ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚11

「―――以上が報告です、神ウラノス」

 

肥満体形のエルフが、軽く上半身を曲げてながら言う。ギルド本部最奥『祈祷の間』。管理期間最高責任者、ギルド長ロイマン・マルディールの直訴を聞くウラノスは、淡々と言葉を返した。

 

「わかった。その案件はこちらで預かる。下がってよい」

 

「はっ」

 

四炬の松明だけが閉ざされた暗闇の中にいる、千年以上も人や世界から忘れ去られたような石造りの神座に座る巨躯の老神を照らす。ギルド本部の最奥の祭壇でダンジョンに神威=『祈祷』を捧げている老神の前に跪き、ロイマンはその太った体を回転させる。溜まった腹の肉を揺らしながら、一階へと繋がる長い階段を上がっていった。それからすぐ、彼と入れ替わる様に―――。

 

「フェルズ」

 

―――気配を立っていた全身を黒いローブで身に包む黒衣の者が薄闇の奥から進み出る。古の祭壇の前にウラノスの言葉を聞く姿勢で佇む。

 

「主神無き派閥の設立、どう思う」

 

「【フレイヤ・ファミリア】の異邦人イッセーの考える事は理解し難い。毎年他派閥に改宗(コンバーション)する変わり者だと思っていた。彼の望みを叶えたとして、神の恩恵無しで一つの派閥として機能ができるのか?」

 

千年前に展開での生活が飽きて不条理と不完全な下界を娯楽目的で降臨した神々が、人類に神の恩恵(ファルナ)を与えて以降、それから世界の常識として神の眷族として恩恵を受けるのが当たり前と成っている現在。主神無しで派閥を作りたいと考える人や冒険者は絶対に存在しないと思っていた。いるとも露にも思わないでいた。

 

「そんな彼のもとに改宗(コンバーション)状態の冒険者が集まるとも考えにくい。そもそもそんな冒険者はこのオラリオに何人いるのかすらわからない。ウラノス、貴方の考えはどうなのだ?」

 

「相手は異世界から来た異邦人。私達の常識を覆す何かを秘めているのは明らかだ。ロイマンの話ではギルドの味方であるとも言う」

 

「認めると言うのかい?」

 

「【ファミリア】に収まる器ではないとしたら、自由にさせるべきかもしれん。ギルドの傘下としてオラリオに定住するのであれば一つぐらいは構わない。―――異邦人の力は、私達にとって必要かもしれん」

 

店に働いている店主の下に一通の手紙が届けられ、主神無きの【ファミリア】の結成を認めると内容を見ることになったのは近日であった。しかし、結成には条件が幾つもあったが店主はそれをあっさりと条件を満たして正式に自分だけの【ファミリア】を成立する事になった。

 

「えっと、Lv.1以上の団員を最低十人以上に他派閥から認可の証とする徽章(シンボル)を五つ以上。毎月ギルドに支払う税金は百万ヴァリス。オラリオに貢献する事。異邦人、転生者の問題事の解決は積極的にする事。以下の条件を全て満たせば異例の主神無き【ファミリア】の結成を認める・・・・・」

 

「普通の条件だな」

 

音読したリヴェリアの声に関心なさげに吐露する男。その場に居る三柱の女神は興味深げで彼の者に視線を送りまた常識はずれな事を仕出かしたと半ば呆れるのはロキとヘファイストス。

 

「一体全体、どーしたらギルドからそんな手紙が届くんや。のぅイッセー?」

 

「ハッハッハッ、拒否される前提でふざけて言ってみたら・・・・・こんな手紙が届いちゃったみたいだ」

 

「もう、ふざけて言うもんじゃないわよ。それでも主神無き【ファミリア】を結成出来ちゃうのも大概だわ」

 

「一人で【ファミリア】ができちゃうって話が、本当に現実的になるなんてね・・・・・」

 

未来予知をしたわけでもないのに、その気になればイッセーは自分の【ファミリア】を旗揚げする事が出来る。構成員も希少で一級だ。

 

「本当に【ファミリア】を結成するの?」

 

「認可証を貰ったからには何時でも結成できる。まだ、しないほうだけど何時か必ずしようかな」

 

「そん時はもう自分をうちらの【ファミリア】に入ってくれへんようになるなぁ」

 

毎年恒例の一年間の主神の眷族になる催しもしなくなることを残念がるロキにこんな言葉が送られる。

 

「【ファミリア】の徽章(シンボル)を貸してくれるんだったら、ロキ達の仮の団員として力は貸すぞ」

 

