ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚30

「スキル『幻想』の効果・・・・・ヤバ過ぎだろ」

 

道具(アイテム)に関わる全てのアビリティとスキルが発現・併合するって聞いたことがないわ。そもそも道具(アイテム)に関するアビリティとスキルって、どれだけあるのかすらギルドも把握していないはずよ」

 

「そうだよなー。大体似たり寄ったりなもんだろうなー。発現の方はともかく併合ってどういうことだ?上位互換、下位互換のアビリティとスキルがあるのか・・・・・うーん」

 

「悩んでも仕方ないから試しに作ってみたらどう?」

 

「そうしてみるか。案外神にも効果がある化粧品とか作れたりして」

 

「私達は不変よ?見た目は全然変わらないわ」

 

「じゃあ何で年を取った神様がいるんだよ?あれ、最初からそうなわけ?」

 

「知らないわ。いつの間にかいたもの」

 

「その辺、どうやって神々が誕生したのかその謎も明かしてみたいな。フレイってフレイヤの双子の兄がいるはずなのに」

 

「・・・・・フレイが私の兄ですって?冗談でしょ?」

 

「俺の世界じゃそうだぞ。ああ、二人の父親は海神ニョルズだ」

 

「・・・・・」

 

「オッタル、フレイヤが固まってるぞ。初めてじゃないか?(パシャ)」

 

「お前がフレイヤ様をそうさせることを言ったからだ」

 

と、そんなこんな話をした末に一誠は新しいスキル(発展アビリティ)の効果を試そうと道具(アイテム)づくりに精を出した途端に。

 

「Oh・・・・・」

 

―――一誠はとんでもない物を作ってしまった。それを見せにギルド本部―――地下の『祈祷の間』に訪れてかつての『賢者』を驚きで絶叫させた。

 

「間違いないのかフェルズ」

 

「ま、間違えるものか・・・・・数百年ぶりに見たが紛れもなく私の目の前で神に壊された物だ・・・・・!イッセー、君は『神秘』を極めたというのか!?」

 

「極めたんじゃなくて『幻想』っていう発展アビリティを一時発現できるスキルを得たんだ」

 

「げ、『幻想』・・・・・?詳しく内容を教えてくれないか?」

 

カクカクシカシカで・・・・・。ウラノスにも聞こえるようフェルズに『幻想』のスキルの内容を明かす。

 

道具(アイテム)の作製時、道具(アイテム)に関わる全ての発展アビリティとスキルが発現・併合する・・・・・。私の肉体が腐り落ちる前の時代だった時でもそんなスキルは存在も聞いたこともない。ウラノス、貴方から聞いてどういう解釈ができる?」

 

「おそらく『神秘』の上位互換のスキルだろう。道具(アイテム)を作るに関するすべてを掌握する希少(レア)中の希少(レア)スキル。イッセー、発現した原因は自覚しているか」

 

「十中八九、極東で幻想的な物を見せる道具を十万個近く作ったせいだ」

 

「と、途方に暮れる数を作ったのだな・・・・・だが、そのぐらいの数ではないと『神秘』は極めれないし、同時にその数の『幻想的』という道具を作ったから発現した、か。納得のいく理由だ。それ以外発現の方法は思い浮かばない」

 

彼の『賢者』のお墨付きをもらい一誠も納得する。手の中にあるコレは、永久保管しなくちゃだめだろうなーと懐に仕舞う。報告も問い確認は終えたので二人に別れ『幽玄の白天城』へ戻り、今度は武器を作ってみようと工房に籠った。

 

「・・・・・イッセー、あなた、これ・・・・・なんなの」

 

「あれー?」

 

『全力』で製作した武器はどうやらヘファイストスを戦かせてしまうものだったらしい。前回は無かった『幻想』のスキルは武器にも反映を及ぼす物らしい。続いて―――製薬を作ってみようとありとあらゆる原料や素材を、万能薬(エリクサー)を作る気持ちでふんだんに使って製作したら鑑定の結果。

 

幻黎(げんれい)の雫』・服用した者の身体の損傷を復元。また持病・不治の病も完治。

 

「・・・・・なんでやねん」

 

同じ素材や原料で製薬したら異なる物を作ってしまった。本人は万能薬(エリクサー)を作る気でいたのになんでだ?と首を傾げた。『幻想』の中に、いや『幻想』自体が作り手の技術を高め、道具(アイテム)を昇華する秘めたものがあるのかと。浮かぶ疑問は更に疑問が溢れ、考えても仕方がないと―――【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院に訪問した。入ってすぐ損傷している身体を治すことができる薬が完成した、と知らせたら精緻な人形を彷彿させ、大きな双眸が愕然で冷静さを塗り潰した。【ディアンケヒト・ファミリア】でさえ、身体を損傷した部分を再生させる技術はまだない。それを先に薬で治すと言われてしまえばアミッドでなくても誰でも驚くことだった。

 

