ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚23

北東区画の本屋の中で新古の薬学の論文を見つけると購入する。新作の道具(アイテム)の開発の参考となるものを片手に店員のもとへと赴き本を購入する。買い終えると鞄の中に本を仕舞ってから本屋を後に北西のメインストリートへ向かう一誠の足が中央広場(セントラルパーク)に差し掛かったところでとある男神を見付けた。

 

「え、い、いいんですか?」

 

「構わぬ。試作品の回復薬(ポーション)であるが、効果は高いと自負する。そなたの美しい顔に傷痕が残ってしまうと思えば心が痛くなる故、万が一の為にもこれを持って傷を治すといい。怪我をしたらすぐに使うのだ」

 

美麗な目鼻立ち。身長の高い青年の容姿は貴公子そのもの。ヒューマンとも亜人(デミ・ヒューマン)とも一味異なった気品みたいなものが着ている灰色のローブの内から滲み出ている。その並外れた容姿と、何より身にまとう独特の雰囲気と共に出てくる言葉が女性冒険者の頬を赤らめさせる。

 

「タダで商品を上げるなんて、同じ商売をしている身としては安易にできない行為だと思うよ」

 

「ん?おお、イッセーではないか!」

 

どこかへと去っていく女性冒険者から声を掛けられたほうへ振り返り、群青色の髪を揺らしながら破顔一笑してくる男神ミアハ。

 

「久しぶり。最近店に顔を出してこないから天界に送還でもされたのかと思ったよ」

 

「ふははっ、それはすまなかったな。今は新しい新薬の開発で忙しいところなのだ近々食べに行かせてもらおう」

 

道具屋を営む【ファミリア】の新商品に興味津々で「へぇ、どんなの?」と尋ねる一誠に隠すまでもないとミアハは口を滑らしてくれた。

 

「うむ、以前そなたがナァーザに言った体力と精神力(マインド)を同時に回復する二属性回復薬(ヂュアル・ポーション)をな」

 

「ああ、あれ?本当に作ろうとしていたんだ」

 

「ありふれた回復薬(ポーション)高等回復薬(ハイ・ポーション)万能薬(エリクサー)が世に作られている中でイッセーが発想した二属性回復薬(デュアル・ポーション)は今までにない新薬だ。開発せずにはいられないのでな」

 

しかし、その薬の材料や製法を模索している最中で四苦八苦しているとも教えてくれる。

 

「材料か。それはダンジョンで手に入るもんか?」

 

「いや、素材はダンジョンだけではないのだよイッセー。オラリオの外にも素材となりうる可能性が秘めてる。私達はたまに外へ赴き素材の採取をするときがあるのだ」

 

「へぇ、それは知らなかったな。でも、モンスターもいるのに大丈夫なのか?」

 

「問題ない。大昔から繁殖を繰り返してきた地上のモンスター達の魔石は殆どない」

 

魔石が殆どない?初めて知った事実にどういうことなのか教えてもらう。理由はこうだった。母胎(ダンジョン)を離れたモンスターは、本能に従い、己が種族を繁栄させるため子孫を残していった。群体への特化は個体としての力の衰退である。もともと個体としての能力を突き詰められていたモンスター達は、繁殖の方法を核にあたる『魔石』を削り子に分け与えることで補った。長い年月を経てモンスターが体内に宿す『魔石』の規模は縮小していき、その力は地上に進出した先祖(オリジナル)より著しく低いものとなっている。

 

「なるほど、勉強になったよ。あとモンスターってどうやって繁栄してるんだ?」

 

「卵を産むのだ」

 

「卵?人間が食っても大丈夫なのか?」

 

「わからぬ。試したことがないからな。試す機会があればやってみるといい」

 

いろいろと教えてくれたミアハは一誠と別れ、揺れる群青色の髪と遠ざかる背中を神妙な面持ちで見つめた後にフッと虚空に消える一誠は行動に出た。

 

『セオロの密林』。

 

オラリオからまっすぐ東に進んだ先に連なったアルヴ山脈、その麓に広がる大森林だ。森を構成する樹木は総じて樹高がすさまじく、幹も太い。野花や苔を始めとした植物も隆盛も顕著で、緑の王国なんて言葉が頭の中に浮かぶ森に虚空から一誠が現れた。次に密林の中に足を踏み入れる。モンスターの気配に意識を配りつつも、森林の中の素材に使えそうな植物を見定めながら森の奥に進んでいくと、ぽっかりと開けた広々とした窪地を発見した。

