ダンジョンで様々な出会いをするのは間違っているだろうか   作:ダーク・シリウス

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冒険譚34

白い息が吐くようになった季節になった最後の年。今年一年を思い返せば様々な出来事があったり、したりした日を気付けばもう昔のごとく過ぎていた。過ぎたことはもう後戻りはできなく、前に向いて進むしかできない中で人々は何を思って生き続けているのだろうか、らしくない考えを浮かべながら武人のような猪人(ボアズ)の獣人が振るう銀塊の大剣に鏡合わせのように大剣を降るって叩きつけた。

 

「何を考えている」

 

「今年過ごした一年を思い返していた」

 

いまこの闘いに不要な意識をするなとばかりにオッタルからの激しい攻撃を察して心中で苦笑いし、仕切り直しと一誠も皆が見ている手前で床を陥没させるぐらい踏み出して、オッタル相手に全力を以て攻撃をする。

 

「あの二人、絶対化け物ニャ」

 

クロエの呟きは誰もが一度思ったことなので同感だと、心の内で肯定する。レプリカのオラリオの戦場フィールドの中で建物が壊れても足場が粉砕しても二人の闘いに邪魔なものはおらず、相手だけを集中的に戦い続けられる。

 

「ねぇアスナ。イッセーって今全力で戦ってるわけ?」

 

ルノアの質問に対して少し考える仕草をする。

 

「私から見てもそうだと思うよ。でも、イッセーって魔法を使ったり天使になること以外、私達が見たことがない色んな異世界の能力を持ってるって話だったから・・・・・」

 

「どんだけ強いんだよ・・・・・」

 

「ニャ~・・・・・イッセーだけは逆らっちゃダメってわけかニャ。いや、ミア母ちゃんも逆らえないけれども」

 

戦慄ものだったようで心なしか畏怖の念を抱いた二人と対極的に。戦闘凶のアルガナ達四人を始め、アイズやアリサにラトラが真剣な眼差しで戦いを見ている。強さに憧れてる人とそうではない人の態度がこうもはっきりと分かってしまうとは・・・・・アスナもどちらかと言えば一誠達寄りだ。

 

 

 

 

それから数時間も戦い続けた二人は、勝負を次回に持ち越しとしてレプリカのオラリオのフィールドを後にした。出迎える面々は労いの声を送り解散する。

 

「今回も凄いとしか言えない戦いだったよ」

 

「お互い対人戦に慣れてるから直ぐに決着はつかないさ」

 

自室に直行して天蓋付きの寝台にダイブする。彼に続けー!とばかりアイズとアリサにラトラもベットに飛び込―――むことは叶わず勉強をするためリヴェリアに連れて行かれるドナドナ感を見せられた。アスナもベットの縁に腰を下ろした。

 

「もう今年で最後だね」

 

「あっという間だよな。今年も中々刺激的な一年間だったし、来年はどんな出来事が起きるのか分かりゃしない」

 

「人生ってそういうものだよ?」

 

「俺は龍だけど」

 

そうだったね、と真紅の髪を触れるアスナ。

 

「キミって誰かに甘えたりしないの?」

 

「何を唐突に?」

 

「だって、皆に頼られて期待に応えようと頑張っているばかりしか見たことがないから。逆に言うと私達に頼ってくれているのってあんまりないし。ううん、それは私達の力不足だからできないかもしれないけどさ」

 

そう言われると全否定はできない部分があり肯定でもある。

 

「んー、店のことに関しては頼ってる方だけど。基本、俺の一日の行動って店で働いているかダンジョンに籠ってるかだろう?」

 

「その合間にアイズちゃん達と模擬戦したり物を作ったりしてるよね」

 

「そ、だから皆を頼るのって実際殆どないって言うかできないわけだ」

 

頼る機会がないだけで頼りにならないわけではない、そう述べる一誠にジッと見つめるアスナ。物理的に頼れないならば精神面的な甘えはできないのかと考えた。

 

「誰かに甘えることも大事だよ?」

 

「俺的に甘えているつもりだが、アスナにとって甘え方ってどうな感じだ」

 

「んと・・・・・じゃあ、失礼するね?」

 

寝転がってる一誠の頭を持ち上げて、その下に自分の太股を差し込んで下ろすアスナは膝枕を実践した。上から顔を覗き込むアスナの慈愛に満ちた瞳と合い、これが彼女の甘え方なのか?と疑問符を浮かべてれば頬に両手で包み込むように触れられた。