結局のところ、『幻想』のスキルについて分かったことは。作る道具(アイテム)は全て己の予想を超える規格外な道具(アイテム)に出来上がってしまう事だけだ。だがしかし、その規格外は一誠にとって悪くなかった。『幻想』のスキルを大いに活用してこの世界に己の証を遺すのも悪くはないと考え付いた。

 

「ははは・・・・・作る意欲が沸いて来たなぁー」

 

先に空の世界と繋げる転移装置だ。その後は列車・・・・・まぁ、創造の力を振るえばあっという間に出来上がるか。一誠は城に戻りながらどんなものを作ろうかと笑みを浮かべながら考えた。

 

不意に、目に留まった。『異世界食堂』の前に佇む黒髪黒瞳の若い少年が黒髪黒瞳の少女がいて、逡巡する様子を窺える。まーたかと辟易の思いを顔に滲ませると二人の若者と目が合い、近寄ってこられた。

 

「兵藤さん、お願いがあります!」

 

「だが断る」

 

「即答!?あの、話だけでも聞いてください」

 

お願いしますと懇願されても突き放せばいいのだが、そうしない自分は甘々だなぁと呆れながら話だけならと『異世界食堂』の屋上で聞くことにした。

 

「屋上もあったなんて」

 

「普段は使わないから知らないのは当然だ。俺に頼みたいことってなんだ。ホームの一件は済んだだろ?」

 

「はい、おかげさまで毎日お風呂に入れたり安眠ができるようになりました。でも、一部の皆がエアコンや扇風機が欲しいなぁと欲求を言ってたぐらいです」

 

「俺に不満をぶつけに来ただけか?だったらいい提案を言ってやろうか。暑苦しいってんなら全裸になって外で寝れば涼しくなるぞ」

 

不快そうに細めた目が鋭い眼光を放って二人を縮み込ませた。

 

「す、すみません・・・・・不満を言いに来たのではなくて戦い方を教えてほしいんです」

 

「戦い方?そんなの他の冒険者だって自力で身につけていることだぞ。それに基本は他派閥同士の冒険者は干渉しないのが暗黙のルール。懇意の【ファミリア】じゃない限り相手に師を仰ぐことは普通はできない」

 

「懇意、仲良しってことですか?」

 

「その通りだ。で、俺とお前達異邦人達は別に仲良しでも何でもない。お前達の衣食住を援助をするだけだ。もうそれも終わったから後は勝手に生活をすればいい。それなのにこれ以上俺に頼み込むという事は、それ相応の理由があるかメリットがある話があるからだな」

 

世の中の厳しさも教えてやらんとダメなのかと頭の隅に考え前に座る二人を見つめる。戦い方を教えてほしい。純粋に強くなりたいからかそれとも別の理由があるのか、まずはそれを聞き出したい一誠は訊ねた。

 

「戦い方を知ってどうしたい」

 

「強くなりたいです」

 

「強くなりたい理由は?強くなって何がしたい?いや―――強さの果てに何を望む」

 

強者として弱者に強さを求める理由を問うその質問に、四つの瞳は当惑する。

 

「ただ強くなりたいって言うんなら、やはり戦う術は自分達で身につけろ。所詮は平和ボケした世界から騙されて召喚された程度のお前達だ。強くなりたいなんて、軽い気持ちで言っているだけなんだろ」

 

ハジメと香織は否定できない。戦い方を知りたかったのは純粋に強くなりたいだけだからだった。一誠に納得させる理由を持ち合わせていない二人には師を仰ぐ事は叶わない。

 

「それに、師匠にする相手が俺にするのは止めておけ」

 

「な、何でですか・・・・・?」

 

「俺の修業は軽く三途の川を見るぐらい死ぬ思いをするからだ。それに女子供でも容赦なく殴る。それでもいいっていうんなら、試験をしてやってもいい」

 

どうだ。と尋ねられたハジメは振り向く香織と目が合い、向き直る。

 

「兵藤さんのLv.は2でしたよね」

 

「ああ、お前ら下級冒険者の上のランク、第三級冒険者だ」

 

「・・・・・あの、それって強さは変わるんですか?」

 

恐る恐ると実力の差を伺うハジメの態度にスッと目を細めた。その仕草に自分は何かいけない質問でもしたのかと緊張したが、当の一誠は煮え湯を飲まされた【ステータス】が不変だった頃を思い出して顔を顰めただけだった。

 

「他の下級冒険者と第三級冒険者の実力。それは、【ランクアップ】した影響はデカいからな。それを実感するのは己自身。それと【ステータス】の各基本アビリティが高ければ高いほどに身体能力が上がる。五階建てのビルをあっさり飛び越えるぐらいにな」

 

「え、ビルを飛び越える!?」

 

そんな超人的なこと実現できるのかとおっかなびっくりな香織は驚嘆の念も抱く。今はまだそんなことできそうな気はしないが、今後の成長次第ではそれが可能になるのだと示唆する一誠に強くなってみたいという気持ちが湧いてきた。ただそれでも一誠を納得させる想いとは程遠いが。

 

