ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
『えーと、フレイヤ。自分のチームの冒険者から選べって言ったよな?』
「ええ、言ったわ。でも、今回の運動会に連れてきた私の劵属には貴方も含まれているわ。少し強引なのだけれど、貴方も私のチームの一人として参加していることにならないかしら?」
フレイヤの指摘に思わず押し黙った。今回は参加者の名簿を作成していなかった。それは自分の不備であることで、運動会の
『今の今まで司会や実況、解説に徹していた俺が最後に参加していいか断言できない。アポロンが了承するなら構わないぞ』
決定権を与えられた男神へ視線が一斉に向けられた。どうなんだ?的な意味が籠められた眼差しを四方八方から一身に浴びる当神は腕を組み、賛否を述べた。
「いいだろう。認めてやる。ただし、我々が勝利した暁には・・・・・分かっているだろうなフレイヤ」
「ふふふ、認めてくれてありがとう。でも、勝負の勝敗は最後まで見なくちゃ分からないわアポロン」
アポロンが認可したことで一誠は転生者と勝負をすることが決定した。何とも言えない気分になるが、やるからには勝利の二文字を青い空に掲げる所存で勝負を臨む―――。
『それでは、イッセーの代わりに進行役を務めます。イッセー、一対一のルールはどうする?』
「相手を戦闘不能、もしくは降参させる。そして、命を奪う行為をしたら即敗北だ」
『わかりました。それでは、両者戦う準備は良いですか?』
一人だけ解説・実況をする席に座るアスナの目の前、フレイヤチームとアポロンチームの巨大観客席の前に佇み対峙する一誠と光輝。片や全身型甲冑を着込む転生者の勇者と対極的に、腰にポーチを佩いているだけの異邦人。完全武装と一件無防備な二人がどんな戦いを繰り広げるのだろうかと期待感を抱く神々と冒険者に一般市民の心情を露程も気にしない当人達。
「お前、異世界から来た異邦人だってな。どんな世界から来たのか分からないけど勇者の俺には勝てないと思え」
「・・・・・」
相手にするのも面倒なので億劫そうな面持で見返し、アスナに視線を配って短く首を縦に振ってみせた。それに呼応して彼女は静かに空へ伸ばす感じで挙手した。
『本当の意味で最後の真剣勝負、第十一回目の競技、一対一―――開始です!』
銅鑼の音はガレスが強く響かせた。一気に熱気が湧く会場のど真ん中で瞬時にポーチからカードの束を取り出し、直視せずに一誠は金属のゴーレムを召喚した。かつて【アポロン・ファミリア】を苦しめた
「・・・・・・うそぉ」
「ふっ、この剣はな万物を斬り捨てることができる勇者の剣なんだ。どんな硬い金属だろうと全て斬れるのさ」
鈍重な動きをするゴーレム達の懐に飛び込んだり、盾で防いだり、敢えて鎧で受け止めて確実に一体一体斬り捨てていく光輝に唖然と驚愕、驚嘆に感嘆と様々な感情を出しては観客から熱狂を湧かせる。この事実に【アポロン・ファミリア】は拳を固く握り締め、勝利の確信を強く持ち、自分達がどう足掻いても傷すらつけれなかったゴーレムを易々と斬り捨てたことで光輝を応援する声に熱が籠った。
「・・・・・」
カードからグレネードランチャーを召喚、その銃の引き金を引くと銃身から黒い塊が飛び出した。それに対して大きな盾で受け止めて防ぐ姿勢―――ではなく、ぶつかる直前、盾の前で見えない壁のような物に阻まれると一誠の方へ跳ね返ってきた。それを片手で受け止め、胡乱気な眼差しで光輝へ視線を注いだ。
