ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚31

冷酷なまでに心身、骨の髄まで凍らせる冷たい緑玉蒼色(エメラルドブルー)の水の中は水棲のモンスターが優雅に泳いでいた。酔狂な命知らずの侵入者がやってくることはない自分達の水の領域に、間違ってでも入ってきたのあらば容赦なく蹂躙してみせる自信はあった。一度も水の領域に侵されたことは一度もない。これからもそうだろうというモンスター達はその思考すらせず、泳いでいた。

 

『――――』

 

巨大な黒い影。真っ直ぐ水の底へと向かっている。同胞?同族?―――否、この本能から告げる感覚はどれも否定した。あれは、敵だ。近くにいたそのモンスターは遠くにいる同族に呼び掛けをした。モンスターから発する超音波的な声は水中の至るところにまで広がり、警告を受けた他の水棲のモンスター達は敵がいる場所へと急行する。そして、巨大な黒い影を見つけ己の牙や爪で侵入者を葬ろうと襲い掛かった。

 

『・・・・・』

 

三つの鎌首が蠢く。迫り来るモンスターを認識して眼光を妖しく煌めかせた。

 

 

陸上は女戦士(アマゾネス)達四人がいた。集団で襲ってくるモンスターを身が凍てつく冷気の中で戦い続け、浮かぶ汗は忽ち凍りついて肌からこぼれ落ちる。真っ白な雪にモンスターの大量の血で広く赤く染まり灰燼と化して灰が積もっていくほど彼女達は長い間、死闘を繰り広げていることを窺わせた。だが、一方的な地獄絵図を作り上げようと、波のように押し寄せてくる数百のモンスターの群集は絶えなく増え続け終わりが感じられない。女戦士達の体力は無限ではない。いつか無尽蔵に襲ってくる怪物達の波に飲み込まれて地獄絵図の一部と化するだろうとも彼女達は最後まで戦い続ける意思を、得物でモンスターを屠る勢いを衰えさせないことで示した。

 

―――水面に影が揺らめく。

 

ザッパアアアアアアンッ!と緑玉蒼色(エメラルドブルー)の水柱の大瀑布が生じて水中から巨大な何かが飛び出したソレはモンスターの群れに錐揉みしながら落ちた。落ちてきた巨大な何かの全容を把握する四人はまた水面から現れた存在に気付き、警戒して振り返る。

 

「はぁ~冷たかったぁっ!」

 

全身ずぶ濡れの男が全身から水を蒸発しているために起こる煙を発しながら、手の中にあるかなり膨らんだ網を引きずってモンスターの死骸で成り立った地獄絵図を視界に入れながら四人と合流する。

 

「かなり()ってたみたいだな。身体の調子はどうだ」

 

「慣れてきたがこの寒さは厄介だ」

 

「この寒さに耐性がある人間はそうそういないさベルナス」

 

「その網の中は何が入っている?水中に潜ったのは無駄ではなかったようだな」

 

「冷たい思いをしてまで頑張った甲斐はあったよエルネア。それに、あのモンスターも引っ張り上げた」

 

全長30メートルはあるだろう水棲モンスターは、いまでも足掻くようにしたばたと跳ねている。その動きで地面から振動が伝わるのでまだ生きているのだと四人に認識させた。

 

「どうして殺さない」

 

「あのモンスターの生態と詳細をギルドに教えるために生け捕りした。最後は氷漬けにするけど」

 

まだ探索活動は続ける方針の男は四人のアマゾネスを引き連れて別の場所へと足を運びだす。たった五人だけの『深層』60階層。この世界でチートな魔法で誰にも到達されていない階層に転移しての探索を繰り返したある日の境にして、アルガナとバーチェ、エルネアとベルナスのLv.が【ランクアップ】を果たした結果が、身に覚えのないファンファーレの音色と共に『ステータスプレート』に表示された。その報せは瞬く間に『幽玄の白天城』の中で広がった。

 

