ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚30

秋の季節の移り変わりが目立ってきた頃。四度目の冬の到来を迎える一誠。『異世界食堂』のメニューにも冬季限定の料理が出始め、冷たい空気と寒気の風に充てられ身を縮めて震える客達が足を運び、体が温まる店内の整った暖房や体の奥から温まる料理を堪能し、ホッと一息吐く。

 

「これひとつで温まることが出来る魔道具(マジックアイテム)を無料に提供しまーす。ただし、一週間しか使えないのでまた使いたいなら持参してきてください。取り換えは有料で百五十ヴァリスでーす」

 

加工した魔宝石を湯たんぽに内蔵した道具を百個、笑顔と共に配る店主に零細派閥の団員や無所属(フリー)の一般市民が中心に集まって一人ひとつとして受け取っていくことで全て無くなった。後に使用者から絶賛の評価を受け、他の消費者も是非と自分達にもと更に生産しなければならない事態になったが、幼い子供達が寒さに震えることが無くなったと、子連れの家族が笑みを浮かんで話しかけられてはやる気が漲るものであった。そのおかげでオラリオの三分の一の住民達の手には湯たんぽが配給され、寒さで凍える事は無くなった結果に感謝の言葉を送られるようになった。

 

「・・・・・突然だけどアスナ、雪遊びしたことがある?」

 

「え?あるけどどうしたの?」

 

「無性にやりたくなってな」

 

と、いうことで―――。

 

「集めてみました、膨大な量の雪を!」

 

イエーイ!と一人はしゃぐ一誠の前に複数の他派閥の主神と眷族達が勢ぞろいして集まっていた。白銀の世界が何時の間にか城の中に敷き詰められていて、ロキ達は雪の野原の上に立って周りの雪を見て不思議そうな眼差しを送る。

 

「イッセー君、これ、どこから持って来たんだい?」

 

「59階層から下の階層中から」

 

「・・・・・何時の間にそこまで潜っていたのだお前は」

 

「もうイッセーだけで全ての階層を突破できるじゃろうて。それで、儂等をこんな雪だらけの場所に集めて何をしようと?」

 

「当然、雪遊びをする為さ。異世界風の雪遊びを皆に教えようかなーって」

 

因みにアルガナ達は興味無いと拒否された、少し落胆する色を顔に浮かべながら苦笑いする一誠は雪に手をついて魔力操作で雪壁を作っていく横幅二M高さ一M程の壁が盛り上がって形成していく。それを複数、壁同士が対峙するように出来上がる姿にアスナが悟った。

 

「雪合戦!」

 

『雪合戦?』

 

「そ、アスナ正解だ。雪で固めて丸めた塊を投げ合うのが雪遊びの一つなんだ。そこで新たにルールを加える」

 

壁の後ろに巨大な雪の塊が作られては、本神と見紛うほど精度の高いロキの顔が完成した。

 

「お、あれうちの顔やな」

 

「まぁ、あれを相手チームより速く壊すことで勝利と言う条件だ」

 

身の丈を超えるほどの雪玉を作っていた一誠が、それをロキの顔に本気でぶつけて粉砕してみせた。壊されたロキは何とも言えない面持ちで黙ってしまうが、神も楽しめれる遊びだと分かってもらったところで新たに、今度はミノタウロスとアルミラージの顔を作って用意した。

 

「って、モンスターを作るんなら最初から作ればええやないか。何でうちのを壊したん」

 

「意趣返しだ」

 

「なんのや!?」

 

そんなこんなで始まった雪合戦。思いの外、熱が入って相手に当てても良いと説明するとロキは執拗にフレイヤを狙うものの、それら全て絶壁のごとくオッタルが軽くいなしつづけた。相手の像を破壊しながら相手を妨害する雪合戦。歳甲斐が無くフィンとガレスも楽しんでいた。

 

「オッタルー」

 