「あら、じゃあイッセーは皆の眷族ってことになるのかしら?」

 

「後見人として他派閥の徽章(シンボル)を借してくれなきゃダメなんだからな。そう言う解釈もありなんじゃないか?」

 

ピンとあくどい考えがロキの脳裏に浮かび上がって、にんまりと邪な笑みを浮かべた。

 

「ほな、イッセーが作ったファイたんも認める至高の武器をうちの子供達にタダで提供してくれるんやな!」

 

「ちょっと、あの子の話通りなら私の仮の団員としてなるんでしょ。主神としてそれは許せないわよ。何割か払ってもらわなきゃ」

 

「何でや!うちの仮眷族になるんやから主神の言う事は絶対やで!」

 

「その言葉は私の方にも当て嵌まるのだけれど?あの子の鍛冶の技術を最初に目を付けたのはこっちなんだし、そう簡単に至高の武器を手渡るような真似は私が許さないわ」

 

女神同士が言い合い、衝突する事態になるとは思いもしなかった。困った顔で頬を引っ掻き、不仲になりかねない彼女等の制裁をどうしようかと模索した時に思い至った。

 

「ロキ、ヘファイストスの言う事も一理あるけど力を貸すことは嘘じゃない。だから限定的ならヘファイストスもいいだろ?」

 

「・・・・・どういうこと?」

 

「日常茶判事じゃなくて、絶対に譲れない戦い、深層の階層主戦の時だけ使ってもらう。勿論、フィン達専用の武器で戦い終えたら回収する。それぐらいの配慮はいいじゃないか?」

 

その提案に二柱の女神は顔を見合わせ、それなら・・・・・的な雰囲気を醸し出し、不穏な空気は静かに和らいだ。納得してくれた女神達に溜息を吐く。リヴェリアから労いの籠った目線に、美しく微笑みを浮かべるフレイヤ。

 

「女の扱い方が上手いわねイッセー」

 

「いや、今のはそういう感じじゃないだろ」

 

所変わって東方面にある極東風の城、主神の自室の和を基調とした部屋の中、金色の長髪を横にズラし穢れを知らない華奢な身体の背中が、紅い着物をはだけさせてもらっている狐人(ルナール)の少女、春姫の後ろに女神が『恩恵』を授ける最中だ。獣人の少女は主神と夫の力になりたいと淡い思いを言葉にして告げたことで【アマテラス・ファミリア】の一員になる事に決断した。

 

「それじゃ、刻むわね?後でイッセーから不思議なカードを貰いなさい。それもあなたの役に立つものだから」

 

「はい」

 

同時刻でイザナギとイザナミもユエルとソシエに『恩恵』を刻まれようとしているが春姫は知らず、アマテラスの恩恵を授けてもらった。太陽を彷彿する徽章(シンボル)が少女の背中に浮かび能力値(ステイタス)も発現したところで気付く。彼女の魔法に発現した

 

「ウチデノコヅチ、それが春姫の魔法?」

 

「そう、それも多分誰もが誘拐してまで手中にしたいかもしれない希少(レア)の魔法よ」

 

三人共が極東の三柱の眷族になったことを教えに来てくれた。春姫に発現した魔法も含めて。その内容は確かに誰もが欲しがるような魔法だった。

 

「一時的に対象を【ランクアップ】する魔法か。確かにそれは漏洩してしまったらヤバいな」

 

「味方にしたらこれ以上にない起死回生の魔法ね」

 

肯定と頷く。狐人(ルナール)の三人娘はアマテラス達の前に正座して一誠に目を向けている視線と合わせ、指を弾くと棚から三冊の本が勝手に抜け出して春姫達の前に。

 

「魔法を発現しなかったユエルとソシエも潜在能力を知りたい。是非これを呼んでくれ」

 

「これは?」

 

「一回限りの使い捨ての、強制的に魔法を発動する魔導書(グリモア)って言う本だ。これを三人に渡す」

 

可能性を見出そうとする一誠の意図を察しないまま、少女達を宙に浮く紅と黒、銀の本をそれぞれ手にして掴み取る。将来、その本を読み終えた三人に発現した魔法が一誠達の力となったのはまだ先の話。

 

「春姫、試しに魔法を俺に掛けてみてくれないか?」

 

「は、はい」

 

始めて魔法を行使する春姫は緊張気味に答えて立ち上がる。

 

「【―――大きくなれ】」

 

