ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか 作:ダーク・シリウス
「・・・・・」
店員達と店内の清掃と食材のチェックや調理の下準備、サンドウィッチの用意で忙しく動いていた、早朝の空は雲っていた。灰色の雲が空全体を今にも塞ごうとしており、不穏な雲行きを醸し出している。
「(んー・・・・・視られているな・・・・・)」
ここ数日、店主は見知った者からの『視線』を感じていた。それは当初、敵意や害意の気配が含まれておらず―――例えるとどこか脱力するような視線で―――店主も問題ないだろうと判断していたのだが、ここに来て、はっきりと意思が察せられるようになった。すなわち、殺意。
「(やっぱり、あいつらも仕掛けてくるのか。―――新たな労働力が確保できそうだ)」
命を狙ってくるならばそれ相応の覚悟がある者と認知した店主はほくそ笑む。
「・・・・・店主」
この店で働く転生者の特典によって具現化した女性、神埼火織が真剣な表情で近づいてきた。
「何者かがこちらを視ているようですが構わないのですか」
「ん?意外だな、感じたのか神埼も」
「私は―――・・・・・いえ、なんでもございません」
何か言おうとした口が不自然に閉じた。自分の事を教えようとでもしたのか、だが、何かに引っ掛かって言えなくなったようだ。特典の影響による弊害か、と推測して話を続ける。
「あいつらの事は気にするな。多分、どうやら俺の首にかけられた賞金を狙っていた一人だったみたいだし」
「事前に対処はするべきだと思いますが」
「証拠もないのにか?仮に俺がしたらいきなり襲ってきた犯罪者として捕まるぞ」
そう言われると何も言えなくなる神崎に考えていたことを口にした。
「襲撃してきたら何の憂いもなくこの店の労働力として働かせるつもりだ。手を出すなよ」
「犯罪者を雇うのですか?」
「最初から人間は
神埼の肩を掴んで店主に背中を向けさせるように身体の向きを返す。
「ほらほら、一分一秒たりとも時間を無駄にしたらダメだ。時間は待ってくれないんだからさっさと準備をする」
「わ、わかりました。わかりましたから背中を押さないでください」
ぐいぐいと押され仕事に戻される神埼。彼女を仕事に戻した店主は窓の外へ一瞥。きっと近い内に仕掛けてくるだろうと、不敵の笑みを浮かべる。
「覚悟しろよ?」
―――夜。
「今日はご苦労様。何時も店の為に頑張って働いている皆にご褒美として今夜は臨時休店だ。明日の為にゆっくり体を休んでいてくれ」
いつもより数時間も早い閉店に突然の店長からの報告にアスナやレイラ、転生者組は驚くもアーニャ達は『ヒャッホー!』とエプロンを頭上に放り投げた。普段から重労働に虐げられている店員達は、ひょんなことで転がり込んできた臨時休店に歓喜したのだ。彼女達は早速とばかり離れの食堂でパーティを開き、思い思いに好きな物を食べては飲む。
「まったく、この馬鹿娘どもときたら忙しないよ」
「ま、一年に一度ぐらいはこんな感じの息抜きは必要さ」
「息抜きねぇ・・・・・」
雑魚寝してる店員達を呆れ、全てを許容した店主へ怪訝な目で視線を向けたミア。
「あんたを嗅ぎ回ってる連中がこそこそし始めたからなんじゃないのかい。あたしらにまで迷惑をかけたり巻き込まないようにするためにさ」
「なら、俺の言いたいことは分かっているんだろうな?」
踵を返して食堂を後にしようとする店主の背中から声が掛けられる。
「終わったらさっさと戻ってきな。明日は休みなんだ、二人でのんびりと話でもしながら飲み食いしようじゃないか」
「ああ、わかったよ。ただ、その際もう二人増やすつもりだからそのつもりでな」
ミアへそう言い返して食堂から出た途端、アスナ達と鉢合わせした。
「誰かが襲ってくるの?」
「さぁ、今夜か明日か、明後日かわからないが釣れるなら釣っておいてさっさと片付けるに越したことじゃない。アスナ達は城に戻っていてくれ」
「俺達は?」
