ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚4

「ガネーシャが超キタアアアッて、どわっ!?」

 

とある日の朝食が終わった頃を見計らったように騒々しく現れた象神を歓迎したのは、鈍色を煌めかせる数多の包丁による投擲。風を切る音と共にガネーシャの真横を通り過ぎ、廊下の壁の方へ突き刺さる。

 

「次はその仮面だ」

 

「心の底からごめんなさい」

 

キッチンに立つドラゴンの怒りを買うことは絶対にしてはならない。包丁が矢のごとく降ってくるぞ。そんな変な暗黙のルールが出来た瞬間であった。その場で瞬時に土下座をする【ガネーシャ・ファミリア】の主神の背後から麗人の女団長もリビングキッチンに入ってきた。

 

「シャクティ、何の用?」

 

「いつぞやの祭の話をしに来たのだ。理由は分かるな」

 

「あー闇派閥(イルヴィス)も邪神も倒れる寸前もいいところだからしたいって?」

 

「今なら出来る筈だと聞かなくてな」

 

困った色を顔に浮かべて言う「その通り!」と立ち上がるシャクティの主神ガネーシャに振り回されるその苦労に同情の念を覚えた。

 

「したいのって喧嘩祭だよな?本当にしたいのか?」

 

「勿論だ!」

 

逞しい胸板を張って断定する男神。今なら確かに憂いもなく出来るだろう。ガネーシャもそれを分かって、というより居ても立っても入られず、やりたい!と子供のようにはしゃいで懇願しに来たのだろうか。

 

「・・・・・わかった。今年中にしてみようか」

 

「何時するのだ!」

 

「俺の今の私財が心許ないから、ダンジョンやカジノで荒稼ぎしてくる。万全に期したらやるよ」

 

今すぐではないのが残念そうに肩を落とすも、今年必ずするという言質をとったのでガネーシャは満足そうに帰っていった。

 

「イッセー、本当にするの?」

 

「言ったからにはするさ。さて、効率よく金を集めに『深層』へ行かないとな」

 

「何階層だ」

 

リヴェリアの問いに天井を見上げ、そうだなぁと想いを馳せる。

 

「59階層から下だな。あそこらへんの階層なら十数年もドロップアイテムも地上に出回ってないから」

 

ガタリと席を動かす音が聞こえた。見ずとも誰が立ったか手に取るように分かる。だからこそこの言葉を送る一誠だった。

 

「アイズ、アリサ。今回だけは駄目だからな?Lv.的にも身体的にもまだ早すぎる」

 

「「っ!?」」

 

「イッセーが言わずとも私も許さないぞ二人とも」

 

厳しくハイエルフからも言われ、特に一誠から許可を貰えなかったショックが大きく肩を落として落ち込む二人の少女。そこまで行きたかったのかと微苦笑を浮かべるアスナは訊いた。

 

「59階層ってどんな階層なの?」

 

「ぶっちゃけ、めっちゃくちゃ寒い『氷河の領域』だ。至る所に氷河湖の水流が流れ、歩いた感じ進みづらく、極寒の冷気が襲ってくる。そんな階層等の中を探検したらどこの【ファミリア】の冒険者か知らんが幾つか氷漬けの遺体があったしな」

 

「そ、そんな場所なんだ。でも、君は大丈夫だったの?」

 

「・・・・・小さい頃、極寒の環境の中でサバイバルをさせられた経験があるからな」

 

幼少期の一誠はどんな生活を過ごしていたのだ!?と遠い目で語られてアスナ達は愕然を禁じ得なかった。

 

「アイズとアリサ、そんな場所だからお前等は絶対に連れていけない。どうしてもと言うなら気と魔力の融合の技法『感卦法』を会得するんだ。できるようになればどんな環境の中でもいられるようになるからな」

 