目を瞑り詠唱を始める春姫の姿に、アマテラスは静かに見守り視線を注ぐ。

 

「【其の力に其の器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を】」

 

何かを差し出す様に両手を胸の前に突き出し、狐人(ルナール)の少女は玉音の声音を奏でていく。

 

「【―――大きくなれ】」

 

一人の少女に注目する神々と男と少女達。初めて見る冒険者に多大な変化を齎す『階位昇華(レベル・ブースト)』。その魔法を一誠に捧ぐ意志を強く抱き初めての詠唱を謳い続ける春姫。

 

「【九妖を宿す御身のためにこの心体、魂魄を、捧げる。神に賜いしこの金光。鎚へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を】」

 

紡がれる呪文は真っ直ぐ、男のもとに送られていく。そして詠唱が完成に近づき、伴なって薄い霧状の『魔力』、光雲が生まれた一誠の頭上に、魔法円(マジックサークル)と見紛う紋様の渦が出現する全てを受け入れる姿勢の彼が真上を仰ぐと、形作られるのは巨大な光の柱―――否、柄のない光の鎚だ。降り注ぐ温かな光。男が視線を下げた先で、少女は、真っ直ぐ翠の瞳を向けていた。

 

「【―――大きくなぁれ】」

 

次の瞬間、少女の唇から魔法名が紡がれる。

 

「【ウチデノコヅチ】」

 

燦然と輝く光鎚が落ち、一誠の全身を包み込んだ。光の奔流が彼にもたらすものは、身体と心を奮い立たせる活力、そして純粋な『力』。閃光(スパーク)は走り抜け、一誠に夥しい光粒が付与される。魔法を発動した少女は少し息を荒く吐き、疲労の色を窺わせる。精神疲弊(マインドダウン)、その一歩手前の状態だ。

 

「おお・・・・・力が湧いてくる」

 

「今のイッセーはレベル3、【ランクアップ】する前の己とは違う筈だ」

 

「となると、この状態で魔法をしたらどうなるかな。いや、そうする前に全力を出そう」

 

その後は試しに―――自分の世界に魔法で繋げてみようと心中で臨む一誠。皆の前で無限の力を解放する呪文を唱え、神の力を纏う青白い天使と化した。

 

「さぁ、結果はどうなる事やら」

 

 

―――別世界にいるもう一人の兵藤一誠がいる空間に楕円形の光の鏡が具現化した。見覚えのある現象に注視していれば、鏡合わせしたように自分の姿をした顔に入れ墨がある男が姿で立っていた。何をするつもりなのだと警戒していたら鏡に触れ―――魔力を流し込んだ。そうしているもう一人の己を見ていると鏡の表面が水の波紋を起こして、手が抜けてきた。鏡に阻まれて通れなかったはずなのに何故だと瞠目したが、こちらの世界に異世界から腕が出てきたと言うならば、と思ったところで兵藤一誠はすぐさま鏡に向かって駆け出してその手を掴んだ。

 

 

「イ、イッセーが二人・・・・・っ?」

 

「どうなっている・・・・・」

 

「・・・・・」

 

異世界から更に別の異世界へ引き込まれた兵藤一誠はもう一人の自分から一瞥して周りの部屋を見回す。

 

「ここが、異世界か」

 

「俺の部屋の中だがな。馴染みのある家具ばかりで新鮮さなんて感じないだろ?ま、外に出れば嫌でも感じるさ。何か質問はあるか?」

 

「じゃあ、あの人達は?」

 

一誠の問いに率直な質問をする兵藤一誠。

 

「男がイザナギ、仮面を付けてるのはイザナミ、最後に彼女はアマテラス。全員神だ」

 

「・・・・・」

 

嘘だろ、と感想が最初に出てきた。その込められた意味は・・・・・。

 

「存在感は確かに人じゃないのは判るけど、神の力が感じない」

 

「神々は天界での暮らしが飽きたから下界と下界に住む人類を娯楽の対象にしている。もうその姿はぶっちゃけ、神とは思えないほどだからな。因みにこの世界のロキは無乳の関西弁の女神だぞ」

 

「嘘だぁああああああああああああああああああっ!?」

 

一誠が神に対して思った事と同じであった。え、そこ心から驚くところ?とアマテラス達は目を丸くする。それから兵藤一誠にこの世界の全てと、ヒーロー組の彼等彼女等の近況を告げる。

 

「上鳴、峰田・・・・・何してんだよ・・・・・」

 

