ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚20

最近の姉者がおかしい、そう思ったのはつい最近の事。アマゾネスのイルタ・ファーマは尊敬に値するヒューマンの女性の異変を敏感に察知した。何がおかしいのかと幾つか挙げてみれば、

 

「アーディ、そちらはできたか」

 

「できたよお姉ちゃん。早速届けに行こ?」

 

ガネーシャの神命により死に別れした姉妹は時間を与えられ、しばらくの間冒険者活動を休止させられている。それは問題ない。寧ろそうするべきだと勧めるのだが、ここ最近どこかへ出かける二人に疑問を抱くようになった。特に―――ダンジョンに向かうわけでもないのに弁当を作るのは何故だ?と。いや、得物は所持しているが鋭い矛と対象的に何時もの凛々しさがなく優しい表情を浮かべている。その表情は妹に向けている。うん、それは当然のことだと一人納得するイルタの耳に「届けに行く」と言う話を拾った。どこへ?一体誰に?

 

 

「旦那様。あーんだ」

 

「普通に食べさせてくれ・・・・・頼むから」

 

「いえいえ、布団が汚れますからこれが丁度いいんですよ」

 

シャクティとアーディの膝の上に頭を乗せられて親鳥がひな鳥に餌を与える図が出来る。まな板の上の鯛の状態として指先も動かせない程に全身の力が入らず、なされるままの一誠。ベッドの上で二人の膝枕を受けながら食べさせられるのは羞恥以外何ものではなかった。

 

「「「うー!」」」

 

「あんなシャクティは初めてみました・・・・・」

 

「恋は人を変えるって本当なのね」

 

お世話をしたい少女達はその役割を取られて悔しさと羨望の眼差しを、麗人の冒険者を知る冒険者達はその変わり様に衝撃を受けた。

 

「旦那様の世話をするんは妻のウチらの務めやー!」

 

とユエルが自分達妻の存在を主張して、立場など関係なく妻という肩書を持つ者同士の好敵手(ライバル)同士の闘い(物理的ではなく)が勃発しかけた。それが出来なかった理由は。

 

「我が主の傍で言い争わないでもらえますか」

 

「絶対安静をしている患者の傍で騒がないでください」

 

「以下同文です」

 

金髪の美女(人型ドラゴン)と銀髪の二人のヒューマンに強く釘を刺されていたからであった。

 

「って、貴方は誰?」

 

「メリアと申します。滅多にお姿を見せることはできませんが私は我が主の味方でございます。以後お見知りおきを」

 

彼女の存在を始めて知った面々。一体何時の間にいたのか誰も気づかず警戒心もいだいてしまった。

 

「付け加えると、彼女も俺と同じ世界から来た家族だ」

 

「異世界の、イッセーの家族・・・・・?」

 

「唯一、俺が元の世界でどう生きていたのか全て知っている一人とも言えるな」

 

「はい、幼い頃の主はとても可愛らしく、可愛らしい女の子も服を着せられたこともあることも知っております」

 

「それは言わなくていい話しだからなメリアァァアアアアアアアアアアッ!?」

 

あ、本当なんだ。と普段叫ばない一誠の反応に是と認識したアイズ達の興味と好奇心が確実にメリアに向いた。特に女装をさせられたと言う話しは凄く興味津々だ。

 

「女の子のイッセー?」

 

「アイズ、それは誤解を招くから口に出すな」

 

「イッセー、私達の服着る?」

 

「そんな趣味じゃないんだアリサ!」

 

メリアの登場で一誠が泣きそうになる。物珍しい安静中の彼の反応に背中を押されるような感じでますます好奇心が沸いた。

 

「異世界の話、とても興味あります」

 

「そうね。イッセーの恥ずかしい話しも聞けそうだわ」

 

「・・・・・アリーゼ、知ったらお前の『初めて』をシャクティに教えるからな」

 

初めて?何のだ?と不思議そうに赤髪の女冒険者へシャクティは視線を来ると、髪と同じぐらい顔が真っ赤になっていた正義と剣の女神の眷族。

 

「初めての話とはなんだ?」

 

「な、なんでもないわっ!」

 