「『ステータスプレート』は本当に本物ね。【ランクアップ】を自動的に行われてるからまさに主神いらずの道具だわ」

 

「ようやく発揮できてくれて嬉しいもんだ。アルガナ達の頑張りが実らせたようなものだ」

 

軽いプチパーティをして【ランクアップ】を果たした四人を祝う。

 

「それに比べて俺は・・・・・ふ、ふふふ」

 

「まーた軽く落ち込み始めおった」

 

「貴方は前代未聞のスキルを連続で発現してるのだからいいじゃない」

 

「そうだぜイッセー君。うちのアスフィでも持ってないスキルばかりで羨ましいぐらいだよ」

 

呆れながら宥められる。他の面子からもその通りだと慰めて褒めちぎる。回りから色んな言葉を受け立ち直る一誠の気を窺って別の話を変えた。

 

「彼女達がレベル6になったけど、君は【ファミリア】を結成しないのかい?」

 

「冗談で言ってみた程度だからしなくてもいいかなって感じなんだが」

 

フィンから今となってはどうでもよくなってきた話を掘り起こされて、今の自分の気持ちを告げると神々が反応した。

 

「そんならうちの眷族になる話はどうなるんやー」

 

「仮、仮だから」

 

「仮でも貴方一人でオラリオにいる第3級冒険者の子供達よりも稀少(レア)なスキルや発展アビリティを数多く保有してるし」

 

「そのレベルで第1級冒険者、私のオッタルと同等以上の強さだし」

 

「「「「「何よりも異世界の料理を作れるから仮でも大歓迎」」」」」

 

ンー、最後が絶対神々にとって重要性が高いだろ。

 

「じゃあ、今年最後にする恒例のアレ、もうしなくていいんだな?皆の仮の眷族になるんだから」

 

「うーん・・・・・。まだオレのところに来てくれてないからそれはそれで困るかな?」

 

「そうね。私の子供になってくれたら極東で色々としてもらいたいことがあるし」

 

「・・・・・独占して可愛がられない」

 

まだ順番が回ってきてない派閥の主神達の言葉に、もう一度来てほしいと言う気持ちが沸いた主神達も恒例のアレを無しにするのは勿体無い気がしてきたので心の内で続けてもらおうと決めた。

 

「いまはまだ、私の子供よ?」

 

今までの会話の最中、ずっと美の女神の膝の上でショタ狐になってる一誠を可愛がっていた。周囲からの羨望に眼差しがとても心地よく、これでもかと優越感を浸って終始ご満悦であった。

 

「それに私へのプレゼントも楽しみにしているわ」

 

「それについてはもう準備してある。なんなら今欲しいか?」

 

「そうね・・・。くれるなら欲しいけれど、お楽しみは取っておくわ」

 

まだいらないと言いながら狐の耳を触れながら頭を撫でる。銀瞳の視界に映る一誠の魂の景色は今日も美の女神フレイヤを魅了していた。デメテルから好物を受け取り、もきゅもきゅと幸せオーラを発散させて皆を和ま(萌え)させる一誠をできればこのまま独占したいフレイヤの気持ちは、神々だけ限らず城にいる冒険者達も似たような気持ちを抱いていたのは言うまでもない。

 

こんな可愛らしい小動物?がLv.云々関係なくオッタルと対等以上に戦い渡れるとは見た目だけ判断されれば誰も信じてはくれないだろう。それでも事実であることは変わりない。

 

「そういえば、ガネーシャ。前に渡した怪物捕獲玉(モンスターボール)の調子はどうだ?」

 

聞き覚えのない単語を聞いた者は首を傾げ、知っている者は耳を傾ける。ウラノスの神意を協力する者同士しか知らない話しかけられた言葉の深意を察してガネーシャは白い歯を覗かせた。

 

「『中層』のモンスターまで捕まえられるぞ!そして今は怪物祭(モンスターフィリア)に向けて準備中だ!」

 

「んん~?イッセー、もしかしてガネーシャに協力しとるんか?」

 