異世界で友人が借金している等と露にも思わなかった兵藤一誠は嘆息と嘆きの籠った呆れの溜め息を吐いた。

 

「もう返済し終えたか?」

 

「稼ぎやすいように手助けはしているが、まだまだだ」

 

「そうか、あいつらでもダンジョンのモンスターを相手に頑張ってるなら安心だ」

 

兵藤一誠の視線は春姫達にも向けられる。

 

「妖孤がいるんだな」

 

「この世界じゃ狐人(ルナール)って呼ぶんだよ」

 

「へぇ、ルナールか。お前の家族だよな?」

 

「ああ、手、出すなよ。俺の大切な嫁なんだからな」

 

「俺には一佳達がいるからするか」

 

俺の大切な嫁と春姫達は耳をピンと立てて聞き、ほんのりと頬を朱に染める。

 

「それはそうと、元の世界に送れるのかお前の魔法で」

 

「ブーストの効果は切れたけど、多分いけると思う」

 

春姫の魔法は兵藤一誠に説明をしている最中、天使化を解くと少しして一誠に付与された光粒が消えた。行うとすれば異世界に繋げる魔法は発動当時の効果はなくなっているだろう。

 

「また試してみるがその前にお前は会いに行くんだろ」

 

「当然だ。一緒に行ってくれるか?」

 

断る理由はない一誠は首肯して、アマテラス達と別れて街に向かった。

 

「へぇ・・・・・」

 

異世界の人類と冒険者達の都市の街並みを感慨深く、都会に初めて来た田舎の人間みたく周囲を見回す兵藤一誠の隣に歩く一誠は鎧を着込んでいる。擦れ違うヒューマンや亜人(デミ・ヒューマン)等を視界に入れつつ一誠の先導の下についていく。

 

「この世界もファンタスティックとはな・・・・・」

 

「しかもフワフワモコモコもいる」

 

「いい世界だ!」

 

同じ存在故に好みも共通。好色の目を向ける兵藤一誠の気持ちも分かるので話も合う。

 

「俺も冒険者になりてぇー」

 

「止めておけ、この世界は俺達にとっていちゃいけないせかいだ」

 

そんな感じで東の方で構えてる【アルテミス・ファミリア】の本拠に辿り着き扉を強く叩く。そしてしばらくした頃に内側から扉が開きだした。

 

「はい、って・・・・・」

 

「よう、久し振りだな。えと、ワカメ頭」

 

緑谷出久です、と初めて一誠に名前を教えたそばかすの少年は横にいるもう一人の兵藤一誠を見て目をパチクリする。魔法で作った若い一誠の分身なのかなと、思い込んで一誠に訪ねた。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「こいつをお前らに会わせに来たんだよ。まさか、わからないのか?」

 

「え?」

 

そう言われてキョトンとする緑谷はまた兵藤一誠に顔を向ける。注視し続けても解らないと表情を浮かべた少年に呆れの溜め息を吐いた。

 

「お前らの世界から来たもう一人の俺だぞ」

 

「・・・・・え」

 

まさかと絶句で見開く目が自分達が知っている兵藤一誠を改めて見直す緑谷の肩に手が置かれる。

 

「―――俺のこと判らないとはなぁ・・・・・。あの地獄の修行をして判らせる必要があるようだ。なぁ、オールマイトマニアの緑谷出久君?」

 

「ひょ、兵藤くぅうううううううううん!?」

 

―――†―――†―――†―――

 

その日の夜の『幽玄の白天城』では、一誠の計らいで交流ある【ファミリア】や【アルテミス・ファミリア】の主神とその団員達を誘い、皆の前で異世界から引き込んだ兵藤一誠を【アルテミス・ファミリア】に出会わせた事から始めた。知る人が知る「イッセーがもう一人?分身?」と思うだろうが一誠と兵藤一誠は同一人物であり別人であることを本人達や緑谷以外誰も知らない。

 

「拳藤一佳」

 

「は、はい?」

 

こっちに来いと名指しして呼びつける一誠。少女は少し緊張の面持ちで歩み二人の一誠の前に佇んだ。すると一誠が二人から遠ざかって見守る姿勢に何故か入ったので当惑する時、目の前の兵藤一誠が拳藤一佳の頬に手を伸ばして添えた。

 

「・・・・・これが夢だったら物凄く落ち込むところだけど、現実なんだな」

 

「え・・・・・?」

 

「―――こうしてお前を触れ合うのは三年振りになるのか。会いたかったぞ一佳」

 