「この盾は全ての攻撃を反射する能力、効果があるのさ。だから君の攻撃は全て通用しない」
盾は反射、剣は万物を斬る魔法剣、甲冑は魔法と物理攻撃を無効化。神からすれば「チートの塊じゃないか!」と異口同音で突っ込むだろう。実際口にしたり心の中で突っ込んでいたのは二人が知る由もない。
「わかったか?俺の前では全てが無力なんだ。勇者の称号は伊達じゃないのさ」
前回の
「・・・・・はぁ」
「?」
徐に溜息を吐いた相手を不思議そうに視線を注ぐ。
「転生者ってのは神から得た特典を自慢したい口で、そう言う人種ばかりなのか?空っぽな強さを自慢げに語られても、何の感情も気持ちも湧かない日が来るとは思わなかったなよ」
「負け惜しみか?俺に勝てないからって相手を蔑むなんて最低だな」
「何言っている?ただの独り言だ」
カードを二枚手にして召喚する。一見、見た目を判断するならばそれは細長い蒼と紅の棒みたいな板だった。その金属の板を見て鼻で笑い嘲笑する光輝。
「おいおい、そんな板で勇者の俺に勝てると思うのかよ」
「これは板なんかじゃないぞ」
二枚の板が鳥の翼のように折り畳まれていた状態から大きく広がった。その形は―――扇だ。しかも鋭利な刀がずらりと備わっている。ますます自分に敵うはずが無い武器だと優越感に浸り大胆的な発言をする。
「扇なんかで勝てるはずもないのにな。こうしよう、一分間俺は無防備でいるからお前はその間好きなだけ攻撃していい。勇者としての慈悲だ。ありがたく攻撃をしてもいいぜ」
「・・・・・ほう、一分間無防備なんだな?絶対に途中から反撃なんてしないよな?」
「勇者に二言はない。どうせ勝つのは俺だからな。何もできずに敗北するのは恥ずかしくて嫌だろ?」
言質は取った。二人の頭上にキューブ型の時計が具現化してカウントを始めた。
「それじゃ、ありがたくさせてもらうぜ。反撃も避けることも防ぐなよ?」
そう言う一誠の全身が光に包まれると変化が起きた。今まで着ていた服が紅と蒼、金にと意匠が凝った絢爛な着物に替わっただけでなく、頭に狐の耳に臀部辺りに九つの狐の尾が生えて
「・・・・・は?」
呆ける光輝。何だ、あの姿は。何だ、あの変化は。尽きない疑問の渦に飲み込まれ掛けていた勇者の耳にどこからともなく音楽が流れ出した。更に当惑する光輝の目の前で音に合わせて静かに扇や全身を駆使して踊り出す一誠。蒼と紅の炎を纏う扇は舞うように動かされるたびに火の粉を散らし、舞いを没頭する一誠の踊りの飾りとして鮮やかに彩って見る者全て魅入らせるのに一役買っていた。
「イッセーって舞いもできたのね・・・・・」
「うん、驚いた。そしてそれ以上に綺麗な踊り・・・・・」
「異世界の舞いか・・・・・」
極東の神々も目が釘付けで舞う一誠の姿を見続けた。このままずっと踊りを見ていても構わないと気持ちも湧きあがるが、蒼と紅の火の粉を纏う舞いは唐突に戦の舞いと化した。回転しながら振るう扇から炎の斬撃が光輝に向かって飛翔して直撃した。魔法無効化・物理無効化の鎧が、何の無効化もせずにダメージを与えた。鎧にもその証と傷痕を残している。その事実を受け入れる前に光輝が驚く間もなく炎の斬撃が何度も放たれる。横薙ぎに、袈裟切りに、下段から上段から振り回す度に扇から突風のような飛ぶ炎の斬撃の攻撃に堪らず盾を構え、炎の斬撃を跳ね返した瞬間、一誠の目付きが鋭く光輝を射抜くように睨んだ。約束の時間までまだ数十秒も残っているのに防御の構えをしたことで、蛇もといドラゴンに睨まれた人間のように光輝は体を萎縮した。