これで自分の恥ずかしい過去を知られずに済んだ。未然に防いだ一誠の心中の不安が払拭されて晴れやかと成った。

 

「知りたいですか?主の恥ずかしい話しを」

 

「・・・・・遠慮するわ。それ以外の話でお願い」

 

「かしこまりました」

 

「・・・・・俺は寝る」

 

そう言って三秒で静かな寝息を立てる一誠にシャクティとアーディは軽く目を丸くした。人(ドラゴン)ってこんなに早く寝付けれるものだったのかと。寝た己の主を他所にメリアは思い出話でも語ろうとした矢先、耳元に小型の魔方陣が浮かび上がってそれに意識を向けたのは十数秒だった。話の内容を聞くその顔は真摯になった。

 

「シャクティ・ヴァルマ」

 

「なんだ」

 

「神ガネーシャが懇意でこの城の警護をしてる貴方の団員が、三人の転生者達の前に破られて侵入を許したそうです」

 

それは、アリーゼ達にとっても無視できない報告であった。メリアからの報告で真剣な表情を浮かべそっと一誠から離れ得物を手に取るシャクティ。

 

「わかった。私が奴等を止めよう」

 

「シャクティ、私達も行くわ」

 

奴等と戦った経験があり少しぐらいは以前より善戦できるはずとアリーゼの動きに―――メリアは制する。

 

「また主の手を煩わせるつもりですか」

 

「っ!」

 

「せめて第一級冒険者になってから転生者と戦って下さい。いえ、そうでなくとも自ら獣に喰らわれに行く貴方達に勝てる見込みなど皆無です。また、凌辱されたいのですか?」

 

「あ、あの時は何も知らなかったから・・・・・」

 

「知っていようといまいと、転生者に勝てませんよ。何より転生者達は不死身の能力を得ている。どうやって殺しても殺すことが出来ない者達を殺すのですか?あの時の主達との戦いを見て何も学んでいませんでしたか?」

 

そう問われ、何も答えれないアリーゼ達。「だが」と横から話に介入するシャクティ

 

「肝心のイッセーが身動き取れない状況だ。誰かが行かねばやつらの好き勝手にされるぞ」

 

「ご安心を。既に我が主は先手を打っております」

 

 

再び『幽玄の白天城』の敷地内に侵入をする転生者達。ここにあの忌々しい男がいるとわかってから『準備』をしてきた。それが整ってこの時をようやく訪れたことで、リベンジを果たしに100Mはある長大な石壁を守る【ガネーシャ・ファミリア】の団員達を一蹴して壁も突破。威風堂々と余裕を持って進む先に―――彼等の道を塞ぐ巨大な樹の幹が幾重にも重なって形を成してドラゴンの形をした枯れ樹が出迎えた。

 

「なんだ、この前になかったぞこんな樹」

 

「俺達の邪魔をする為なんじゃねーの?」

 

「だとしたら随分とお粗末だな。なぁ―――勇者。お前もそう思うだろ?」

 

振り返る白髪に赤い目の男の視界に、全身を鎧で身に包む【アポロン・ファミリア】に所属する転生者が肯定の意を示す様に大剣を構えた。

 

「俺達の邪魔なものは全て切り裂いてやる」

 

「いいね。流石は勇者の名を名乗るだけあるぜ」

 

勇者を囃したてる。彼等と接触は『運動会』からしばらく経った頃。共に辛酸を飲まされたあの男にリベンジをしないかと誘われた時、最初は疑心暗鬼であったものの同じ転生者であることを打ち明ければ二つ返事で応じた。己以外にも転生者が、あの男に敗れた同士がいることに親近感が湧いて何度か交流を交わしてきた。

 

「斬って斬りまくって薪にしてやる」

 

『―――薪ですか。私はそこまで枯れていませんがね』

 

「薪が何を言って―――・・・・・?」

 

不意に自分は誰と喋っていた?と疑問を抱いた。三人の転生者も怪訝な表情を浮かべ周囲を見回す。人の気配は感じられない。どこだ?勇ましく勇者は叫ぶ。

 

「どこのどいつだ、姿を見せろ!」

 

