の頭の中にダイレクトに入って来てその記憶をもとに魔法で繋げる。できるかどうかは賭けに等しいがやる価値はある」
「はい」
強く思い浮かぶことが大事・・・・・そう考えたら学校で共に過ごしていたあの人の顔がスッと強く浮かび上がり、会いたいという想いが自然と強く高まった。
「(俺自身かよ・・・・・まあいいや)ネオ・ワールド・ドア」
拳藤一佳の強い憧憬を糧に魔法を発動した。
異世界の某所、UとAの英文字が重なったように作られている巨大な建造物があった。その建物はヒーローを育成する機関の施設でもあり、優秀なヒーローを輩出させる名門校だった。だったという過去形で語られる理由は一年前、たった一人を残して二クラスしかないヒーロー科の生徒四十名と三名の教師が謎の失踪、神隠しに遭い、犯罪者の誘拐事件ではないかと、学校側の防衛セキュリティの認識、親御からの強い追及と世間からの嵐のような批判と風あたりに信用と信頼が失い、かつての栄光や名声は形骸化しつつあるのだった。それでも、まだ希望の一縷の光の筋が残されている。皆を連れ戻す使命を託された一人の少年に。
「やぁ、身体の調子はどうだいって訊きたいけど、あんまり好さそうじゃないみたいだね」
「・・・・・最近ほとんど寝てないからな。もう今は朝も深夜も変わらなくなってきたところだ」
ネズミのような白い毛並みを持つ小動物が人語を操り、歴代の者しか座ってはいけない椅子に腰を落として目の前の女性教員の隣に立つ少年と会話を交わした。ぼさぼさの髪に目の下に浮かぶ隈の濃さは尋常じゃなく少し顔色も悪い。規則正しい生活を送っていないと一目で分かってしまう。
「すまない。全面的に押し付けてしまって」
「俺しかできないことで。適材適所、気にしないでくれ」
「でも、ちゃんとした食生活と睡眠を摂らないと駄目だよ。でないと君が倒れてしまう」
「一秒たりとも、無駄にはできない状況だ。この学校の風評も今じゃガタ落ちだろ。全てを取り戻すにはあいつらを探し出して見つけなきゃならないんだ」
信念を感じさせる言葉につぶらな瞳を閉じ、心の中で申し訳ないと謝罪の念を抱く。他人の為、学校の為に解決と言う出口が見えない闇の中で試行錯誤し続ける少年の労力は計り知れない。
「だとしても、それをできる可能性をもつ君自身が倒れたら本末転倒だ。非力な私達のせいで非常に申し訳ないと思っている。でも、休まなきゃいけない時は休まなきゃダメなんだ。だから校長として言わせてもらうよ。今日ぐらいは何もせずゆっくり休みなさい」
「・・・・・」
「いいね」
「・・・・・わかった」
少年は観念した風に瞑目した。渋々とした表情でこの場に留まる理由がなくなって踵を返すその足が、不意に停止して壁の方へ振り向いて信じられないと見開いた目を向ける少年。女性教員と校長は不思議そうに壁の方へ見るが、何もない。
「どうしたんだい?」
「・・・・・ありえない」
「え、なに?」
何かに気付いた様子であるが本人にしか分からないことにチンプンカンプンな二人。具体的に教えて欲しいと思って口を開いた次の瞬間。壁に光が大きく楕円形に集束し・・・・・形成していった。
「これは、君が?」
「俺じゃない。俺じゃないけど・・・・・どういうことだ」
「私達には判らないわ、どういうことなのか教えてちょうだい」
「・・・・・俺も知りたいところだ」
やがて光の鏡として完成し、鏡の向こうから五人の人影のシルエットが浮かび上がる。警戒する少年と女性の目の前でシルエットは次第に鏡の向こうにいる者達の姿を鮮明に表し、絶句。
「「・・・・・」」
少年は写し鏡で自分を見る感覚を覚えた。何故なら鏡の中にもう一人の自分、身長が伸びている己を視界に入れた故に三人の女性の中から「一誠さん!」と呼ばれるまで思考が停止していた。
「・・・・・一佳?」
「はい、お久しぶりです!あ、校長先生にミッドナイト先生!」
「まさか、拳藤君かい?今どこにいるんだい?」
「私達は異世界にいます。皆も無事に生きていますよ」
椅子から降りて鏡の前に立つ校長。動物の手で鏡に触れるが、硬い感触が手の平に伝わる。ミッドナイトと呼ばれた女性も触れるが結果は同じであった。
「そこから出られないの?」
「えっと、駄目みたいです。一誠さん、あ、異世界にいるイッセーさんの魔法でやっとのようで」
「もう一人の、彼・・・・・?」
―――もう一人の兵藤一誠を見つめ、まだ少年の兵藤一誠と交互に見る。別の世界にいる同じ人物を二人も見ることになるとは誰も思いもしなかったことだ。兵藤一誠は驚いた表情のまま一誠に話しかけた。
