ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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このまま投稿すれば【アストレア・ファミリア】が壊滅する五年前ではないことに
今更発覚(汗)。かなり強引で修正しながら投稿し続けます。
どうかご了承くださいませ(土下座)。


冒険譚6

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「アイズたんLv.2キタァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

冒険者になってから実に一年という期間で一人の少女が異例の【ランクアップ】を果たした、場も弁えず声が吹く風で揺れ、笑みを浮かべる道化の旗が突き立つ最大派閥の本拠(ルーム)に轟いた朝―――。

 

「あやつは強いモンスターであろう。そこまで落ち込む方がおかしいだろうに」

 

「いやガレス、また『アビリティ』に変動がなかったことに絶望しているんだよ彼は」

 

「未だに0の数字が続く団員を見るのは最初で最後であろうな」

 

片や0という数字の穴が埋まらないショックに部屋の隅で膝を抱えて落ち込む少年の背中は影を落としていた。銀髪幼女に慰められる光景にフィン達はそっとしておこうと配慮をする。場所は執務室。先に【ステイタス】更新を終えてこの部屋に集うことにしている。何せ一年経った今日―――一誠は【ロキ・ファミリア】から脱退する日でもある。

 

同時にこの異世界に突如来てしまってから一年が過ぎた意味も兼ねて、改宗(コンバージョン)が可能な時となりロキと交わした契約を果たすつもりが、眉間に皺を寄せることが起きた。リヴェリア達の目の前でロキが乞うたからだ。

 

「やっぱ、もう一年ぐらいいてほしいんや。ええやろ?契約で一年間だけの話やけど、再契約とか改めて更新とかてきるはずやで」

 

「できるが、する気はないぞ」

 

「せやったらうちもせん!もう一年うちの【ファミリア】にいてもらいたいったらもらいたいんやー!」

 

駄々をこねるロキにいらっとする。こいつどうしてくれようかと睨んで思慮していると、あることをフィンから言われた。

 

「イッセー、こうなったロキは僕たちも手に負えない。何らかの条件付きでもいいからどうかもう一年だけいてくれないか」

 

「条件付き?・・・・・出来ることならお前らでも何でもか」

 

「酷い内容ではないならね」

 

そこまで考えるつもりはないが、意趣返しができるならば・・・・・とロキに対する条件付きを考えた。

 

「・・・・・フィンの提案ならもう一年いてやってもいい」

 

「ほんまかっ!」

 

「条件付きだぞ。俺の条件を守らなかったら即座に改宗(コンバージョン)の手続きをしてもらうからな」

 

よしっ!と握りこぶしを作るロキにフィン達も興味津々で条件付きとは何だろうかと耳を傾けた。

 

「で、条件はなんや?」

 

「うん、半年間は絶対禁酒」

 

「なんやそれぐらい―――は?」

 

「いいな?これが嫌なら直ぐにでも改宗(コンバージョン)だからな」

 

清々しい笑みで条件を告げた一誠にこの世の終わりを見た顔で表情が凍りつき、フィンとガレスにリヴェリアは「同情できないな」と揃って首を横に振った。

 

「・・・・・他の条件に変えられへん?」

 

「アイズとアリサと一緒に一年後改宗(コンバージョン)を許すなら」

 

「ほ、他はっ・・・・・!」

 

「一年間の毎日『自分は無乳神ロキやぁー!』とオラリオ中で叫びまくる」

 

「それは絶対にできひんで!?それ以外はないんか!」

 

にこりと綺麗な笑みで「ない」とロキにとって悪魔のごとき絶望的な返答されてorzな状態になった。

 

結局、ロキは一誠のある条件を呑みもう一年【ロキ・ファミリア】に所属してもらうことにした。

 

「・・・・・ところでロキ、アイズのスキル増えてるな?」

 

「ちょっ、アイズたんの【ステイタス】を視るのはあかんでイッセー!」

 

そして一誠は階位昇華(ランクアップ)を果たした少女の【ステイタス】を見て愉快そうに笑みを浮かべた。

 

 

【異龍騎士】

 

・特定のモンスターと共闘することで全アビリティが超高強化・超高捕正。

 

・種族問わず格上の相手ほど得る【経験値(エクセリア)】と能力値(アビリティ)が激増する。

 

 

「特定のモンスター、言わずもがな」

 

「イッセー、お主の事じゃな」

 

「アイズがイッセーに憧憬を抱いているからかな」

 

「憧憬ね。はは、モンスターに転生した俺にとって複雑な気分だ。この世界にいるかぎりそれは素直に喜べんよ」

 

―――†―――†―――†―――

 

【ロキ・ファミリア】に入って二年目に突入した。日が経つにつれロキの顔から生気が失って一週間過ぎた頃には食事をとって部屋に籠るループを繰り返すのが日常的になってきた。半年も待たず一か月後だったらロキはどうなってしまっているのだろうか、三人の幹部はちょっと不憫に思うようになる。

 