徐に一誠は二つの扇を真上に放り投げた。皆の視線を奪い集めるその行動にどんな意味があるのか見届ける一同。扇同士が空中でぶつかると扇が一枚の羽のように一人でバラバラになって、地面に落ちる直前に蒼と紅の炎が動物に、狐の姿に形作り一つ一つ刃物と化した刀に近い形状の曲剣を銜えて降り立った。扇をそうして手元に何もないはずの一誠の手には新たな扇を二つ装備して舞い続ける。その踊りと今も尚奏でる音楽に呼応して炎狐達は光輝に一本の牙を剥ける。前方から襲いかかる攻撃に対して盾で跳ね返せば問題ないが、左右に後方、上からの攻撃には同時に対処できない。回避しようにも回避した先には既に数匹の炎狐がいて攻撃を受けてしまう。隙を見せた矢先から炎の斬撃を食らい鎧に傷を付け続けられる。
「こ、このぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
翻弄され蹂躙されている勇者の自分に苛立ちと一誠の執拗な攻撃に憤怒が籠った叫びを撒き散らした。天に向かって大剣を掲げた刹那、天空から聖なる稲妻が落雷して大剣に籠った。転生者の本領発揮、特典の真価を見せつける光輝は高らかに叫ぶ。
「食らえ、全てを超えた究極の剣技【ギガスラッシュ!】」
回転しながら横薙ぎに振るった大剣から聖なる稲妻の斬撃波が放たれた。その攻撃だけならLv.5の冒険者すら倒される威力が宿っているのかもしれない。しかし、例えそうであっても一誠は屈しない。否、いつもと変わらぬ感じで前に進み続ける。どんな最強の攻撃だろうと全て真正面から受け止め、その上で更に超えるためにだ。その場で激しく回り続けるに伴い、二つの色の炎が入り乱れながら台風のごとく螺旋状と化していき、炎狐達がその渦の中に飛び込んで―――。
「【蒼紅之炎刃】」
転生者の【ギガスラッシュ】に炎の渦が放たれて両者の攻撃がぶつかり合う。しかし、鍔迫り合いと呼ぶほど拮抗はしなかった。全てを切り裂かんとする稲妻の斬撃波が炎の渦の勢いに押し負け、炎刃によって斬り裂かれながら燃え尽く勢いが止まらないまま光輝の方へと迫った。目の前で最強の技が破られたことに瞳が揺れる程、驚きの色を隠せなかった光輝はすぐさま防御の姿勢に入った。全てを跳ね返す盾であれば絶対に防ぐことはできると確信しての行動だ。
「―――――っ!?」
肉薄してくる炎が忽然と消失した代わりに一誠が飛び掛かってきた。信じられない結果に盾を構えたまま光輝は、扇を手放し炎狐達から二振りの剣を受け取る一誠に舞うような動きで鎧を滅多切りされる。炎狐達からも斬撃を受け一方的な攻撃をされ続ける最中、力任せにその場で独楽のように回って大剣を振るう光輝の脚に、意思を持っているかのような動きをする尻尾に巻き付かれて体勢を崩されては転倒。倒れたその隙を突く炎孤が剣の切っ先で器用に兜を外して見せて光輝の素顔を晒したのだった。
「なっ、お、おいっ!それを返せ!」
ピューと剣に引っ掛けて兜をどこかへと持って行く炎孤。焦燥に駆られて立ち上がって追いかけようとするが、狐の尾に引っ張られて取り返すことはできずに見送ることしかできなかった。許すまじと怒りを孕んだ形相と睨みで一誠に振り返るが、彼の者の手にある剣が別の武器に変わっていることを気付かず尾で空中に放り投げられる。その瞬間を逃さず腕を動かして一閃。たったそれだけしてそれ以上何もせず光輝が地面に着地した刹那、勇者の鎧が真っ二つに分かれて光輝の体から別離して足元に落ちた。
「・・・・・は?」