「ミア達の護衛を頼んだ。有り得ないだろうけど念には念をな。この離れにも魔法を施しておく」
指を弾きながらアスナ達に指示を出し、手を出すことも助けも不要と付け加えて離れを後に真っ直ぐ『異世界食堂』へと足を運んだ。厨房に入り巨大な冷蔵庫の扉を開けて食材のチェックを始め出す店主。そのあとはミアと食事をする為のつまみようを作ろうとして調理を始めた。
「・・・・・」
トントンと包丁で食材を切るリズムが何時しか眠気を誘う子守唄的な感じに、店主は安らかな睡魔に包まれる。調理中にいかんと首を振って粘りつくような眠気を振り払う。調理に神経を研ぎ澄ませて集中、素早く作業を進める。たとえ甘い香りが、厨房内に充満しようと途中で手を止めることはせず没頭する。そして―――料理を完成させた事に一息ついた店主は満足げな顔をして床に仰向けで倒れて雑魚寝をする。
「―――――」
厨房に音もなく侵入する影、目深に被られた黒のフードに、身軽さを重視した
「何時まで経ってもお香の効き目が無いんだから冷や冷やしたわ。てか、どこまで料理に情熱持っているのよ。完成するまで意地でも眠らない意思が感じちゃったし」
右手に握られている暗剣を構え、店主の首を突き刺そうとする姿勢で自嘲的な笑みを浮かべだす。
「恨みなんてないけれど、誰かに恨みを買った貴方が悪いってことで。・・・・・今まで美味しい料理を振る舞ってくれてありがとう。―――さようなら」
少し寂しげな表情を浮かべて別れの言葉を送りながら暗剣を持つ手に力を入れる、その直前。眠りについている店主の瞼がパチリと開いた。
「っ!?」
ニヤァと悪戯が成功した悪戯っ子のように笑みを浮かべだす店主。自分を誘いだす演技だったと理解した刹那に飛び引いて瞠目した目のまま叫んだ。
「『眠りの香』が効いてないの!?香の効果で数時間は目が覚めない筈なのに!」
「この甘い香りの事か?いや、確かに眠りに掛りそうだったが・・・・・いま俺達がいる場所はどこだと思っているんだ?」
逆に問われて「は?」と訝しむ暗殺者。だからなんだと臨戦態勢のまま思った時に何かに気付いた。―――自分がまいた香が薄く消えかかっていることに。
「ここは料理を作るキッチン、厨房だ。食べに来た客の為に料理を振る舞うために作った際に漂う『様々な匂いや煙の対策』は当たり前なんだぞ」
そう、店主の言葉通りに厨房内は匂いや煙に対する設備がある。今さっき店主が作っていた料理も作る際に必ず『換気扇』という名の物がフル稼働している真っ最中。暗殺者がまいた香すら、空気の換気の為に外へと吸われて厨房内は相も変わらずクリーンな状態で保ってるのである。
「私が香を使う事を想定して・・・・・」
「いや?直接襲いかかって来るもんだと思っていたんだがな。ただの偶然に過ぎないさ。そっちが香を使おうとしてこっちが料理の為に空気の換気をしていた。偶然が重なってこんな結果になったんだろうさ」
失敗した、と軽く舌打ちをして暗殺者はほうぅと吐息をつく。
「これで、暗殺は失敗・・・・・」
何時の間にか暗剣とは別の握っていた武器を、そっと手放す。自然の摂理に従って落下するナイフ。店主がそれを目で追った直後―――暗殺者は落ちてきたナイフの柄を、ブーツで蹴り飛ばした。
「ここからは、力尽く、ね」
飛来するナイフを店主はとっさに傍にあったまな板を両手で持って防ぐ。その隙に乗じ、駆け出した暗殺者は懐から取り出した煙玉を床に叩きつけた。目くらましである。
「【戯れよ】」
煙幕に紛れ、ささやかな歌が響いた。
「(詠唱か)」
耳で拾ったのは僅かな呪文。恐らくは超短文詠唱。何が来る?視界を塞がれた店主のワクワク感が跳ね上がる。本来ならば別の意味で戦場と呼ばれる厨房、頭に鍋、左手にまな板と右手にフライパンを装備し出す不格好な店主。
「―――シッ!」
「(・・・・・)」
煙を破り、後方より斬りかかれる。何時の間に背後に回ったのか暗殺者が突撃してきた。条件反射で後ろへ振り返りまな板とフライパンで防ぐ構えをした刹那。黒い影が再び店主の背後より襲いかかった。
ザシュ―――ッ!