 

「・・・・・いるな」

 

窪地の中に怪物がいることを探知して認識すると、『ネットスーパー』で数十匹ほどの丸々太った死んだ豚を購入する。全て尻から腹にかけて裂き、贓物を全て取り出しては腹の中を洗い出すと野太い鉄製の串に刺した。それらを魔法で持ち上げた状態のまま、魔力の火炎でこんがりと焼いていくこと数分後。

 

『ゥゥウ・・・・・』

 

窪地の奥から他高さ五Mはある紅色の肉食恐竜(モンスター)、『ブラッドサウルス』が大粒の唾液をぼたぼたとこぼしながら歩いてきた。目の前の山積みのごちそうに目が眩み、空腹の欲求に逆らえず大顎を開いて豚の丸焼きを食べ始めだした。―――その隙にこっそりと窪地へ移動する。木々の生えていない空間には至るところに数十からなる『卵』の一塊があり、まさにこの場がモンスターの巣であることが知れた。せっせとモンスターの『卵』を乱獲するために魔道具(マジックアイテム)のバックパックを亜空間から取り出して『卵』を詰めていく。十個ほど残して改めて一誠はブラッドサウルスの方を見やる。餌に夢中になっている三匹のブラッドサウルス。増えていた。伴って己の餌を横取りする不届き怪物に怒り、牙を剥いて同族であろうと同胞であろうと喧嘩し始める。そんな光景を見て他にもあのモンスターがいるなら、と新たな卵の採取のために怒りの咆哮を上げる肉食恐竜を他所に探し出す一誠であった。

 

その成果として―――五十個以上の『卵』を手に入れた。

 

「・・・・・イッセー、これはもしかしなくともモンスターの『卵』であるか?」

 

それらを意気揚々にオラリオへ持ち帰って【ミアハ・ファミリア】の本拠地(ホーム)『青の薬舗』に届けた。ちょうどホームにいたミアハに『卵』を見せて唖然とさせた。どうしてこんな物を持ってきたのだろうかと思っているからだろう。

 

「『卵』は栄養満点だし、体力回復の回復薬(ポーション)にも作れるだろう?」

 

「確かに、その通りかもしれぬが精神力(マインド)を回復させる素材もなければ作れぬぞ?」

 

「それは『上層』から怪物の宝(ドロップアイテム)を集めまくって試行錯誤するしかない」

 

不意にミアハは素朴な疑問をぶつけた。

 

「手伝ってくれるのか?」

 

「元の世界にもない新薬だから興味あるんだー。完成したら独自でも作りたいしさらに改良してみたい」

 

「そうか。では、これからはそなたに冒険者依頼(クエスト)として請け負ってもらいたいがよいな?」

 

OK!と握り拳に親指だけを立てて了承する一誠はまたすぐに行動に出た。言葉通り最初は『上層』のモンスターを狩り尽くす勢いで倒してドロップアイテムを入手する。その最中で希少種(レアモンスター)の超稀な大量発生を出くわし、数十枚のドロップアイテムを入手できたのはまさしく幸運だった。

 

「『ブルー・パピリオの翅』がこんなにたくさん・・・・・イッセーさん、凄く運がいいんだね」

 

「ふむ、この翅ならば試してみる価値がある。完成できるやもしれぬな。ありがとうイッセー」

 

大量の青い翅を見て犬人(シアンスロープ)の尻尾がぶんぶんと揺れている。触りたいという欲求に負けてぎゅっと抱きしめ、獣人の少女の垂れた耳を触れたり尻尾をモフモフしてる一誠に感謝の念を伝えるミアハ。

 

「取り合えず手始めにやってみようぜ。『調合』の発展アビリティはないけど、『神秘』の発展アビリティが一時的に発現できるから役に立てると思う」

 

「それは凄いではないか。よし、それでは新薬の開発を試みよう」

 

「頑張りましょう。ミアハ様、イッセーさん」

 

こうして二属性回復薬(デュアル・ポーション)の開発に手を出す【ミアハ・ファミリア】と一誠。アミッドから調合のノウハウを教えてもらっているので製薬作業をする他にミアハ達の助手を務めた。『青の薬舗』の中はとても世話しなくバタバタと動き回ったり何度も失敗したがめげずに試行錯誤して有限の時間は刻々と過ぎていく・・・・・。