『既に目の前に居りますよ』

 

枯れた樹木だと思っていたものが、くぼんだ部分が赤い光を宿して口と思われる部位が、大きく裂ける。転生者達は異様な生物を目の当たりにして瞠目する。

 

『初めまして異界の神により能力を与えられ甦りし転生者達。私は「宝樹の護封龍(インソムニアック・ドラゴン)」ラードゥンと申します・・・・・以後、お見知りおきを』

 

樹木だと思われていたものがドラゴンと名乗り、告げる。

 

『この先に用があるならば私と遊んでからにしてもらいましょうか』

 

「遊ぶだと?たかが樹に何が出来るってんだ?」

 

『私は主に結界、障壁など担当しておりまして・・・・・こんな風にできますよ』

 

四人をまるっと結界のようなものが包み込む。まるで巨大なシャボン玉の中にすっぽり入ってしまったように。ラードゥンはどす黒いオーラを放ちながら、眼光を赤く赤く輝かせて転生者達を睨んでいた。

 

「なんだこれ?こんな程度で俺達を止めたつもりか?」

 

結界に攻撃を繰り出す四人。だが、万物を斬る剣で結界に切り裂いても直ぐに修復。無限の魔法でもびくともせず、亜空間から射出した武器でも貫くことは叶わず、自慢で最強の能力でも突破できず当惑するだけだった。

 

『この程度で止められている貴方達はそれほど脅威ではないですな』

 

「てめぇ、こっから出せや!」

 

『自力で突破して下さいな。貴方達を倒した彼はこの程度の結界など拳一つで破壊できますよ?』

 

「っ・・・・・グルってことか。はは、いいこと知ったぜ。化けもんを飼っているって事をギルドに教えてやったらあいつはオラリオにいられなくなるな!」

 

不敵な笑みを浮かべる転生者にほくそ笑むラードゥン。その結界から突破しない限りそれは叶わないですがね、と石壁ごと防音式の結界を張り出す。

 

『さて、このまま餓死させるまで閉じ込めてもよいのですが。それでは少々つまらないのでゲームをしましょう』

 

そう言った直後に転生者達を包んでいた結界が消失して、代わりと庭園に結界が張られラードゥンの真上に大きな立体的な砂時計が浮かび上がる。

 

『三分の間、私を倒してごらんなさい。できたら先へ進むことを許しますよ』

 

ゲームのルールを説明され、舐められてる、挑発をされてると受け取った転生者達は不敵と侮蔑した。

 

「ただ守るだけしか取り柄がない化け物の運命はもう決まってるぜ。てめぇ、最強の俺達に殺されるって運命なんだよ」

 

『イッセーに敗北と言う屈辱と辛酸を飲まされた時点で、最強ではなくなったのでは?』

 

「黙れ!たかが樹のくせに知った風な口を開くな!」

 

知ってるから開くのですがね。心中吐露するラードゥンに四人の転生者達は飛びかかり、城からメリアの魔法でその様子を窺うアリーゼ達は緊張の面持ちで戦いの結果を見守った。

 

三分後。指定された時間が経って過ぎたことでラードゥンのゲームは終わった。結果は、樹木のドラゴンを倒すことは叶わずただ時間が過ぎてしまった転生者達の敗北。勇者は万物を切り裂く剣を封印されて本来の威力・効力が発揮できず、他の三人は再び結界に閉じ込められてそのままラードゥンに傷ひとつも付けることはできなかった。砂時計は完全に下へ落ちきったのを見計らい、転生者等へ言葉を向ける。

 

『終了です。呆気ないですな。神から能力を与えられたにも拘わらずその程度でイッセーに挑もうとは拍子抜けもいいところ』

 

「うるせぇっ!!今までは本気でも全力でもなかっただけだ!今すぐにでもてめぇを殺してやるよ!」

 

『ゲームは終わりました。他のドラゴンの中で攻撃力が無い私を倒せないようでは、他のドラゴン達にも倒すことは不可能です』

 

「なに?他にもドラゴンがいるのかよっ・・・・・!」

 