そんな主神の状態など気もかけないでいる者達はダンジョンの中で大暴れを繰り返していた。わざとモンスターを誘引させるトラップを使って多勢に無勢な戦いを臨ませ、時には魔法を使わせないでアイズとアリサより格上の中層域のモンスターを嗾けて戦わせ、階層主とも巡り合わせた。

 

成長促進の効果のスキルを得て日に日にアイズは昨日までの自分を置いてけぼりにする勢い。今では『能力値(アビリティ)』の項目すべてがE以上に成長している。未だ【ランクアップ】の目途も経ってないアリサはほぼ同じ時期で冒険者になった事実を考慮して、急激に成長して強くなっていくアイズに焦りと嫉妬を覚え負けじと一誠と二人の時に猛特訓を励んだ。

 

これが唯一アイズに勝る環境と優越感。共に一誠と常に行動する優遇を得てレベルでは負けるがアビリティを極めんとする今のアリサの能力値は―――。

 

 

アリサ・イリーニチア・アミエーラ

 

Lv.1

 

力:A811

 

耐久:A831

 

器用:A801

 

敏捷:A820

 

魔力:I0

 

 

着実に駆け出しの冒険者のアビリティを大幅に超えた能力を、これまでの日々を糧に強くなっているのが一目瞭然だった。だからお互い自分にないものを、自分ができないことを羨望して、それをフルに活用して二人は一人の少年と在ろうとする。

 

「イッセー、お腹空いた」

 

「そんな時間か。じゃ、アイズもいるし今日はホームの食堂で何か作ってやろう」

 

「うん」

 

複数の塔に囲まれる中庭での特訓を切り上げ、激しい運動をしていたぐらい汗を掻いている二人の幼女たちにタオルを手渡し、塔の中へ入りそのまま大食堂に赴いた。

 

「(あ、またいた)」

 

何時の間にか見掛けるようになった真紅の長髪の少年。自分より年上でお兄さん的な感じだが、一誠を見かけたのは片手で数えられるぐらいの猫人(キャットピープル)の少女は何となく思った。厨房にいる料理人(コック)達と交ざって、席に座っているたったの一年で【ランクアップ】を成し遂げたわずか八歳の少女と銀髪の少女に見られながら何か作っているが少女が立っている場所からでは見えない。獣人の少女は少し気になったが自分の分の料理を取りに足を運んだ。

 

「お、あやつがおるし何か作っておるぞフィン」

 

「イッセーの作る料理は興味ある。僕たちもご相伴させて頂こうかな」

 

「イッセーが文句を言いそうだがな」

 

【ロキ・ファミリア】の団長と副団長、それにドワーフの老兵。古参の三人が珍しく揃って食堂に顔を出し、真っ直ぐアイズとアリサのもとへと足を運んでから真紅の長髪の少年にも近づき、一言二言告げると食器を乗せたお盆を持たせられた。二人はそれを席に座っている彼女達のもとへ運び配ってから座り、食器に被せられた蓋を取り外せば飴色の塊が目に飛び込んできた。

 

「なんじゃこれは?」

 

「・・・見た限り、ネギとこの飴色の塊の下は肉と米があるのはわかる。肉料理か」

 

「見た目もこの香りも、とても新鮮だ。温かい内に食べよう」

 

と、フィンの促しで既に一心不乱で食べているアイズとアリサに遅れて食べ始める。一体この料理は一体どんな味なのだろうかとスプーンを手に取り、食べやすいよう一口サイズに切られてる肉ごと飴色にまで炒められた玉ねぎとご飯を掬い取った。そのまま口の中に入れた瞬間。肉の柔らかさと特製のタレが三人の口の中で実感する。

 

「・・・・・力を入れずともあっさり噛み切れる肉の柔らかさ、味わったことがないソースが食欲を駆らせて、ご飯から香り立つ仄かな酸味でもっと肉が食べられるようになっているのね」

 

「加えて水と片栗粉でとろみがあるタレも味わいがもっとよくなっているだろ」

 

この料理を作った本人もガレスの隣に座ってそう言ってきた。

 

「ああ、このとろとろがそうなんだね。食欲がそそってまだまだ食べられそうだ。この料理の名前は?」

 

「分りやすくステーキ丼って言わせてもらうよ。多分、誰も知らなければ俺しか作れないもんだ。アイズ、アリサどうだ?」

 

「「美味しい!」」

 

大絶賛。幼女が声を張り上げるほどで、近くにいた団員達は思わずなんだと振り返る。

 

「うむ、確かに美味いのぉ。特にこの米がさっぱりしておる」

 

「仄かな酸味な米・・・・・イッセー、なんだこれは?」

 

「極東で作られている梅という酸っぱい実の果肉を練り込んである。因みにこれが梅だ」

 

どこからともなく赤くてしわくちゃな小さな実を皿に乗せた状態でフィン達に見せつけた。直ぐに好奇心や興味津々で梅干しを見つめて「食べられるのか」と質問を投げると一誠は首肯した。

 