 

「・・・・・完成だ」

 

感無量とこぼすミアハの顔に汗が浮かぶ。ナァーザや他の団員達も疲れ切った体で達成感を覚えて喜び数十本の試験管の中の濃紺の液体を見る。窓の外は朱色の光が差し込んで二属性回復薬(デュアル・ポーション)を照らす。時刻は既に夕方であることをミアハ達は気にせずに新薬に目を向けていた。微笑を浮かべて一誠はミアハに話しかけた。

 

「はー完成したな。お疲れ様」

 

「そなたの協力もあってこそ完成したものだ」

 

「大々的に宣伝をしたら注文が殺到するだろうな。頑張れよ」

 

「素材が足りなくなったらまた頼まれてくれるか。ああ、お礼の報酬がまだであったな。受け取ってくれ」

 

新薬を二十本もくれた。思ったより多い報酬に首をひねる。

 

「こんなにいいのか?」

 

「新薬の発想から素材の収集までイッセーがしてくれたのだ。これでもまだ足りぬものであるが、今後ともイッセーには我が【ファミリア】の顧客として優先的に贔屓させてもらおう」

 

ありがたいことを言ってくれたミアハに感謝の言葉を述べ、新薬を大切に持って城へと帰宅した。

 

 

 

その後の【ミアハ・ファミリア】は新薬二属性回復薬(デュアル・ポーション)を販売したことで、今までにない回復薬(ポーション)としても目新しさと効能に冒険者達はこぞって『青の薬舗』に赴き買い求めるようになった。あの【ロキ・ファミリア】からも注目されることでさらに二属性回復薬(デュアル・ポーション)を買い求める声と足が増え、知名度と共に人気が鰻上りである。

 

二属性回復薬(デュアル・ポーション)だとぉおおおおおおおっ!?おのれぇい、ミアハのくせにぃいいいいっ!!!」

 

「(イッセーさんが絡んでいる可能性がありますが・・・・・教えたら面倒なことになりそうですね)」

 

商売敵の新薬の反響に悔し混じりで地団太を踏む主神を見ながら神妙な思いで察するアミッドだったが―――さらにその二属性回復薬(デュアル・ポーション)を改良された回復薬(ポーション)が一誠の手によって作られたことは知らなかった。

 

「アミッドォッ!今すぐにミアハから二属性回復薬(デュアル・ポーション)のレシピを調べに行くぞっ!」

 

「かしこまりました」

 

それが叶わぬことだろうとせずにはいられない主神に侍従して『青の薬舗』へ向かうアミッド。

 

「ミィ~アァ~ハァ~!二属性回復薬(デュアル・ポーション)のレシピを教えるのだ!代わりに金はいくらでも払ってやるぞっ!極貧【ファミリア】は金が欲しいだろうからなぁっ!」

 

「うむ、断らせてもらおう」

 

「何ぃっ~~~~!?」

 

清々しい微笑と共に拒否されて信じられないと驚くディアンケヒトを、何を当たり前なことをと呆れる犬人(シアンスロープ)の少女は精緻な人形と彷彿させる銀髪につぶらな瞳のヒューマンの少女と目があった。

 

「・・・・・(ドヤァ)」

 

「・・・・・」

 

今夜はイッセーさんに甘えよう。この獣人が癇癪を起すほどいっぱい甘えてやる。そう決意したアミッドは勝ち誇った顔をするナァーザに対して小さく口端を緩めた。

 

―――†―――†―――†―――

 

 

夕日に照らされて染まってる完全に直り改築した【ロキ・ファミリア】の『黄昏の舘』の中を素足で歩く女戦士(アマゾネス)の少女。目的の部屋へ真っ直ぐ歩いて辿り着いた部屋の扉を開けて開口一番。

 

「ねぇ、アイズ達がいる場所に行きたいんだけどー」

 

 

 

 

「―――で?俺の了承なしに勝手に連れてきてしまったわけなんだな【勇者(ブレイバー)】さん?」

 

「すまないイッセー。それと僕の頭を拳で挟みながらねじるのはやめてもらえないかな。地味に痛いんだ」

 

「無断で独断でした罰だ。あと十分、この髪が抜けるまでは続ける」

 