その時、呻く転生者とラードゥンの間に黒い魔方陣が三つ発現して三人の男達が現れ、その中の一人の光で黒い髪が紫色の発光現象を起こす男がラードゥンを見上げる。

 

「ラードゥン、交代だ。いいな」

 

『ええ、勿論です。後はお好きなように』

 

「無論だ。主から了承を得ている。丁度いいだろう」

 

「久しぶりの闘いだ。楽しませてもらおうか」

 

転生者達と対峙しかつ、その身を迸るどす黒い魔力で包まれながら本来の姿・・・・・ドラゴンへと姿になった。ジロリと絶望と恐怖の塊に睨まれて委縮、逃げ腰になる転生者達。

 

「な、なんなんだよお前ら。いや、どうしてオラリオにこんな化け物が普通にいるんだよっ・・・!?」

 

『知ったところで貴様等には無意味なことだ』

 

『アジ・ダハーカ、こいつ等に話しかけることすら無駄だ。我が主の為に―――さっさとこいつ等を滅ぼすぞ』

 

「アジ・ダハーカ・・・・・?ま、まさか・・・・・邪龍のアジ・ダハーカか!?」

 

金ぴかの鎧を着込んでいる金髪に赤い目の転生者が絶望の色を顔に染めて戦慄する。異世界でも己の存在を認識している事実を知り、三頭龍の口角が吊り上がった。

 

『いかにも、俺は「魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)」アジ・ダハーカ。異世界から来た我が主イッセーに仕えし忠実な邪龍最強の一角でもある故に―――貴様等の存在をここで消す』

 

『あいつの温情で生かされているにも拘らず、二度も襲撃して来たのだ。仏の顔も三度までと言うが、俺達は仏ではなくドラゴンなのでな』

 

『逃げることも許しを乞うても貴様等を殺すがな』

 

黒い広大な魔方陣がアジ・ダハーカを中心に広がり―――自称勇者とラードゥンを残してドラゴンと転生者達はいなくなった。何故自分だけが取り残されたのか不思議でたまらず間抜けな面を鎧の中でする。表情が見えずとも身体から疑問の気配を醸し出している転生者にラードゥンは指摘する。

 

『あなたは「まだ」話が通じる転生者です。イッセーにはあなただけは生かすようにとお願いされておりますからね』

 

「なんで、そんなことをする・・・・・」

 

『他の転生者よりまだマシなだけですよ。イッセーが最も嫌うのは・・・・・自分の大切なものを手を出す人間と理不尽に人権を奪うものです』

 

三体と三人は18階層の安全階層(セーフティポイント)に転移した直後に戦闘が始まった。モンスターが産まれない階層は他のダンジョンの階層と違って穏やかで楽園のように思われたが、三体の異世界のドラゴン達の存在にそれがブチ壊された。ドラゴン達は闘いのオーラを全身から滲ませた。その迫力は、熱となって周囲の草原を燃え盛らせてはあっという間に火の海と化した。

 

「だ、大丈夫だ・・・・・俺達は絶対に死なない不死身の人間だっ」

 

「ああ、その上俺達はそれぞれ最強の能力を持っている。相手が例え誰であろうと負けることはない」

 

「直ぐに片付けたら加勢をする。いいな」

 

転生者達はそれぞれドラゴンと対峙して攻撃を開始する。某アニメに出るキャラクターの姿と能力を望み得た金髪に赤い目、金の鎧を着込んだ転生者は、肩に突起物のようなものが二つある他、背中と肩、腕や太ももにも赤黒い輪後光が二重にあって体は尾と繋がっており、四対八枚の翼は黒が赤に浸食された感じで入り混じっていた。手首と足の甲に鋭利な刃物状な物が生えていて、頭部に鋭い一本の角にも赤黒い二つの輪後光がある。胸に妖しく光る赤い宝玉のようなものがあるドラゴンへ空間に生じる水の波紋から数多の刀剣類を召喚、それを弾丸のように放つ。それらに対して周囲の空間から鎖を放ち迫りくる武器を拘束して防ぐは『魔煌の絶禍龍(カオス・ブレイカー・ドラゴン)』ネメシス。

 

『この程度か』

 

「舐めるなぁッ!」

 

