ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚10

万神殿(パンテノン)に58階層以上のドロップアイテムとその他諸々にデザート持参で赴いた。赤い髪の狼人(ウェアウルフ)の女性アドバイザー=受付嬢と雑談を交わしに冒険者や無所属(フリー)の市民達と擦れ違いながら目的地のフロアに足を踏み入れれば、黒い肌にスキンヘッドのガタイがいい男性の背後を発見した。その男と担当アドバイザーらしき職員と話し込んでいる様子を隣に立てば見受けれる。

 

「ローズー」

 

「はいはい、個室で相談聞くから待ってなさい」

 

デザートが入ってる小箱へ一瞥する瞬間を逃さない。心中これを餌にモフモフできないかと不穏な事を考えてる男の隣に立っていた褐色肌のスキンヘッド男が踵返す際に一誠の存在に気付いた。

 

「お前・・・・・イッセーだったな」

 

「うん?・・・・・あー、エギルだったっけ?」

 

おひさ、と軽く挨拶を交わす。【アルテミス・ファミリア】に所属していたアスナと同じ派閥で異世界から来た異邦人エギル。エギルは一誠に近づき話しかけた。

 

「お前はよくギルドに顔を出すのか?」

 

「たまに情報収集目的で。そっちは?」

 

「今回は個人的な目的で来たんだ。・・・・・アスナは元気にしてるか?」

 

してるぞ、と伝えると優しい顔つきで微笑んだエギルの口から「そうか」と漏れた。

 

「アスナがいない日常を過ごすことになってからキリトは落ち込んでいたんだが、最近は立ち直って探索に精を出している。そっちも問題ないなら安心した。これからもよろしく頼むな」

 

「任された。それで、訊ねていいなら個人的な目的ってなんだ?」

 

「ああ、この世界でも自営業・・・・・商売できないかって思ってよ。空いている敷地の場所を探してたんだ」

 

「自営業・・・・・?」

 

至極不思議そうにエギルを見つめながら小首を傾げる。冒険者としての風格を醸し出しながら自分の店を作ろうとしている。この異世界で自営業をしようとする彼の真意を図ろうと尋ねる。

 

「元の世界じゃ自営業を?」

 

「ちょっとした喫茶店をな。軍資金も貯まってきたから小さくても店を持ちたくなったんだ」

 

「でも最後は店を閉じるんだろ?後腐れない店にした方が良いぞ。俺みたいに後継者を集めて店を継がせるみたいにな」

 

「お前はもう後継者を育ててるのか。俺より若いってのに凄いな・・・・・イッセー、この後時間はあるか?」

 

「担当アドバイザーと話をしたら用事はないな」

 

それがどうしたと目で訴える一誠に首を満足げに頷くエギルは年下の男の肩に手を置いた。

 

「だったら異世界で商売してるお前と相談がしたい。よろしく頼むぜ」

 

何故そうなる?と遠ざかっていくガタイのいい背中を見送る一誠のところにローズがやってきた。

 

小一時間後、エギルと合流をして自身の店の屋上にて相談をし合う事に。従業員ですらあまり立ち入らない場所は二人きりになるに適しているので円卓を挟んで腰を落ち着かせる二人は顔を付き合いだす。

 

「場所はいくつか目星がついているんだが元の世界、異世界風の商売をしてみたい」

 

「商売って実際どんな感じの何だ?料理店?道具屋?武具屋?」

 

「喫茶店兼道具屋にしようと思ってる」

 

喫茶店はともかく道具屋は厳しくないか?目新しい商品じゃなきゃ買い取ってくれないぞ。と感想を抱く一誠の心情を露も知らずエギルは語り掛けてくる。耳を傾けて相槌を打って己の感想を零した。

 

「まずエギルがすることはオラリオ中にある喫茶店=料理を出す店の調査と道具屋でどんな道具が売られているのか情報を集める事だと思う」

 

「ようは下見か?」

 