「俺と同じ境遇の真っ只中にいるのか」
「ああ、こっちは四年も住んでいるぞ」
「こっちは二年だ」
「へぇ・・・・・並行世界の時間の流れが違うんだな。ていうか、凄い顔だぞお前。髪がボサボサだし」
「五月蠅い、一佳達を探そうと必死に模索していたんだ。それよりも一佳達を守ってくれているのか?」
「守ってないぞ。こいつら一度ダンジョンで勝手に死んだしな」
はっ!?と目を見開く兵藤一誠だったが、自分ならばその後どうするのかを直ぐに察した。傍にいる二人は酷く他の者達の安否を確かめる問いをしているものの、一誠に完全にスルーされている。
「というか、お前、ネズミが普通に立って喋っているの気にしないのかよ」
「いや、この世界はそう言う世界だから。一佳達から何も聞いていないのか?」
「こいつらは俺をお前に被せて接してくるんだぞ?俺を俺として見ない相手と接するなんて嫌だわ」
「・・・・・やっぱり俺だな。それは俺も同感だ」
「はは、だろうな」
共感している場合じゃないでしょ!とツッコミを入れるミッドナイトは訊き出した。
「ねぇ、同じ兵藤一誠ならその世界からこっちの世界にどうにか繋げれないの?」
「それを、俺が何もしていないと思っているのか?」
「・・・・・まだ、できないってことなのね」
「異世界の魔法でようやくここまでできるようになったんだ。本来なら、この鏡を通じて行き来できるはずなんだが・・・・・十分魔力値もあるのに、なんでかなぁ・・・・・」
そう言いながら拳を腰の後ろまで引き、正拳突きを鏡にブチ当てた。本来なら割れるはずの鏡は鈍い轟音を鳴らすだけでビクともしない結果で終わった。
「ち、割れないのか。魔法にしちゃおかしなことだ」
「・・・・・なぁ、オーフィスの目あるんだよな?」
「ん?そりゃお前だから・・・・・成程もしかすると試す価値があるな」
二人だけしか分からない会話の内容に理解できず、見守ることしかできない一同。徐に右眼の眼帯を外し、鏡を背に振り返る二人の兵藤一誠が濡羽色の眼を開眼したら、同じ顔の眉根が寄った。
「駄目か」
「駄目だな。目を介して相手の視線で見られるならと思ったんだけど」
「いい案だと感じたんだが、この鏡がそれすらも邪魔するか。まさかあの女神が邪魔しているんじゃないだろうな」
「有り得る話しだと思うぞ。今でもどこかで見ていると思うし」
「「いつか、シバいてやりたいな」」
揃ってため息を吐き、後に振り返った兵藤一誠は乞うた。
「なぁ、オールマイト達にも後ででいいから会わせてくれないか?」
「あいつらに変な期待を抱いてもらいたくないんだけど?何時なんだーって催促されるのも億劫しいし」
「そっちの世界にいるお前だけが頼りなんだから仕方が無いだろ?立場が逆だったら同じだぞ」
「はぁ・・・・・わかったよ。十分後でいいか?」
と、予定を聞くところで校長が口出しした。
「いや、一時間後にしてくれるかな?拳藤君達の親御さんをここに招いて彼女達の無事な姿を見せたい」
「一時間後か。で、場所は?こっちから特定の場所に魔法を発動することはできない。というか、俺がそっちの世界の事なんて知らないからできない。ここに魔法が発現したのは拳藤一佳がもう一人の俺のことを強く想い浮かべたからなんだけど」
「一佳・・・・・」
「う、うぅぅ・・・・・」
さらっと少女を羞恥させる言葉を述べられて兵藤一誠は生温かい目で見つめ、拳藤一佳は顔から火が出そうなほど耳まで赤く染まった。
「一つ聞いていいか。一佳達に手を出してないだろうな?」
「好きでもない女に手を出すほど俺は最低じゃない」
隣で同じ兵藤一誠とは言え、呆れながら好きじゃないと言われると乙女心は複雑で、拳藤一佳は顔にも複雑な表情を浮かべた。それを非難として窘める兵藤一誠。
「お前、俺なんだからもう少し言葉に気をつけろよ。俺が一佳達のことを好きじゃないって言っているようなもんだぞ」
「こいつが俺をお前だと勘違いさせてもいいわけ?」
「・・・・・物凄く複雑だ」
自分だけど自分じゃない兵藤一誠に好意を向けられていると思うと、口にしたように複雑極まりない。鏡の中の自分は拳藤一佳に話しかけた。
「おい拳藤一佳。もう一人の俺に何か言うことはあるか?」
「えっ?」
「さっきから何も言ってないからな。言いたいことがないなら鏡を消すぞ?」
一時間も魔法を発動し続けるのは面倒だと言いたげな一誠は一佳に促す。少し当惑するが言いたいことがあると真っ直ぐ兵藤一誠に視線を送った。