無防備な背が凶刃にかかった。敵の得物、その刀身は淡い紫の色に染まっていた。斬られた店主は前方にいた暗殺者が霞みのように掻き消えた様子を直面から一拍、がくりと膝をついた。
「・・・・・毒か」
不自然な熱を発する背中の状態の予想を店主は悟った。
「この
「・・・・・」
「今日吸わせたのは・・・・・『
とある貴重な『ドロップアイテム』の名に、店主は無表情となる。
「特効薬なんて持ってないでしょう?持っていたとしても、使わせないけど」
ナイフを振り鳴らす暗殺者の背後より、またもう一人の暗殺者が現れ、クスクスと笑う。増えた暗殺者から気を感じず魔力のみしか感じられないところ『幻影』の類の魔法だろうと推測する店主。眠りの香、毒、幻影。暗殺者の暗殺方は元の世界にいる知り合いの暗殺者とやり方が違うなと、懐かしむ。そしてこう言う。
「お前、そんなのんびりしているけどさ。俺の知り合いの暗殺者だったらとっくに標的の命を飼っているぞ。のんびりし過ぎだ」
「へぇ・・・・・暗殺者の知り合いがいたなんて知らなかったわ。それにその言い方、まるで私の暗殺はトロいみたいじゃない?」
「実際あくびが出るほど遅い。数え切れない数の人間を葬ってきただろうが、刀一本で瞬時に相手を葬るあいつの方が断然速い」
元の世界にいる食いしんぼう暗殺者を思い出しながら、かつて共に戦った時の姿と目の前の暗殺者との動きを比べた発言は、相手のプライドに刺激を与えるものだった。
「どこの暗殺者か知らないけれど、自分の立場わかってる?Lv.2の貴方の【ステイタス】程度じゃ『劇毒』に堪え切れずもがき苦しみ血反吐を吐いて死ぬ運命はもう決まってるの」
「・・・・・ああ、そうだろうな」
立ち上がる店主の動作を一瞬たりとも目から離さず見逃さない。ジリジリと後退し出す標的はこの場を脱しようとしているのが丸わかりだ。煙幕も稼働している換気扇によって外へと排出されて厨房内が見えやすくなっている。
「だけどその運命、覆させてもらうぜ」
「特効薬がなく、毒に犯されて、格上の相手に命を狙われているこの状況からどうやって?」
店主の装備は調理道具のみ。戦闘用の道具を所持していないのは明白。外に飛び出して助けを乞おうと直ぐには駆け付けず、誰も争い事や面倒事は巻き込まれたくまい、とお人好しの者以外は手助けはしてくれないだろう。嘲笑する暗殺者はさっさと殺すことに決めた。そんなことされたら面倒だし同業者が何時来るか分かったものではない故に。店主へ近寄る際、つまみ用として作られていた魚料理が視界の隅に入り、暗殺を終えたら二度とこの店の料理を口にできない気持ちが過り、最後の晩餐として店主から目を離さずつまみぐいした。
「(ん、美味しい・・・・・。・・・・・んんっ!?)」
その刹那。暗殺者の全身が細胞レベルまで激しい刺激に襲われた。全身が落雷に受けたような衝撃と共に腰が砕けそうになった。そこは暗殺者の意地で持ち堪えたが、身体が急に熱くなって思考が蕩けて鈍く、まるで大量の酒を飲んで酔っ払う感覚だと自分の状態の異常を認知する。
「あーあー、それ、食っちゃったか。どこまで魚に夢中なんだ?ま、そこが可愛くていいんだけどな」
「な、何を入れたの・・・・・っ。まさか、毒・・・・・!?」
「料理店の長が毒物を混入するか。ただ、
それが何なのか暗殺者は理解に苦しんだ。そして、どうしてそんな物を作ったんだと問いただしたい思いが店主に通じた。
「うちの従業員の
「こ、この・・・・・ド変態め・・・・・っ!」
「ふははは、モフモフするためなら何でもしてみせるのが俺なのさ。―――形勢逆転かなこれは?」
劇毒に犯されているのに平然とした態度で逆に暗殺者へと近づく店主。
「さぁ・・・・・優しく
つまりは、覚悟があるものには何をしてもOK!と捉えている店主。この瞬間、暗殺者へ両手を伸ばし邪笑みを浮かべる今の店主は、犯罪者極まりない言動をしているのだがそれを指摘する者は二人以外誰も存在しなかった。
「くっ・・・・・」
葬る筈が貞操を奪われかねない状況に陥る暗殺者。つまみ食いなんてしなければこんなことにならなかったのにと自分を責め恨んだ。―――美味し過ぎるからいけないんだとも。近づいてくる店主に暗殺者は今の状態では相手が格下であろうとヘマをする恐れがあると可能性を考慮し、一時撤退でも―――と思った瞬間。壁を殴る音が店主と暗殺者の耳朶に触れた。揃ってなんだこの音は?と思ったが、壁は壊れることなく静寂を取り戻して少し経った時に裏口から姿を現す第三者の
「店主、
「当たり前じゃん。この店を零から作ったのは俺自身だぞ?この店の壁や天井、骨組や支柱等は全部『オリハルコン』でその上に木材を使って覆うように被せているんだ。これ、俺以外の従業員は殆ど知らない構造なんだけどな」
希少な金属の塊の店だと知って暗殺者と少女は愕然としながらも「「この店主、阿呆の極まりだ!(ニャ!)」」と店主に対する思いが一致した。
「で、まさかお前も俺の命を?」
「・・・・・悪いね。これが私の仕事だし最後の仕事でもあるんだ。だから店主、あんたを仕留めさせてもらうよ」
首に巻かれた