「異世界風にするならまず異世界の商品を知る必要がある。そんであっちにはない代物がこっちにあるような商品を扱う店にしなきゃ、他の店と同じ変わらず埋もれてしまう。異世界で商人として商店を開くなら目新しさを求められるんだ。実際、自己主張激しい『異世界食堂』って店を構えたその日に、様々な客が冷やかしに来たり興味本位で足を運んできてくれたことで成功したんだからな」

 

「なるほどな。例を挙げればこの世界の酒は、日本人にとっちゃあ馴染みあるビールってもんが無いからあっという間に流行ったよな」

 

自己完結し納得したエギルは「わかった。参考になったぜ」と席を立ちこれから行動に移るべく、礼を言いながらこの場から後にした。今後エギルがどんな店を構えるかは本人次第、完成したら顔を出しに行こうと一誠も屋上を後にする。それからの一誠は城に戻って作業室にて物作りに励んでいた。床に腰を落として正座をしたまま、上半身を揺らしながら両腕を前後に動かす。ゴリゴリとカチャカチャと一心不乱に手を止めず何かしらの素材を粉末になるまで砕き、磨り潰す作業を没頭する。そんな様子をアミッド・テアサナーレは見ていた。彼に製薬の作業を住み込みで教える代わりに彼しか製作できない商品を定期的に【ディアンケヒト・ファミリア】に提供する契約を結んでから短くない月日が経過した。回復薬(ポーション)高等回復薬(ハイ・ポーション)万能薬(エリクサー)、その他様々な作品を教わりながら学び己の糧とした一誠の手腕に舌を巻いた日が懐かしい。そして現在、目の前の意中の男は新たな薬を零から産み出そうとしているのだ。

 

「質問をいいですか?一体、何を作っていますか?」

 

「ん、一時的に能力値(アビリティ)を倍増するための薬を作ってる」

 

「・・・・・それは、一度は考えてしまう薬ですね。魔法ならば出来るでしょうが、薬品となると時間や費用、人材と労力が計りしれませんから」

 

「ぶっちゃけ、元の世界でそういう薬の作り方は教わってるから作ろうと思えば作れるんだ。この世界に同じ素材があればの話だけどな」

 

どこまで完璧超人ぶりを見せつけてくれるのだろうかと思いながら、異世界の製薬には物凄く興味がある。ので、アミッドは質問を繰り返した。

 

「あなたの世界ではこの世界に存在する神々と同じ名の神々がいると窺っています」

 

「ああ、だから医療や製薬を司るミアハとディアンケヒトを筆頭に他の神々の直伝で作れるのさ」

 

「異世界のミアハ様と主神(ディアンケヒト)様・・・・・どんな神様でしたか?」

 

そう質問を受け、作業していた手を止めた一誠が懐かしむ感じで遠い目をして語り出した。

 

「んと、見た目の若さ的だったら同じかな。性格は基本的に他者を重んじ、世界の医療機関を支えてる医神として存在している。だけど、話を聞く限り何だか張り合っているみたいなんだよな。そんなところ見たこと無いんだけどさ」

 

アミッドに見守られながら再び作業に取り込む。一部の素材以外は殆どこの世界でも手に入り物ばかりだが、治癒師(ヒーラー)の目は一部以外の素材を注視した。

 

「(鮮やかな赤い角に、何かの液体が複数・・・・・)」

 

異世界でしか得られない何かなのだろうと推測して、それが量産できないか調べてみたい好奇心が湧くアミッドの前でそれらも調合に使いだす。そして・・・・・。

 

「よし、久しぶりに作ったけど完成だ」

 

赤い液体が入れられているフラスコを持って満足げに漏らす。一緒にそれを見ている精緻な人形のような少女も感嘆の念を抱き、訊いた。

 

「どの能力値(アビリティ)を上昇させる薬ですか?」

 

「力の方だ。飲めば攻撃の威力が増すんだけど、更にこれを改良すれば数倍も増すことも可能になるんだ」

 

「まだ、改良の余地があるのですか・・・・・?」

 

「というか、もう改良した。さっき赤い液体があっただろ?それが改良する前の薬だったんだよ」

 