金色の翼で黄金色の髪の小人族(パルゥム)の両手足に巻き付けて逃がさない体勢で罰する。事の発端は【ミアハ・ファミリア】から戻ってきた時には珍しくフィンがいたことだった。リヴェリアに直接話をしに来たのかと思ったら、闘国(テルスキュラ)出身の双子―――の片割れの妹がアイズ達に会いたいと懇願したからだ。フィン自身はリヴェリアと『遠征』の件で話をするつもりだったために共にやってきたまではよかったが、城の主の了承もなく連れてきたのが本人は許せなった模様。今現在双子のアマゾネスは一誠の部屋にあるテレビで童話の物語を観覧中であった。何故、ここにいるのかと言えば春姫達もとい同じアマゾネスのレギンとレイネルが面白い物を見せてあげると言い出したからだった。それが何かわからない双子はついていく形で、すっかり操作に慣れた少女達が自分達で準備してティオナとティオネにビデオの素晴らしさをアピールしたのだ。訪問していたフィンから二人がいることを知り、無断と独断で城に招いたことで今に至る。

 

「ところで、アイズ達が見ているあれは何だい?」

 

「テレビと言ってな。家の中でも自由に外の様子や劇場、お釈迦や童話の話を見聞できる道具だ。異世界の道具でもある」

 

「神々が『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の際に『神の力(アルカナム)』で発現する鏡の映像のようなものかな?」

 

「大体あっている。それが家庭用として作られたものだ」

 

聡明なフィンは直ぐにテレビの活用を悟り感嘆の息を漏らす。もっと手軽に持ち歩けて便利に扱えるようになれば、様々な使い道ができて日常生活にも大いに影響を与えるだろうと。

 

「遠い国の風景や光景も見られることもできるのかな」

 

「単一じゃ無理だな。特殊な道具や方法でなきゃ遠方の全てを映すことはできない」

 

「それでも君の世界ではそれすら可能にしている。異世界の技術は本当に凄まじいね」

 

世界が違えど凄いと感じるのはお互い様じゃないか?と思う一誠に開放されたフィンから不思議がられた。

 

「それにしても異世界の言語だからかな。言葉の内容が理解できないのにアイズ達は熱心に見聞しているけどわかるのかい?」

 

「翻訳道具を付けてようやく理解できている」

 

予備のその道具をフィンの耳に押し当てると、納得した言葉がこぼれた。

 

「なるほど、この道具を使わない限りわからないね」

 

「俺の世界に来たらこれは必ず必要になるな」

 

「君から発する言葉は共通語(コイネー)だけど、君の世界の言葉は異なる言葉を発するんだね」

 

因みに異世界の言語は数十各国とその分の地域によって違いがあり、全ての外国語を覚えることができるのはほんの一握りだけだ。と教えると碧眼の瞳を丸くしたフィン。テレビの方は、凝視している少女達の目に映る物語の終幕の時間が訪れ画面が真っ暗になると、張っていた気が吐く息と一緒に緩めた。「どうだった?」、そう尋ねられた言葉はティオナとティオネだとアイズ達は察して、二人に向けられる複数の視線の中でティオナは凄く目を輝かせた。

 

「すっごく楽しかった!!!見て読むのも楽しいけど、見て聞くのももっと楽しいっ!」

 

純粋な感想を言い満面の笑顔はとても眩しく、「ああ、常連がまた増えるか」と止めることができないだろうと諦めの境地で溜息を吐いたところで足下から声がかかる。

 

「イッセー、申し訳ないけど今夜は」

 

「・・・・・わかったよ」

 

本当は嫌だけどな。とかったるそうな顔でぼやかれて苦笑いするフィンだった。

その日の夜はロキ達も交えての夕餉の時間を過ごした。今夜の料理は『異世界食堂』にも作られていない真新しい異世界の料理だった。釜戸から白い塊を取り出して皆の前に出した。

 

「・・・・・なんやこれ、食べ物なんか?」

 

「堅い、わね」

 

齧って食べるもの?胡乱な眼差し、怪訝な面持ちで真っ白な塊のみしかないそれから一斉に視線を一誠に向ける。説明を求められている雰囲気を朗らかに笑みを浮かべながら悟って言う男。

 

「そいつは塩釜焼っていう調理方法でな。メレンゲと塩を混ぜた物で魚を包み釜戸で焼き上げた塩釜だ。その調理法で塩窯の中に閉じ込められている魚の旨味を凝縮させる。食べるときは割ってから食べるんだけどな」