どんどん武器を射出して攻撃をするが意思を持って空間から出てくる鎖に弾かれるか、巻き付かれるか、防がれるかでネメシスに一度も攻撃が当たらず。弧を描いて資格からの攻撃も全て鎖で守られて、ならば自身の手で攻撃してやるとある剣をしたがネメシスの鎖に武器ごと身体を巻き付かれて動きを封じられた。

 

『能力は確かに強いかも知れんが、お前自身はさほど脅威ではないな。ラードゥンの言うとおり拍子抜けもいいところだ』

 

「く、くそっ!な、何で能力が使えない!?」

 

『俺の鎖は相手の力・能力を封印する。お前達転生者の特典とやらは能力なのだろう?ならば俺の力の特性も発揮すると言うわけだ。今のお前は自慢の能力を振るえないただの人間に成り下がった』

 

鎖を断ち切ろうと武器の召喚が出来ずに当惑する転生者にとって無慈悲な発言を下される。

 

『あの時、イッセーがお前達と戦う際にもそうすることはできていた。何故しなかったかわかるか?戦い方を知らず、特典と言う能力を得て慢心していたお前達に使うまでもなかったのだよ』

 

転生者の四肢に鎖が巻き付く。自分の身に置かれた状況に顔が焦燥の色で染まり切って瞳にも恐怖の色が滲み出た。

 

『神すら封じることができるこの俺に、お前達転生者に倒されるわけもない』

 

「ま、待ってくれ。まさか、俺を殺すんじゃないよな・・・・・?俺を殺したところでお前に何の意味があるってんだっ」

 

『意味など追究するすら意味はあるのか?命を懸けた殺し合いの勝敗はどちらか死ぬか生きるかの結果しかないのにだ』

 

鎖がギリギリと引き裂かんとばかりに万力の如く引っ張り、ネメシスの意思によって転生者を苦しめる。

 

「痛い痛い痛い痛い、があああああああああっ!?や、やめてくれ!止めてくれぇええええええええええっ!!!」

 

『不死身の者でも痛みを感じるのだな』

 

軽く指を振ったネメシスに呼応して鎖が勢いよく空間の中に戻っていく際、ブチンッ!と転生者の腕を引き千切った。その激痛で絶叫するが立て続けに残りの腕や両足すら引き千切られて達磨状態になってしまった。―――残すは首だけだと胴を抑えつけて首を引っ張る鎖。

 

「~~~~~っ!?!?!?!?」

 

『―――ああ、言い忘れていたがな』

 

邪龍らしく邪悪な笑みを浮かべてこう告げた。

 

『お前の不死身の特性も封じてある。言葉通り、お前はただの人間でもう甦ることも復活することもできない』

 

「っ!?じょ、じょんなっ。だ、だじゅげでぇえええっ・・・・・おねが、いじヴぁぶ・・・・・っ」

 

『邪龍の俺に助けを乞おうなど、無意味なことだ』

 

腹を一気に膨張させ、口から火炎を吐きだすネメシスを最後に転生者は全身が焼け焦げる激痛に苛まれながら、声にならない絶叫を上げて完全にこの世から消え去った。一方アジ・ダハーカと某アニメのキャラクターと能力を特典にした転生者は魔法の合戦中であった。数え切れない数の魔方陣を空中全域に発生させた。そこから炎、水、風、雷、光、闇というあらゆる属性の魔法を一気に撃ち出していた。一人と一体の周囲の地面は激しく荒れていて、もはや荒れる前の姿など影の形もなくしていた。

 

『どうしたどうした、無限の魔力はその程度か?もっと本気を出せ』

 

「調子づくなっ!」

 

風と雷を自身に纏い、疾風迅雷の如くアジ・ダハーカの懐に飛び込み零距離から魔法の砲撃を放った。巨大なドラゴンを飲み込み、18階層の岩盤を貫く威力に―――邪龍は平然と受け止めてニヤリと嘲笑う。

 

『俺が知る最強の魔法使いの方がよっぽど威力がある』

 

「なっ・・・・・」

 