信じられないものを見る目で割れた鎧を交互に見て、状況を理解にするにつれ顔を真っ赤になるほど頭に血が上り怒り狂う光輝。
「お前ええええええええええええええっ!よくも俺の鎧を斬ったなっ、一体どんな魔法で斬った!?」
「こいつで斬った」
柄しか見えない剣を見せつける。否、目を凝らしてみれば薄らと硝子よりも透明度が高過ぎる剣身が、魔力のオーラに包まれて見える。
「ケルト神話に出てくる『ルー』って英雄の者が持っていたフラガラッハという伝説の武器でな。この剣の一撃はどんな鎧で受け止めることが不可能な効果を持っている。故にお前の鎧なんて斬ることなんざ容易いのさ」
「英雄の、武器だと・・・・・?異邦人のお前がどうしてそんな凄い武器を持っているんだ。勇者でも英雄でもない、お前が、いや、そんな物がこの世に存在するはずが無い、ここは異世界なんだぞっ!」
「勝手に何とでも思って捉えていろ。現に起きた事実は変わりないし鎧を失った時点でお前の負けは決定なんだからな」
ユラリと動く炎孤。体を守る鎧が無い今、光輝の防御力は盾だけとなり最後の盾すら完封すれば無力に等しい。
「ふざけるなっ!」
現実を認めんと籠った叫びを放ちながら斬り掛って来た。
「ふざけるなふざけるなふざけるな!神から貰った装備が斬られるはずも破られるはずもないんだ!勇者でもない英雄ですらない人間が、俺が負けるはずが無いんだ!」
癇癪を起した子供のように喚き、大雑把に大剣を振るう光輝を尾で絡め取った扇で防ぐ。
「俺は勇者なんだぞぉおおおおおっ!」
「うるさい」
扇で大剣を挟み、振るえなくなった隙に右のストレートパンチが相手の顔面に直撃した。その一撃で鼻の骨が砕け鼻血を出して激痛で顔を歪める光輝に淡々と述べる。
「勇者勇者勇者って、お前は勇者に何を夢見ているんだ?そんなもんただの周りから呼ばれるだけの飾りという名の肩書に過ぎないし、お前程度が勇者なら他の冒険者も皆勇者だな。人類の天敵モンスターと毎日毎日死闘を繰り広げ何千何万も葬っているんだから」
それと、と付け加える。硬く握り締めた拳を構えて。
「お前が勇者なら、俺は英雄になってやるよ。ただし異端の英雄にだがな」
そう言って鋭く、深く鳩尾に殴って拳を突き刺し相手の膝を地面に跪かせた。そのあと片足を空高く伸ばして勢いよく振り下ろすかかと落としを、光輝の後頭部に炸裂。同時に音楽が止まって一誠は炎孤を掻き消し光輝の様子を見るまでもなくアスナに向かって頷いた。
『―――最後の競技、一対一の勝負の勝利したのは―――フレイヤチームのイッセーです!』
結果は火を見るよりも明らかだ。一誠に対する勝利宣言が発せられてフレイヤチームから歓声、アポロンチームは残念そうに溜息。だが、両チームは楽しい思いをしたのは共通しているだろう。敗北した神々と眷族達は心なしか「まぁ楽しかったな」と微苦笑を浮かべていたので【アポロン・ファミリア】以外の【ファミリア】は深く悔しがってもいなかった。
†―――†―――†
『さて、最後はイッセーが勝ったことで
『そして優勝したチームには賞金一億ヴァリスの授与!後で分けて配るからフレイヤチームに参加した【ファミリア】は首を長くして待っていてくれ。頑張った賞を得た冒険者達も同様だ』
イヨッシャー!と喜ぶ声がちらほらとし、期待を孕んだ目でその時を待つ姿勢の派閥等を意識から外して進行を続ける。
『それでは、優勝したフレイヤチームの代表フレイヤ、アポロンチームの代表のアポロンに勝者としての命令を』
「ええ、何でもいいのよね?」