「基本アビリティってどうやって上がるんですか?」

 

「継続は力なり、だ。トレーニングをしても上がるし、モンスターと戦ってれば自ずと相応に上がるし、対人戦でも効果はある。要は身体を激しく死に物狂いで動かせば上がる寸法だ。これは他の冒険者達も同じことをして成長し続けている方法だ。ついでに常識的な知識でもあるけど、知ってたか?」

 

「「受付の人から聞いてい、一応・・・・・」」

 

ならばよし、とひとつ頷く。

 

「で、試験を受けるのか?受けないのか?」

 

「試験ってどんなことするんですか?」

 

「取り合えずは戦うぞ。試験の合格条件は秘密だがな」

 

「戦って勝てば合格ってわけじゃ、ないですよね?」

 

「―――なぁ、俺の質問に先に答えてくれないかなぁ?これ以上無駄話はする気ないからよぉ?」

 

質問ばかりするハジメ達にドスのきいた低い声音を発し、この二人からのこれ以上の質問攻めに付き合いたくなく事を進めると条件反射で「「し、します」」と答えさせた。

 

「じゃあ、俺の城でするから行くぞ」

 

「お城で、ですか?」

 

「トレーニングルームがあるからな」

 

三人の足元に転移式魔方陣が展開して一拍遅れて下から発する輝きに気付いたときは、別の場所に転移していた。『幽玄の白天城』の扉の前にだ。一瞬で別の場所に立っている自分達の状況に唖然としていると、扉を開いて中に入る一誠から意識を呼び戻され、焦燥に駆られてついていく。そうしていると途中で二人は見慣れない少女達と出会った。部屋の扉を開けて出てきた金髪金眼、銀髪青眼のヒューマンの少女達の他、虎人(ワータイガー)の少女、三人の狐人(ルナール)の少女、二人のアマゾネスの少女、黒髪黒眼のヒューマンの少女等。

 

「こ、子供?」

 

「同棲や同居している家族達だ」

 

「イッセー、誰?」

 

「新しい異邦人だ。これからこいつらを鍛えるかどうか試すからトレーニングに行くところだ」

 

「見に行っていいですか?」

 

「いいぞ」

 

何だか子供達まで見学することになって、何故か別の部屋に入って行ったと思えばまだ幼い子供が持つには早い武器を持ってきた。―――え?

 

「兵藤さん、この子達って一体・・・・・」

 

「【ロキ・ファミリア】を始めとする他派閥に所属している団員達だ。【ファミリア】に入団していない者もいるけどそれでも元冒険者だ」

 

「こ、こんな小っちゃい子供達が冒険者!?あ、危なくないんですか?」

 

「大人も子供もダンジョンに行けば平等に危険性はある。冒険者になるのに、神の眷族になるのに年齢は関係ないぞ」

 

また初めて聞く自分達の知らない情報がさらりと出た。唖然とする二人にさらなる衝撃が突き付けられた。

 

「ついでにこの年でお前らよりは強いからな。駆け出しでも経験はお前らより上だし、第三級や第二級冒険者だし」

 

「「え、えええええええええええええええっ!?」」

 

どうみても小学生のような少女達だ。それでも彼女達より体が成長している自分達より強いと言われ最初は信じられなかった。だが、今のお前らには関係のないことだという様に歩くことをせかされてトレーニングルームへと赴く。地下へつながる階段を降り続けて辿り着いた白い空間の。観戦する場の席があって、そこから眺める少女達の視線を二対一の形で相対する三人が集めていた。

 

「それじゃ、試験を始めるぞ。かかってこい」

 

かかってこい。戦い方は自由だと暗に告げる一誠からは二人が攻撃してくることを待つ姿勢に入った。対してハジメと香織はここで当惑する。対人相手に攻撃は皆無。相手を傷つける行為は元の世界では犯罪。そういう世界から異世界に来て環境が一変し、冒険者同士が衝突すれば相手を傷つける行為は当たり前なこの世界にまだ馴染めていない故に、戸惑いの色を浮かべた。

 

「どうした、何時まで経っても攻撃してこないと相手は倒せないぞ」

 

「あ、あの、でも、僕達が持ってるのは本物の武器ですよ」

 

「それがどうかした。だからどうした。木刀でもモンスターは倒せるが本物の武器だからって相手を攻撃することに躊躇する理由はないだろ」

 

「で、でも兵藤さんは武器が無いのに攻撃なんて」

 

武器を持っていない相手に攻撃なんてできない。なんて甘い考えをするんだな、と思いながら観覧席にいるアリサに乞うた。

 

「アリサ、剣を貸してくれ」

 

「はいっ!」

 

ブンッ!と横凪ぎに放り投げられた剣は駒のように回転しながら一誠の真上まで飛ぶ。手を伸ばして、柄を握り手中に納める剣は炎を燃え盛らせ纏う。

 

「剣が、燃えてるっ!?」

 

「そういう剣だからな。これなら問題ないだろ」

 

「やっぱり、兵藤さんと戦う・・・・・」

 