「手軽にモンスターをGET、捕まえられる道具を作って提供した」

 

何時だったか神会(デナトゥス)で決まった祭りの催しに一誠も関わっていたことをガネーシャとシャクティ以外の面々は初めて知って、「またいつの間に」と的な雰囲気を醸し出す。ヘファイストスが質問した。

 

「ガネーシャが主催する祭りって確か今年中に行われるのよね?」

 

「その通り!子供達を驚かせるために猛特訓中だゾウ!」

 

その本番の準備も着々と進めていて、秋の終わり頃には開催する予定だとも言う【群衆の主】の話を聞き、一誠は思ったことを口にした。

 

「年に一度の祭りだ。『異世界食堂』も稼ぎ時となりそうだから忙しくなりそうだな」

 

「ふふ、頑張ってね?」

 

頭の後ろから主神の声援を受ける。程なくしてプチパーティは終幕してお開きとなった時には、雑魚寝するほど酔い潰れた神々を空いている部屋に放り込ませ、付き添いの団員達も空いている部屋で寝泊まらせることになった。今日は部屋に誰も来ない日。夜這いがされない夜を過ごす一誠は一人、鍛冶をするための工房とは別の作業部屋へ足を運んで夜明け前まで籠った。そこで何を作っていたのか、誰も知らない。

 

 

数日後――――。

 

「ウラノス、リド達から報せが来たよ。イッセーが超長距離転移装置を隠れ家と空の世界の島と設置したそうだ」

 

「彼らは行き来できたか」

 

「ああ、出来てるようだ。リド達は大いに喜んでいるよ。貴方の神意を確約してくれた彼はもう私を超えたと言っても過言ではない」

 

「そうか。・・・・・フェルズ、イッセーに報酬を用意してくれるか」

 

「了解した。直ぐに取り掛かろう」

 

東区画の保管庫(セーフポイント)にあるノームの貸し出し金庫の鍵をギルドから呼び出しを食らって、ローズから三つも受け取った一誠は首を傾げた。

 

「何の鍵だ?」

 

「ノームの貸し出し金庫の鍵よ。今まで知らなかったの?」

 

「名前程度は知ってたけど、金庫何て利用したことがないからわからなかった。でも、なんで俺に金庫の鍵が渡されるんだ?」

 

「私だって知らないわよ。ギルド長から突然これを貴方に渡せって言われただけなんだから」

 

ギルド長、ロイマンからの指示だと?と疑問が浮かんだがローズの話の深意を考えてみれば、ギルドに対して何もしていない自分はロイマンに金銭的な物を要求していない。そしてこの時期(タイミング)で渡されるようなことをしたことは・・・・・。そこまで考えて至った結論は、ロイマンを動かすことができる唯一の存在が見えた時点で察した。

 

「(ウラノスか。別に報酬なんて望んでいなかったが、ありがたくもらい受けるよ)」

 

ギルドを後にして貸し出し金庫がある東区画の保管庫(セーフポイント)に足を運んでみると、いくつもある小さな金庫の三つに、鍵は確かにはまった。687番、688番、689番の隣あった金庫を開けてみれば・・・・・中にぎっしりと詰まっていたのは、億は優に届く赤青緑紫に輝くたくさんの貴石に、金銀の指輪、装飾された一角獣(ユニコーン)の角、そして数冊の魔導書(グリモア)だった。光り輝く小さな宝物庫に、一誠は苦笑する。ウラノスの神意は真に冗談ではないことも示唆しているのだから。金庫からすべての宝を取り出して亜空間に収納すると、再びギルドに足を運びだした。ロイマンから頼まれた件の報告をするために。

 

―――†―――†―――†―――

 

【ロキ・ファミリア】古参の亜人(デミ・ヒューマン)の三人、フィンとリヴェリアにガレスは次の『長期遠征』の準備に取り掛かっていた。アイズ達もその準備に駆り出され、滞りなくどんな大きなものでもたった一つだけ収納できるカードを沢山使って遠征日まで整えていた。