「食べられる。でも、人によって好き嫌いがあるからな。ま、食べて見れば?それと中には硬い種があるけど前以て取り除いてあるから気にせず食べていいぞ」

 

「そうか、では頂いてみる」

 

リヴェリアが最初に梅干しを食べる挑戦を試みた。スプーンで掬い取り口の中に入れて何度か咀嚼した時、奇麗な柳眉がしわを寄せた。

 

「・・・・・こんなにはっきりとするのか、この酸っぱさは」

 

「ご飯と一緒に食べるのが一番美味しい方法なんだ。それだけ食べる人もいるから問題はない」

 

「・・・・・そうなのか」

 

ステーキ丼の米も食べてみるが、梅が練り込んである米なので仄かな酸味がさらに強まってしまい一気に水で胃の中に送り込むことで一息ついた。

 

「「!!!」」

 

好奇心に擽られ梅干しを食べてしまったアイズとアリサが顔を酷く顰めて悶えていた。まだ食べていないフィンとガレスは彼女達の様子を見て逡巡するも、酸味を体験した三人から「食べろ、食べないのはズルい」という眼差しを受けてそっと梅干を口にした。

 

「ぬぅ・・・・・っ」

 

「ははは、確かに酸っぱいねこれ・・・・・」

 

「んー、口に合わないか」

 

最後の一つを摘まんでひょいと口の中に入れて、酸っぱそうな表情もせず平気で食べた一誠に感嘆の念を抱くフィン達だった。

 

「異世界の料理は他にも作れるのかいイッセー」

 

「材料があれば何とかな。それが?」

 

「うん、キミも『遠征』に来て異世界の食事を作ってくれたら嬉しいなと思ってね。イッセーも【ロキ・ファミリア】の者だし僕達とダンジョン攻略の手助けをしても問題はないからね」

 

にこりと微笑みを浮かべたフィン。その笑みの裏に隠れてる深意は何か、一誠に伝わったか押し黙り・・・・・観念した風に吐いた。

 

「わかった、【ロキ・ファミリア】の眷族として参加する」

 

「うん、ありがとう。それじゃ今回の遠征の料理番はすべてキミに任せるよ。僕達によい食事を期待してるから」

 

期待にプレッシャーを混ぜて遠征の料理番を任命された一誠は疲労感を醸し出す溜め息を吐いた。

 

「普段どんな料理を食っているのか教えてもらわないとな」

 

「それで参考になるのか?」

 

「保存が利かないダンジョンでは食材が限られてくるから。いっそ保存が出来る道具でも創ろうかな。そうすれば持ってこられる種類が増えるだろうし」

 

「創れるのか?」

 

「んー、色々とこの【ファミリア】の食事状勢を知ってからでないと出来ないかな」

 

そんなこんなで一誠は初めて【ロキ・ファミリア】の遠征に同行することになって、遠征当日には物資の運搬役員と交じって『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』と称されてる18階層へ続く17階層との連絡道の道を阻む巨人のモンスター、孤王の怪物(モンスター・レックス)のゴライアスと戦い突破した。

 

「親方、どこまで行くんだ?」

 

「深層の手前まで進む予定じゃ。【ロキ・ファミリア】の到達階層数は下層域から越えておらんからの」

 

「皆のレベルを【ランクアップ】をしてからか?」

 

「そうじゃ、儂とフィンにリヴェリア以外は第3級冒険者しかおらんからの」

 

【ロキ・ファミリア】の情勢を知り、納得して荷車を押し続ける一誠にガレスが蓄えた髭を擦りながら言い続けた。

 

「儂らは後方で起きる異常事態に臨機応変で動かねばならぬ。お主の働きを期待しておるぞ」

 

「しがない駆け出しの冒険者として扱ってくれるとありがたいなぁー」

 

横から無理じゃ、と言われ自分が動かないとならない時が来ないことを心中で祈る。

 

が、そう問屋は卸せなかった。天井や壁面、地面が木皮で形作られた階層域。通路中に繁茂する苔が青や緑に発光し、見るものに秘境を彷彿させる光景を生み出している。通路の奥から轟いてくるモンスターの雄叫びに身を揺らすのは様々な形をした葉や、銀の雫を垂らす神秘的な花々だった。

 

「あれ、そういえば27階層の階層主って出てこない?大丈夫か?」

 

「ギリギリじゃの。もしも出現したら即座に儂等が出張らなきゃならんが」

 

「そう、ならいいんだけど・・・・・ん?」

 

不意に違和感を覚えて声を漏らす。ガレスがそれに聞き逃さず、どうしたと訊ねた。

 

「凄い速さで接近してくる・・・・・モンスターだなこれ」

 

「分るのか?儂にはわからんが・・・・・」

 

「因みに大量だ」

 

「大量発生かっ」

 