行くぞ、と香織の声を遮ってアリサの剣を持ったまま近づいていく一誠。

 

「武器を構えろ」

 

「「っ!」」

 

「案山子のように突っ立っていたら弓兵のいい的だぞ。どうぞ好きなだけ当ててくださいみたいにな」

 

そう言った時には、既に二人との距離は目と鼻の先まで詰めていた。それに対して溜め息を吐く一誠は徐に拳を握り締める。

 

「だからそんなお前達にこの言葉を送ろう―――阿呆か」

 

刹那。ハジメと香織の顔を殴った。

 

―――†―――†―――†―――

 

「「・・・・・」」

 

空が朱色に染まりし時刻。顔や体がボロボロなハジメと香織は落ち込むように気が沈黙していた。試験中、一誠は手加減すらしなかった。否、手加減以前に自分達の方が手も足も出なかったのだ。自分達より強いからではなく、自分達がただ相対しただけで人間を傷つけ殺す意識が高まり、それに邪魔されて思うように動けず、終始一誠に呆れ果てられてしまい、殴るだけ殴って蹴るだけ蹴って帰された。全身打撲、顔に青あざや腫れができていて誰から見ても完全敗北してきた冒険者だと見受けられる。今日の敗北を身に染みませるために敢えて治療は施さなかった。なので、必然的に、当然ながらホームに戻ってきた二人の酷いありざまを見て、天之河光輝を筆頭に雫達が目を丸くする。

 

「香織!酷い顔じゃないか!?一体誰が君を傷つけたんだ!」

 

「ちょっと、南雲君も心配してあげなさいよ。でも、本当にどうしたの?強いモンスター相手に負けちゃったの?」

 

「上層にそんな強いモンスターはいないって話じゃないのかよ」

 

二人の傷の手当てに動き出す女子達に囲まれながら事情聴取を受ける二人は、何でもない、気にしないでとはぐらかすもそれぞれ男子と女子、坂上龍太郎や八重樫雫が念入りな追及をしてようやく口を開いた。一誠に戦い方を教えてもらった時にできた傷なのだと。

 

「あの男・・・・・!よくも俺の香織の顔に傷を・・・・・!」

 

「香織はあなたの者じゃないでしょ」

 

「許せない!こうなったらあの男に香織を謝らせて二度と近づかさないよう説得しなくちゃだめだ!」

 

そうだそうだ! 俺達で白崎さんの味わった痛みを思い知らせてやろう! あの野郎許せねぇ!

 

天之河光輝のご立派な宣言に殆ど男子達が呼応して決起する。一部の男子は「戦い方を教えてもらったから」という部分を聞いて、合意の上でできた傷だと冷静に判断できていた。しかし、それ以外の男子達は一誠許すまじ!と怒りの炎を燃え上がらせて武器を手に取る。

 

「ちょっと龍太郎。光輝を力尽くでも止めなさいよ」

 

「そうしたところで収まる奴かよ?」

 

「あーもうっ、人の話を聞かない奴は面倒臭いわね!」

 

一誠がいるであろう『異世界食堂』へ駆け出す集団を目にして雫は追いかける。誰かが止めに行かなければ最悪な事態になり兼ねないのだ。異世界に来ても友人の言動で尻拭いするようなことをしなくちゃならないとは、とどこかの苦労人を彷彿させる。

 

であるからして、『異世界食堂』に雪崩れ込み一誠こと店主を見つけるや否や「香織の痛みを思い知れ!」と顔面にパンチを食らわしたのが天之河光輝達の運の尽きだった。―――盛り上がっていた場が不自然なまでに静まり返ったことを天之河光輝は気づかない。

 

「・・・・・おい、そいつはあいつらから事情を聞いた上で仕事の邪魔をするだけじゃなく攻撃したんだな」

 

「香織に謝れ!そして二度と彼女に近づかないことを約束するなら許してやる!」

 

「人の話を聞いちゃいないのか。言っとくけどよ、あいつらから戦い方を教えてくれって頼まれたから鍛えたに過ぎない。お友達が傷ついたから怒るのはわかるが、これは同意の上だ」

 

「同意の上だったら女の子の、香織の顔に傷つけていい道理じゃないはずだ!」

 

「傷が残るほどの怪我じゃない。問題はないだろ。それにあの二人から甘さを取り除き教える必要があった。冒険者は過酷で残酷で、死と隣り合わせの厳しい職業だとな」

 

話は終わりだ、と踵を返して見せつける背中で語る店主に、まだ納得してない天之河光輝は手を伸ばして店主を振り返らせると「まだ話は終わってない!」と叫ぶ。

 

「一緒に来い、香織の前で謝ってもらう!」

 

「だが断る。今は仕事中だからな。それとも、俺をこの店から強引に連れ出すか?」

 

「お前を一人ぐらい連れ出すことなんて、俺の仲間達と一緒ならできるぞ」

 

ガタッ、ガタッ、ガタッ、ガタッ。

 