ゴロゴロと巨大な雪玉を作りながら近寄る一誠の意図を察し、無言で両手で持ち上げた。対するロキ達の方でもガレスも分身体の一誠が作った巨大雪玉を持って構えていた。オラリオ一、二を誇る腕力を有する冒険者達の一瞬の睨み合いは雪玉を投げることで終わった。どちらが勝ったかそれはさておき、寒い中遊んだあとは温まる料理、甘くて美味しい料理を食べて神と団員達は揃って暖まったのだった。

 

 

「アスナ」

 

「はい?」

 

リヴェリアがアスナに声を掛けた。何だろうと翡翠の瞳と絶世の美として女神の嫉妬を買われていたその容姿の顔を見ながら耳にした。

 

「お前とイッセーの世界は共通点があると思って訊くが、お前達の世界では冬の時季になると何かしらの催しはあるのか?」

 

「催し、イベントですか?ありますよ。クリスマス・イヴとかクリスマスが代表的ですね」

 

「そうなのか。ロキが毎年この時期になるとクリスマスとやらをやり出すのだが、異世界にも同じことをするのか」

 

「私達の世界のクリスマスにはちゃんとした理由があるんですよ。ちょっと話が難しくて詳しい事は判りませんけれど、多分、イッセーなら知っていると思いますよ」

 

と、言うわけで二人は直接一誠に訊ねた。『異世界買物覧(ネットスーパー)』で何か購入している仕草をしながら問われた質問を答えた。

 

「クリスマスはイエス・キリストって人の降誕を記念する日でな。そう言う日であることを俺とアスナが住んでいた極東にまで広まったんだ。ま、極東の人間達は大してそんなこと気にせずそういう日は家族か恋人同士家の中で最後の一年を過ごすことが日常であり常識と認識されてる。多分、この世界とは大して変わらんぞ」

 

「意外と普通に答えたね。それと私達の世界と殆ど変らないんだ」

 

「ファンタジー世界であることを除いてな」

 

「それを言ったらVRMMORPGが無いじゃないイッセーの世界には」

 

「こっちはリアルのファンタジー世界だ。ゲームよりも迫力も興奮もけた違いだぞ?神々だって伝説の武器だって存在するんだし」

 

「うーん、それを言われると私達の世界は負けちゃうなぁ」

 

「ついでに技術だって負けないぞ。UFOや巨大なロボット実現してを作っちゃう凄い人もいるんだから」

 

「待って、どうやったらUFOを作っちゃうの!?まさかUMAまでいないよね!?」

 

「河童が普通にいるんだし・・・・・いるんじゃないか?見たことないけど」

 

「か、河童って本当にいるんだ・・・・・逆に見てみたくなったかも」

 

「あ、座敷童子もいるぞ」

 

「それは絶対に見てみたいっ」

 

完全に話が脱線している。と夢中になって話を二人の意識を変えさせる為、あからさまな咳をしたリヴェリアで気付き話しを戻し手続きに入る。

 

「それでそんなこと聞きたいなんてどうしたんだ?」

 

「アスナから意味のあるクリスマスだと教えられてな。お前の方が詳しいということで聞きに来たのだ。それで、さっきから何を購入しようとしているのだ」

 

闇派閥(イルヴィス)が激減したらしいからな。この機にクリスマスでもしようと思ってるんだ。勿論店でも開催する予定だ」

 

その為の道具を片っ端から選んで買おうとしているところ、と聞いた二人は息を漏らした。前回はやらないと言ったが、今回はする一誠がヴァリスをチャージし、カートに入れていた商品を全て購入すると数多の段ボール箱が虚空から落ち続ける。

 

「これ全部、か?」

 

「殆ど装飾品だ。後は前日に飾り付けするだけだから倉庫行きだな」

 

「『異世界買物覧(ネットスーパー)』って本当に何でもあるんだね。イッセーのためにあるようなものだよ」

 

どうせなら元の世界と行き来できる魔法かスキルの方がよかったよ。切実に・・・・・と言葉を心の底から想いを籠めて述べた。それは同意とアスナも「そうだね」と相槌を打った。

 

「クリスマスをするなら、プレゼントも用意しないといけないね」

 