ガレスが背負っていた斧を手に取り構えた直後、最後尾に位置にいる二人と舞台に襲い掛かるのは19階層から出現する火の海とかする希少種(レアモンスター)の一種、『ファイアーバード』で、名の通り火炎攻撃を行う鳥型のモンスターだ。19階層以下の層域『大樹の迷宮』を度々火の海にして帰る厄介なモンスターで、現在進行形で火炎攻撃をしながら最後尾の部隊のガレス達に襲い掛かってきたのだ。

 

「駆けるぞぉっ!」

 

不運にも十字路のど真ん中に立っていて四方から炎鳥(ファイアーバード)が迫ってきている。なのでガレスは皆に急がせて前へ方一点突破を計らうが、残りの三方向からくるモンスターの対処は荷台を引く一誠に。

 

「イッセー、荷台は儂が持つからあの鳥どもを倒してこい!このままでは儂等が美味しく焼かれてしまうわぃ!」

 

「燃やしてくれるなよ!」

 

先行するガレス達を追いかける全長ニMを超す紅の大鳥が嘴の奥で燃え盛る炎で、真紅の龍を彷彿させる全身型鎧を着こんだ者に黒犬(ヘルハウンド)を優に超える高出力の火炎放射を放って―――炎ごと己を斬られた。眼前で灰と化して消え去った同胞に他の炎鳥(ファイアーバード)が嘴の奥から火炎の濁流を吐いて燃やし尽くさんとした。

 

「本物の炎の威力を味わえ」

 

『――――――――――ッ!?』

 

一誠の掌からも放たれる通路いっぱいに放たれる業火炎によって炎負けした炎鳥(ファイアーバード)は火炎に飲み込まれ灰も魔石も残さず焼失した。火炎の濁流が消えてなくなり、残り火が天井や壁面、地面に残って燻ってる中、まだまだ大量に飛んでくる紅の炎鳥(ファイアーバード)に殿の務めを全うする一誠は光刃を具現化して一閃する。

 

 

最後尾の部隊も事前に決めていた休憩(レスト)する場所へ辿り着き、二人の幼女に出迎えられた。誰かを探す仕草をするがすぐにいないことを知り、老兵のドワーフに尋ねた。

 

「・・・・・イッセーは?」

 

異常事態(イレギュラー)に遭ってな、大量発生したモンスターを倒してもらっておる」

 

詳細を聞いたところで待ち人が現れた。何事もなかったように真紅の鎧には傷跡ひとつもない姿で集合場所に合流した者に「大丈夫?」と小さな少女達は心配の声をかけた。

 

「大丈夫だ。一緒にいなかったから心配したか?」

 

「ん」

 

籠手で傷めないよう軽く二人の頭にポンと触れて荷台の状態を確認しに行く。当然のようにアイズとアリサも追従して休憩(レスト)が終わるまで傍にいた。

 

 

巨蒼の滝(グレート・フォール)の絶景を背後にフィンが25階層から27階層まで狩り場と定め、フィン達を除く第3級冒険者達は階層を降りていき、待機するメンバーは荷物番を任される。それ以外は同行する意志がある者を連れていかれる。一誠は待機組として皆の帰りを待つ気持ちで「いってらっしゃーい」と上級冒険者達の見送りを済ませ、踵を返して―――「お前も来るんじゃ」と行く先の逆方向へ一誠の襟を掴んで引きずるガレスに連行される。

 

「料理番を任されてるのに何で俺まで・・・・・」

 

「夜になる前まで戻る。それにお主にはアイズの監視をしてもらうためじゃ」

 

「今のアイズなら親方達の言うことに従うだろ」

 

「そうじゃろうが、あの跳ねっ返り娘は儂等よりお前の方が言うことを聞くじゃろ」

 

金と銀の幼女が一誠を待っていたようでまだ移動をしておらず、連れてこられた姿を見て近寄ってきた。一緒に行こ?という純粋無垢な眼差しを向けられて断るような卑屈の精神が否の一誠は鎧の中で小さく溜息を吐き、モンスター狩りに参加することに決めた。

 

「親方も来るか?」

 

「他の若いもんの見回りをしながら狩る予定じゃわぃ」

 

「そっか、じゃあこっちは好きにさせてもらうから」

 

自然な動作でアイズとアリサの胴に腕を回し、抱え上げると何の躊躇もなく数百Mの崖から飛び降りて滝壺へ。突然の破天荒な行動にガレスは開いた口が塞がらず、あっという間に姿が見えなくなった一誠に頭に手を当てて「アイズ達の将来が心配になってきおった」と懸念の吐露を零したのであった。

 

しかし、しばらく時が経った頃。『巨大過ぎる何か』が産まれ落ちるその前触れが生じた。

 

 

一誠達が出くわしたそれは『白』を纏っていた。

 

それは『二頭』の首を持っていた。

 

まるで『幻竜』という言葉を彷彿させる美しい巨躯は、しかしその実、圧倒的な『暴力』と『破壊』の化身であった。

 

「イッセー、あれ・・・・・っ」

 

「・・・・・っ」

 

まだ格下の自分達からすれば最上級のバケモノの風格に恐怖で戦慄し、アイズとアリサは硬直する。対して鎧の中で涼し気に彼の白双頭竜の名を告げる一誠。

 