「お前、見くびってるな。俺達のことを」

 

「何を言ってる。Lv.は知らないが俺達と同じ下級冒険者だろ」

 

「・・・・・はぁ、周りを見てみろ」

 

怪訝に眉根を寄せる。周りを見ろとは、自分の意識を他に向けさせる言い訳かと思いその手は乗らないと思った天之河光輝の後ろから「お、おい」と不安げなクラスメートの声が耳に届いた。

 

「な、何だよこいつら・・・・・」

 

「なに?」

 

その言葉で始めて天之河光輝は周囲に目を向けた途端に、その瞳は凍結した感じで固まった。『異世界食堂』の客達の大半が立ち上がって天之河光輝達を睨みつけていた。更には女性従業員達も加わって店主の後ろに佇んでいた。

 

「ここにいる客達や従業員も含めて冒険者だったり元冒険者ばかりしかいない。この店の料理を出す長の俺がお前らに強引に連れ出されることになれば、皆の様子を見てわかるよな?」

 

次の行動次第で店主を救わんと彼らは動き出すだろう。それも天之河光輝なぞ一瞬で張り倒すことなど造作もない。それを証明するかのように彼らの中には武器を手にして「おかしな真似をしたら、わかってるだろうな?」と無言の圧力と睨みで語っている。

 

「そんで、そうした瞬間にお前らやここにいない他の連中も二度とこの店に出入りできなくする」

 

『なっ!?』

 

「お前らのことは覚えたから、例え変装してでも店からつまみ出して料理を食べさせない。それでもいいなら、二度と故郷の料理を食べれない代償にして連れ出してもいいぞ。ま、そんなことしたらお前らを罵詈雑言、誹謗中傷の嵐の渦中に立たされるだろうな。せっかくの生き甲斐をお前ら自身の手で握り潰したんだから当然だ」

 

さぁ、どうする。と問いかける店主に天之河光輝を除く男子達は酷く狼狽する。友のためか自分のためか、天之河光輝の行動で運命が決定する瞬間を男子達は緊張の面持ちで見守るしかできない。当の少年は運命の決断を口にした。

 

「そんな脅しが俺に通用するとでも思っているなら大間違いだ!」

 

「ふざけたこと言っているんじゃないわよぉおおおおおっ!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

今の今まで姿を見せなかった少女、八重樫雫が天之河光輝の首に手刀(かなり強め)を叩き込んで床にひれ伏させた。

 

「ごめんなさい!この馬鹿が本っ当にとんでもなくご迷惑をおかけしました!直ぐに連れ帰るからどうかさっきの話は聞かなかったことにしてください!」

 

店主や他の面々に何度も頭を下げて謝罪する彼女に、毒気を抜かされた気分で場の空気は心なしか和らいだ。そして、友人の為に謝り続ける彼女を見て「苦労人か?」と何となく感じ取った。

 

「この馬鹿ッ!あの人は私達にとって恩人でしょう!それを仇で返すなんて何考えてるのよ!危うく私達はこれからずっとあの店で二度と食べれなくなるところだったわ!」

 

「だ、だが雫。香織に傷をつけたあの男を・・・・・!」

 

「香織本人も言ってたでしょう。戦い方を学んだからできた傷だって。あの子も傷つく覚悟で教えを乞うたのだから光輝がでしゃばる必要はないのよ」

 

説教モードの雫。中々納得せず一誠に思うところがあるようで「香織が、香織を、香織に」と口を開くたびに彼女の名を出す天之河光輝に苛立ちが募る。

 

「香織は、恩を仇で返すような男は嫌いだって元の世界で聞いたわよ」

 

「なっ・・・・・」

 

「まさしく今のあなたよ光輝。香織のためだと勝手に思い込んで周りを巻き込んで、更に周囲の人達を迷惑かけさせる今の貴方を香織はどう思うでしょうね。軽蔑?失望?それとも―――嫌悪かもしれないわね」

 

友人をダシに使うようで悪いと思いながらもこれが有効的なのだと自覚する。実際にほら、天之河光輝は真っ青な顔をしている。

 

「そ、そんな香織が俺を・・・・・」

 

「私は知らないからね。香織に嫌われようとあなたが仕出かした事なのだから自業自得よ」

 

ガクリと頭を垂らし肩を落として深く落ち込む天之河光輝。これで少しは大人しくなってくれるとありがたいと思いながら、ガシッと天之河光輝の襟を掴んで「ご迷惑をおかけしました!」と最後に謝罪して他の男子達も引き連れて店を後にしようとした雫は神妙な面持ちで別のことを考えてた。一誠に戦い方を学ぶ。先人から経験を学ぶという発想はこの世界に来て考えていなかった。戦い方を教えてもらえるなら他のことも教えてくれるではないかと予測し、自分もできないかと―――。

 

「あの、こんな状況で何ですが。私にも香織や南雲君のように戦い方を教えてください」

 

「・・・・・ジーザス、お前もか」

 