「・・・・・まさか、本当に『黒拳』が来るなんて」
「そういうあんたは『黒猫』?じゃあ、
暗殺者に嘆息されるヒューマンの少女はそちらへ視線を向け、淡々と受け答えた。
「獲物が被った場合は早いもん勝ち・・・・それがうちらの掟。どっちが仕留めても恨みっこなしね」
「ええいっ。噂に違わぬ筋肉脳め・・・・・!」
忌々しそうに吐き捨てる暗殺者から視線を切り、少女は店主に向き直る。
「そういうわけだから、ごめんね。覚悟してね」
「謝るぐらいなら狙わないでくれる?」
「無理、だって私は
そしてもう一人の方は暗殺者。『黒猫』と『黒拳』と二つ名持ちの少女達を前に、店主が新鮮さと共に場違いな実感を抱いた。暗殺者はともかく賞金稼ぎに狙われる身、すっかり自分も賞金首なのだと。同時に『黒拳』も『黒猫』も、数年早く出会っていたら自分に近い同世代の少女だっただろうなと、不思議な感覚も味わった。
「構えなよ。問答無用で襲いかかるの、あんまり好きじゃないから」
「・・・・・」
両の拳をぶつけ、臨戦態勢に移る『黒拳』に、店主は思った。その言動はおよそ賞金稼ぎに似つかわしくないなと。そして久しく拳を武器にする者と出会い、徐に被っていた鍋を取って拳を構える臨戦態勢に移る店主。
「へぇ?店主って道具を使って戦う冒険者だって思っていたんだけど。もしかして肉弾戦も得意?」
「どっちかってと言うとそうだな。あの戦い方は敢えてそういう戦いをする冒険者だと思わせる一環だったんだ。俺は異邦人だから余計な注目は浴びたくないからさ」
「そっか。でも、死ぬ羽目になるなんて運が無いね」
「そうとも限らないさ。俺は割と運が良い方なんだ。今日なんて、お前等と本当の意味で腹を割って話せる機会が得たんだからな」
つまり、出会った時から自分達の生業を気付いていたと言外された。二人は目を丸くしながらも今日まで笑って客として迎え入れ、美味しい料理を振る舞ってくれた店主に少し罪悪感を覚えた。
「取り敢えず、ここじゃなんだから外へ出ようか」
踵返して厨房を後にする店主の行動を二人は追従し、それぞれし切り直しと
戦いの合図も無しで間もなく、正面の少女の腰が沈み、店主も地を蹴った。
「うらぁっ!」
互いに突っ込み、拳撃と拳撃が直撃する。今までこの生業で標的を殴り殺してきた経験から、ルノアは店主の拳を砕く自信は揺るぎなかった。が、
「っ!?」
まるで鋼鉄の塊を殴ったような鈍痛が拳から伝わった。その原因たる店主の握った拳が黒く染まっていて、『スキル』か『魔法』の類かと推測したルノアに店主はこう答えた。
「お前の二つ名を奪うようで悪いなルノア」
握り締めるもう片方の拳も黒く染まり出す。腕を引いて殴る姿勢の店主の言動に本能が危険信号を発してルノアに警告する。しかし、何時の間にか強く足を踏まれて居て―――。
「俺は相手が女であろうと殴る主義だ。命を狙ってくる相手だったら尚更な」
戦いに関して紳士を捨て、相手を倒す気構えの店主は躊躇なくルノアが反応できない速度の拳撃を放った。顔面に直撃して鼻骨が砕けた感触と共に鼻血を流す顔が激痛で顰めるも拳を突き出すルノア。その拳を腕で往なす。瞬時で頬を殴る。押さえられているもう片方の振り上げた横薙ぎの足の蹴りに対して敢えて首で受け止めた。
「おーおー。脳筋どもは単純でいいニャ」
交戦する店主とルノアを、暗殺者―――クロエは上った建物の屋根から見下ろしていた。熱血など馬鹿な連中がすることである。漁夫の利を狙うクロエは嘲笑をこぼしながら、店主と『黒拳』、両者の動きが鈍化するのを待っていた。
「二人ともミャーが横槍するのはよそくしてるだろうけど・・・・・無駄ニャ。ネチネチ外から攻撃して、美味しいところをさらってやるのニャ」
ゲスな笑みを浮かべ、指の間に三本の投げナイフを取り出すしばらくクロエ達以外の部外者は介入してこない。近隣の住民は物騒な争音を聞き付けているだろうが、悪党どもが起こす騒動に慣れきってしまっている彼等は避難を優先させるだろう。ギルドと他の冒険者が急いで駈けつけてくる頃には店主は死んでいる。それまで邪魔者はいない。自分の独壇場だとクロエは唇を吊り上げた。が、
「ニャ?」
店主が自分の方へ手を開いた状態で突き出してきた。放出系の『魔法』でも放つつもりか?と回避するために腰を上げた瞬間。自分の意思に反して身体が突然見えない何かに引っ張られて店主の方へと引き寄せられる。原因は不明。ただ、店主へ引き寄せられる状態で取り出していた投げナイフを全弾投擲する。せめての牽制の投擲があっさり指の間で受け止められたのを見届けず、店主の足元に煙玉を炸裂させる。
「―――【戯れよ】!」
すかさず、詠唱。煙に包まれるクロエの左右に、光の粒子群が渦を為す。
「【フェレス・クルス】」
刹那、にたいの『幻影』が音もなく出現した。
【フェレス・クルス】。術者と同等の
「(引き寄せられているなら逆にこの煙の中で
真っ向から戦闘が不得手なクロエの必勝法。煙幕に紛れて幻影達を先に店主の方へと向かわせ隙が出来たところを狙う腹の彼女の目と鼻の先、煙幕を突き破る様にして現れた手が
ゴツンッ!!!!!