 

「・・・・・イッセー、キミって不思議な人だよね」

 

「?」

 

「毎日一緒にいるとキミを中心に楽しい日々が過ごせれる。イッセーが凄いから皆も影響されて好きになっていく。同じ男の子なのにどうして違うんだろうね」

 

誰かと比較するアスナに否定の言葉を送る。

 

「同じだよ」

 

「え?」

 

「一緒にいて楽しく過ごせれて好きになっていくのは男も女も関係ない。人柄がそうさせるんだ」

 

一誠からも手を伸ばし、アスナの頬を触れて包み込む風に添える。

 

「俺だってアスナの人柄に触れて好きになってる」

 

当然俺だけじゃないと付け加える。皆が皆、相手の人柄を知って好きになっていく。でも、人の人柄によって好みは違うかもしれないから好きになるかはどうか本人次第なのだ。肝心なのは相手と己を知ってもらうことが前提であろう。一誠の発言に軽く目を丸くしたアスナだったが、小さく笑って言い返した。

 

「ありがとう。私もイッセーの人柄に触れてから好きになってるよ」

 

「そっか・・・・・なら、この際はっきりさせるべきだろうな」

 

上半身を起こしながらアスナと向き合い真っ直ぐ彼女の瞳を見つめる。

 

「イザナミのおかげでアスナに手を出してしまってからお互い妙な立ち位置の関係でいる。だけどこのままじゃないけないから筋を通すためにも言わせてくれ。―――アスナ、俺と結婚を前提に付き合ってくれないか」

 

「―――――」

 

まさかの告白に驚きの色を浮かべる。一誠は傷心を抱いているアスナとは肉体関係になるつもりはなかったのに手を出してしまった罪悪感と自己嫌悪をずっと抱いていた。アスナはキリト達の目の前で一誠のことを恋人宣言をしてしまった手前、あれから随分と時が過ぎたので今更そうではないと言い辛い思いをしていた。故に、どちらも最初はそうするつもりはなかったのに、そういう結果になってからというもの曖昧な関係を構築してしまってズルズルと今日まで生活を過ごしていた。だから、言葉通り筋を通すために一誠はアスナに告白した。

 

「・・・・・」

 

真正面から告白を受けることになってしまったアスナと言うと、一誠の言うことは一理あると思っている。関係を一度ハッキリしなければならないとダメだと思ったことはある。だからこそ口を開く。

 

「結婚を前提にって、イッセーは私と結婚したいの?元の世界にいる女の人達やアイズちゃん達がいるのに」

 

「今は他の皆のことよりもアスナだけを想っている」

 

不覚にも胸がドキリと高鳴ってしまった。

 

「ユウキと直接会いたいアスナの憧憬を叶える。だけどそれからアスナは元の世界に帰るのか、このオラリオに留まるのか、俺の世界に住むかはまだ知らないし聞いてもいない。だからもしも元の世界に強い想いや念を抱いて帰るつもりでいるなら諦めるけど、この世界と俺の世界に生きるというなら俺はアスナとこの曖昧な関係じゃなくて、正式に交際して結婚したいと思っている」

 

自分の想いを打ち明けてからアスナの答えを待つ一誠が纏う静寂な雰囲気を感じながら、アスナも意見を言う。

 

「私のどこを好きになったの?」

 

「前にも言ったが、俺の全てを知った上で好きになってくれる女が好きだ。今のアスナは俺自身がどういう存在なのか知ってて慕ってくれている。だから好きになった」

 

「それって全員がそうだったらイッセーはその人達全員に結婚をしたいってことだよね?」

 

「そうなるかもしれない。だけど、そうはならないとも言える。こんな俺でも残虐な一面もあるからその瞬間を目の当たりにしたら恐れられるかもしれないから」

 

ドラゴン故に暴力的な事もあると言う。

 

「―――実際、そんなところを家族に見られたら許せない相手の為に泣かれてしまったし」

 

一体どうしたらそんなことになるのかと思わずにはいられなかったが、無闇に暴力を振るわない一誠は事情があってそうして家族に止められたのだろうとアスナは思った。

 

「それにこの世界に住む人間が簡単にモンスターを受け入れるとは思っていない。正体を明かしたらフィン達に警戒されたし、アイズは裏切り者を見る目で非難されたほどだ。『モンスターが私の気持ちを知らないくせに!』ってな」