「プレゼント?神が言うと贈り物とやらか。何故そうするのだ?」

 

「俺達の世界では老若問わず、相手にプレゼントする風習があるんだ。特に子供は欲しい物を大抵手に入る一大イベントの一つで毎年楽しみにしているほどだな」

 

「そうだったねー。私もお父さんに色々とおねだりしたよ、イッセーは?」

 

懐かしいと昔の事を思い出す彼女の一言で、寂しげに笑みを浮かべ遠い目をしだした。何故、そんな表情をするのだろうか。一誠の過去を知らない二人は不思議で堪らなかった。楽しいイベントに一体どんな風に過ごしていたのか?

 

「ま、アイズ達子供を中心にプレゼントする必要があるのは確かだな。だけどあいつら、一体何が欲しいのかさっぱりわからん。子供らしい生活なんざしていないわけだし」

 

「そ、そうだね・・・・・」

 

強くなるために冒険者として生きている。自分達が知っているような子供の生活とは完璧に無縁な光景を繰り返し、常識人としてアスナも同意してしまう。

 

「「・・・・・」」

 

ここはやはり、といった二人からの視線を受けたリヴェリアはその視線の意図を察し沈黙で肯定として返す。自分達、特に一誠が直接何が欲しいかと聞いてしまえば何かくれるのだと期待させる。期待させるだけならともかく相手に確定させてしまっては意味が無い。驚かせて喜ばせるからこそ意味があるのだ。一誠とアスナが知っているクリスマスプレゼントとは、そういうものである。話を聞き終えた二人は一誠から離れ。

 

「家族でクリスマスを過ごすのだな。それは何時もの日常と変わりないのでは?」

 

「雰囲気で何だか盛り上がりませんか?楽しいと思えばその日は何だか特別だと人は感じるんですよ」

 

「成程、気持ち次第か。やはり、異世界の話は興味深い・・・・・それで、恋人同士はどうやって過ごすのだ?」

 

「二人きりで祝ったり、一緒に過ごしたりします。中には恋人の家に泊ったりして夜を過ごすんです」

 

「相手の家に泊って夜を過ごして何をするのだ?家の中でも祝うのか?」

 

「え、えっと・・・・・色々です」

 

照れくさそうに最後の質問だけは曖昧に答えてしまうが、リヴェリアは更なる質問を追及した。

 

「その恋人が一番喜びそうな物とは一体何か分かるか?」

 

「大抵は相手が欲しがっていた物ですけど、無欲な人はやっぱり一緒に過ごす時間かもしれません。あんまり主張しない人もいれば・・・・・愛し合って過ごす人もいます」

 

最後に述べた言葉はアスナとリヴェリアの間で共通の意識をしてしまった。そうか、とそれだけ呟いて教えてくれたアスナに感謝の念を送ると、歩く歩調を早めて背中に流れ落ちるように翡翠の長髪を揺らしながらどこかへ行った。

 

 

それからあっという間にクリスマス・イヴの日を迎えた。

 

間隔的に間を空けて天井を支える様に立てられ、城の奥にまで続いている玄関ホールで複数の【ファミリア】が集っていた。その柱に煌びやかに飾り付けされた空間の中で一際大きく主張する樹に様々な装飾品が飾り付けされていて、皆を見下ろす様に鎮座しているその中心にして『幽玄の白天城』に同居、居候、同棲している神々や眷族達が各々と立っていた。運び込まれている数多の各テーブルには『異世界食堂』の従業員達によって次々と作り出されており、それを見て神同士や眷族同士で和気藹々と賑やかさも醸し出していた。

 

「何とも美しい料理があるのね。まだ食べたことが無い見たことのない物ばかりだわ」

 

「今回は特別の日だからってイッセーが大盤振る舞いしとるんや。主に料理の腕やけど」

 

「そのイッセーはどこにいるのかしら?」

 

「ああ、他の【ファミリア】を誘いに行っておるんや」

 

役者を揃いに街へ出向いている一誠を待っている間、柱の奥から現れるミア達の手によって料理は追加されていく。その付近にフレイヤがいて柔和に話しかけられた。

 