何時の間に、と思いながらもその改良した薬の効果を治癒師(ヒーラー)として知りたい少女は、試飲を乞うと手を触れられて手の甲の上に一滴だけ垂らし乗せてくれた。その手を触れられた際、心臓がドキリと高鳴ったのだが当の本人にしか知らない事象であるため、男は知る由もない。垂らされた一滴を見下ろすアミッドは舌で舐め取る。

 

「っ・・・・・!」

 

身体の奥底から湧き上がる、例え難い何かが華奢な少女を当惑させる。今まで感じたことが無い薬の効果に目を丸くするそんな反応を示す彼女に見守っていた彼は問うた。

 

「どうだ?凄く力が湧くだろ?」

 

「は、はい・・・・・体験したことがありませんでしたので動揺してしまいました」

 

「誰だって未体験な事をしたら動揺するものさ。二度も三度も同じことを繰り返せばそれもなくなる」

 

一滴だけでこの効果ならば、全てを身体に取り入れたらどうなってしまうのだろうか・・・・・。この高揚感、ある意味これは麻薬に等しいものだ。これの効果を知った冒険者達が他者を傷付けても欲してしまうのではないかと懸念も抱いてしまうアミッドの心情を察したかどうかは定かではないが。

 

「さっきも言ったけどこの世界にも同じ素材があれば作れるものだ。でも、その素材の中で異世界でしか得られない物もあるから安易に生産・量産はできない」

 

「これが最初で最後の薬ということなのですか?」

 

「そういうことだ」

 

力の能力値(アビリティ)を一時的に倍増させる薬はこの一つのみとしてこれ以上は作れないと断言する。心なしか安堵で胸を撫で下ろす気分になるアミッド。

 

「でも、この薬を素材にした道具だけは作ろうと思ってる」

 

「どんな物を、と聞いても?」

 

「さぁ、そこが考えどころなんだよ。だから今度【ヘルメス・ファミリア】の団長と話し合って作ってみるつもりだ」

 

道具を片づけ始める。手伝うアミッドの協力で直ぐに終わり最後に残った赤い薬を手にして作業部屋を後にする。

 

「今日はお店の方は?」

 

「俺は休みだ。副店長のミアに任せてあるから店の方は大丈夫だ。もう俺がいなくても異世界の料理は作れるし、あいつらだけでも運営もできるようにまで成長した。うん、重畳だ」

 

嬉しそうに微笑む男のその横顔を歩きながら隣で見上げるアミッド。本当に好ましく思っているのだと見て察して精緻な人形のような顔に薄らと笑みが浮かぶ。

 

「将来、新しいお店も構えますか?」

 

「もしもそうするつもりなら、次は飲食店じゃない方針でしようかな」

 

「では、製薬と治療を生業とする店でもしますか?」

 

「止めておけ、ミアハとディアンケヒトの店を潰しかねない事をするぞ俺」

 

苦笑する一誠なら『異世界食堂』のように商売繁盛をするかもしれない。二つの派閥を潰しかねないというのはどうやって商売をするのか分からないが・・・・・。

 

「(・・・・・もしも本当に潰れたら、責任を取って私を引き取ってもらいましょうか)」

 

後に聖女の二つ名がつけられる少女らしかぬ考えをした。

 

「お手伝いいたします」

 

「ははは・・・・・本気で?」

 

「冗談は言いません」

 

真顔で言われて物凄く反応に困ってしまった一誠。本気でその手の店を構えてしまえば、無自覚で他の医療系【ファミリア】を潰してしまいかねない言動をしてしまう恐れがある。自分がそこまで有能とは思えないが、現状を鑑みるに人気店になるだろう。そうなれば後の店を任せられる人材を確保しなくてはならない。もしもいるとすれば隣にいる少女だろう。

 

「・・・・・イッセーさん」

 

自室に戻るや否や、華奢で小柄な少女にベッドまで押し付けられて縁に座らされれば、対面になる形で両脚に跨って小ぶりな臀部を乗せて座ってきた。積極的に甘えに来たのかと思ったら、男を見上げるつぶらな瞳の奥に情欲の炎が宿っていた。両脚を確りと一誠の腰に絡みつくように回し、身体を押しつけながら密着するアミッドの身体は服越しでも発火しそうな勢いで熱くなっていた。