 

「アイズちゃんが・・・・・」

 

一誠にべったりな金髪金眼の少女が過去にそんなこと言っていたとは信じられなかった。

 

「あの頃のアイズは強さを求めるあまり、自分の身体を顧みないでいた。骨と皮しかない生きた殺戮機械人形のようにモンスターを蹂躙していたようだったからな」

 

「直接傍にいなかったの?」

 

「その頃の俺はこの世界を調べまわっていたからな。この城もその際に用意してた」

 

しかし、それから腹を割って勝負しようとダンジョンに向かったら闇派閥(イルヴィス)に所属する男神の邪魔が入り、勝負は有耶無耶となってしまったが和解できたともアスナに教えた。

 

「その時から俺を慕ってくれるようになった。だから俺の正体を知って慕ってくれる女は全員と限らないんだよ」

 

「じゃあ、もう一人のキミを知ってるあの子達ってどうやって仲良くなったのかな」

 

「知るか」

 

一刀両断の如く間も置かず言い返した。しかも真顔でだ。これにはアスナも気になるところがあり訊ねた。

 

「・・・・・嫌いじゃ、ないんだよね?」

 

「仕方がないとはいえ、俺を俺として見てくれない奴等なんて知るか」

 

「えっと、どういうことなの?」

 

「そのままの意味だ」と言って溜息を吐く一誠は、告白をするような雰囲気ではなくなったと感じて残念さを醸し出す。

 

「・・・・・やっぱり、さっきの告白は聞かなかったことにしてくれ」

 

「え・・・・・?」

 

「虫のいい話だったと思うようになった。数年間一緒に住んで俺のことを受け入れてくれたから嬉しくて思い上がってた気がしたからだ。その程度で軽く受け入れるわけがないからな」

 

突然、急に告白の話を止めて打ち切った相手に呆然と見てしまう。なんでそんなことを言い出すのか一誠の心情を計り知れない。自分が軽率な事を言ったから拗ねたのか?それとも別の理由で?もしかして言ったとおりに思ったからなのか?

 

「・・・・・」

 

だが、例えそうだとしても一度告白しておいて、やっぱりいいやって手の平を返す子供じみた発言にはアスナも思うところがある。

 

「筋を通したかったんじゃないの?なのに急に拗ねて告白をなかったことにするなんて、意外とイッセーって子供っぽいところがあったんだね」

 

「・・・・・拗ねたくなるもんさ。アスナはされたことはないだろ。自分自身を見てくれていると思っていたら実際違ってて、相手は他の何かと重ねて見ていることを。そうされた方はとても寂しいことなんだぜ」

 

―――ヒーロー組の異邦人達のことを差して言っている。確かにそうだった。彼等彼女等はこの世界にいる一誠ではなく、もう一人の一誠と同じだからという認識で接していた。知りもしない同じ相手として認知されながら笑顔で話しかけられる側は困惑するのは当たり前なのだ。その困惑はやがて相手が自分を見てくれない虚無と空虚を感じて寂しさを覚える。アスナは目の前の男が嫌で拗ねているのだと知って自分達はそうじゃないと気持ちの念を言葉に乗せて伝える。

 

「でも、私達はキミという証だけは知っているよ。もう一人のキミじゃなくて、この世界にいる兵藤一誠っていう素敵な男の人を」

 

「・・・・・ああ、わかってるよ。心底からそれは嬉しく思ってる」

 

「―――だったら」

 

パシッと一誠の頬を触れて自分の目と顔を覗き込ませる。他の何も視界に映らせないようにしながら言う。

 

「最後まで口にしたことを貫き通しなさい。私が知っているイッセーは約束を違わず守る人。そんなイッセーをずっと見てきて、傍にいた私に告白して何がダメなの?私の返事を聞く前になかったことにするなんて男らしくないわ。まるで嫌われたり断られるのが怖がっているみたいだよ」

 

「・・・・・」

 

眼が逸らせれない状態で再度の告白を改めて催促するアスナとされる一誠。互い喋らず無言の静寂が場を支配する最中で亜空間からあるものを取り出したことでアスナの意識を変えさせた。

 

「花・・・・・?」

 

「俺の元の世界、冥界にだけ咲いている珍しい花だ。水と季節や気温で咲く花じゃなくてな。この花は少々特殊で深い愛情を持つ者でないと咲かない、咲けば永遠の愛が結ばれる曰く付きの花なんだ」