「「~~~~~っっっ!?!?!?!?」」
二つの額が、頭がぶつけ合う事態になった。
「いったぁっ~~~~~!?」
「ッニャァッ~~~~~~!?」
二人仲良く揃って石畳のメインストリートで頭を抑えて激しい痛みで蹲る。
「こ、この石頭・・・・・っ。何て頭をしているんだニャっ!本当に脳筋できているのニャか!?ミャーの頭が潰れちゃったかと思ったニャ!」
「それはこっちのセリフだよ!どうして私の頭とぶつかるような事になるんだよ!今初めて知ったけど
「下手じゃニャい!店主に引き寄せられたからだニャ!『黒拳』こそ何時まで案山子のようになっていたからぶつけられたニャいか!」
「足を踏まれて逃げれなかったんだよ!この馬鹿猫!」
「ニャんだとこの脳筋女!」
煙幕の中で顔を突き出し合い、言い合いを始める二人だったが標的を前に喧嘩など自分の死に繋がると思い至って一先ず休戦。同時にまた二人の頭が音もなく気配を消していた店主に掴まれては、お互いの頭をぶつけられる。
「い、一度ならず・・・・・っ」
「に、二度までするなんて・・・・・っ」
許せんっ、と涙目で店主へ見上げた時には、手刀の構えをしていた店主が手を振り下ろすところをだった。ルノアとクロエは左右に飛び退いて回避したら二人がいた地面に斬撃がどこまでも走ってメインストリートに深い溝を残す。
「「・・・・・」」
この威力、この技・・・・・Lv.2の冒険者が出来る所業ではない事を悟り、恐る恐ると店主へ問う。
「あんた、Lv.は2の上級冒険者なんだよね・・・・・?」
「ああ、正式の記録はそうだ。【ステイタス】もそうだ」
「Lv.4のミャー達を相手にしてまだ生き残っている時点で不自然過ぎるニャ」
「不自然なのは当然だろうな。俺はLv.云々関係なく強いから。オラリオで唯一Lv.7の冒険者とタメ張れるほど強いからな」
大切なことなので二度言った店主に絶句する。
「い、いやいや。嘘でしょ?いくらなんでも話を誇張し過ぎ」
「そうニャ。見栄を張るなんて恥かくだけニャ」
上級冒険者が最強の冒険者とタメ張れる等ありはしない。第二級冒険者であると主張するルノア達でさえも第一級冒険者には敵わないのだから尚更である。だが、店主は邪な笑みと不敵な笑みが混ざった嘲笑をこぼした。
「そうか、信じてくれないなら証明してやるしかないな。その身でよ」
次の瞬間。メインストリートを囲む幾重の
「お前等は襲う相手を間違えた」
彼女達の懐に飛び込んだ店主がクロエを殴り飛ばしたあと、ルノアの腰に蹴りを入れて飛ばす。地面に何度か跳ね上がって痛みに堪えながら体勢を整えた黒猫の真上から店主が拳を突き出して来て、間一髪横へかわしたがメインストリートが激しくクレーターを作るどころか粉砕、破砕してのける彼の標的の威力にゾッと慄く。あんなもの人体で受けたら間違いなく骨折だけで済まない重傷を負う未来が待っている。確信した彼女へ数多の火炎球が展開された真紅の魔方陣から無詠唱で放たれ、回避に専念する。その余波がルノアにも巻き込み焦燥に駆られて逃げ惑う。追尾性の魔法なのか逃げても追従する火炎球に混じって店主が飛び掛かってきた。真紅の龍を彷彿させる
「異世界で培った俺の強さを味わえ」
そこから先の戦いは戦いとは呼べず一方的な蹂躙の始まりに過ぎなかった。まず最初にルノアの拳撃が鎧をブチ破れずも
「(何こいつの鎧。私の拳で壊れないってどんだけなのよっ)」
そして何時の間に鎧なんて着たのか疑問が過るが、Lv.に似つかない殺人的なパンチを繰り出す店主の拳撃を紙一重でかわすだけでも精一杯なルノアは追い詰められていた。何度も耳元で拳の風圧音が聞こえ、後方から猫の悲鳴が聞こえてくるが気にする余裕も暇もない。
「あんた、一体何者なんだ!」
「異邦人の料理店の店長だ」
「嘘つけよ!」
いや、あながち間違ってないんだけど。と心中呟く店主だが相手は信じてくれなかった。ま、いいや。とあっさりどうでもよくなった店主はルノアの足元に魔方陣を展開しては、彼女を真上へと跳ね飛ばした。突然の事で目を白黒し、身体が思うように動かせれない空中でしばし重力の鎖から解き放たれたところに店主が目の前に現れる。殴る姿勢の敵に両腕を交差して防御の姿勢にはいるが、ガシッとルノアの足が掴まれると勢いよく店主と下へ落ちて背中を地面に激しく叩きつけられた同時に雷と炎の魔法を食らわされた。