 

「今この城には私達以外誰もいません・・・・・ですから貴方を(あい)し、私を(あい)して、愛し合いたいです。この貧相な体で申し訳ないのですが、イッセーさんを満足なされるまで一人のアミッドという女として貴方と交えたい」

 

「壊れるぞ」

 

「貴方に壊されるなら本望です」

 

また真顔で断言され、近づけてくるアミッドの顔を視界に収めながら心中で苦笑いをしつつ彼女の唇と自分の唇を重ね合って、口づけを交わした先から―――男女の性を貪り合う時間が始まった。

 

「(え、う、嘘・・・・・)」

 

城に戻り、一誠に用があって部屋に訪れた黒髪の猫人(キャットピープル)の少女が隙間が開いていた扉から覗きこんだ瞬間。昼間っから爛れた時間と共に情事を貪る大人と子供の姿を見てしまい、部屋から漂う鼻や肌に纏わりつく淫臭で自分の意思とは無関係に発情してしまった。心ではこの場から離れようとする強い意思で臨むが、淫靡な匂いで思考が鈍くなってしまった頭では身体が意思に反してその真逆な行動を取って・・・・・。

 

「アッ――――――――――――――♡」

 

性欲を貪る龍によって、全裸で横たわってる銀髪の少女の隣で同じく、全裸で艶やかな矯正を上げ続ける雌猫が濡羽色の瞳に♡を浮かべるほどに快楽の虜になっていたのだった。

 

「えっと、すまない」

 

「・・・・・いえ、貴方は恩人ですから、あの転生者達に奪われるよりはよかったです。そ、それに、こういう事は無縁だと思っていたので貴方と経験が出来て・・・・・とても、いえ、凄く気持ちよかったです」

 

数時間後。先にダウンしてしまったアミッドを寝かせて以降、濡羽色の髪の猫人(キャットピープル)のアナキティ・オータムことアキと一誠は行為に耽ていた。もはや彼女の全身は知らないところはないと過言ではない程に見て触れた。現在はお互い男女が折り重なるように密着して、男の逞しい胸板で獣人の少女の双丘は肌の弾力と柔らかさを感じさせながら潰れている。そしてそう言う彼女の言葉に・・・・・下腹部の、それも体内で感じる火傷しそうなぐらい熱く、硬く、大きな存在感に骨の髄まで征服され尽くした獣人の少女の身体は敏感に反応する。

 

「んっ、まだ、元気なんですね・・・・・」

 

「節操が無くて悪い。まだ心身共に満足してないんだ」

 

「げ、元気ですね・・・・・私の体が保てないかも・・・・・」

 

起き上がり、下腹部に刻まれてる紋様を触れるアキに一誠も上半身を起こす。真剣な表情で彼女に向けて発する。

 

「責任は必ず取る」

 

「責任・・・・・彼女も大丈夫なのですか?一応、他派閥同士の恋愛関係は諍いを起こしてしまいかねないのですけど」

 

「アミッドに関しては互いの秘密として主神と【ファミリア】に隠している。というか、アミッドと関係を結んだのって事故だったんだよな」

 

申し訳なさそうに吐露する男の顔は少し曇っていた。アキからすれば情事の最中のアミッドの表情はとても恍惚で幸せそうに見えていた。

 

「あなたと彼女は、付き合っているのですか?」

 

「表沙汰に、公にできないがそのつもりでいるよ。でも、お前も言ったように他派閥同士の恋愛は難しいからな。だからここでしかアミッドと私的な理由で接する事が出来ない」

 

周囲の目を欺くためにこうして目の届からないところで関係を続けていることを、初めて知ったアキは「やっぱり大変なんだな」と感想を抱き、自分も一誠と付き合うためにはこの城でならなければならないのかな?とも思ったところで・・・・・。

 

「えっと、あの・・・・・アミッド・テアサナーレは公認してくれるんですか?その、あなたが私に対する責任を取ると言う意味で」

 