「っ!?」

 

この世界にいる一誠には絶対言う筈がない言葉。名前を呼んで抱きしめるこの一誠は・・・・・自分達が知っている兵藤一誠であると悟った。

 

「一誠さん、ですか・・・・・?」

 

「そうでなきゃ一体誰なんだ?最高の最初の弟子の拳藤一佳」

 

もう一人の兵藤一誠が心から笑って、緑谷達の方へ顔を向けた。

 

「おい爆豪。この世界の人達にヒーロー名みたくヴィラン級のボンバーマンな発言していないだろうな」

 

「誰がボンバーマンだコラッ!!!!!・・・・・てめぇ、兵藤か」

 

条件反射で言い返した瞬間、何か違和感を覚えた少年が確かめる風に問うた。自分にそんな風に言う男はこの世界にいた一誠ではなく話しかけてきた兵藤一誠が自分達が知る本当の一誠なのかと。

 

「おうよ、自力じゃないがお前等を会いに俺もこの世界に来てやったぞ。相沢先生、お義父さん、ブラド先生。久しぶりだな」

 

「ああ・・・・・ようやく来てくれたか」

 

「HAHAHAHAッ!久しぶりだね我が息子一誠よ!物凄く会いたかったぜ!」

 

「お前がこの世界に来たというならば俺達も元の世界に帰れるのだな?」

 

「さぁ、それはこの世界にいる俺に訊いてくれ」

 

肩を竦め大人達から四人の少女に意識を変える。

 

「お茶子、見ない間にまたふっくらしたか?どうせこの世界でも餅を食っていたんだろ。後で触らせてくれ」

 

「も、もうっ、うちは太っておらんよっ!?餅も食べてへんし!」

 

「耳朗、久しぶりだ。三年前より身長が高くなったな。綺麗にもなってる」

 

「・・・・・久しぶり」

 

「百もそうだ。前よりも強くなっているみたいだな。この世界がそうさせているのか」

 

「ええ、おかげさまで一誠さんを驚かすぐらい強くなっていますわ」

 

「茨、無病息災で安心した。お前も他の皆も異世界でどう過ごしているのか不安でしょうがなかったよ」

 

「ご心配をおかけしました。でも、あなたとまた再会したこの奇跡は偶然ではありません」

 

等などそう話していた兵藤一誠は、ワッとヒーロー組の異邦人達に飛び掛かれた。

 

「兵藤ぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

「俺達が知っている兵藤だぁああああああああああああああっ!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

あっという間に取り囲まれてもみくちゃされる兵藤一誠。そんな光景を唖然と見つめるアスナ達は一誠に視線を向ける。

 

「あのイッセーって、もしかしなくても・・・・・」

 

「ああ、あいつらの世界にいたもう一人の俺こと兵藤一誠だ。俺の魔法はとある魔法と全力でやれば異世界と行き来できるようになった、かもしれない」

 

「かもしれないってことは、まだ確定ではないのだな」

 

リヴェリアも話に加わって来て一誠に首を頷かせる。

 

「まだ一回しか成功していないからな。断言できて確信が持てるようにこれから何度も試す。そうなれば俺達は元の世界に戻れてこの世界にも来れるようになる」

 

「そうなんだね・・・・・あはは、あの子達物凄く喜んではしゃいでいるよ?」

 

「ふんっ、俺と大違いだな。やっぱりあいつらはあいつがいいってことなんだよ」

 

満面の笑顔を浮かべるヒーロー組の異邦人達と笑い合う兵藤一誠。それが何とも面白くないと不貞腐れる一誠は顔を顰めると・・・・・。

 

「私達はお前が一番いいと思ってるぞ」

 

「「んっ!」」

 

「手前もそうだ。この世界でお前と言う男と出会えたから今の手前がいるのだからな」

 

「そうだね。貴方に助けられた人、貴方のことが好きな人、貴方と過ごした人が、貴方を誰よりも知っているわよイッセー」

 

リヴェリア、アイズ、アリサ、椿、アスナがそう声を掛けながら微笑みを向ける。レイラ、ラトラ、アミッド、春姫、ユエル、ソシエ、アリシア、アナキティ、フィリア、アルガナ、バーチェ、ベルナス、エルネア、レギン、レイネル、カサンドラ、ダフネもその通りだと視線を一誠に送る、その視線を一身に浴びる男は彼女達の心情を汲んで口端を上げた。再会の喜びを浸ってる彼等彼女等と兵藤一誠を見つめて数分後のことだった。椿がポツリと呟いた。