説得を受け、諦めたが逆に異世界の技法を身に付ける意欲の炎を燃え上がらす金髪と銀髪の少女。受け入れた彼女達を見る一誠に八つの眼差しの気配を感じる。自分達なら問題ないだろうと言いたげな目がヒシヒシと突き刺さる。

 

 

『氷河の領域』

 

転移式魔方陣で一気にワープしたヒューマンと四人のアマゾネス。その瞬間、肌に突きささる極寒の冷気が襲ってきた。非公式で一誠達は個人で59階層に進出した瞬間でもあったが。

 

「「「「っ・・・・・」」」」

 

極寒とは無縁な環境の中を過ごしてきたアマゾネス達からすれば、火精霊の護布(サラマンダーウール)を着こんでも露出している肌や素足から伝わる冷たさに顔が険しく顰めた。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・・・何とか」

 

「無理だったら先に帰っても構わないからな」

 

そう言って歩き出す一誠に続くアルガナ達。五人の傍にはどこに流れ落ちるか分からない氷河の水流が穏やかに流れている。58階層と繋ぐ連絡路から陸地で続くが、歩く五人には常に動きを凍てつかせる寒気の風が吹いてくる。前を歩く一誠の歩調は変わらず足を前に出し続けると小高い丘を視界に入れそこへ向かう。ついていくアルガナ達も丘の先まで足を運んで進み、何かを見つめて立ち止まる一誠の後ろから眼前の光景を目に焼き付ける。

 

雪国に住まないと決して一生見られない光景だった。夥しい大小の白い塊が広大な緑玉蒼色(エメラルドブルー)の湖に浮かんでいて、更にその奥には白銀の世界に幾つものの雪山があった。湖は円を描く陸地に囲まれているが、陸を侵食せんと湖から水流が木の枝のように分かれて至る所に流れているのが分かる。白銀の大陸にも川が流れていた。その方角へ一誠は指す。

 

「60階層に行くにはあの山の向こうにある氷の洞窟に向かわなきゃいけない。今いるここより確実に寒いから鎧を着てもらうぞ」

 

鎧?どこにそんな物があると思っているアルガナ達の目の前で一誠が五人に増え、魔法で作られた分身体の一誠達が全身を真紅の光の奔流と化して四人に近づく。彼女達の出で立ちが変わった。身体を覆う真紅の鎧、同色の拳装(メタルフィスト)金属靴(メタルブーツ)を装着しているところ以外褐色の肌を晒したままだ。

 

「・・・・・これは、一体」

 

「その疑問はこの探索が終わってから答える。それよりもその鎧を着ていたら寒さは感じなくなっただろ?」

 

「ああ、不思議にだ」

 

「なら問題ないな。それじゃ、早速行こう」

 

再び動き出す一誠から分身体が二桁、三桁も分裂して意思を持っているかのような動きを見せて色んな場所、至る場所へ駆けだして行く。未だ見たことがなかった一誠の力を見て、神妙な面持ちとなるアルガナ達。底が計り知れないと湖を沿って歩く彼女達の横、湖の水面が激しく水飛沫を立たせた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

楕円形の体の頭部に長大な一本の角を生やし湖の色に溶け込んで待ち構えていたのだろう、緑玉蒼色(エメラルドブルー)色の巨体を駆使し鋭利な角で貫かんとする巨大な魚類型のモンスターが湖から飛び掛かってきた。59階層に来て初の遭遇(エンカウント)、アルガナ達は意気揚々と得物を手に―――。

 

「戦うな!走れ!」

 

疾呼する一誠。どういうことだと怪訝になるが先に走っていく男の姿に追いかける。飛び出してきたモンスターの角が、彼女達がいた場所に突き刺さり・・・・・身体を捻って回転をすると地中へ潜って消えた。水の中に住む生物としては見慣れない光景だった為に四人は軽く驚く。

 

「今のモンスターは湖だけじゃなく地中からも飛び出して『群れ』で襲ってくる。一匹を相手にしていたら五匹以上があの巨体でどこからでも飛び出してくるぞ」

 