『何でもアリだ。煮ても良いし焼いても良いし好きにしてくれ。食えば不味いだろうけどな』
え、食べる気?と一誠を見ると「例えだ」と目で言われ、そうだよねとアスナは苦笑する。そんな二人の前で二柱の男神が対峙していて、フレイヤは勝者として敗者に命令を下す。
「それじゃあアポロン、貴方に選ばせてあげるわ。私の子との約束を守るか天界に送還されるか。どちらがいいかしら?」
「ぐ・・・・・」
「ここまで盛大にやって負けた貴方には拒否権はないわ。これ以上ごねるようなら天界に送還してあげるわ」
微笑を浮かべる美の女神。苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべるアポロンは・・・・・肩を落として首を項垂れた。
「・・・・・わかった、要求を飲もう」
後日、一誠の下に儚げな印象を窺わせる少女がおずおずとやってきた。今はまだやって来ないがそれでもようやく約束事は果たされて満足げに微笑む一誠である。
『さぁ、この瞬間に運動会は終了!だけど、まだお祭りは終わらないぞ!今現在オラリオでは祭が開催されていて、今日から二日間大いに騒ぎ酒を飲み飯を食べて楽しく過ごそうじゃないか!さらに各【ファミリア】には神輿や山車で用いる「喧嘩祭り」というものをやってもらう。詳細は全て伝えてあるガネーシャに訊くように。ということで後は任せるぞ元主神様』
「任されたぁっ!」
意気揚々と会場の席から立ち上がって己の存在を主張する象神。後に彼の男神に群がる神々は後を絶たず、暑苦しく声を張り上げて説明するガネーシャの指示に従い行動に移るのだった。本神も待ちに待った祭りとして大いに楽しむだろう。
「はぁー、よーやく終わったぁー」
『幽玄の白天城』に戻りリビングキッチンの席に座る一誠へ労う言葉を掛けるアスナの他、この城に住む神々や冒険者、一誠と交流のある神々と冒険者が続々と入って来ては好きな席に座りだす。
「お疲れ様イッセー君、いやー、異世界の楽しいイベントが出来てオレも大いに楽しんだよ。また来年もしたいなー」
「俺が率先でしないと碌な運動会もできないだろ。俺が介入せず出来る方法をしなくちゃなぁー」
「イッセーも運動会に参加したら全部自分の勝ちになるやんか」
「Lv.だけなら参加は可能だろ?」
「だったら次は儂等も参加できる勝負を考えて欲しいわい」
「第一級冒険者が参加できる競技なんて片手で数えるよりも少ないって。ぶっちゃけオッタルに力勝負して勝てるのかガレス?」
「むぅ・・・・・」
「厳しいだろうな。やはり我々Lv.5以上の者は参加できないか」
「フィン達が出来る運動会の競技と言えば障害物競争や綱引き、騎馬戦とか・・・・・うーん、思った以上に少ないなぁ」
レイラから飲み物を貰って飲みながら苦笑する。強過ぎるのも考えものだと己もそうであると自覚しての自嘲的な笑みを浮かべると、フィンから問われた。
「イッセー、最後に使っていた武器は本当に英雄の武器なんだね?」
「ああ、実際に実在している武器だ」
鞘に収まっている状態のフラガラッハを亜空間から取り出して見せつけた。すると勝手に鞘から抜け出て一誠の周りを飛び回り続ける。
「こういう武器は他にもいくつか持っているけど、主に使っているのはエクスカリバーだからな。あんまり他の武器は使わない。というか使うまでもない」
「エ、エクスカリバー・・・・・本当にイッセーの世界はファンタジーなんだね。確か騎士王アーサーが使っていた武器だと言う程度でしか知らないんだけど」