 

「二人のイッセーはどっちが強いのだ?」

 

和気藹々とした雰囲気が静寂に包まれ無意識に二人の兵藤一誠は互いを見つめ合う。

 

「どっちもどっちだよな。俺なんだし」

 

「力も能力も同じなんだから解り切った結果を求められてもなぁ・・・・・」

 

興味もなさげにそう語る当人達だが、

 

「そんなの決まってるだろ。オイラ達の兵藤の方が一番強いんだ」

 

「こっちのイッセーが一番」

 

心底から信用と信頼を預けている外野が自分達の兵藤一誠こそが強いとそうのたまう。無論、意地の張り合いが発展してもおかしくないのだが。

 

「面倒だから俺達は戦う気はないからな。でもよ」

 

「そんなに知りたかったら、お前らの体で俺達の強さを知ってもらう必要があるがな」

 

ゴキリと指の関節を鳴らす一誠が視界に入れる峰田が顔を蒼白する。

 

「だ、そうだ峰田。体験して来い」

 

「死ぬに決まってんだろォッ!?あの兵藤はお前より容赦ないんだ!」

 

「容赦ないってお前と上鳴が借金したこともか?それは自業自得だろ。つーか、そのことについて後で話し合うからな覚えておけよ」

 

と言う事でと兵藤一誠は締めくくった。

 

「ありがとうな。俺もしばらくこの世界に住んでみるけどその間頼めれるか」

 

「問題ないけど、バレるなよ?バラすなよ?」

 

「分かってる。ダンジョンにモンスターに冒険者、このキーワードだけで理解しているつもりだ」

 

緑谷達と共に城を後にした。見送った一誠はリヴェリア達の意識を自分に向けさせ視線を一身に集める。

 

「そんなわけで、俺は異世界と異世界に繋げる魔法を一度だけ成功を果たした」

 

「そうか、お前も元の世界に帰れるのだな」

 

「また試してみないことには解らないがな。だが、もしもモノにしてできたなら俺は一度元の世界に帰らせてもらう。そしてまたこの世界に戻る。まだまだ未知の世界をこの目で見てないからな」

 

そう皆に伝えた時に城を後にしたはずの緑谷達が焦燥の色を浮かべて戻ってきて開口一番に叫んだ。

 

「兵藤君が消えちゃった!」

 

「・・・・・は?」

 

事情を教えてもらって直ぐに、消えた兵藤一誠を捜索した結果・・・・・。緑谷達の世界で落ち込んでいるもう一人の己の姿を見て何とも言えなくなってしまった。

 

「おいおい・・・・・」

 

「お願い、もう一度兵藤君を連れて来てくれないかな」

 

「してもいいけど、また同じことになると思うぞ?というか、今更思ったんだけど。同じ世界に同じ人物が二人いちゃいけないんだったな」

 

「ど、どういうこと?」

 

「小難しい話しだけど、説明するのは面倒臭いが・・・・・その世界の歴史を大きく変えることは悪影響に繋がる可能性があるってことだ。タイムパラドックスを起こすとな」

 

ヒーロー組の多くは何の事だかさっぱり分からないと言った風に怪訝な面持になる。

 

「歴史は、人間が実際に起こした過去の出来事の集大成。自分達が知っている過去じゃなくなってしまえば良くも悪くも世界にも影響が出る。だから歴史を変える行為は危険なんだよ。例え自分自身や身近な人達が何の影響も出ずともだ」

 

そう言われても実感しない緑谷達。事の重大さも理解に苦しむ少年少女の顔がハッキリと浮かぶ。説明しても解らないようじゃあ時間を無駄に使うだけだと一誠は話の内容を切り替えた。

 

「ようやく世界と繋げる可能性が浮上したところだが、まだお前等を元の世界に帰らすのは早いと思う」

 

「はっ?」

 

「今日まで世話になった主神アルテミスを路頭に彷徨わせる気か?お前等やキリト達全員が元の世界に帰れば、団員が一人もいない零細派閥になってしまうんだ。お前等、恩を仇で返すのがヒーローの義務なのか?」

 

故に、と一誠は一つ提示した。

 

「アルテミスに恩を返すために、自分達の主神が困らないようにお前等の代わりに団員を四十人以上、【ファミリア】の財産三千万ヴァリスを用意しろ。それが出来ない限り何年経とうと元の世界に帰らせない。キリト達も同様だからな」

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