乞うた。そして約束をもぎ取り心中ガッツポーズ。今度こそ他の男子達も引き連れて店を後にした、妙に足取りが軽い雫を見送るその後。すぐ元の雰囲気に戻って客と従業員達はそれぞれ行動を再開する。

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

約束の日になりハジメと香織も連れて再び『幽玄の白天城』にやってきた雫。初めて訪れるトレーニングルームを見回し目の前に佇む男を見据える目をもとに戻す。連れて来たハジメと香織は観戦席で待機中。

 

「準備はいいか」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

バベルの塔内に買った刀を構える雫に対して、自然体で立つ一誠。武器は勿論拳だが、雫は怪訝になった。得物を持たず戦うつもりなのかと聞かずにはいられなかった。

 

「武器を持たないの?」

 

「それを言う時点で相手の力量を読んでいない証拠だ。俺は素手でも戦える。それともあの二人のように武器を持ってもらわないと戦えないか?」

 

「・・・・・できればそうしてほしいわ」

 

雫も武器を持った戦いを臨む。仕方がないなと手から光る刃を具現して三人に見せびらかす。

 

「これでいいだろ」

 

「それ、どういう原理で・・・・・?」

 

「説明するのがめんどい。とにかく、戦おう」

 

色々と聞きたいことがあるのだが、本来の目的を忘れず、全力で取り組もうとする雫を見守るハジメと香織は息を呑む。一体どんな戦いになるのか想像もつかない。雫のこと知る香織はLv.2の一誠相手にどう戦うのか、勝てるのだろうかと不安な表情で見つめ、友の安否を祈る。クラスメートとして知るハジメは女の顔を容赦なく殴る一誠は雫の顔も殴るだろう、と悟りながら真っ直ぐ二人を視界に入れながら心の中で彼女を応援する。

 

「―――いきますっ!」

 

「ん」

 

地を蹴って駆ける。距離を縮めたと同時に横薙ぎに振るった一撃はあっさり光刃に弾き返され、雫の顔面に拳が突き刺さる。吹っ飛んだ身体は床に転がりながらも体勢を立て直し、直ぐに構え直す。

 

「っ・・・女の子の顔面を躊躇なく殴るなんて、香織の顔もこんな風にしたわけね」

 

「それでもすぐに立ち上がって構えた。大した精神力だ。これは少し期待できそうかな?」

 

「期待に応えるよう、頑張って見せるわよっ」

 

再び斬りかかり切り結び始める。どれだけ振るっても軽くいなされ、軽く弾かれ返され、軽く塞がれ、防がれるたびに顔面を殴られる。今まで培った剣道で磨いた技術と経験、雫の汗と苦労の結晶が十全に発揮して尽く粉砕されていく。嘲笑うかのように八重樫流の技が通用せず殴られる。しかも、相手が一歩も動いていない不動の佇みを崩せないでいるのだった。

 

「しっ!はっ!せいっ!ふっ!」

 

空気を裂く鋭い音と、それに同調した短い呼気。それらの音が響く度に、刀と光刃がぶつかる。攻める雫の猛攻をあしらい防ぐ一誠。時折その動きが剣道に通ずるものがあることを感じ始めたときに距離を置いて乱れた息を整える。

 

「兵藤さんは剣道をしたことがあるのですか?」

 

「骨を齧った程度だ。それ以外は全部実戦で培った。そういうお前は?」

 

「実家は剣術道場だから幼いころからずっと剣術を磨いて来た」

 

「なるほど、道理で動きもスジもいいわけだ」

 

一誠も気になったところがあったようで、その理由を聞いて納得した面持ちから真摯な面持ちとなった。

 

「でも、この世界にいる間はその流派を捨てなきゃだめだな」

 

「なんで、どういうことなの」

 

「相手がただの人間じゃなくて神の眷族、そしてモンスターだからだ。通用しないとはいわないが、この世界で強くなっていけば自ずとお前自身も気付く。元の世界のレベルとこの世界のレベルの差、さらに個々に強さをな。それを痛感するほど思い知らされるのはお前だ」

 

ここで初めて一誠から動きを見せた。攻撃してくる気配を察知して受けの姿勢でいた矢先、雫の刀がパキンと軽い音を立てて折れた。

 

「っ―――!?」

 

「この世界は、こういうことが当たり前のようにできる世界だ」

 

刹那、雫の真後ろに一瞬で移動していた。一拍遅れて後ろにいる男へ振り返った少女の身体に斬撃が走って深い傷を負った。観戦席から「雫ちゃん!」と悲鳴が聞こえてくるが、当人達は相手に意識を向けていて返事をする意識はしなかった。膝を折って自身から流れ出る血に濡れた手を見下ろす雫に話しかける。

 

「どうだ、初めて受けた痛みの感想は」

 

「これが現実・・・・・と言えば満足かしら」

 

「ああ、その通りだ。そしてそれが当たり前な世界から俺は生まれ育ち、俺もこの世界に来た」

 