 

「・・・・・深い愛情で咲く花・・・・・」

 

まだ蕾のままの二輪の花を、それを一緒に鉢の部分を持って互いの顔を見合う。絡み合う視線のまま見つめ合う中で一誠はもう一度アスナに告白した。

 

「アスナ、これからもずっと俺の傍にいてほしい。この世界でも違う世界でも、どこまでもずっと一緒に」

 

「はい・・・・・こんな私でよければ喜んで。私もずっとキミの傍に生きていたい。」

 

好き、大好き、愛しているという言葉は不要とばかり愛の言葉よりも永遠に添い合う言葉を選んだ後。どちらからでもなく自分の意志で顔を近づけ合い、唇を重ね―――蕾の花を咲かせ、花の祝福を得た二人。それに気付いたときは二人は顔を離した直後だった。

 

「わっ、咲いたよイッセー!」

 

「愛の告白したことで花が俺達の想い=愛に呼応して咲いたんだよ。言っただろ?深い愛情で咲く花だって」

 

「・・・・・素敵、ロマンチックな花がキミの世界にあるなんて。この世界にもないかな?」

 

「時間が空いたら探してみよう。もしかしたらダンジョンの中にあるかもしれないしな」

 

花のように奇麗で、太陽のように明るく笑う彼女に釣られて微笑む。花をテーブルの方へ魔法で移動させた後、アスナを抱きしめてベッドに寝転がる。

 

「これで本当の意味でアスナは俺と付き合うことになったな」

 

「うん、あの時は変な誤解をさせちゃうことを言っちゃってごめんね?」

 

「いいさ、嘘から真になったんだ。これから愛し合えばいい」

 

「うん・・・・・好き、大好きだよイッセー」

 

そう言い合いながらキスをして、深く熱く水音を鳴らすぐらい舌を絡め合う。アスナの腕が一誠の背中に回すと一誠も抱きしめ返しながら身体を動かし、アスナの両足の間に差し込んでは自分の上に乗せる。その状態で鼻で呼吸しつつディープキスを数分も続けた。そして二人が止めると口と口に愛液の糸が出来上がって卑猥さを醸し出した。

 

「・・・・・アスナ、今夜からは遠慮せずに愛すからな。覚悟してくれ」

 

「うん・・・私をたくさん愛してね。たとえイッセーの子供ができても産むから」

 

「・・・・・対抗心?」

 

「ふふ、さぁ、どうなんだろうね?・・・・・ん」

 

意味深に微笑むアスナが今度は自分から一誠に口付けして愛を育むのだった。

 

 

―――†―――†―――†―――

 

 

正式にアスナと交際を結んだ関係以外生活に変化はないまま迎えた一誠の五度目の改宗(コンバージョン)。ロキ、ヘファイストス、ガネーシャ、フレイヤの眷族となり次はどこの【ファミリア】になるか神々と冒険者達は関心を持って休日の日の『異世界食堂』に集い、振舞われる酒や料理を飲食しながら時を待つ。

 

「今年こそは・・・・・」

 

「ガネーシャの眷族再び・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「色ボケ女神の一投が掛かっているなんて癪やけど・・・・・」

 

尋常じゃない気迫を潜める主神達の気持ちはわからないわけがない眷族達も似た気持ちを抱きながら待っていた時。都度四度もした主神に対する贈り物をする一誠がフレイヤに近づいた。

 

「一年間、世話になった・・・・・感じはしないが楽しくはあった。オッタルとの勝負はこれからもしたいがな。これからも城に居座るのか?」

 

「そうするつもりよ?ヘファイストスやアストレアが住んでいるのに私だけダメなんてないわよね?」

 

「飽きるまで住むつもりなら何も言わないよ。さて、これがフレイヤ用の魔法の絨毯だ」

 

バッと広げる絨毯の中心は始終が施された【フレイヤ・ファミリア】の徽章(エンブレム)。絨毯は彼女の銀髪と同じ銀糸で編まれていて意匠もかなり凝っていた。大きさはガネーシャの絨毯よりもさらに数倍大きいものであった。

 

「ふふ、ありがとう。大切に使わせてもらうわね?」

 

「使う機会があるといいんだがな。そんでこれは俺個人の贈り物だ」

 

展開した魔方陣の光から一本の宝石と見紛う瓶を取り出した。その瞬間、それを見たことがあるアスナは目を張った。あれは大切なお酒のはずじゃと思っていると、フレイヤの銀瞳も丸くして一誠の手の中にある物を注視した。