「27階層、『迷宮の孤王(モンスターレックス)』―――『アンフィス・バエナ』」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 

特大の咆哮が27階層、いや三層分に及ぶ『水の都』全体を轟然と震わせた。『アンフィス・バエナ』の雄叫びに、アイズとアリサは髪をなびかせ仰け反る。そうさせる彼の竜はるほどの威容は二〇Mを越える。横幅は大型級(オーク)の何十倍もあり、まさに階層主の名に相応しい。総身は白い。白亜の鱗に包まれた体は大きさも相まって一種の荘厳さを感じさせる。だが、頭部から放たれるのは紛れもないモンスターの眼光だ。理性など手放し、本能のまま破壊をもたらす凶悪な怪物のそれ。

 

「双頭の竜・・・・・」

 

特筆べきは、それぞれ独立しているように動く双つの竜頭である。胴体の付け根から二股に分かれて伸びる長い首。その先端に有しているのは紛うごとなき竜の双眸。もはや一枚一枚が硬殻板(プレート)といって差し支えない巨大な竜鱗に覆われており、左側の頭部には蒼い双眼を、右側の頭部には赤の双眼を宿していた。

 

「―――せっかく現れてくれたんだ。やるぞ、二人とも」

 

「「っ!?」」

 

「俺はともかく、二人と一緒にあの階層主を倒したら【ランクアップ】できると思う。それだけレベルの差が違うからな」

 

双頭の白竜に睥睨されている自分達を死に追いやろうとする一誠の考えに思考が停止し掛けたが・・・・・。

 

「格上との戦闘は勝敗関係なく確実に自分を強くなる。―――強くなりたいならどんな巨大で強大な相手でも絶対に怖がってはダメだ。強くなりたい気持ちを、心を炎のように燃やし倒すんだ」

 

『―――――オオオオオオオオオオオッッ!!』

 

勢いよく猛る。蒼眼の竜頭が口腔より凄まじい息吹(ブレス)を放出する。大気を焼きながら駆け抜けるのは蒼い炎だ。寒気を感じさせる美しい火炎は、恐るべきことに、滝壺の水面に迫るや否や大量の水蒸気を発生させた。水を蒸発させながら迫りくる灼熱の行軍に、アイズ達は瞠目する。少女達の顔を蒼く照らし出す凶悪な火流。そんな必殺の息吹(ブレス)からアイズ達を庇ったのは、シャボン玉のような金色の膜を張った一誠の防壁魔法だった。

 

「このぐらいは完全に防ぐ」

 

悠然と佇む一誠は自身の鎧で蒼い炎の濁流に受け止め、その中で亜空間から取り出した紅蓮に燃える炎のような波紋が浮かぶ剣を手に取り―――お返しとばかり振るった。

 

「焔煌」

 

迸る特大の紅蓮。逆流する大瀑布のごとき大炎流が蒼い炎とぶつかり押し返しては、拮抗は瞬く間に押され込み炎を放出している相手にまで迫り―――アンフィス・バエナを呑み込んだ。

 

『―――――ッッ!?』

 

「そら、もういっちょ!」

 

畳みかける。片手に魔力で具現化した二〇M級の火炎級を野球ボールの如く投げ放ち、白い巨躯に当てた勢いは止まらずアンフィス・バエナを壁際にまで押し込み、火炎の濁流の渦の中に包まれた次に続いて紅蓮の剣を地に突き刺す。次の瞬間―――地面から大紅炎が吹き上がった。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』

 

アンフィス・バエナの真下から巻き起こる紅蓮の大噴出。地面から吹き上がった炎の輪が、花の大輪のごとく幾重にも咲き乱れた。一誠の足元に突き刺した剣の刃は地面を伝い、炎の導線がアンフィス・バエナの足元に辿り着いた瞬間、爆炎の華を咲かせたのだ。巨体故、足元からの攻撃など想像しなかった白の双頭竜は燃え立つ紅蓮の火柱の奥に霞んで燃焼の哭声を散らせた。一分も満たぬ攻防に呆然だったアイズとアリサは首を動かして目と顔を一誠へ向けた。

 

「・・・・・倒したの?」

 

「手加減はした」

 

「手加減・・・・・?」

 

「まだ倒さず少し弱らせた。こっからは二人も一緒に倒すぞ」

 

火柱が程なくして消失し姿を現した双頭の竜。致命傷といったダメージは全身の竜鱗が炭化したような黒く焦げた程度だ。動けばボロボロと鱗が朽ちた感じに零れ落ち、双頭の竜眼は瞋恚の炎を孕ませて三人を睨みつけていた。

 

「アイズ、黒い竜と戦った時の方法で倒すぞ。あの竜も炎を吐く。アイズの風魔法なら防ぎながら攻撃に転ずれる」

 

「んっ」

 

「アリサは赤い眼の竜の首を一緒に狙おう。あっちは魔法の威力を拡散、弱くする攻撃をするからアイズの魔法が通用しなくなるからな」

 