攻撃を止めて唖然とする転生者は彼のドラゴンを見つめる。漆黒の身体に傷が癒えていく。あれだけ近い距離から撃った魔法の攻撃が通じていないことに驚きを隠せなかった。

 

『所詮は魔法使いですらなかった人間だ。神や魔法、人間以外の種族など存在しなかった世界からたまたま魔力を得たに過ぎないお前に魔法の深淵、真髄、真理、理など理解するはずもない』

 

目を妖しく輝かせるアジ・ダハーカを見た転生者の額に禍々しい輝きを放つ、魔方陣が描かれたが転生者は気付かずに魔法を放とうとした姿勢のまま数秒固まった。

 

「・・・・・は?」

 

『お前の自慢の魔法を封印した。封印を解除しない限り一生魔法は使えん』

 

「んなっ・・・・・!?」

 

愉快気に嘲笑する邪龍の言葉で慌てだす。転生者の主な攻撃は魔法だ。それを奪われてしまえば不死身の人間という化け物に成り下がる。

 

「ふ、ふざけるなっ!?封印を解きやがれよ、卑怯だろっ!」

 

『そんな発言を口にするとはくだらんな。戦いに卑怯など通用しない。全て己が実力で勝敗を決めるものだ』

 

こんな風にな、と展開していた魔方陣の様相が変わる。古代魔術文字、禁止されている言語、それらが魔方陣の紋様に浮かんで、危険な色を発し始める。魔方陣時代が歪みだし、バチバチと電流を走らせていった。そこから吐き出されたのは―――ドクロを形作る紫色の炎、呪詛に塗れた突風、暗黒色の雷、血の涙を流す呪われた聖母、見つめられるだけで命を奪いかねない一つ目の巨人等々・・・・・禁止級の属性、召喚、呪い、この世の全ての不吉を体現した魔法が、転生者に向かっていく。

 

『さらばだ。もう二度と会う事もないだろう』

 

アジ・ダハーカの攻撃が転生者に着地する。

 

「―――――ァッ!?!?!?!?」

 

声にならない悲鳴は直ぐに聞こえなくなり、核弾頭が落ちたような大爆発と人やモンスターが立ち入ることが出来ない環境を変えてしまった。爆発で生じる突風が(リヴィラ)にも届き影響を与えるが、住人達は三頭龍の結界で守られて無事であった。だが、不死身の転生者は骨の欠片一つも残すことも許されずにこの世から消滅する。そして最後の転生者は―――『幻想喰龍(イリュージョン・イーター)』ゾラードの凶悪な能力に悪戦苦闘を強いられてる。横目で仲間が呆気なく倒されて次は己の番だと絶望に押し潰されかけていた。

 

「く、くそったれがぁっ!」

 

禍々しいオーラを身に纏いそれに触れた物が全て消滅する。気流を操って嵐を起こしてぶつけようとしても効かず、太陽の陽の代わりとなっている18階層の天蓋の青と水色の水晶群を落とし、巨大な塊で圧殺しようとしても消滅していく一方で無意味。転生者の攻撃を尽く無意味にさせられ歯牙にも掛けられない。

 

『そろそろ終わらせよう。何時までも貴様と遊んでいるつもりはない』

 

宣言通り、禍々しいオーラを消失して代わりに無効化のドームを発生させた。あの凶悪極まりない上に厄介なオーラが無くなった。今ならあの化け物を倒せると能力を使って一気に肉薄仕掛ろうとする転生者―――唖然で目が凍結する。

 

「な、なんで能力が発動しない―――」

 

その疑問が解消する事は永遠になかった。フッと自身を覆う影に気付いて見上げた時は巨大な拳が目と鼻の先まで迫り目の前が真っ暗になった。地面が激しく隆起して18階層を震わせる。同時にドームを消して消滅の力で直径五十Mの地面を穿ち消し去った。

 

「「「「「・・・・・っ」」」」」

 

転生者が死にこの世からいなくなった瞬間までメリアの魔法で映しだしていた映像を見ていたアリーゼ達は息を飲んだ。アレが―――異世界のドラゴンの強さ。転生者ですら敵わぬドラゴンの力を目の当たりにして恐怖を覚えた。

 