「何匹出てきたところで殺せばいい」

 

「うん、それは俺も同意だけどさ」

 

指先を右の湖の方へ指す。釣られて湖へ見るアルガナ達の視界に水面から飛び出す数多の巨影。そして前方と後方と左方の地面から飛び出してくる同類の巨影。

 

『『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』』』』』』

 

「こんなの、一々相手にしてられないだろ」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

沈黙で是と肯定したアマゾネス達。

 

「モンスター達は凍てつく極寒の階層の中、動きが鈍った俺達を数の暴力、『群れ』で襲いかかる。一つの群れを全滅したと思えば別の群れが襲いかかってくる。だから湖から離れて戦う。あの魚のモンスターは湖から離れた場所じゃ追ってこれなくなる。あまり体力が無いからだ」

 

六対十二枚の翼を生やし突っ込んでくる魚類型のモンスターに魔石ごと何閃も刻みつけ、ドロップアイテムを残して灰燼と化する。宙に舞う灰を被りながら湖に雷を放って攻撃した。轟く稲光が周囲を強く照らし続ける。雷の魔法を止めた頃、湖の水面の至る所にプカーと感電死した魚類型のモンスターが浮かんでいた。こんなに水中に潜んでいたのかとアルガナ達は驚きを隠さなかった。

 

「ま、こうした方が手っ取り早い話でもあるけどアルガナ達はできないだろ?」

 

できるか、と第一級冒険者を四人同時に相手にして圧倒した化け物並みの強さの一誠に心中で突っ込んだ女戦士達。水面から浮かぶモンスター達が空間に開いた穴の中へ吸い込まれて消えてゆく。地面に転がっている大きなドロップアイテムの角も手にして大型のバックパックへ入れ続けるその作業が終わったら、一誠達の狩りの進撃が始まった。白雪と同じ色の素肌の女体型で吹雪を放つモンスター、全身が剛毛で覆われた人型の大型モンスター、アルミラージの何十倍も大きい兎型のモンスター、攻撃に特化した大きな熊のモンスター、見た目だけなら可愛いが一ヶ所に何百という数の群れを形成していた小型のモンスター、極寒の環境に適応している蜥蜴人(リザードマン)等の怪物(モンスター)と『氷河の領域』を相手に半日以上過ごした。

 

「それで、この結果なのか・・・・・」

 

「ンー【ゼウス・ファミリア】が見たというモンスターの特徴が一致するね。しかも怪物の宴(モンスター・パーティ)並の数が常時いるとなると厳しい戦いに強いられるのか」

 

「たった半日でこの数のモンスターを屠ったことも加えて圧倒されるわい」

 

大きな山が三つ以上積み重なって、アルガナ達と魔石の採取の作業を繰り返す一誠の回りは夥しい量の灰で床が埋め尽くしていく他、大量の怪物の宝(ドロップアイテム)が山のように積み重なれていく。トレーニングルームでその作業をしていた五人の様子をリヴェリア達が見に来て唖然とした。全ての作業を終えると荷物を纏めてギルドに直行する。大型のバックパックを背に歩き、大神殿・・・いや万神殿(パンテオン)へ赴く。前庭を通って白柱で作られたそのギルド本部へと足を踏み入れる。鑑定と換金をしてもらう際、ギルド本部は震撼した。十数年振りの『氷河の領域』に棲息するモンスターのドロップアイテムが大量に一人の異邦人によって持って来られた。当然ながら一誠は問い詰められる。

 

「ちょ、ちょっとあんた、これ、どうしたのよ!」

 

「仲間と59階層に行ってきた」

 

「はぁっ!?【フレイヤ・ファミリア】が何時、長期の『遠征』に行って来たわけ!」

 

「いや、俺と四人の仲間とだけ」

 

「そんな冗談がギルドに通じるはずが無いでしょう!?」

 

