Fate/ wild order   作:黒城優輝

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冬木に行く前にプロローグ。


エリザベス「もう一回世界を救ってくださいませ」湊「酷い無茶振りを見た」

「もう一度世界を救ってくださいませ」

 

「はい?」

 

なぜ平和な我が家のダイニングでいきなりこんな無理難題を突きつけられているんだろうか?

ていうかエリザベスさんいつ来たの?

僕は心を落ち着けるために紅茶を口に運ぶ。

よし落ち着いた。

まずは、なぜこうなったのか現実逃避…ではなく、現状を整理するためにも順に思い出していこうか。

 

 

ホワンホワンホワーン…

 

 

 

 

 

 

…僕の名前は有里 湊。

享年17歳のペルソナ使い。

紆余曲折あって死の概念ことニュクスを自分の命を使って封印。紆余曲折のとこは蛇足になるので省略。

本当は幾ばくかの寿命を使えば事は済んだんだけど、ある意味で僕の兄弟でもあるニュクスの端末、Deathこと望月 綾時君がひとりぼっちになってしまうので一緒に封印されることにした。

…というのは建前で最大9股という自分でもびっくりな女性関係を無理矢理清算するために封印の中に逃げたというのが真実。

…綾時には絶対に知られてはいけない。

 

その綾時はというと、となりのリビングでウノをしてる。ふざけんな。助けろ。

 

そんなこんなで始まった封印の中での生活。

はじめのうちは大変だった。何もない真っ新な空間に野郎と2人きりでしかも上にはニュクスが浮いてる。そんなでも修羅場よりはマシだけどね!

とにかく、そのままでは生活がままならないのでユニバース的な奇跡を使って家具やらご飯やらを作っていく。

大いなる封印は言ってしまえば僕の心そのものなので想像したものは割と簡単に出すことが出来た。

が、所詮想像の創造。家具は記憶している構造があやふやなため色々不具合があったり、出した食事の味が普段食べているものほど記憶が曖昧で微妙。まともに再現出来たのは修学旅行先の旅館にあった変わり種ジュースくらいだった…

しかも創造しようと集中しているときに限ってドアバンされる。エレボスさんマジでウザい。

 

そんな試行錯誤の毎日だが、ある日パタリとドアバンの音が止んだ。そのかわり激しい戦闘音が聞こえる。

ドアスコープから外を見てみるとかつての仲間達がエレボスと戦っていた。でもなんか知らない顔も増えてるし、アイギスのペルソナルシファーだし思わず『何ぞコレェ?』と言ってしまうのも仕方の無いことだろう。

しばらくして戦闘も特別課外活動部の勝利で終わり、なんか扉にオシャレ&気持ち程度の自己顕示欲で付けた僕の像を見てなんか泣いちゃってた。

すっごい罪悪感。自己犠牲とかじゃないから!それシャレオツなインテリア的なやつだから!マジで泣かないで!修羅場が怖くて逃げただけなんです!

と、1人で銀魂的モノローグを頭の中で垂れ流していたらなんか決意表明して外に向かっていった。…ていうかみんなどうやってここに来たんだろう?

 

それからしばらく…さすがに野郎2人では潤いが無いということで、ペルソナのアリスとジャックフロストを常に呼び出しておくことにした。

アリスちゃんや、ヒーホー君にその黒胡椒のジュースを飲ませるのはやめてあげなさい。

 

アリスがヒーホー君をからかうのを優しく見守るのが日課になりつつある怠惰な日々。

綾時から、唐突に擬人化したニュクスを『僕のママンだよ!』なんで紹介されたりもしたが至って平凡な日常の中、奴は現れた。

 

奴の名はアンリ。エレボスの親戚とのたまう真っ黒黒助である。

奴はこの封印内を見て一言、『何これ?よくこんなんで暮らせんな?』ふざけんな。これでも頑張ったんだよ!

だが、奴の次の一言で、封印内での生活は革新を迎える。

『聖杯でもありゃもうちっとマシになんだけどなぁ?え?なに?持ってない?そりゃ残念!俺ので良ければ貸してやろうか?ただし中身は真っ黒な泥入りだけどな!』

やだ僕聖杯持ってる。

 

聖杯ルシファー。

今までなぜか剣として使ってたこれ。ユニバースと組み合わせて何とかならないかな?

 

はい、なんとかなっちゃいました。とりあえず家具家電付き一軒家を作ったよ。

 

アンリは『おいこら!救世主様はなんでもありかよ!つっまんねー…』と言いながらソファーでグデーとしてた。ていうかマジでお前誰なんだよ。どっから来たんだよ。てか帰れよ。

 

ちなみにそんなアンリは今リビングでウノをしてる。アリスと共謀してヒーホー君にリバースとスキップのフルボッコだ。やめてあげて!綾時も苦笑いしてないで助けてあげて!