 

「フィン、明日の遠征まで準備は終わる予定だ」

 

「わかった。終わり次第団員の皆に休憩を取らせてくれ」

 

「次はいよいよ『深層』域じゃな。27階層におる『アンフィス・バエナ』も予定通りなら討伐せねばならぬが」

 

一つの懸念を浮上させるガレスだが、どんなモンスターでも倒そうと勇ましく果敢に、凶暴で獰猛な若手の団員達が恐れ戦くはずがないじゃろうなと、一抹の不安すら払拭する味方に心配は無用であると杞憂に終わらせる。

 

「のう、イッセーも誘うつもりか?」

 

「ンー、誘いたいところだけど仮にも【フレイヤ・ファミリア】の一員の彼を神フレイヤは貸してくれることは難しいかもしれないよ?」

 

「本人でなくとも、分身体のイッセーならば可能ではないか」

 

リヴェリアの抜け穴の指摘に口元を小さく微笑を浮かべたフィンは名案だと頷いた。本人と変わりない言動をし、数日間も自立起動できるチートな魔法で構築した分身体ならばフレイヤも否は言わないだろう。

 

「その手でいこう」

 

「儂も賛成じゃ。あやつもそれならば力を貸してくれるじゃろうし、異世界の美味い飯を食えれるわい」

 

「お前は一週間に何度も食べに行っているだろう」

 

「「そう言うリヴェリアは毎日食べているじゃないか」」

 

二人からの突っ込みを貰ってしまい、事実なのでぐうの音も出ない。反応に困らされてしまったハイエルフの彼女に畳みかける言葉が放たれた。

 

「リヴェリア。彼とはどうだい」

 

「なんのことだ」

 

「イッセーと同棲してもう三年だ。親交も深くなっているだろうし、彼なら君を友情以上の憧憬(おもい)を抱かせているんじゃないかと思っているんだ。ロキすら認知していない、君とイッセーの男女の関係とかね」

 

「アイズとアリサは言わずもがな。後から入団してきたラトラ達もそうじゃ。幼子のあ奴らはイッセーに好かれても不思議ではないが、堅物で融通が利かんお主を魅了したのか興味あるわい」

 

ニヤリと興味津々でいやらしく笑うガレスも話に加わって問いただす。二人から一誠との関係を訊き出され、リヴェリアは困ったように奇麗な翡翠の柳眉を眉間と一緒にしわを寄せる。

 

「他派閥同士の恋愛はできないことをわかってるだろ」

 

「あのシャクティが派閥に入ってきたら即結婚するつもりでいる。今結婚できなくても、子供を産めなくても恋愛ぐらいは寛容されるんじゃないかな?」

 

「フィン、その言葉そっくりそのままお主にも当てはまるぞ。他派閥からお前を慕っている女性冒険者が多いのじゃからな」

 

否定できないフィンは苦笑いする。野望の為に周囲から向けられる好意はフィンにとって安易で無碍にできないが、不要な物だ。できる限り断っているがそれでも強くて格好いい、可愛い小人族(パルゥム)の【勇者(ブレイバー)】の応援者(ファン)は中々減らない。

 

「・・・・・そう言えばあやつが自分の【ファミリア】を作った際には、徽章(エンブレム)を貸してくれる【ファミリア】の仮の団員になるようなことを言っておったな?」

 

「それがどうしたんだい?」

 

既に周知の話を今更何か遭るのかと相槌を打ったフィンの碧眼の双眸は、蓄えた髭を触れながら思い至った考えを口から吐いたガレスを見つめた。

 

「イッセーのやつ、【ガネーシャ・ファミリア】の仮の団員となったらシャクティと結婚をするかもしれんのではないか?」

 

「「・・・・・」」

 

―――あり得なくない可能性を浮上した瞬間にフィン達の間に妙な空気が漂い始めた。

 

「・・・・・いや、正式な団員ではない限り婚姻を結ぶことはできないはずだ」

 