「はい!」

 

さぁ―――楽しい楽しい竜狩りの始まりだ。二人に倍加の譲渡、アリサに紅蓮の剣を渡し共に地を蹴って駆けた。

 

 

 

フィンが27階層に辿り着いた時は既に蒼い火炎を吐く姿勢のアンフィス・バエナの口腔へ三人が飛び掛かり、アイズとアリサに一誠が炎と風の力を解き放ち、叩き込まれた巨大な炎風の竜巻が上顎ごと口腔を粉砕し、出口へ放出されるはずだった火炎の濁流が行き場を失い大爆発を引き起こした瞬間だった。『魔石』ごと巨躯の身体が爆発し、次には暴れ狂うように体外へ飛び出る蒼炎の花が咲き乱れた。巻き起こる莫大な灰の噴火と蒼炎の爆発だ。凄まじい爆音を轟かせながら大空洞が一瞬、蒼熱の光に埋め尽くされる。

 

 

「まったく、やってくれたよ・・・・・」

 

爆炎から無事な姿を晒す一誠達は竜胆と竜鱗(ドロップアイテム)を手に取り喜びを噛みしめる。まだ幼い彼女達を過酷で危険極まりないことをさせた説教をしなくてはならないのと、たった三人だけで階層主を倒し退けたことに驚嘆の念を抱いて近づき声をかけようとした。別の通路から誰かが現れ、リヴェリアかガレスかと振り向いたその碧眼は丸くなった。

 

「きみは・・・・・」

 

『遠征』中の主力の団員達がダンジョンに行っている間にロキは三ヵ月に一度に開かれる神だけの会合、神会(デナトゥス)に参加して顔を出した。会合が始まって程なくして【ランクアップ】した冒険者達の二つ名の命名式が始まり―――。

 

「うげぇ!?幼女が一年で【ランクアップ】ってなにソレー!」

 

「普通、早くても二年前後ぐらいなのにな」

 

「ありえねぇー、いくらなんでもなぁー」

 

「色々とトばしてるなーこの幼女ちゃんは」

 

半分疑い、半分驚きの反応を示す神々は「アイズたんなんてまだ可愛いもんや」と内心零すロキの心中を知る由もない。たった一年で【ランクアップ】を果たすよりも異世界から来た異邦人+モンスターに転生した元人間の存在を知られれば、目の色を変えて全力で快楽主義の神々が駆け付けてくるかもしれないのだ。幸い、彼の男を知っているのは己の【ファミリア】の中で幹部と二人の幼女のみだ。だが―――。ちらりと同じ卓に座っている銀髪銀瞳の女神へ流し目で向ければ、ロキに送っていたのか彼女の目線とぶつかり美の女神は美しい笑みを浮かべた。

 

厄介な女神に目を付けられたのは痛いロキはこのまま隠し通せれるとは思っていないが、せめて次の改宗(コンバージョン)先は別の【ファミリア】にしてもらうことを確固たる意志で決めた。

 

「ロキ、私のイッセーは元気かしら?」

 

「誰のイッセーや。うちの可愛い子供を自分のもんにすんな」

 

「今はそうだけれど未来はどうなっているのか私達(かみがみ)でもわからないわ」

 

「仮にうちから離れるんだとしても自分とこには行かせへんからな」

 

「ふふ、それこそ今後どうなるか分からない話でしょ。あの子は全力で自分を求めろと言ってくれたのだから―――ちょっと悪戯を、ね」

 

意味深に織り交ぜる女神の言葉に糸目がかっと開きロキは「まさか」と隣に居座っている美女神に振り向いた。卓に肘を立てて組んだ指の上に顎を乗せて前を向いたままの姿勢の女神にドスの利いた声を発した。

 

「『遠征』のあの子らに何をするつもりやおどれはッ」

 

「何もするつもりはないわ。ただ・・・・・私の子供達が『遠征中』偶然、階層を下っている途中であなたの子供達と出会うだけよ?」

 

 

 

27階層と繋がる連絡路から戦乙女の側面(プロフィール)の徽章の旗を掲げる一団を率いる巌のような巨躯の獣人とフィンは接触した。この場に通りかかったのは『遠征』だからなのか?【ロキ・ファミリア】の『遠征』を知った上で?―――否、フィンはそう決断をする。あの【ファミリア】が『遠征』の自分達と被せること自体があり得ない。逆も然りなのだ。そして、右手の親指が疼く。良からぬことが起きる前兆、その前触れを告げられ警戒の念を抱く。

 

猪人(ボアズ)の獣人が近づいてきた。

 

「やぁ、オッタル。偶然にしては絶好のタイミングで現れたね

 

「階層主の討伐の『遠征』の途中だ」

 

「それなら悪いけれど、彼等がもう倒してしまったよ。君達もどこかでその様子を見ていただろうけれどね」

 