「その認識で間違ってないぞ。ついでにそのアーサーの末裔と二人の妹がいるし」
「え、えええええええええっ!?」
素っ頓狂に声を挙げるアスナに一誠以外の一同は不思議そうに二人を交互に見比べした。ヘファイストスは訊ねた。
「どういうこと?そのアーサーって子供が末裔なのは凄いことなの?」
「太古の昔に偉業を成し遂げ、太古から後世まで記録に残り、遥か数千年後にまで伝え知られるほど有名な人物なんだ。その人物の末裔もしくは子孫が永い時を過ぎても英雄の血を引く者がだったら、アスナの反応も尤もだろう?」
「ほー、なるほどねー。じゃあ、オラリオが出来るまでの間にモンスターと死闘を繰り広げた太古の英雄達の血を受け継ぐ子供もいたらそれも凄いってことなんだね?」
「当然。偉業を遂げた昔の偉人の子孫や末裔は無視できないとても貴重な存在だ。そう言う存在こそが俗に勇者・英雄と呼ばれるんだ。何も成し遂げずに中身が空っぽで勇者・英雄を語る奴はただの道化だ」
アスナを除き一同を見回す一誠はこう聞く。
「言っておくけど、俺の世界の神もそんな感じで太古から今現在まで神話に残しているほど有名だ。ロキ達はこの世界で何か一つでも地上に己の存在を知らしめる話しの一つや二つあるか?」
「そ、それは・・・・・」
「ないんだろう?だからロキ達を神として敬うことも崇めることも見る事も出来ない一番の要因だ」
神の存在が千年前、地上に(娯楽目的で)降臨して以降。近所のお隣さんのように地上で当然の様に永住し続ける神々をこの世界で一番複雑に思っているのはきっと一誠だけかもしれない。特に人間臭すぎて本当に神なのかと疑問も抱いたほどだ。一誠の世界でもおいそれと神々は姿を現さないし地上にも理由もなく天界・神界から降りて来ない。
「えっと・・・・・なんかごめんなさい?」
「何故に疑問形で謝る。謝っても意味ないぞ。今さら何だからその分、一人の男女として接するからな」
「それはそれで、ちょっと複雑だわやっぱり・・・・・」
綺麗な柳眉を困った風に寄せるヘファイストス。神として見受けれてくれない男の心情を知ってフレイヤ以外困惑の色を浮かべている他所に椿が近づいて来て浮き続けるフラガラッハの柄を掴んで手に持つ。
「ふむ、剣身、あるいは刀身が無いのかと思えばあるのだな。薄らとであるが剣身の形が見えるし触れば確りと感触がある。これがイッセーの世界の伝説の武器・・・・・主神様ですら打てるかわからぬなこれは」
しみじみと観察をしている
「なぁなぁ旦那様の踊りめっちゃ綺麗やったわ!あの踊り、どこで習ったん?」
「あれは元々とある一族が極東の神々に捧げる為の舞いなんだ。その舞いを密かに幼馴染達が教えてくれたから舞えるように頑張ったのさ」
「とある一族って旦那様は
「ぶっちゃけて言うけどな。運動会にでも何度も言ったが俺は異邦人、異世界から来た存在でな。舞いは元の世界で覚えたんだ」
ほへーと驚嘆の色を顔に出すユエルとの話しで、異世界の舞いだと知ったアマテラス達が興味津々だと話に加わってくる。
「それはお前の世界にいる私達であるな?では、お前も舞いをするのか?」
「いや、舞いは女性だけがして極東の神々を魅させて信仰と一緒に舞いを捧げるんだ。極東に住む者としてアマテラス達極東の神々に信仰を捧げる対象だからな。因みに男の場合は楽器を奏でる役割だそうだ」
「そうなのね。じゃあ、その舞いをした貴方はもしかして私達の為に舞いを捧げたようなものかしら?」
「そのつもりはなかったけれどそうなるな、異例中の異例だけど」
「・・・・・なんでだろう、物凄く嬉しい自分がいる」