「じゃがの、主神と団員達が全員認めてしまうようなことが起きてしまえば正式でなくてもなってしまうのではないのか」

 

「ンー・・・・・少し、そこのところ考えなくてはいけないかもしれないね。そうなってしまえば彼は【ガネーシャ・ファミリア】側に関係と立場が寄ってしまって僕らや他の派閥との立ち位置がズレてしまうかねない」

 

「そういう事なら既に遅いかもしれんぞ。極東から来た三人の狐人(ルナール)は神アマテラス達の眷族。仮とはいえイッセーと婚姻を結んでいる」

 

最初は否定したが最後は肯定しまう自分がとても複雑な気分になった。リヴェリアの言葉通り既に立ち位置が変化している状態が成っている。派閥の首領として少々好ましくないと真剣な眼差しで翡翠の瞳に視線をぶつけた。

 

「彼を中心に【ロキ・ファミリア】を始め複数の派閥が集まって良好な関係となっているが、出来ればイッセーをこちら側に寄ってもらいたいのが本音だね。転生者一人で派閥内のパワーバランスを崩してしまう程だ。それはイッセーもそうだ」

 

「主神なき【ファミリア】の件は儂等にとって好ましいことなのじゃなフィン」

 

「彼自身も己は爆弾であることを自覚している。だとしても、彼の力や能力はとても強力であるからできる限り独占に近い状態に持ち込みたい。きっと他の神々もそう思っているよ」

 

虎視眈々と狙っている派閥は多いとフィンは断言する。であるからしてリヴェリアに願を送った。

 

「幸い、彼を慕う女性は【ロキ・ファミリア】が多い。彼と結婚出来得るならば僕達の有利になるだろうね」

 

「フィン、さっきから私を見て言っているが・・・・・何を言いたい」

 

「君とイッセーが結婚してくれるなら【ロキ・ファミリア】は安泰だと思ってる」

 

勿論、強制ではないよ?と付け加えてもリヴェリアから見てフィンは本気で言っているように見受けられる。困ったものだとは思っても、そういう気もなければ肌を触れさせないし身体も重ねていない。

 

「私のことよりもお前の野望がいつ達成するかが気になるがな。嫁の候補だって未だ見つかっていないのだ。現時点でお前に相応の同族と言えば【アストレア・ファミリア】の小人族(パルゥム)の者だと思っているがどうだ」

 

「・・・・・彼女は何と言うか、押しが強いというか、我欲が強いというか・・・・・」

 

「まだ苦手意識が残っておったのか」

 

その昔、何度かフィンとライラは顔を見合わせたことがあるも、ライラの性格と言動を知ってしまってから自分とは相性が悪いとさりげなく接触を避けてきた。オラリオに存在する女性冒険者の小人族(パルゥム)の中でLv.3は極めて少なく希少と言ってもいいぐらいである。小人族(パルゥム)が冒険者を生業として生きているのは迷宮都市で極僅かでそれこそ上級冒険者は一人握りしかいないのだ。これ以上のないフィンの嫁候補としてリヴェリアとガレスは一目置いていたのだが、当の首領が避けてしまっては何時まで経っても嫁候補は見つからない関の山だ。

 

「勿体ないのぅ。あの小人族(パルゥム)以外の上級女冒険者は儂は知らん」

 

「現時点では彼女が小人族(パルゥム)の女性冒険者の中で頂点に立っている。相手もまんざらではなさそうだったが」

 

「すまない。どうしても彼女以外の同族の女性の冒険者を探してみたいんだ」

 

ライラを嫁候補から外し、他の同族の女性を探す固い意志を曲げないフィンだった。

 

「であれば、イッセーの奴に協力してもらうのはどうじゃ」

 

「彼に?」

 

「異世界のやり方でお主の嫁を探す方法をしてもらうんじゃよ」

 

「そんなやり方、あるのか?」

 