【フレイヤ・ファミリア】の一団を率いる団長オッタルはフィンから視線を外し、真紅の龍を彷彿させる全身型鎧の者に、一誠に向かって歩き始めながら背中に背負っている無骨な剛剣の柄を握った瞬間を見て、フィンは制しようとしたが牽制の一撃を振るう猫人(キャットピープル)の槍に対応せざるを得なかった。その直後、他の団員達が一斉に動き出しこの場から逃がさないためか武器を構え円陣に囲い始め、周囲を把握して目の前の青年の獣人に尋ねた。

 

「何のつもりなのかなこれは?」

 

「てめぇらが狩るつもりだった俺達の獲物を横取りしたからだ。その報いを晴らしてもらう」

 

「おかしな話だね。僕には別の目的があって、偶然を装った理由を述べられた風にしか聞こえないよ。これは神フレイヤの、【ファミリア】の総意だと受け取ってもいいんだね?」

 

「耳が遠くなったか小人族(パルゥム)が」

 

「生憎、僕はまだ歳を取ってないから正常な聴力だよ」

 

相手の戦意と敵意が孕んだ瞳の奥を伺い、油断も慢心もせずに真剣な面持ちで不敵に口元を緩ませるフィン。不意に背後から声がかかった。

 

「団長ー。この状況、どうすればいいんだ?」

 

何故かオラリオ最強の冒険者に立ち塞がれている状況に一誠は団長に指示を仰いだ。派閥同士の抗争になり兼ねない展開に逃げるべきか戦うべきなのか、フィンに問うた答えが―――。

 

「彼から逃げられるかい?」

 

「余裕で逃げられる」

 

「じゃあ、無用な争いは避けてリヴェリア達と合流してくれ」

 

「わか―――ってあぶなっ!?」

 

オッタルに攻撃をされたようで短い悲鳴を上げだした。

 

 

風を切る音が絶え間なく鳴り響く。戦う気がない一誠は振るわれる全てが一撃必殺の斬撃を交わし続ける。相手はオラリオ最強の第一級、それも迷宮都市で二人しか存在しないLv.7の冒険者の攻撃に対してだ。駆け出しの最弱の冒険者がそんな動作をすることなど不可能なことをして見せている故にオッタルの心中は疑惑でいっぱいだ。

 

「団長から逃げろって言われてるから戦わないぞ!」

 

「戦わなければそこの娘の安全は保障できないぞ」

 

「あーそうかい・・・・・そっちがそうならこっちも考えがある」

 

完全にして完璧にかわしていた男がアイズ達を害する風に言われ、淡々と言って目が据わった。横薙ぎの一撃を振るわれる前に跳躍して真上に高く魔法の翼を生やして飛び、両手を頭上に掲げ太陽を彷彿させる巨大な業火球、アンフィス・バエナに放ったよりも二回り大きいそれを具現化した。赤く染まり大気が焼けそうなほど熱く―――。

 

「団長、全力でアイズ達と滝壺のところに!」

 

「とんでもないことを!」

 

第一級冒険者だろうと掠りでもただではすまない魔法攻撃を放とうとする一誠に戦慄する間もなく、槍同士の戦いを繰り広げていた猫人(キャットピープル)から背を向け全力疾走で二人の少女へ駆ける。それを逃すことを許さんと猫人(キャットピープル)の追撃の姿勢が業火球から飛び出した火炎の放射に阻まれてしまう。それは瞬く間に火の海と化になり、四人を囲んでいた【フレイヤ・ファミリア】の団員達にまで被害が及ぶ。

 

「アイズ、アリサ、飛んで団長を掴め!」

 

「「はい!」」

 

小さな背中から魔法の翼を生やし、滝壺へ身を投げようとするフィンの両手を掴み、火の海から脱して上層へと飛びだった同時にオッタルへ業火球を投げつけた。

 

「!」

 

業火球が爆発する瞬間を、オッタルの状態を確認する暇もなく一誠も後を追いかける直前を狙ったか、火の海から槍が飛び出してきて一誠の頭部を掠った。上層へ飛び直ぐに三人のところへ、下から飛んでくる男を待っていた三人と合流を果たした。

 

「イッセー、さっきのは魔法なんだろうけどオッタル達を殺しちゃいないね」

 

「殺したら面倒しかないだろ。―――全員地上に送り返した」

 

「地上に?」

 

真下から聞こえ続けるはずの巨蒼の滝(グレート・フォール)の膨大な滝の水の音に負けない音。それが何時まで経っても聞こえてこず首を傾げる思いを心中で疑惑するフィン。仮に本当にダンジョンからいなくなった【フレイヤ・ファミリア】の一団に【ロキ・ファミリア】の自分達は今後どうするか団長フィンに問うた。

 

「ンー、取り合えずリヴェリア達と合流だ。ダンジョンの中で派閥同士の些細な抗争を受けながらの『遠征』は難しいから」

 

「了解」

 

 

 