「ミア、すっかりあの子の下で板が付いたわね。どう?あの子と一緒に働いて楽しいかしら?」

 

「どの口を言っているんだい。突然あたしらの前に現れたと思えばあの坊主の店で働けと促した神がさ」

 

「あら、私は別に強制したわけじゃないわよ?無一文となってしまったあなた達に働き先を教えてあげただけ」

 

それからのことは関与していない私は知らないわと付け加えて言う銀の美女神に、半目で見返したあと踵を返して何も言わず従業員達とまた柱の奥へと引っ込んだ時。玄関の扉が鈍重の音を立たせながら開き、外から大勢の人影が入ってきた。

 

「どうぞ、中に入って入って」

 

「すまぬな。パーティに誘ってくれて感謝する」

 

「おや、もう準備が出来上がっているようだ。私達が最後なのかな?」

 

「あらー、何だか綺麗な飾り付けまでされてるじゃない」

 

「私までお誘いの声を掛けてください、誠にありがとうございますイッセー殿」

 

「素敵なパーティになりそうですね」

 

「私達まで誘ってくれてとても感謝します」

 

「むむっ、美味しそうな料理が盛り沢山!ガネーシャ、腹いっぱい食べるぞ!」

 

「イッセー君に感謝しないとなぁー」

 

「わ、何だか凄い」

 

「樹に飾りがされてる?」

 

「何の意味があるのか理解できん」

 

これまで一誠と交流してきた眷族とその主神達がゾロゾロと今回は特別にと土足で玄関ホールに上がり、ロキ達と合流を果たして数々の異世界料理の前に立っては、軽く百人以上がホールに立って少なくない数でクリスマスを称したパーティの開催を待った。

 

そしてその時が来た。

 

「よーし、全ての料理も出しつくして主役も全員揃ったことで俺ことイッセー主催でクリスマス会を始める!と言っても単なる立食パーティみたいになるけどそこは気にせず、異世界の料理を楽しみながら今日という日を無事に過ごせた自分に祝して大いに楽しもう!」

 

ホール中に響く一誠の宣言で、あっという間に雰囲気が爆発したように盛り上がり、どこからともなく聞こえてくるクリスマスソングに包まれながら異世界料理の味を舌鼓、主神同士集って会話をして楽しんだりする。

 

「イッセー、アミッドちゃんは?」

 

「あの主神が許してくれなかった。ちっ、融通の利かない金の亡神め」

 

「え、えっと・・・また来年する時にまた誘おう?」

 

「おーい、アスナー久々に一緒に食べようぜー!」

 

クラインが声を上げてアスナに近づき、誘いの言葉を掛けられて一誠を見てしまうが「たまには」と誘いを受けろと言外で言われて、逡巡したのちに首肯して【アルテミス・ファミリア】がいる方へと足を運んだ。

 

「おーい、イッセー、ちょいええー?」

 

「酒臭っ!?」

 

喋るだけで吐く口臭から酒の香りという一誠にとって毒に等しいそれを、酒瓶片手で持って来て話しかけてくるロキ。一歩二歩距離を置いて若干顰め面で「何だ」と言い返す。一体この短時間でどれだけの酒を飲んだのだろうかと思いながら。

 

「イッセーの世界のクリスマスはただ飲み食いするだけなん?いつものパーティとは何ら変わらへんで」

 

「パーティは大体そんなもんだろ。それともロキの方で何か準備でもしてくれたのか?」

 

「いやー、うちはイッセーが突然何かしてくれるんやろうなーと思って期待して待っておるでー?」

 

首に下げたカメラを持ち、写真を撮り始めに離れたロキを見送ると濡羽色と金色のオッドアイにサーモンピンクの髪がコソコソとテーブルの影に動いているのが目に留まり、誰が何をしているのか直ぐに悟ってスッと細まる目で気配を殺し動く。

 

「おい、なにサボって食べてるんだお前?」

 

「ぐああああああああっ!あ、頭が握り潰されるアルー!?」

 