その日からアマテラス、イザナギ、イザナミは極東で自分達神々に対して捧げる為の舞いを眷族達に要求するようになり、数年経てば毎年決まった時期に極東では神々に捧げる舞いが行われる催しがあると風の噂で聞くようになったのであった。
「旦那様旦那様、なんや舞いって楽しそうやからウチも舞いを踊ってみたい!そんでブワーって炎を出してみたいわ!」
「舞いはともかく、ブワーって炎を出すことはできないぞ。あの炎は妖力でしているんだからな」
「妖力?旦那様は『妖術師』『妖術使い』なん?」
ソシエが目を丸くして訊くが否と首を横に振る。
「俺の世界の
「た、魂が宿っているのですか・・・・・?」
翠の瞳が皿のように開いては丸くし、狐耳をピンと立てて信じられないと訊き返す春姫。ユエルもソシエも同じ気持ちなのか目をパチクリと瞬いた。
「相手の魂を人間や物に封じ込める力や技術に魔法が異世界にあるからな。そうでなくても自力で自分の寄り代と成り得る器に憑依することもできるようだ。俺の中にいる
「だ、大丈夫なの?そ、その、憑依って幽霊に憑かれちゃうんじゃ・・・・・」
顔を蒼白しているアスナがとても珍しいと思いながら苦笑して問題ないと告げる。
「大丈夫だ。俺の体を操って何かをされたことは一度もないし関係は至って良好だ。その気になれば俺から抜け出て自由に動くことだってできるんだしな」
「ひっ!?」
・・・・・アスナ、もしかして幽霊的な物が苦手なのか?そう思わずにはいられないぐらい彼女の反応がわかりやすかった。
「話は戻すとして、そんなわけだから妖力は使えるわけで、ユエル達は妖力がないから炎は出せないよ」
「なんやー、ウチも旦那様みたいに炎を出して戦ってみたいー」
物凄く不満げに頬を膨らまして駄々をこねるユエルにソシエと春姫は困惑する。仮とはいえ嫁いできた少女が戦いたいと言う発言を述べた事にイザナミが尋ねた。
「ユエル、冒険者になりたいの?」
「んーというか、極東の為に旦那様のお嫁さんと嫁いでから新しい場所でも楽しくてええんやけど、やっぱり故郷と同じで家に引き籠るほうが多くて暇なんや神様」
「・・・・・そう、イッセー。どうしようっか」
「唐突に俺に振らないでくれるか?それだったらイザナミの眷族にするか俺の店で働いてもらうかになるぞ。勿論ソシエと春姫もな。今の生活にどこか退屈だったり暇だったり、刺激を求めるなら自分で行動をするんだ。いいな?」
コクリと頷くまだ一回りも幼い妻たちに微笑して優しく頭を撫でる。やりたいことは自分で見つける、また他の者と相談しあって探す催促をしたことで三人は遠くない未来、立派な女性として恥ずかしくない人生を送ることだろう。と、思っていた一誠に後日―――三人から冒険者登録をしたと報を受けて「へ?」と間の抜けた声を出してしまったのはまだ知らないのであった。
「イッセー、そろそろ私達も祭りに参加しない?」
「ああ、そうだな。ガネーシャ辺りが張りきって盛り上げているだろうし出店の料理をたらふく食べるかな」
「お店の方もお休みだからミアさん達も楽しんでくれていると良いね」
柔和に微笑むアスナに同感と頷き返し、立ち上がって街に繰り出そうと動き出す一誠に続く一同。
その数時間後のその日の夜。空が暗くなろうと祭りの喧騒は絶えず、今夜の主役とばかり山車や神輿を動かしてぶつけあう各派閥達の怒号や熱狂に一般市民達は大盛り上がりをしていて、その様子を見ていた異邦人達も感慨深く故郷の事を思い出し、懐かしみながら祭りを楽しむのだった。