 

パチンと指を弾いて鳴らすと堅い塩の塊が一人で勝手に罅が生じて割れだした。中からは立派な極東の魚、鯛が姿を現す。

 

「魚の中には葉野菜と根菜を敷き詰めている。それらが魚の出汁を吸って、上品な味わいになっているはずだ」

 

「ニョルズ辺りが食いつきそうな魚の調理法やなぁー」

 

「でもこれ、塩辛くないの?」

 

ヘファイストスからの指摘に「食べればわかる。それにパンと一緒に食べても美味しいぞ」と断定する一誠の言葉でようやくフォークとナイフを手にして魚を切り分ければ、確かに腹の中に葉野菜と根菜が詰まっていた。白身をフォークで刺して食べてみると・・・・・。

 

「ん、塩辛くなくない・・・・・けれど、表面の皮はさすがにしょっぱいわね」

 

「だからパンと一緒に食べるのね?・・・・・確かに、上品な味わいだわ。初めて食べるわ」

 

「今は夏の時期だから南国果物(フルーツ)の飲み物も作ってあるから舌もさっぱりするぞ」

 

「トロピカルジュース!」

 

唯一その飲み物を知っているアスナが歓喜の声を出した。自作の飲み物を飲んだ少女達や双子のアマゾネスは未知の味に目を丸くして、他の者と変わらぬ反応とおかわりを求めた・・・・・。

 

「ンー、ここまで美味しい料理を作るイッセーが【ロキ・ファミリア】に入団してくれると嬉しいな。個人的に君の料理を毎日食べたいし」

 

「おいおい、毎日って主婦じゃあるまいし」

 

「あはは、僕が女性だったらイッセーの料理の腕に惚れていたかもしれないね」

 

お互い冗談で言ったが一部の者の心が「イッセーとフィンが結婚!?」と穏やかではなかった。

 

「あ、あの団長っ。団長は料理が上手な女性が好みなんですか?」

 

「うん?うーん、まぁ、料理は上手で毎日相手の健康を気遣ってくれる淑女な女性だったら好きかもしれないね」

 

ティオネの質問にそう答えるフィンであるが、懸念する一誠だった。ぶっちゃけ、アマゾネスが繊細な料理を作れるのか?と。

 

「・・・・・フィン、もしもの仮定の話であるが。今のイッセーが小人族(パルゥム)の女性だったらどうする」

 

「リヴェリアからそんなことを聞かれる日が来るとは思わなかったよ。でも、そうだね。僕の野望のために結婚を申し込んでいたかもしれない。―――全力でね」

 

「・・・・・勘弁してくれ」

 

そんなことを言い出すものなのだから肩の力が脱力して複雑極まりない表情を浮かべる。微妙におかしな雰囲気となってしまったが、皆々の舌と腹を満足させた鯛の塩釜焼はあっという間に完食。それでもまだ食べたりない物には・・・・・。

 

「なんじゃこれは?」

 

「カップラーメン」

 

カップラーメンを提供した。三分経てば食べられると教え、実際に指定された時間を迎えて直ぐに食べてみれば。

 

「むむっ・・・・・これは、美味いっ。今まで食ったことがある同じ麺とは思えんわぃ。おかわりじゃイッセー!」

 

「んー?そんなに美味いん?うちも興味わいたわ。イッセー、うちにも一個や」

 

この日を境に、『幽玄の白天城』内でカップラーメンのブームが起こり、料理が作れない者達は自分でカップラーメンを食べることで腹を満たすようになった。そしてそれは『異世界食堂』にまで表に出るようになり、ただお湯を注いで三分待つだけですぐに食べられるという手軽な調理法に労働者や冒険者達はこぞって購入しにやってくるのをまだこの時の一誠は知る由もなかった。

 

「「カップラーメン、だと・・・・・!?」」

 

「あー、この二人もそうだったな」

 

「懐かしいからね。でも、売っても大丈夫?ラーメンを食べたいって人がいるかもしれないよ?」

 

「転生者と異邦人しかしらないもんをこの世界の人類と神々が知ると思うか?」

 

敢えてそれは教えない限り誰も知る由もないことだ、と言外する一誠の意図を察して何も言わないアスナは余計なことを言っちゃだめだと暗に言われた気がしたのであった。

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