ポケットから意匠が凝った小瓶を取り出して雫の前に近づき、無造作に口へ突っ込んで飲ませる。目を白黒しながら口に流し込まれる何かを胃の中へ送り、飲み干すと咳き込みながら恨めしそうに一誠を見上げる。

 

「な、何を飲ませたの」

 

万能薬(エリクサー)を改良した回復薬(ポーション)

 

となると、傷を治してくれたのかと体を見れば服が十字の形に切り取られていて、感じていた痛みはいつの間にかなくなっていた。なくなっていたのだが服が血で汚れてるならまだいいが、豊かに育った証の胸の谷間や臍などが切れ目から見えてしまっていてバッチリ一誠は見ていた。

 

「ああ、服直さんとな」

 

羞恥心が爆発する直前に一誠が指を弾くと、雫の服が光った。斬られてた服があっという間に元通りになって雫の目は丸くなった。

 

「またこれ、あなたの力は一体なんなの?」

 

「俺の世界の魔法だ」

 

「私達もそんな魔法を使えるの?」

 

「無理」

 

即答ね。しかし、簡単に使えるものではないだろうと思い。

 

「人間から別の種族にならん限り無理だから」

 

「そんなこと、そんな方法あるの?」

 

「あるぞ?」

 

・・・・・一誠の話を聞いて別の事を興味が抱いた。え、あるの?

 

「ま、お前らには関係のない話だ。それよりも壊した刀を弁償してやるよ」

 

「え、いいわ。勝負だったのだから」

 

「あんなの、別に勝負でも何でもないぞ。ただのじゃれ合いに過ぎないし」

 

軽く弱い奴と言われた気がしてならなかった。

 

「だが、お前みたいな剣道道場の者がいるとなると馬鹿にできないな。中々どうしてだってな」

 

「それって、私のこと認めたってこと?」

 

「俺の実家も長く古い歴史がある道場みたいなものでな。お前の太刀筋と実家の連中と比較したら、お前の方が清々しくて綺麗だった」

 

ふっ、と不敵に笑む男は雫に目を向け真剣味が孕んだ言葉を送った。

 

「そのまま、真っ直ぐ突き進めまだ未熟な若人。そうすれば間違った道に踏み外すこともなく強さの果てにたどり着くだろう」

 

「・・・・・強さの果て」

 

「そうだ。そして、新しい武器を送ってやるよ。今のお前には不相応な第一級の武器だ」

 

そういい出す一誠は、三人を工房へ案内した。ここは鍛冶職人の仕事場だと、教えられたときは感嘆の息を漏らした。真紅の長髪をひとつに結い上げて、上半身裸になった際には香織が顔を赤らめた。炉の前に陣取る風に座り出す一誠は鎚を手にして構えた。

 

「兵藤さん。何をするんですか?」

 

「武器を作る。だから話しかけるなよ。集中ができないからな」

 

それっきり、言葉通りに武器を作り出す一誠の様子を見守ることしかできなかった。真っ直ぐ熱せられた金属に鎚を降り下ろし続けるその集中力に息をすることを忘れてしまいそうになるほど目を奪われ、鍛冶職人の仕事の風景を目の当たりにしている三人はしっかりと目に焼き付ける。

 

「格好いいね・・・・・」

 

「うん・・・・・」

 

「・・・・・」

 

カァン、カァンと鳴る音が工房の同階中に響き、その音に引き寄せられ増える見学者。武器が完成した頃には外は朱色に照らされて地平線に沈みかけようとしていた。刀身を柄に差し込み抜けないよう杭で打ち、紐を結んで仕上げに手を加えると研ぎ澄ませていた意識を吐く息と共に柔らかくして、完成した武器を見定める。刃の切っ先から柄にまで真っ黒な刀に刃の部分から緋色が紋様のように広がっていた。それ以外は無骨で何の変哲もなく、意匠や装飾が凝ったわけでもない。であるが単純(シンプル)にして―――極致。

 

「イッセー、それは・・・・・っ!」

 

戦く椿は目を丸くする。彼女しかその刀の真価を見抜けないことをハジメや香織に雫を始め、アイズ達が分かるはずがなかった。完成した刀を誰もいない空間に向かって、上段の構えを取った時。黒い刀に宇宙のような星屑が浮かび上がり、緋色が太陽のように輝く。さながらそれは月と太陽が同時に具現したようなものだった。まるで『幻想』のように。それを気にすることもなく一誠は鋭く振り下ろした。次の瞬間。炎を纏う黒い無数の刃が刀から放たれ、壁を文字通り斬った後でも切り口に炎が燃え盛り続けた。今まで見たことがない武器の威力を目の当たりにした一同はただただ唖然としていた。今の技を人間相手に向けられたら重傷どころでは済まされない。

 

「(ははっ、『幻想』のスキル。ここまでとはな)」

 

作った当人も内心びっくりしていた。しかし、元の世界の化け物達と比べればまだまだ赤子に等しいよなぁーと苦笑する。

 

「八重樫、今度はお前がやってみろ」

 

「は、はい」

 