「がっあああああああああああっ!!?」
炎雷に包まれたあの『黒拳』がやられた。その時点で店主のLv.は4かそれ以上のものだと推測したクロエは、こんな強いなんて聞いていない!と
「(猫の皮どころか、何かの化けの皮を剥がして本当の実力で戦っているとしたら・・・・・)」
相手がギルド公認で正式なLv.の位であろうとこうして実際に戦って第二級冒険者並の実力を有する自分達と戦って無事で済む第三級冒険者など存在するはずが無い。有り得なさすぎるのだ。クロエは店主の底しれない何かをようやく感じて
「逃げられるとでも思ったか?」
「
「違うぞ。全員、実体を持っている分身体だ。強さは俺と遜色ない」
最後に現れた店主がクロエの疑問を打ち明けた。オリジナルの店主も含め分身体の店主達は思い思いに動作したり邪笑を浮かべたり、じりじりと迫る。
「て、店主・・・っ!おミャー、一体何者なのニャ・・・・・・!」
「異世界食堂の店主だ」
「それだけで納得する筈がないニャー!」
「俺の事なんざどうでもいいだろう?今は自分の身を心配した方が良いぞ」
口角を吊り上げてゲスな笑みをする店主を、クロエは悪寒を感じて堪らなくなった。
「―――死ぬ覚悟できてるだろうから、殺されても文句はないな?」
火炎球を具現化する一同。その大きさは五M級でクロエの体をすっぽり入るだろう燃え盛る炎の塊を見せつけられて、クロエは全力で行動を取った。店主達の輪から跳躍して明後日の暗闇の方へ向かい、闇に紛れて逃げるつもりが再び体が自分の意思に反して引っ張られる。尻目で後ろを見た時、視界が顔を照らす迫る火炎球を捉えたのを最後に全身が炎に包まれた。
「あっ、あああああああああああああああっ!?」
激痛で悲鳴を上げ、炎を消そうと地面に転がり続ける。でも消えない。消える感じがしない。熱い、熱いっ、熱いっ!服が燃え、肌が焼け、肉が焦げる腕を店主へ伸ばし救いを乞う。
「熱い・・・・・た、助けっ・・・・・!」
「どんな相手を殺してきたか知らないけど、命乞いをした人間を一人でも見逃したか?それに俺を暗殺しに来たやつが命乞いなんて惨めだな」
「―――――」
「因果応報。その報いを受け入れろ」
その言葉がクロエの耳朶に触れた瞬間。走馬灯が脳裏に過り、他人事のように空笑いする。自分の人生は確かにロクでもなく最後まで真っ当な生き方をしなかったなと。自分を看取る店主の眼差しを手放す意識の中、最後まで見つめた。
「・・・・・」
店主を残して倒れ伏すルノアとクロエ。戦いを終わらせたことで周囲に張っていた魔方陣を解き、分身体も消して鎧も解除する。魔法で寄せた改めて二人を一瞥する。店主の魔法を食らって尚―――まだ生きている。服は燃えて産まれたままの姿でただ意識を失っているだけなのだ。重度の火傷を負っているがそれでも店主は命までは奪わなかった。
「おい、起きろ」
で、鬼畜なことに気付として『氷河の領域』の階層と直接繋げて極寒の水を素っ裸の二人にぶっかけた。
「「っ~~~~!?」」
余りにも冷たさで瞬時に意識を取り戻して目を開けては起き上がる二人だった。
「寒っ、冷たっ!?え、何で私裸なの!?」
「というか、何でミャーは生きて・・・?死んだんじゃ・・・・・・」
羞恥と疑問が混濁して動揺する二人の前に店主は跪いて視線を合わせる。
「ああ、一度お前等を殺した。だから暗殺者の『黒猫』とか
「「・・・・・」」
「人を殺す生業はもうお終いだ。これからはお前等の好物の料理を毎日振る舞ってやるからよ。俺の家族になれ」
と、心からそう言っては子供の様に笑う店主。ルノアは両腕で局部を隠しながら怪訝に訊ねた。
「【フレイヤ・ファミリア】に入れってこと?」
「いや?俺の側にいてくれって意味だ。【ファミリア】とかは無関係だ」
「店主を殺そうとした暗殺者を侍らせたいなんて何を考えているんだニャ」
「二人の実力は十分わかったし、俺の店に働いてもらいたいんだ。それを含めてお前等の事は好きなんだよ。友達としても異性としてもよ」
なっ、と突然の告白に硬直する。殺し合った仲のなのに、店主が自分達に好意を抱いていたとは露も知らなかったルノアとクロエは瞠目する。