「俺、異邦人」

 

がくりと肩を落として頭を垂らす。その一言で全てを悟ったギルド員の赤髪の狼人(ウェアウルフ)の女性はギルド長にも呼び出され、担当冒険者に強制任務(ミッション)を与えるよう指示を下された。

 

59階層以降の下の階層の資源の採取のクエストを。

 

「・・・・・ギルド長が見逃すはずが無いな」

 

「やっぱり?」

 

「私達や【フレイヤ・ファミリア】でもおいそれと行けない階層だ?それを簡単にあっさりと行き来できるお前が異常過ぎるの一言だ」

 

「元の世界じゃよくイレギュラーだって言われてるからなー」

 

ギルドから自室に戻った一誠の大量の亜麻袋を積んだ山に手を置いて触れる。59階層で得たドロップアイテムや魔石、原料(アイテム)となる植物、金属や鉱石、『氷河の領域』の中で唯一食せる食べ物の込みで―――総額数千万ヴァリス。あまりにも希少性が高く入手も困難だということでこの値段となった。帰宅した一誠にリヴェリアとフレイヤ達は戦果はどうだったのだと気になり部屋まで訪れていた。

 

「たったの一回で数千万も稼ぐか。凄まじいなイッセー」

 

「これでもまだまだ足りないけどな。異世界の買い物は何かと金が掛る」

 

「神輿ってものを買うの?」

 

「ああ、数が必要だしな。だから軽く一億は超える。その他にも色々と買いたいからまだまだ足りないんだ。今でも俺の分身体達が59階層以降の下の階層にまで進出して金になる物を集め続けているしな」

 

リヴェリア、軽くドン引きする。こうして戻ってきているのにまだ自分達の知らないところで集め続けているのかと、思いながら素朴な疑問をぶつけた。

 

「今思えば、お前の魔法で増える分身体の強さはどのぐらいだ?」

 

「魔法と身体能力以外は俺とほぼ変わらないぞ。だからオッタルにも簡単には負けない」

 

「ふふ、イッセー一人だけで【ファミリア】ができちゃうわね」

 

オッタルと同等、あるいはそれ以上の強さを持つ一誠の分身体が百人も二百人も・・・・・そう思うだけで一誠は一人でオラリオ最強の疑似【ファミリア】を構成で来てしまう、そんな存在だとフレイヤは愉しげに小さく笑った。

 

「分身体達が戻ってきたらアスフィとアミッドにも見せて使えそうな物を試行錯誤、新しい作品を作ってみようかな」

 

 

???階層―――。

 

『氷河の領域』の階層を超えて分身体達は未知の世界を醸し出しているとある階層に足を踏み入れた。

 

「この階層は異様だな」

 

「ああ、同感だ。他の階層と何かが違う」

 

「というか、見た目は自然豊かななのは分かるが・・・・・嫌な気配を感じる」

 

それでも襲いかかるモンスター達を蹂躙し、カジノでも荒稼ぎをして一ヶ月間も繰り返した一誠は五億も軽く稼いだのだった。そして軍資金が整ったところで神輿を購入した。

 

「なぁ、今更だけど神輿も買えるネットスーパーって・・・・・」

 

「気にしちゃ、ダメだと思うよ」

 

「気にしたら負けか」

 

二人の目の前に片手では数え切れない大小様々の神輿が床に鎮座している。目の前で購入された物を見つめるロキ達も感嘆の息を漏らし好奇心を擽られた。山車とは別の神輿を始めてみてとても興味津々であった。

 

「この神輿って普通の神輿じゃないわよね?これ紙でできてるみたいだし」

 

「組み立てた骨組みに和紙を張って形にする神輿でな、某県の祭りで使われてる夜高行燈っていう行灯の神輿だ。これも喧嘩祭にも使われてるぞ」

 

「ほーそんなんや?で、なんや人の姿のもんがあるんやけど、もしかすると他の形にもできたりするん?」

 