ガシッ、と口に頬張っていた肉まんを零して悲鳴を上げる女性の頭を掴みアイアンクロー。

 

「いい度胸だな。俺の店で仕事をほったからしにしたらどうなるのか、その身に刻んでやるためにちょうき―――躾をするか」

 

「待つアル!いま調教って言おうとしたな!?っておい、頭を離せっ、私をどこに連れていくアルか!」

 

某漫画では化け物並みの戦闘力を発揮するが、本気で抵抗しようとしても一誠の拘束からビクともせずズルズルと引きずられて柱の向こうへと連れていかれた直後。女性らしかぬ汚い絶叫がクリスマスソングを一瞬だけ掻き消したのだが、何をしたのか何をされたのか気にしたらダメだと暗黙の規則(ルール)が瞬時で一同の中で作られた。例え赤い液体で濡れた顔や両手のまま帰ってきた一誠を見ても誰一人話にすら触れようとしなかった。

 

立食パーティならぬクリスマス会は程なくして次のステージに入った。

 

「それじゃ、そろそろ皆が料理を思う存分楽しんでくれたようだから―――アレでもしようか」

 

一誠のアレという漏らした単語に何の事だか分からない者と察した者の反応が二つに分かれた。そろそろ一年が経つこの時期。これから何をするのか理解した主神達はニマァと笑みを浮かべ、揃って象頭の仮面をつけた男神に視線を向け出す。

 

「イッセー、なにをするの?」

 

「一年に一度のちょっとしたイベントだ」

 

指を弾いて呼応する魔方陣からダーツの的が出て来てアスナ達は頭に疑問符を浮かべる。良く見れば的には神々の【ファミリア】の名が書かれてあった。

 

「俺は一年に一度違う【ファミリア】に改宗(コンバージョン)をしているんだ。それの決め方がダーツで、するのが主神なんだ」

 

「か、変わった決め方をするんだね。イッセーがしないの?」

 

「俺がしたら百発百中だぞ。それじゃつまらないしゲーム的な感覚の意味も含めて神にやらせているんだよ。と言うことでガネーシャ、あの的に向かって投げてくれ」

 

促す一誠から小さな矢を渡され定位置に立つガネーシャに声援もとい「自分の【ファミリア】に当てろ」という無言の威圧(プレッシャー)が向けられる。

 

「今までは最大派閥だったから今度はフレイヤのところか、それとも違う派閥か。俺自身も少し楽しみにしている」

 

「まさに神様頼みだね」

 

「その通りだ。さて、ガネーシャ用意はいいな?」

 

「OKだ!」

 

「それじゃ、ルーレットスタート!」

 

豪快に回す。ぐるぐると回るルーレットを見据え静かに腕を後ろへ、投げる構えを取るガネーシャを見守るギャラリー。自分のところに、というガネーシャへの期待感は高まっていくにつれ手汗握る気持ちとなって静観する姿勢を保って・・・・・。

 

「ガネッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

叫びながら豪快に矢を投げ放った。真っ直ぐ空気を裂きながら的に飛んで行って、刺さった確かな音が聞こえたと同時に矢が消えたように見えなくなった。期待感がさらに膨らみ、スッと一誠の手で止められたルーレットを凝視する主神達。ガネーシャの手によって刺さった的はとある【ファミリア】のところに止まっていた。確認する一誠の口で明らかになった。

 

「次の【ファミリア】は・・・・・【フレイヤ・ファミリア】!」

 

「ふふふ・・・・・ようやく私の番ね。ガネーシャ、ありがとう」

 

四年目は【フレイヤ・ファミリア】であった。朗らかに笑う美の女神は徐に一誠に近づき華奢な手で頬を包み込んだ。

 

「イッセー、私の眷族になるからには私のお願いを叶えてちょうだいね?」

 

「できる限り、無茶な要求じゃない限りな。少しでもしたら即見限るぞ」

 

「あら、つれないわね。ねぇ、オッタル」

 

女神の呼びかけに錆色の瞳が真紅の長髪に濡羽色と金色の瞳の男を見下ろす。

 