「ああ、それは大丈夫。誠心誠意で俺が言うからアナキティは安心して何時も通りに過ごしてくれ」

 

横恋慕、までとはいかないが複数の女性と関係を結んで男が無事でいられる話しは極端に少ない。不義で不純な気持ちで異性と交遊したとあらば尚更である。彼がそこまで言うのであれば、信頼して任せようと思ったところで耳を触れて来た。

 

「もう一度言うけどこんな事になってしまった手前責任は取る。だからできればアナキティも俺の傍に居てくれ。必ず幸せにするから」

 

―――――真っ直ぐ、瞳を向けてくる男の真剣な言葉に息を呑むアキ。異性から告白された経験は無く、どう返そうか言葉を選ぶ前に尾が無意識にシュルっと一誠の腕に絡まった。それから無言で見つめ合う二人の間に訪れる沈黙。それから二人はどうしたのかは、当人達しか分からないことである。

 

「・・・・・アキも手篭めにしたとはな」

 

「手篭めとは酷い言い様だ。場の流れでそうなってしまったんだ」

 

「私達の事は?」

 

「いや、まだだ」

 

自室に入ってきたハイエルフが目の当たりにした、全裸で天蓋付きのキングベッドで眠りに着く少女達と事が終えた男が二人に挟まれながら本を読んでいる姿の光景。また一人一誠の虜になったとそう思わずにはいられない、アキの寝顔を見て心中で溜息を吐くリヴェリアは用件を口にした。

 

「私達のホームが間もなく完成できる。その直前に彼女達を引き取ることが決定した」

 

「となると、フレイヤのホームもそんな感じかな。そうか、もう一年以上も経ったのか」

 

「お前が私達を救わなかったら、その一年以上・・・・いや、死ぬまで一生奴らの奴隷として身を堕としていただろう。このオラリオもすら、乗っ取られて支配されていた」

 

全ての原因は異世界の神の仕業だけどな。と、辟易しながら答える。

 

「話が少しずれた。そういうわけであるため、【ロキ・ファミリア】からお前に対して最大の敬意と恩を報いたいのだが、して欲しい事があるならば我らのできる限りのことをしよう」

 

「・・・・・いや、俺が困った時にだけ助けてくれるならそれで構わないよ。今直ぐしてもらいたいことがあるかなんて、思いつかないし」

 

至極尤もな事を言ったつもりの一誠に絶世の美貌を持つハイエルフの顔は、特に困った顔や戸惑いの色が浮かばずただ「そうか」と相槌を打った。

 

「お前は欲が無いのだな」

 

「失礼な。人並みぐらいはあるぞ。最大派閥に借りを作ったとあらば、全身全霊・全力で俺の指示に従ってもらうんだからな」

 

「無茶な命令だけはしてくれるなよ。一応、派閥としての立場があるのだから」

 

元派閥の団員として分かってるよ、と苦笑する一誠。そんな日が来るとは思えないが、使えるものは使おうという精神でいた男の隣に寝ていた黒猫の少女がムクリと起き上がった。

 

「んっ・・・・・あ、何時の間にか寝て・・・・・―――――っ!?」

 

リヴェリアの存在を目の当たりにした矢先、ビシリと石化の呪詛(カース)を掛けられたかのように身体が硬直した。決してバレたくない現場を押さえられて、一糸纏わぬ姿すら見られて赤面したり青褪めたり顔色がコロコロと変わって思考が混乱し掛けている同派閥の団員に冷静沈着で話しかけた。

 

「落ち着け、アキ。事情は聞いた。お前に咎も怒りを向ける事もない」

 

「え?へ?そ、それはどういう・・・・・」

 

「事情はどうであれ、お前も少なからずイッセーを慕っているか好いているから本気も全力も抵抗せず身体を重ねたのだろう」

 

指摘されて異論を言い返せず、沈黙してしまうアキ。不意に『お前も』という単語が頭に過り恐る恐ると見つめて尋ねた。

 

「もしかして貴女も・・・・・」

 