「出来なくはないけど?なんだ、リクエストでもあるのか」

 

あるで、とロキは一誠にオーダーを頼むと了承と頷いてくれた。

 

「了解、この世界らしい神輿に作り変えてやるよ」

 

「イッセー、私の分もよろしくね?」

 

「できれば私のもお願い」

 

フレイヤとヘファイストスも祭りに参加する意思があったことに意外であった。が、断る理由もなく二人の乞いも受け入れた一誠を他所に大小様々で数が多い神輿を見渡すアスナ。作り変えると言った男の言葉に素朴の疑問が浮上した。

 

「でも、作り変えるってどうやるの?やっぱり魔法?」

 

「人海戦術。俺一人でできるはずもないからいつも通り分身体と一緒に作るさ」

 

「じゃあ、私も手伝っても良い?」

 

「ああ、手伝ってくれるなら嬉しいな」

 

手伝う意思を示したアスナによって、それが水の波紋の如くアイズ達も手伝いという思いを駆らせた。早速作業に取り掛かる『幽玄の白天城』に住みついている同居、居候、同棲している者達。【ロキ・ファミリア】の女性団員達の手も借りて行われるのだった。

 

「リリア」

 

「む?」

 

こっちの来いと手を招く一誠に呼ばれ近寄る。作業している皆から離れ、部屋の外にまで出るとリヴェリアへ振り返った。

 

「60階層から下まで進んだことは知ってるよな」

 

「ああ、お前が話してくれたからな」

 

「ん、迷宮の常識が通用しない階層だったけど。魔石の色って紫紺だよな?」

 

冒険者であれば誰だって当然のように知っている魔石のことを問われ、不思議に思いながら肯定するリヴェリアにポケットから一つの魔石を取り出して彼女に手渡す。

 

「・・・・・なんだ、これは、これも魔石なのか?」

 

綺麗な翡翠の柳眉が怪訝に顰め、翡翠の双眸は手の中にある小石大の魔石は、中心が極彩色、残る部分は紫紺色と見たことのない輝きを放っているそれを見つめる。これを回収した男へ目を上げて問い掛けた。

 

「どのモンスターからこんなものが」

 

「極彩色の大きな芋虫と胴体が蛇で頭部が花みたいで触手もあるモンスターだった。芋虫の方は大変だったみたいだ。倒した瞬間、破裂して腐食液を撒き散らすらしい。蛇みたいなモンスターはかなり打たれ強く、魔法に敏感に反応する。で、階層主らしいモンスターと一戦したんだけど・・・・・逃げられた」

 

「逃げられた?階層主が、逃げただと?」

 

階層主が逃げるという行動をする話は見聞したことが無い。壁に背中を預け濡羽色と金色のオッドアイは真剣な眼差しをして脳裏で浮かぶ当時のことを思い出す。

 

「【ゼウス・ファミリア】が59階層から下まで進んだ当時にあんなモンスターがいたかどうかわからないけど、ここ十数年でダンジョンで何かが起きているかもしれないな」

 

「それを、これをギルドには?」

 

話してもないし渡してもいない、と風に首を横に振る一誠。

 

「リリアにしか教えていない。その極彩色の魔石のことを知っているかと思って訊いた」

 

「私もこの魔石を手にしたのは初めてだ。フィン達もその筈だから教えても構わないか?」

 

「隠すほどでもないから」

 

了承を貰わず遠慮するなと微苦笑する一誠はハイエルフの頬に手を添えて触れる。そのあと頬に添えられる手を重ねて手から伝わるその温もりを感じる彼女を見て微笑する。

 

「可愛いなそういう仕草をしてくれるリリア」

 

「年上の女を捕まえて可愛いと言うな。もう私はそう言われる年頃の女ではないのだ」

 

「それがいいんじゃないか。捕まえて言う相手がいるのは男として嬉しいんだからさ」

 