「ミャーのこと友達って・・・・・何時からそんな関係になったニャ。ミャーはなった覚えはないニャ」
「軽口叩けて気を許しあっている仲だったらそれはもう友達みたいなもんだろう?ルノアだって人の店で何度も居眠りするんだし居心地が良いんだろ?」
「それは・・・・・まぁ、そうだけど」
なら、いいじゃんそれでと相好を崩す店主。
「これからよろしくな二人とも」
「「え、働くのもう決定事項?」」
「当然だ。この店の店主が直々にお前等を倒したからには俺の言う事を聞いてもらわないと、死んでもらうしかないんだけど?命を狙ってくる輩を放っておくほど俺は甘くないし」
死にたいならまた殺すけど。と気で具現化した剣を突き付ける男に少女達はぐうの音も出ず降参の雰囲気を醸し出す。
「―――はははっ!いい塩梅に互いを潰し合ってるな!」
と、そこで。店主達以外の第三者の声が、メインストリートに響き渡った。
「なんだ・・・・・?」
店主が辺りを見回すと、ぞろぞろと無数のゴロツキ達が路地裏や向こうのメインストリートから姿を現した。それぞれの手には、剣や棍棒などの武器が握られている。
「ブルーノ商会・・・・・?どういうこと店主は私に任せるって話でしょ」
全裸のままであるがルノアは鋭い目付きで、ゴロツキ達を従えるヒューマンの男を睨んだ。その側には卑しい笑みを浮かべるドワーフもいる。
「あのドワーフ・・・・・ミャーに依頼を持ちかけた
クロエが目を細め。店主達もこの状況を段々と察し始めた。
「そっか、そういうことね・・・・・つまり最初から、店主だけじゃなくて私達を・・・・・」
「その通り!『黒拳』と『黒猫』、お前達も私達にとって既に邪魔な存在だ!」
ヒューマンの商人―――ブルーノ商会の幹部は笑いながら肯定した。
「『異世界食堂』の店主とお前達を戦わせ、弱ったところを討ち取る・・・・・それがこの依頼の全貌だ!」
店主の
「
多くの者達が予感しているように、商人の幹部も同じ未来を口にし、なお向上を続ける。
「そして生まれ変わる新たなオラリオの秩序を作るのは我々、商会だ!その時にお前達のような
商会幹部はここまで事が運んでうまくいった喜びで
「もとより、我々と
手を伸ばし、男は周囲の荒くれ者達に命令を下す。傷だらけの全裸で可憐な少女二人に舌なめずりしながら、ゴロツキ達が包囲網を狭め始める。だが、
「はぁ・・・・・くだらない」
「もうド三流過ぎて、ニャ・・・・・」
ルノアとクロエは、盛大な溜息をついて脱力した。
「こんなしょーもない企みに利用された自分が一番、頭にくるよ・・・・・」
「しょうがないのニャ、ミャーは今後の進退について悩んでいたから・・・・・」
遠い目をするクロエ達の頭に手を置いて撫でだす店主はとても嘲笑う顔で言葉を送った。
「どんまい」
「「なんか、ムカツクその顔!」」
軽口叩く二人は店主に向かって笑みを浮かべた。次には、一斉に襲いかかってくるゴロツキ達。
―――店主の背中に金色の十二枚の翼が生えだし、己を中心に魔力を迸らせる。真紅から金髪、頭上に金色の輪っか、蒼と翠のオッドアイとなった瞳で宣言した。
「転生者にでもならない限り、絶対に勝てないぞ」
言外にいっぺん死んでこいと告げる店主が、魔力で具現化した金色の胴体が蛇のように長い八つの龍を駆使してゴロツキ達に襲わせる。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!』
「「「「「ぎゃあああああああああああっ!?」」」」」
直後、絶叫の連鎖と稲光と雷の轟音。星空に打ち上がっていた阿鼻叫喚の悲鳴は間もなく途絶え、メインストリートには無残な姿のゴロツキ達が転がる羽目となった。一蹴である。
「う、うべぇえ・・・・・!?」
ヒューマンとドワーフの
「ば、化け物か!?なんだ、その姿。貴様、本当に人間なのか、何者なんだ!?」
「ギルドでも調べることができるだろう?俺は異世界から来た異邦人だって」
「有り得ないっ、元上級冒険者だった筈の貴様が何故この強力な魔法を使える!?」
「異世界の魔法だからに決まってるだろ」
淡々と答える店主に驚かされているのは彼らだけじゃないルノアとクロエもあんぐりと開いた口が塞がらないほどに驚いていた。