 

「割れやすいから丁重にな」

 

「イッセー・・・・・これは何なの?」

 

「ダイヤモンドで濾過した世界一の酒、ウォッカだ。俺の世界で値段をつけると一億と二千万が付く」

 

ボトルには大量のダイヤが装飾されているが、中にも大量のダイヤの宝石が敷き詰められていて酒を好む愛好家の者からすればこの酒は普通の酒ではないと察知するだろう。

 

「しかもそれ、元の世界にいるソーマに両親が頼んで作ってもらったから値段は付けれないほど希少の酒だ。大切に飲んでくれよ」

 

「・・・・・ええ、そうさせてもらうわ」

 

フレイヤの予想を超越した贈り物にそれしか言えずにいた。値段が付けれない異世界の男神ソーマが作った酒を贈られるとは想像できなかった。ましてやボトル自体も宝石なのだから他の酒と異なる未知の酒、ウォッカはどんな味なのだろうと激しく興味を駆り立たされた。

 

「イ、イッセー!うちにもアレを飲みたいんやけど!?」

 

「フレイヤに土下座する勢いで懇願すれば?あ、フレイヤ。飲むなら部屋でしてくれ。ロキが五月蠅いから」

 

「ズルいー!うちにも異世界のソーマの酒欲しいぃ~!」

 

数秒後―――駄々をこねる見苦しい女神は強制的かつ物理的に黙らせた。頭から大きなたんこぶを作って気を失った彼女をそうさせた男を見て一同は押し黙った。

 

「他に欲しい奴、いるなら手を挙げてくれ」

 

―――容赦なく神に手を上げる男を目の当たりにして己の欲を晒す(バカ)はいない。静まり返って静寂な雰囲気の場にした張本人は、誰もいないことを確認して事を進める。

 

「それじゃ毎度恒例の改宗(コンバージョン)ダーツを始めようか」

 

「「「「「待ってましたぁ!」」」」」

 

ワッと盛り上がる神々達。各【ファミリア】の名が書かれたルーレット台が用意されるとフレイヤは一M距離を取って立つ。一誠からダーツの矢を受け取り周囲から向けられる視線を感じながら構える。

 

「始める前に一つ。今回からルーレットの中心には無所属(フリー)眷族ってのを加えた。ここに当たったら俺は主神なき【ファミリア】を結成するつもりだからよろしくな」

 

大きくもなく小さくもなく「無」という共通語(コイネー)で書かれた的が加えられていることを認知した。事前に伝えられた内容に誰もが異論を唱えず沈黙で是と了承したのだった。

 

「準備はいいかな?」

 

「構わないわ」

 

「ん、では、回すぞ。それ!」

 

思いっきり回るルーレット。どこの【ファミリア】の名前なのか見つけるのは困難な時にフレイヤはまだ投げない。回るルーレットがゆっくりと遅くなった頃にようやく美の女神は腕を動かしてダーツの矢を一投した。

 

刺さった。

 

その瞬間を見届けた神々と冒険者。中には立ち上がって結果を見んがためにガン見する神もいれば、手に汗握る思いで冷静の姿勢でルーレットへ視線を向ける。一誠の手がルーレットに触れて止めることで各【ファミリア】の名前が皆の視界に入り、ダーツの矢がどこに刺さったのかようやく視認できる―――。

 

「次の【ファミリア】は・・・・・ん?・・・・・あれま」

 

「あら」

 

直ぐ確認できた一誠とフレイヤが意外そうに声を漏らした理由は。中心ギリギリのところでダーツの矢が刺さってる。もう少しずれていれば【ディオニュソス・ファミリア】の的に刺さっていただろうが結果は―――。

 

無所属(フリー)の【ファミリア】を結成することが決まっちまったな」

 

「この場合はおめでとう、と言えばいいのかしら?」

 

「んー称賛されるようなことでもないし、多分言わなくてもいいと思う」

 

という事でと場にいる神々に乞うた一誠。

 

「フレイヤが投げたダーツの矢が見ての通り主神無き無所属(フリー)の【ファミリア】を結成することになった。でもギルドからの条件で、結成するためには後見人として皆から徽章(エンブレム)を貸してもらわなきゃいけない。故に貸してほしいけど、貸してくれる【ファミリア】には仮の団員として【ファミリア】に貢献することを約束するよ」