―――武装状態の【フレイヤ・ファミリア】が中央広場(セントラルパーク)に突如発生した真紅の魔法円(マジックサークル)から現れ、地上にいた人々や送り返された当人達は当惑した。一人バベルの塔からこちらを見下ろしているだろう主神を見上げたオッタルは、一団を率いて南方へと足を進めた。

 

 

 

「そうか。奴らの狙いはイッセーであるのか」

 

「神フレイヤの考えとオッタルが彼を気になっていたら十中八九、間違いなく不思議でもないと思う」

 

「儂以外にリヴェリアのところにも第一級冒険者どもを残して行ったのもそういう理由であるなら納得できるの。しかしまさかこのような手段で来るとは予想外以前に考えもしなかったわぃ」

 

「それぐらいイッセーの挑発を受け、本気で狙っているんだろう。ね、イッセー」

 

「・・・・・なんかスミマセンでした」

 

18階層に戻り野営を整えたところ、主力にして【ロキ・ファミリア】の頭目たちからお呼びがかかり、【フレイヤ・ファミリア】の思惑を予測し、ここまで事が起きるとは思いもしなかった彼は深々と土下座をした姿勢で頭を下げた。変なところで素直になる一誠に三人の亜人(デミ・ヒューマン)達は神妙な面持ちで見つめる。

【フレイヤ・ファミリア】の一団の介入もあった『遠征』の一日目は間も無く幕を閉じる中、料理番の務めを全うする。

 

持参してきた木箱から到底収まり切れないはずの食材や調理道具、食器など取り出して目を見張るほどの速さで調理を始めた。『遠征』に参加している【ロキ・ファミリア】の団員数は三十人程。複数人で各個それぞれ準備をしなくてはならないのに一人だけこなすその手早さ。ナイフを使わず皮をむき一口サイズに切り、火を使わず大きな寸胴鍋の中で炒め入れた水を沸騰させ・・・・・。

 

『(いやいや、どうなっている?)』

 

異様な調理の姿に偶々通りすがりの団員達から奇異の視線を集めることになる。その輪にフィン達が好奇心で加わって見たことがない茶色のシチューを覗き込んだ。

 

「料理、なのか。見た目が少々アレだ」

 

「多種多様の香辛料を混ぜ込んだから見た目よりも味は抜群に美味しいから」

 

「ンー確かに食欲をそそらせる嗅いだことがない匂いだね」

 

「そうじゃの」

 

十数後に完成した大人数向けの料理を、カレーを【ロキ・ファミリア】の『遠征』組に振舞って舌にピリッと甘口の辛さが刺激して未知の味を堪能させた。お代わりもあると言えば寝ずの番の団員の分を残して団員達はお代わりを所望する声が挙がる。

 

「ごちそうさまー」

 

「凄く美味しかった、また作ってねー」

 

称賛の声と共に木製の食器を片付ける彼等彼女等から受け取り、水魔法で汚れを洗い落とし木箱に収納し終え組み立てたテントの中へ入る。待っていたのかちょこんと座って待っていたアリサがいて、中に入ってきた一誠と添い寝をして夜を過ごした。

 

「イッセー」

 

「どうした、アリサ」

 

「私強くなれる?」

 

巨大な竜を一緒に倒して強くなった実感がまだ湧かない幼女の額に額をくっつけ、至近距離で真っ直ぐつぶらな瞳を覗き込みながら一誠は言った。

 

「誰よりも純粋に強くなりたい気持ちを忘れず、誰よりも頑張ってば必ず強くなれる。これは元の世界の人達やこの異世界の人達が持っている絶対になれる可能性だ。アリサ、お前も強くなれる可能性を秘めているよ」

 

「イッセーもそうだった?」

 

「そうだよ。今のアリサと同じぐらい小さかった子供の頃から強くなろうと頑張っていた。だからアリサも必ず強くなれる」

 

「それをわかってくるようになるのはもっと身体が大きくなった頃だ」と自身の体験談を含めて語る一誠を信じて、小さな手を動かし一緒に寝てくれる男の服を掴む。

 

「・・・・・強くなる」

 

「ん、頑張れアリサ。明日も早いからそろそろ寝ようか」

 

「ん・・・・・おやすみなさい」

 

目を閉じるアリサの頭を優しく撫でながら眠ったことを確認してから一誠も眠り始める。

 

 

 

 

翌日。朝日を浴びれないダンジョンの中で起床。野営地を見張る番を除いて冒険をする【ロキ・ファミリア】がいる地下迷宮の上、地上では人知れずある小さな出来事が発生していた。オラリオから少し離れた草原に十数人の男性と女性が意識を失っているかのように眠っており、そこへ一人の美しい女神が近寄った。

 

「おい、こんなところで寝ていると風邪をひくぞ」

 

それが双方の初めての出会いであることを一誠と出会い語られるのはまだ先であった。

 

 

そして今後もこの世界に異世界からくる者達と出会い、時には友好を、時には敵対して過ごす。神々はそれを見届ける。神々にとって親愛なる子供等が紡ぐ最高の見世物にして最高の娯楽。―――【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】を。

 

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