「ああ、私達が助けられたあの日からイッセーを心から慕っている。お前のように身体を重ね続けてきる。これからもそうするつもりだ」

 

「っ!?」

 

「当然ながら私だけじゃない。イッセーを慕う者達皆もだ」

 

必然的にアキは言葉を失った。自分の知らないところで一誠は数多の女性と関係を結んでいた事に。ただ、アイズやアリサは【ファミリア】に入団した時から慕っていた事は知っていたが、アミッドのようにまだ幼い少女と・・・・・。

 

「アキ、イッセーを責めてくれるなよ。この者はあろうことか自決しようとしたのだからな」

 

「へっ?」

 

「・・・・・言うな」

 

苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる男の横顔は、事実なのだとアキにそう受け取らせた。何故?と戸惑う少女にリヴェリアは淡々と告げる。

 

「まだ幼いアイズ達に手を出してしまった事情はあるのだが、それでも自分を許せずに死んで償おうとしたのだ。故に責任感はとても強く、深い罪悪感を覚えた結果とんでもない行動を取った」

 

「そ、そうなんですか・・・・・」

 

「だからこそ、我々はイッセーを愛しているのだがな。【ファミリア】、立場、地位など全て関係なく、な」

 

優しい顔を浮かべたハイエルフの女性は己が生涯、同族でもないヒューマンと歩む未来を見据えてる。これからも共に歩めば未知の世界を見せてくれ、その時の喜びを分かち合って感動と楽しみも共有し、生きていくだろうと。信望が厚いリヴェリアにそこまで言わせる男の人徳と魅力。アキは知らないがスキルに具現化するほど一誠は周囲を引き寄せる不思議な力を持ち、魅了させるのだ。アキもその一人と成って現在に至った。

 

「お前もそうなるだろう。イッセーと身体を重ねた以上は、簡単に心と体は離れられなくなる。これからも閨事をしたいなら、夜この部屋に訪れると良いだろう」

 

「なっ・・・・・!」

 

まさかの王族からの情事の誘いに度肝を抜かれ、顔を紅潮させる黒猫の少女だが、アキも仲間入りだと周知されると周りの皆に誘われたり、連れられたりして一誠との情事を重ねる日々を過ごすことになる。

 

「そう言うならリリア」

 

魔法でリヴェリアを引き寄せてると胸の中に抱きしめ、長い耳元で囁く。

 

「今度はお前としたい」

 

その意味を口にせずとも悟ったハイエルフは二人を貪ってもまだまだ元気が有り余っている困った男だと思いつつ、女として求めてくれる男に嬉しく感じている自分も惚れた弱みだから困ったものだと心の中で苦笑い。

 

「・・・・・加減はするのだぞ」

 

これぐらいは言っても自他共に無駄であろうと建前を作るリヴェリアだった。

 

―――†―――†―――†―――

 

「誰か俺の【ファミリア】に入りませんかーっ!?入ってくれませんかーっ!?」

 

「そこの君、俺の【ファミリア】に入らないか?可愛い子が君を待っているぜ?」

 

「おい、この子供に声を掛けたのは俺だぞ!」

 

「私の方が数秒早かった。故にこの子供は私と話をする」

 

自分の派閥、【ファミリア】の勢力を増強、拡大に精を出す神々。迷宮都市オラリオに富と名声を求め、異性にモテたいと冒険者に無所属(フリー)の志望の者達が足を運んでくる流行(ブーム)の時期が訪れた為に弱小や零細の【ファミリア】の主神達はこの機を逃さんばかりに手当たり次第初めてオラリオの門を潜った人々に声を掛けまくる。

 

「・・・・・やっぱり、神とは思えない」

 

「は、ははは・・・・・」

 

そんな神々を目を細めて呆れる、買い出しの帰り中の店主とアスナ。神の言動は路上で歩行人に誘い掛けるキャッチャーの言動と何ら変わりない故に改めるまでもなく神々に対して抱いている印象は、『人間味溢れてる神もどき』。

 

「神様達は一生懸命だね」

 

「自らの足で行動するのは正解だと思うけど、誘われる方は相手の事知らないから直ぐに入団する気持ちは躊躇してしまうがな」

 