胡乱気にガレスの提案を疑惑したが、本当にあるのか聞いて見ればわかることだと言い返されたフィンとリヴェリアは顔を見合わせて助言を求める意を決意した。腕輪の宝玉を触れて一誠と通信状態にして、繋がったらフィンの嫁候補を探す方法はあるかと尋ねてみた。一誠は逆に尋ねた。

 

『どんな人が好みなんだ?』

 

「僕と同族で資格と、後は最低限の人格さえあることが好ましい」

 

『資格ってのは?』

 

「勇気だよ」

 

『強さは無関係か?』

 

「そうだね。心に強い勇気があるなら」

 

『冒険者限定で?』

 

「うん、その通りだよ」

 

それ以降、考える一誠を六つの眼差しが見守る最中。やはりできないかと思った矢先に一誠は口を開いた。

 

『勇気を示す方法を任せてくれるなら、できるぞ?』

 

「できるのかい?結構難しいことだと思っていたんだけど」

 

『今すぐは無理だけどな。合理的に見つけ出すなら―――運動会が一番だろう?』

 

一誠の言わんことを三人は察した。あの身体能力重視の運動会ならば、どんな競技だって神々や冒険者に認められ臨んで行うだろう。しかもそれを用意するのが異邦人の一誠だ。フィンは期待の眼差しを向けた。

 

「来年の運動会だね。頼まれてくれるかい?」

 

『頼まれよう。人知れず相手を見極めながら探したほうが穏便的だろうしな』

 

「うん、やっぱり君は頼りになれるね。これからもよろしく頼むよ」

 

そこまで考えていた相手に称賛する。こうして話している時、たまに一誠に対してできないことなんて無いんじゃないかと思う時があるが、相談相手として自分は間違っていなかったと嬉しく思った。

 

『だけど、そういう奴なら【アストレア・ファミリア】のライラって小人族(パルゥム)がいるんだけど?』

 

「・・・・・彼女にはこの話を教えないでくれるかな。それと僕のことも聞かないでほしい。切に頼む」

 

やはりフィンの嫁候補にはライラが挙がってしまうのは仕方がなかった。リヴェリアとガレスが思っていたように一誠も似た共感を抱いていた。

 

「ところでお主、今何をしておるんじゃ」

 

『ロイマンに頼まれて創造した陸上用の列車をこれから動かそうとしているところ』

 

「「「(またとんでもない物を作っているのか)」」」

 

後日、オラリオの外に数十メートルの横長の鉄の塊が鎮座していた。馬車の荷台より数倍大きい連結している客席は自由席と予約席と分けられており設備は全席意匠が凝ったものになっている。外見は白亜色の楕円形もとい芋虫を彷彿させる形だ。

 

「随分と大きいな。初めて見るが、これがお前の世界にも存在するのか」

 

驚嘆の息を漏らし、馬も引かず鉄の塊が動く姿は想像できないロイマンは操縦席に足を運ぶ一誠についていく。何やら腕輪に話しかけていたがそんなことよりもロイマンの眼は列車に釘付けでいた。

 

「長さは大体そうだが、商人が持ち運んでくるだろう荷物を大量に収納できるように作ってあるから大きさは違うな。コレの一回りは小さい」

 

「この列車に車輪がないぞ。これで走れるのか」

 

「浮遊して飛ぶように走るものだ。だけど、これから向かう同盟国まで色々と下調べしなくちゃならないからあくまでこの列車は試験的に動かすだけだ。それにロイマンも付き合ってもらうぞ。突然この列車が来たら相手が驚いて警戒するんだからさ。それと列車に乗る際に必要な決まりも考えなくちゃならないし」

 

カンカンと前車両の操縦席に続く階段を踏んで上っていく。扉を開けて二人が中へ入って少しして列車全体に駆動音が聞こえ、地上から1Mも浮くと最初はゆっくり、それから徐々に速度が上がって次には猛スピードでオラリオからかけ離れていく。

 

数年後、オラリオから他国と行き来する鉄の塊の姿が見受けられ、人はそれを『異世界の乗り物』と認識するようになった。

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