「フレイヤ様の神意に従え」

 

「できないことはできないとはっきり言うぞって伝えただけだ。それとも冒険者らしく力尽くで従わせるか?何時ぞやの勝負、まだ決着ついていないしな」

 

挑発染みた発言を述べられるオッタル。決着がついていないという単語にピクリと反応したのを傍にいたフレイヤは見逃さず、楽しげに微笑みを浮かべた。

 

「勝負を仕掛けてくるなら受けて立つからな。時と場所を選んでくれた上でな」

 

「・・・・・その言葉、忘れるな」

 

「勿論だ。それじゃ、話を変えるけどガネーシャ、お世話になった・・・・・覚えはあんまりないけど俺からの贈り物だ」

 

「おおっ!」

 

展開した魔方陣から丸めた状態の魔法の絨毯を贈呈されたガネーシャは喜びの声を上げた。さっそく広げてみると、ロキ達が持つ絨毯より二回り大きく、【ガネーシャ・ファミリア】の徽章(エンブレム)が刺繍されていて男神は嬉しそうに口元を笑んだ。

 

「ありがとうイッセー、ガネーシャ大感激だ!」

 

「どういたしまして。そんで団長にはこれをだ」

 

「私にもか?」

 

不思議そうに思いながらも手渡される贈り物を受け取る。それは銀色の光沢を輝かせる赤と黄の宝玉がある拳装(メタルフィスト)金属靴(メタルブーツ)に藍色の宝石の首飾りだった。自分の戦闘スタイルを注視した武具なら分かるが首飾りは何故だ?と首を傾げた。

 

「とにかく身に付けて試してくれ、そうすればすぐに意味が分かる」

 

「・・・わかった」

 

取り敢えず試しに装着する。何気にサイズがピッタリで違和感なく嵌めることができ不思議に思うが、最後に首飾りを身に付けると指摘を受けた。

 

「右の籠手は炎獅子、左は雷虎って名前で装着者の念や意思次第で魔法を放ったり纏ったりできる俺特製の武具だ」

 

「纏うとは・・・・・?」

 

「こんな感じ」

 

炎を纏う一誠、雷を纏う一誠、二つの属性を同時に纏う一誠を見てそれが出来るのかと半信半疑で念じてみると、両手にそれぞれ炎と雷が発生して装着者に痛みも与えることなく何時までも纏い続ける。

 

「・・・・・お前はこんな物も作れるのか?」

 

「物作りは好きだからな。今度は全身に雷を纏って軽く跳んでみてくれ」

 

指示通りに全身に雷を纏い始める。首飾りの藍色の宝石が黄色に変色し、その宝石を中心に全身に広がっていくのを確認したシャクティは軽く足に力を入れて床を蹴った直後。一瞬で玄関の扉まで移動した己に驚き動きを止めた。

 

「ん、完璧だな。今度は炎も纏ってみてくれ」

 

「・・・・・」

 

「そうそう、で、雷を纏う炎の塊を放つ想像しながら手を突き出してみてくれ」

 

炎と雷が同時に纏えば一誠から促される女団長。その想像をしながら壁に向かって手を突き出したら、想像した通りに雷を纏う火炎球が手の平から飛び出して石壁に当たって焦がす現実に半ば呆然としてしまった。

 

「・・・・・イッセー?貴方、とんでもない物を作ったわね。あれ、この世界の武具とは言えないわよ」

 

「うむ、魔剣の類でもあれは手前でも作れんぞ」

 

呆れを通り越して何も言えない、と感じで鍛冶最大派閥の主神と団長から言われる男は「そうか?」と小首を傾げる。銀の光沢を発する拳装(メタルフィスト)を見つめるシャクティ。新たな武器と力を得てまだ実感や馴染むのに時間は掛るが、これを贈ってくれた一誠に感謝の念を抱いた。

 

 

クリスマスパーティは参加した皆の記憶に楽しさを刻んで幕を下ろした。それから入浴し、寝るだけだがアイズとアリサ、ラトラにレギン、レイネルが一誠の部屋に呼び出されて贈り物をされた。