実際に声を掛けられた者の中には遠慮気味に断って去っていってしまっている。まだ自分に合う派閥を探すか、冒険者になるつもりはないからか。

 

「【ファミリア】のプロフィールみたいなのがあればいいのにね」

 

「その【ファミリア】の情報が他の【ファミリア】に漏洩する恐れがあるから出来ないって。なのにオラリオで一番団員数を誇ってるガネーシャが凄いんだよな」

 

「そうだね」

 

どこからか「俺がガネーシャだぁっ!」と暑苦しく野太い声が聞こえてくる。今日もあの神は元気だなぁーと感慨深く思っている一誠の耳に「あっ」とアスナの呟く声を拾った。その理由は彼の者も察している。店の前で誰かを待っているかのように佇んでいる黒いスーツ姿の男性がいた。一目でその人物はギルド員の者だと気付き、裏から入らずそのままギルド員の者の方へと歩み寄ったら二人の存在に気付いてお辞儀した。

 

「異世界の店主、イッセー様。至急ギルド本部にお越しいただけませんか」

 

「ギルド長が呼んでいるのか?」

 

「はい、左様です」

 

俺に何の用だか、とギルド員の申し出に肯定する一誠は一旦食材を置き、ミアに事情を軽く説明し終えた後にギルド員と共にギルド本部へと赴いた。

 

「―――人が仕事している時に急な呼び出しとはなんだ?つまらない話だったらお断りだぞ」

 

ギルドの長の執務室の扉を開け放って開口一番にそう宣言する一誠に、今の地位と権力を得てから贅を尽くして豪華な食事と豪遊を繰り返した代償に、エルフとは思えない体型になった肥え太った身体のギルド長は鼻を鳴らした。

 

「お前にとってつまらなくともこちらは大変重要な話だ」

 

「重要ねぇ・・・話の内容は?」

 

「単刀直入に言う。近日オラリオに他国から大使がやってくる。その際、お前には大使達に料理を振る舞ってもらいたいのだ」

 

「そいつは依頼か?そうじゃなきゃ他の料理店の店長達に振る舞ってもらえ」

 

「そうはいかんのだからお前に頼んでいるのだ。これはギルドからの正式な依頼でもあり強制依頼(ミッション)でもある。大使達に演出も兼ねてあの空飛ぶ船も使って料理を作ってほしいのだ」

 

示威行為も目的に入れているロイマンの意図を悟り、この世界で立った一隻しかない船で食事会を設けたいとは・・・・・。この先もそうする腹かもしれないギルド長に心の中で溜息を吐き提示する。

 

「必ず成功させる代わりに、報酬は思いのままだったらいいぞ」

 

「・・・・・無茶な報酬は呑めんからな」

 

言質は取り依頼を引き受けたからには、一誠はロイマンの求める結果を出すつもりで準備を整え始める。各国から大使達がやってくる当日になれば、中央広場(セントラルパーク)に停泊させて出迎える騎空艇の存在に大使達を驚かせる。そして大使達を乗せた騎空艇は、本領発揮として空に浮かびオラリオの上空をゆっくりと飛び続ける。近年のオラリオはこんな物までも作れるのかと愕然している姿の大使達にロイマンは満足げに笑みを浮かべ、船内へ入る出入り口の扉から従業員達が運んでくる料理の食事を促す。これもまた絶品で、大使の地位でも味わったことのない料理である事にギルド長との会談話は滞りなく進み、この船を是非我が国にもと声が上がった時は申し訳なさそうにやんわりと断る。どれだけ一生遊んで暮らせる金を積んでも『趣味』で作った以上、これ以上は作らないと断られるだけですぞと。残念がる大使達だったがロイマンの手にその設計図がある事を知ったらどうなることやら。それから数十分後、会談は纏まり問題なく終えたことから今回の演出は大成功と言う結果に一誠はギルド本部のギルド長の執務室に足を運び、ロイマンに報酬を求めた。

 

「―――主神がいない、派閥の設立の許可を貰う」

 

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