「・・・・・馬鹿者」

 

そう言うリヴェリアは、照れている時か恥ずかしがっている時なのだと知っている一誠はますます優しげな眼差しで見つめる対象的に絶世の美貌のハイエルフは目を逸らした。

 

―――その翡翠の目がこちらを覗き見している同族と女性、少女達と目が合って・・・・・。

 

「【―――――間もなく、焔は放たれる】」

 

羞恥と不敬な行動をした仲間に対し、魔法を放たんと魔力を練り出したハイエルフを止めに掛る一誠だった。城の中が業火の炎で溢れ返るなど溜まったものではない故に。止められた彼女はそれでも治まるはずもなく、勉強をする容量を三倍にも増やし、同棲している最上級鍛冶師(マスター・スミス)には数日間も酒を抜くという罰を与えた。

 

「え、えと・・・・・これって・・・・・」

 

「アスナとアリシアとレイラに対する罰は俺に任されたから、それにした」

 

アルミラージの毛皮で作られた服の恰好を着せられた。頭にウサ耳のカチューシャに顔と首以外の肌が隠れてある意味着ぐるみの出で立ちであった。そんな恰好をさせられたアスナとアリシアは酷く困惑していたが当の一誠は顔を輝かせてた。

 

「三日間外に出る時も寝る時もその格好だからな?」

 

「「えええええええええええええっ!?」」

 

「あと、俺が望んだら直ぐに奉仕すること。・・・・・ふふふっ、ふわふわでもこもこだ」

 

「あ、イッセー様に何時も以上構ってもらえるとなるとなんだか約得です」

 

性的な意味でなく、獣の毛皮の感触と肌触りを堪能するために作った一誠。体を小さくしてレイラの胸に抱きつけば、嬉しそうにほっこりとした表情を浮かべたエルフの少女。

 

「そ、外でもこの格好で・・・・・!?」

 

「で、出れるわけが無いよ・・・・・!」

 

羞恥心でいっぱいになり、こんな恥ずかしい格好をさせる一誠にちょっぴり恨めしいと顔を赤くして非難の目で睨む―――が、涼しい顔で言い返された。

 

「覗き見した結果だと思うぞ。―――いっつも人の情事を覗いているどこかの誰かさん達のな」

 

ギクッ!と肩を震わせるその反応と顔に冷や汗を浮かべ、動揺の色も出すエルフの少女と亜麻色の髪の女性。ジト目で睨んで返す一誠からトドメの一言。

 

「そのこと、リリアに教えてやろうか?」

 

教えたら、教えられたら彼女は絶対に今まで経験したことが無い説教(まほう)をするに違いない。気付かれていないと思っていい事に何度も一誠の情事を隠れて覗いていた結果がこの程度である。まだ、一誠の方が優しいのだと肝に銘じて揃って頭を下げた。

 

「「せ、誠心誠意で精一杯ご奉仕をさせていただきます・・・・・っ」」

 

その後の三日間、それぞれ一日中も一誠と過ごすことになった。夜は抱きしめながら添い寝することで満足させる。そんな三日間を過ごした一誠の肌は女性よりも潤って至極満足げに絶えない笑みを浮かべ続けた。レイラは一日独占したような結果で嬉しそうであったが、逆にアスナ達は少し疲れの色を浮かべ恥ずかしい思いをしアイズとアリサ、ラトラから羨望の眼差しを向けられた。故に、三人の姿をしていれば一誠に構ってもらえる、と触発を受けてアイズ達もアルミラージやニードルラビットを全て狩りつくす勢いで毛皮を入手、それを独自の方法で服にしてもらい寝る前の男の部屋に入ってお披露目をすると。

 

「可愛い・・・・・」

 

「「「!」」」

 

しばらくドラゴンは三匹の子兎を可愛がりつつ夜は共に寝た。結果的に目論見通りになって心から歓喜した少女達であった。

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