 

「本来クリスマスは相手に贈り物をあげたりもらったりすることもあるんだけど、今回はお前達にだけ贈り物を渡す」

 

それぞれの手に渡ったのは武器や装飾品だった。ラトラはシャクティと同じ武装であるのとアリサにはあのロングブレードであった。

 

「イッセー、これ、いいの?」

 

「あれからだいぶ成長したからな。武器の扱いにも慣れてきたところだし遠慮なく使ってくれ」

 

「うんっ・・・!」

 

一度は取り上げられた武器が再び与えられて嬉しく笑みを浮かべるアリサの隣にいるアイズは、新しい剣を見つめていた。青い宝玉が柄に埋め込まれている細剣を。

 

「アイズはそろそろ違う剣で戦っても良いころ合いだと思ってな。所有者の魔法の威力を増幅させる絶対に壊れない武器だ。武器自体の威力は少し落ちるがそれをカバーするのがアイズの魔法」

 

「・・・・・私、まだ最初にくれたあの剣で戦いたい」

 

「ん、それでも構わない。気が向いたらでいいから使ってくれ。二つの剣を持って戦うのもいいからな」

 

「ん、ありがとう」

 

「イッセー様。私のはあの女の方と同じ物ですか?」

 

「ラトラは肉弾戦が合っていると思ってな」

 

「ねぇねぇ、私達のはー?」

 

「腕輪を嵌めてその曲刀を投げると戻って来いと思えば戻ってくるぞ」

 

「それって物凄く便利!一々拾いに行かず、相手の後ろから狙って攻撃できる!」

 

「前者はともかく後者の発想が直ぐ思い浮かべたおレイネルに拍手を送りたいな」

 

「え、えへへ・・・・・」

 

「でも、そう言うことが出来るのはその武器だけだからな。壊れることは無いけどなくさないように」

 

はーいと返事をする幼い女戦士達やアイズ達を部屋から出して扉を閉じた。明かりが灯っている机の元へ寄り椅子に腰を下ろす一誠は目の前の一冊の本を手にして今日の出来事を綴る。その数分後、扉にノックがされた。後ろに目を向け、立ち上がって扉を開けに足を運んでドアノブを掴み開け放つ。

 

「イッセー、いいか?」

 

夜の訪問者はリヴェリアだった。普段の寝巻の姿で了承した一誠の部屋を入り閉じられた扉から離れてベッドの縁に腰を下ろした。

 

「アイズ達はどうだった?」

 

「アリサ達は喜んでくれたよ。アイズは意外にもまだあの剣を使いたいってちょっと遠慮気味だった」

 

「初めてお前から貰ったものだ。直ぐに手放す気持ちはないのだろうさ」

 

金髪金眼の少女の反応を思いだしながら「そんな感じだったんだろうな」と小さく口元を緩め彼女の隣に腰を下ろす。肩を並べて座る男女に静寂な雰囲気が漂うこともなくハイエルフが口を開く。

 

「来年もクリスマスをするのか?」

 

「俺がそうしなくてもロキ辺りが催促してくると思うぞ?一番楽しんでいたのはあいつだとと思うけど物凄く酒臭くてしょうがなかった。クリスマスだけは禁酒にしようかな」

 

「そうしたら必ずロキは抗議するぞ。酒を出せと」

 

「だよなー。何でこの世界のロキはあそこまで酒が好きなのか不思議でしょうがないぞ」

 

後ろに身体を倒して寝転がる一誠の言葉に、「異世界のロキと違うのだな」と関心を抱いたリヴェリアの翡翠の双眸は男を捉える。

 

「お前がいると皆が笑う。皆、幸せや楽しさを感じている。不思議だなお前と言う男は」

 

「俺は俺で普通にしているだけなんだが・・・・・ま、常識外れだとは自覚しているけど」

 

「ああ、お前に常識など通用しないのだろう。元の世界でも変わらないのか」

 