素人でも扱えるか振るわせて見せるため、雫に手渡す。一誠に見倣って誰もいない空間へ振るってみたら・・・・・刀身に星屑が消えて無数の刃は発生しなかった。

 

「・・・・・え?」

 

「今、本気でやらなかっただろ。気持ちも真剣じゃなかったな。もう一回やれ」

 

真剣で本気に振り下ろせ、と今さっき振るった自分は軽い気持ちだったと指摘された雫は、気持ちを改めて真剣な気持ちで先ほどの無数に飛ぶ刃を想像して、放った。放たれ―――なかった。

 

「ど、どうして・・・・・?」

 

「んー?椿、振ってくれ」

 

「おう、さっきから触れたくてうずうずしておったところだ」

 

嬉々として黒刀を雫から受け取り思いっきり降ったら、雫出せなかった黒刃が三つ飛び出した。

 

「おおっ!出せたぞ!」

 

「純粋に実力不足なだけか?そんな風に打った覚えはないんだが」

 

打った本人も謎だと首を傾げたものの、これはこれで良しか?と黒刀に名を刻んだ。

 

「銘は『黒炎鳳蝶』。断言させてもらうよ。この刀はこの世界中に存在する武器の中で最強の一振りの一つだとな。だが、その真価を発揮できるかはお前次第だ八重樫」

 

「私がまだ弱いから、兵藤さん達みたいに刀の力を振るえないんですね」

 

「どうやらそのようだな。俺ですら把握してなかったことだが、これはこれでありだな。最初から己の力量を上回る最強の武器を使ったら使い手自身が成長できにくくなるからな」

 

「ふむ、そういう考えをするお主だからこそ振るっても飛ぶ刃が出んかったのでは?」

 

多分そうだろう、と椿から受け取った刀の能力をもう一つ教える。

 

「さっきの技以外にももう一つ技がある名前を付けるなら安直に『影渡り』だ」

 

「『影渡り』ですか?」

 

見てろ、とそう言った瞬間に一誠は自分の影の中に沈み、ハジメ達の影から出たり入ったりと実証をしてみせる。

 

「この刀の所有者のみしか扱えない技でもあるから、八重樫でもこれはできるはずだ。影の中に入るイメージをすれば可能になる」

 

実際に雫にもやらせてみると、飛ぶ斬撃の技が繰り出せなかったのに影の中に沈んで香織の真後ろから現れたことで初めて『影渡り』を体感で来た。

 

「で、できた・・・・・」

 

「イッセー、やはりお主は異常だぞ。あんな剣、魔剣の類から完全に逸脱して完璧に別物の武器であるぞ」

 

「異常の体現者、か。面白いな」

 

雫から返してもらって最後の一仕事として、刀身に一誠の名と雫の名や椿に【ヘファイストス・ファミリア】のブランドの名の【Hфαιστоs】の名前を金字で刻んでもらった。その後即席の衣装が凝った金と黒の鞘を作って刀を納めて手渡す。

 

「これでお前の物だ。大切に扱えよ」

 

「はい、ありがとうございます。あの、もしも壊れたら・・・・・」

 

「それはあり得ない。最硬精製金属(オリハルコン)とヒヒイロカネに魔力の伝達がいいミスリルを素材にして作ったから切れ味が落ちるにしても壊れたり折れたりすることは滅多にない」

 

オリハルコンは聞いたことがある。ヒヒイロカネだってそうだ。ミスリルはわからないが、とても貴重な金属を使ったことは否が応でもわかってしまう。

 

「この世界にオリハルコンやヒヒイロカネがあるの?」

 

「見せてやろうか」

 

素材を保管する倉庫へ入って二つの金属を持ってきた。それをハジメと香織に雫は感嘆の息を漏らしながら見つめる。

 

「ゲームや冒険ものの小説に出てくる実物の金属だ。この説明は前にもしたが、これらの金属の他にも色んな金属や鉱石なんかはダンジョンの壁を掘れば出てくる。ただし、闇雲に掘っても直ぐに掘り当てられないから凄く地味な作業になるぞ」

 

「兵藤さんでも簡単には見つからないんですよね?」

 

話を聞いたら当然であり一誠自身も骨が折れる作業であったはずだと思って聞いたら、返ってきた言葉は―――。

 

「うんや?俺は壁を拳で粉砕するから見つけられるぞ」

 

「「「・・・・・粉砕?」」」

 

後日。どういった場所に壁から金属と鉱石が出てくるのか上層で探してもらった時に、一誠が壁一面を拳で殴って粉砕した際には三人の思考が停止したのは言うまでもなかった。

 

「・・・・・兵藤さん、他の冒険者もそんなことできるんでしょうか」

 

「できるぞ。ただし第一級、Lv.5の冒険者ぐらいにならないとな。それに規模によって家一軒ぐらい素手や蹴りで普通に潰せる」

 

「「(冒険者、恐るべしっ!)」」

 

自分達もそんなことができうる可能性を秘めていることを気づかないハジメ達は慄いたのであった。

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