「御覧の通り、我等は簡単に転生者などに後れは取りませんよ」

 

「・・・・・貴方も、ドラゴンなの?」

 

「はい、そうです。万物を創造する能力を有しておりますが、あのドラゴン達には負けますね」

 

「貴方とあのモンスター達とイッセーさんは・・・・・一体どういう関係なのですか」

 

「家族ですよ。愛おしい愛おしい我が主は元の世界にいる家族達にも愛され、幸せになるべきお方。全てを魅了し全てを愛するお方・・・・・だからあのアジ・ダハーカ達も主の為に戦っております。無論私も戦います」

 

綺麗に笑うメリアに対して言葉を失う面々。

 

「ですが・・・・・主の心を傷付ける者には先程の転生者達のように痛い目を遭っていただきますがね」

 

冷笑する彼女にゾッと背筋に冷たい滴が流れたのを感じた。一誠を傷付ければドラゴンの逆鱗に触れると道理なのだと知り、印象が変わり兼ねなかった。

 

「・・・・・ま、そういうわけだ」

 

眠っていた筈の男が瞑目したまま口を開きだした。空色の瞳を見開き振り返る。

 

「っ、イッセー、さん・・・・・」

 

「普段ドラゴン達は俺の中に宿っている。つまり俺は人類にとってモンスターを宿している恐怖の塊みたいなもんさ。そして俺自身も化け物。そんな奴と一緒に住みたくとも居たくもないなら出てっても構わない。他の仲間にも教えてもいいし俺に対して嫌悪を抱くようなら二度と関わらない。アイズ達もそうだからな」

 

だが、と言葉を続ける。

 

「もしも俺の全てを受け入れてくれるなら、お前等の事全力で好きになるがな」

 

アイズとアリサ、ラトラが布団の中に潜り出しそのまま一誠の傍にまで移動しては顔だけ出して寄りそう。春姫とユエルにソシエは夫がモンスターである衝撃が抜けきれないものの、受け入れる気持ちを抱いた。アリーゼ達はしばらく無言で佇むが訊ねた。

 

「貴方のこと知っている神や冒険者はいる?」

 

「ロキにヘファイストス、ガネーシャにフレイヤ。それにアマテラスとイザナギにイザナミ。あとはフィンとガレスにこの城に住んでいるアイズ達が殆どだな。知らない奴も交じってるけど」

 

「・・・・・貴方を受け入れている、と言う事なのですね?」

 

「ん、そういうことだ」

 

それを訊いて驚きを禁じ得なかったが、一誠を受け入れている神と冒険者がいることに心のどこか安堵したのを覚え、この場を後に主神の女神の元へと訪れ他の仲間も全員集めて一誠の秘密を打ち明けた。

 

「・・・・・そうですか」

 

「どうするアストレア様?」

 

「変わりはありませんよ。私達は二度もあの子に救ってもらいました。あの子供がモンスターでも、私達が迫害も危害をする理由など一つもない。私達が知るモンスターは命を削ってまで助けてくれますか?」

 

「それは・・・・・」

 

「彼を否定したら彼の産みの親に顔向けが出来ない。モンスターである事実が浮上したところで、私達は恩を仇で返す【ファミリア】ですか?」

 

沈黙する団員達を見回しアストレアは彼女達の心情を察し優しく述べる。

 

「もしも彼を否定するならば構いません。この【ファミリア】にも居たくないならば脱退も咎めません。私は一人になっても貴方達を救った恩に報いるためにイッセーの傍にいます。・・・・・当の本人はそんなことする必要はないと言われますがね」

 

確かな決意と気持ちを皆に伝えて示す女神に団員達は困惑する気配を醸し出す。

 

「私は貴方達に助けられている立場です。貴方達を助けた彼に恩を返しても不思議ではないはず」

 

「アストレア様・・・・・」

 

「彼に好意を抱けと言いません。イッセーも私達を強制や縛る事を好みませんから私達【アストレア・ファミリア】はこれまで通りオラリオの平和と秩序を守りましょう。イッセーに対する言動は個々の自由です。いいですね」

 

主神の言葉にアリーゼ達は「はい」と答えて応じる。

 

 

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