「ンー、元の世界でも俺以上常識外れで異常な人はたくさんいるからな。俺はまだ可愛い方だと思いたい」

 

上には上がいる、と言外されてどんな人物達なのだろうかと気になるところだが、一誠しか知らないその者達を思っても分かるはずもない。スッと寝転がる一誠が起き上がったと思えばリヴェリアに微笑んで話しかけた。

 

「来年もよろしく頼むなリヴェリア」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

振り返る彼女は一誠に微笑み返し、男の手を重ねたら静かに肩を寄せて・・・・・唇を自ら押し付けるように重ねた。ただ触れ合うだけの優しいキスを自分からしたリヴェリアは、ほんのりと頬に朱を染めて言葉を発する。

 

「アスナから聞いた、クリスマスの夜は恋人同士が愛し合って過ごすのだと・・・・・だから今夜は・・・・・」

 

お前と愛し合いたい、と口に言ったリヴェリアは濡羽色と金色のオッドアイの男の顔が視界にいっぱいになった。彼から口付けをされたと、口唇に柔らかく温かい唇で重ねられた瞬間に気付いた時には笑みを浮かべていた。

 

「照れながらそう言ってくれるリヴェリアは凄く可愛いよ」

 

「馬鹿者、私は可愛いなど言われる年齢では・・・・・んっ」

 

「年齢は関係ないだろ?思った事を口にするのが人として当然だ」

 

頬に手を触れられ、長い耳を擦られて身体がピクッと震える反応を示した。それが何時も傍で見てきた王族(ハイエルフ)のもう一つの一面、自分しか知らない彼女の仕草に愛おしさを感じる。

 

「だからもっと、俺の傍だけ、俺と二人っきりだけ綺麗と冷静と厳しい合間にでも可愛いところのリヴェリアを見せてくれるか?」

 

二人しかいない中で愛が籠った優しく甘い言葉の魔法が、リヴェリアの耳から頭の中まで支配していくように入っていった。

 

「・・・・・お前の前だと常に冷静で『大木の心』も構えてる私の心は脆くなって『女』にされる・・・・・なのにそれが堪らなく心地が良さを感じる私がいて、幸せすら感じてしまう」

 

徐にリヴェリアはベッドから立ち上がって一誠の前に立つと静かに寝間着に手を掛けて脱ぎ始めた。その様子を静かに見守る一誠が見ている手前で寝間着と下着を全て取り払った女神と見紛う姿をハイエルフは己の全てを見せつける。何度も見せて身体を重ねた回数は片手では数え切れないほど許してきた。しかし、今夜は特別な夜―――。

 

「・・・・・お前に対する贈り物は、私の心と体だ。どうか受け取ってくれ」

 

「・・・・・嬉しいなリヴェリア。最高の贈り物だ」

 

一糸纏わぬ身体を晒す絶世の美と着やせする豊かな体を心から称賛し、立ち上がって優しく包み込むように抱きしめる一誠。

 

「だったら俺が望んだ時・・・・・昼夜問わず場所も時間も問わずリヴェリアを求めるからな、覚悟しろよ」

 

「・・・・・人目が無い場所なら」

 

困ったように目を逸らすハイエルフに苦笑を浮かべ、頬を指で添えて目を合わせた。交わる視線が距離を縮めてそのあと唇を重ねてベッドに倒れてからは女性の荒い息使いと水音、後に肌が激しくぶつかり合うのと激しい喘ぎ声の協奏が聞こえるようになった。

 

「・・・・・リ、リヴェリア様とあの人が、い、何時も以上に・・・・・っ」

 

「う、うん・・・・・凄いね(本当に、凄い・・・・・私もあんな風に、だったの?)」

 

「出遅れちゃったわね」

 

「というか、こんなことしている私達って・・・・・」

 

「野暮な事を主神様よ」

 

「はぁっ・・・見ていたら疼いてきちゃいました・・・・・・」

 

覗きをする女神や女性達がいることにリヴェリアは気付かず、与えられ続ける快楽に夢中になって貪り、一瞬たりとも一誠から離れようとせず夜を過ごした。

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