「こ、こんなことをしてタダで済むと思っているのかぁ・・・・・!?オレ達はブルーノ商会、
「き、貴様を直ぐにでもギルドに報告してやる!『異世界食堂』の店主は化けの皮を被ってるモンスターだとな!」
前者はともかく後者は困るなぁと思って止めを刺すつもりで一歩前に前進した時。
「―――あら、それは困るわ」
ソプラノ声が蒼夜のどこからともなく聞こえ出した。同時に一同を取り囲むようにして人影が建物の屋根からだったり路地裏からだったりして多数現れる。
「私の大切な眷族を捕まえてモンスターなんてギルドに言いがかりを付けられると困っちゃうわ」
巌のような巨躯を誇る
「・・・・・なんでいんの?」
「何時まで経っても帰って来ない子を迎えに来ただけよ?」
「迎えに、ねぇ・・・・・来る必要もなさそうな連中も誘ってか」
店主に近寄る精緻な人形と紛うほど小柄で丸い瞳の銀髪の少女が傷の手当てを始め出した。
「取り敢えず、この先はこちらで任せてもらおう」
「状況を把握しているのかシャクティ?」
藍色の髪の麗人の冒険者が商会幹部らを団員達にひっ捕らえさせるので店主は不思議に思った。今の今までこの場にいなかった者が善悪を判別できるのかと小首を傾げる。シャクティの首が肯定と頷いた。
「途中まで話を聞いていた」
「来ていたなら早く出て来て欲しかったもんだ」
「すまないな。・・・・・この者達はどうする」
シャクティがルノアとクロエへ視線を向ける。店主の命を狙った輩と見越しての発言で、特にクロエを見る目が厳しかった。視られている当の黒猫は尻尾を委縮させてどこか震えているようにも見えなくもない。店主はそんな猫とヒューマンの少女に近づいて優しく翼で寄せる。
「あー、こいつ等は俺の店で働くことになった新人だ。俺の戦いに巻き込まれてこうなったんだよ。気にするな」
「「店主・・・・・」」
無理な話しだと承知の上で語る店主に女団長は息をこぼした。
「・・・・・そうか。なら、私は何も見ていない。この場で起きたことも、店主を狙っていた輩も・・・・・何も、な」
一拍遅れて店主は感謝の言葉を述べた。その後、速やかに行動を移された。店主、『黒拳』、『黒猫』を陥れようとしたブルーノ商会の幹部達はその日の内にギルドに連行された。ついでにブルーノ商会そのものも。全て【ガネーシャ・ファミリア】の仕業である。電光石火の勢いでブルーノ商会に乗り込み
「今日から新たに働くことになった元暗殺者と元
「ちょ、そんな事紹介しなくていいニャ!」
「そ、そうだよ!逆に怯えちゃうってば!」
「問題ないぞ。皆神経が図太いから受け入れる方だから。な、何か問題でもあるか?」
「「「「「ありませーん!」」」」」
「「ええー・・・・・」」
「なんだい、ここはオラリオだよ?店を構えるからには荒事や面倒事の対処や度胸が無いんじゃ働けないのが常識なんだよ。人殺しをしてた新人が入ったぐらいで怯えるような娘は一人もいないようちには」
豪快にミアも何の問題なく二人を迎え入れる。ルノアとクロエは『異世界食堂』のウエイトレスの制服を身に包んだ出で立ちで働くことになった。店主の思惑通りになってホクホク顔をしている。
「ふふふっ、これで何時でも好きなだけクロエの耳と尻尾を触れるなぁ」
「フニャッ!?」
クロエの黒い髪の頭を撫でてご満悦の店主。撫でられる本人は羞恥で顔を赤らめるも抵抗せずどこか心地よさそうに「ニャ~・・・・・」と鳴いて尾を揺らす。
「ニャー!ズルいニャ、ミャーも撫でて欲しいのニャ!」
「・・・・・ねぇ、店主ってこんな感じなの?」
「ええ、獣人の耳と尻尾の感触が好きみたいなんです。隙あらば触ってますよ」
「男でも?」
「老若男女問わずです」
問うた従業員のエルフからの返答にそうなんだ、とルノアは認知した。
「メイは体がちっこいから抱き心地がいいなぁ~♪」
「あう、店主、くすぐったいニャ~」
こんな店主だから店員達も笑って働けれるのだろうか。こんな店主だからこの店は居心地が良いのだろうか。獣人の店員やヒューマン、
「ルノア、よろしくな」
「・・・・・うん、よろしくね店主」
抱擁を交わす二人。その際、耳元で囁かれる。
「異性として好きなのは冗談じゃないからな?」
「っ!?」