 

「という事は、来年からイッセー君はもう他の【ファミリア】に所属することはしなくなるんだね?残念だよー」

 

「まぁ、期限付きよりは仮の眷族だから協力は惜しまないよ。手に負えないことやふざけたこと以外は」

 

―――後日。各派閥から徽章(エンブレム)を貸してもらったことをギルドに報告し、指定された条件、税金一〇〇万ヴァリスと団員の数も満たしたことも伝えるとギルドは主神無き派閥の結成を公認―――ただし追及された。

 

「貴様、よりにもよって何だこの名簿に乗っている者達は!」

 

ダン!とロイマンは提出された団員達の名簿が記された羊皮紙を叩く。それは自分を含め十人の団員を集めた際に一誠自ら記入した者達の名前だ。

 

団長 イッセー Lv.3

 

種族 女戦士(アマゾネス)アルガナ・カリフ Lv.6

 

種族 女戦士(アマゾネス)バーチェ・カリフ Lv.6

 

種族 女戦士(アマゾネス)ベルナス・ベーゼ Lv.6

 

種族 女戦士(アマゾネス)エルネア・ベーゼ Lv.6

 

種族 ヒューマン アスナ・ユウキ Lv.2

 

種族 ヒューマン カサンドラ・イリオン Lv.1

 

種族 ヒューマン ダフネ・ラウロス

 

「悪いな、お前達にも頭数合わせに冒険者登録してもらって」

 

「もとより私はこっちの方が性分だ。給仕など私には似合わない」

 

「いやいや、お前も人気者だからな?これからもよろしく頼むよ」

 

 

種族 ヒューマン フレア・フローラ Lv.5

 

種族 竜人族(ドラゴニュート) キリュー・ドラゴニア Lv.1

 

種族 妖精種(シルキー) シルヴィ・ホワイト Lv.1

 

ヒューマンとモンスターのオーガの混血種―――もともと名前がなかった彼女にフレア・フローラという名を与えた。竜人族(ドラゴニュート)の彼女、キリュー・ドラゴニアも協力してもらい頭数に加え、シルヴィ・ホワイトも加えるがそこで丁度頭打ちとなった。これで結成できると踏んでいたのだが、ロイマンから身に覚えのない第一級冒険者の連なった名前に異議を申し立てた。

 

「一体いつの間にギルドが知らない第一級の者達が五人も抱えておったのだ!どこにも所属させず!」

 

「俺の言動は全て公認と黙認の手筈だったはずだが?」

 

事実を突き付けられぐうの音も出ないロイマンを黙らせ、用件は終わったとギルドを後にする。帰り道、アリーゼとリューと大通りで鉢合わせし、建物の屋根の上に腰を下ろして空を見上げながら結果を教えた。

 

「そっか。おめでとうと言うね。これからも他に入ってくれる人っているの?」

 

「探してはみるが、簡単に見つかりはしないだろ。俺の知り合いの大体が【ファミリア】に入ってるんだからな」

 

赤髪のヒューマンの少女とエルフの少女もその枠だと言外の指摘を受け、二人も誰かいないかと悩む。しかし、いくら悩んだところで誰一人思い当たる人物はいなかった。

 

「私達が入ってあげましょうか?」

 

「アストレアに申し訳ないって。二人は【ファミリア】の主力を担ってるんだから戦力が落ちるぞ」

 

「それは確かに・・・・・うーん」

 

「それに―――俺の【ファミリア】に入ったら遠慮なく身体を重ねちゃうかもしれないぜ?」

 

意味深に笑う一誠の一言で二人の顔は耳まであっという間に赤く染まって羞恥心を呼び起こされた。

 

「あ、えっと、そ、それは・・・・・」

 

「個人的に一夜限りの関係はしたくないからな。肉体関係になってしまった以上は二人も愛したいよ」

 

「あ、愛す・・・・・!」

 

うわー、反応が初々しぃなーと二人にトドメの魔法を放った。

 

「今夜は誰も来ない日だからさ。二人とも、部屋に来てくれ。待ってるよ」

 

「「~~~~っ!!!(ボンッ!)」」

 

居ても立ってもいられないほど羞恥が爆発して、一誠を残して屋根から飛び降りどこかへと二人が行くのを一誠は邪な笑い方をしながら見送った。本当に来てくれるならば大歓迎するが、来ないならそれでもいい。一誠からの夜のお誘いは強制ではないからだ。

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