 

 

「あなた?紅茶のおかわりはいかがですか?」

 

ふと、同居人の少女から声をかけられ思考の海から現実へと引き戻される。

 

彼女はマユ。アンリが創り出した妄執の少女。僕が関係を持っていた女性の想いの集合体。

なにが『1人にまとまれば迷わなくて済むだろ?(ゲス顔)』だよ!彼女の目を見てみろよ!光が無いよ!エリザベスさんに向ける視線が死線になってるよ!今まで気づかなかったけどめっちゃ嫉妬深いねこの子!

 

「うん、頂くよ」

 

とりあえず平静を装って紅茶を入れてもらう。てか、あなたって呼び方やめてって言ったんだけどなぁ…紅茶のおかわりもエリザベスさんには聞かないし…

エリザベスさんも心なしかピリピリし始めたよ。

 

「つまりどういうこと?詳しい話を聞かせてもらってもいい?」

 

ここで喧嘩になるのはよろしくない。話の続きを促すことで、エリザベスの注意をマユから僕へと変える。

 

「そうですね…実は…わたくしにも理解出来ない現象が地球上にて発生したのです。」

 

「現象?」

 

いまいち要領を得ない。一体地上で何があったのだろうか?

 

「そう、あれはわたくしがパリ市内を散策していた時のこと」

 

「やだこの人職務放棄して旅行とシャレこんでる」

 

「問題ありません。しかと''ゆうきゅうとどけ''なるものを主の目の届く範囲に置いておきましたので…話が逸れましたね」

 

それ事後承諾…まあいいや。これ以上話の腰を折るのもあれだし…イゴールさん頑張れ!

 

「すみません。続きをどうぞ」

 

「はい、とにかくパリは、わたくしがヴィウ・ラ・フランス!と心の中で思わず言ってしまうくらい素晴らしい所でしたが…」

 

「でしたが?」

 

「わたくしがヴィウ・ラ・フランス!と心の中で唱えた瞬間、激しい光により視界が真っ白に染まり、わたくし思わず目を閉じてしまいました」

 

「………」

 

「そして再び目を開けた時、わたくしの目に映った景色は…」

 

「………」

 

「焼けた世界。何もかもが焼け落ち、人も文明も跡形も無くなっておりました」

 

「はぁ⁉︎まさかエリザベスさん何かやらかしたんですか⁉︎」

 

「いえ、わたくしではございません。そしてわたくし、幸か不幸か…間違いなく不幸なのでしょうが…とにかく周囲に人の気配も無いので、力を使い辺りを捜索してみたのですが…」

 

「…何も無かった?」

 

「イクザクトリィでございます。パリ市内、フランス、ヨーロッパはおろか、世界中、地上地下海山問わず、どこを見ても火の海でございました…ただ…」

 

「ただ?」

 

「別の時間。過去を遡ること西暦2004年」

 

「意外と最近だね」

 

「はい。その時間に、僅か2人ではございますが人の存在を探知いたしました。恐らくは訳知り顔でございます」

 

「つまりそこに行って話を聞いてこいと」

 

「いえ、正確には現地の方と協力して原因の究明とその解決をお願いいたします」

 

「うわぁ…」

 

すっごいハード。向かう先は世紀末とかそれなんて北斗?

 

「ま、仕方ないか。じゃあ準備してくるよ」

 

「ッ‼︎まさか二つ返事で引き受けていただけるとは!よろしければ理由をお聞かせいただいても?」

 

「ぶっちゃけ人類が滅ぼうがどうでもいいけど…かつての仲間や友人の未来が奪われるのは嫌だってだけ」

 

「左様でございますか…世界でなく友のため。誠貴方様らしい選択でございます」

 

「じゃあ僕は着替えてくるから…綾時は付いて来れるのか?」

 

「え?僕がどうしたんだい?」

 

綾時のことを話題に上げると食いついてくる彼。一応こちらの話に耳を傾けていたようだ。

 

「今から世界救ってくるけどみんなはどうするって話」

 

「いや、僕は''Death''なんだよ?そう簡単には出られないさ」

 

「それならわたくしにお任せを。わたくし、世界を回っている際に、''さーゔぁんとしすてむ''という魔法を習得致しました。これを使えばDeathの権能を抑えることが可能でございます」

 

確かにそうだと綾時の言い分に納得していると、エリザベスさんから解決策を提示される。

…カタコトなんですけど大丈夫なんですかね?

 

「面倒なので詠唱は破棄なのでございますよ!取り出したるはアサシンモニュメント。あ・ソーレ!」ドゴォッ!

 

「ガフゥッ⁉︎」

 

「綾時が死んだ⁉︎」

 

唐突に放たれるエリザベスさんの掌底。

綾時の土手っ腹に押し込まれるアサシンモニュメントとやら。

 

「これで完了でございます」

 

「……」ピクピク…

 

お腹を抱えて床にうずくまる綾時。ものすごく痛そう。

 

「………」

 

これ、僕のセリフじゃ無いんだけど言わせてほしい。

 

 

そっとしておこう。

 

 

 

 

着替え&荷造り中……

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…これで準備よしと」

 

ヒーホー君とアリスを心の海に戻し、スウェットから月光館学園の制服に着替え、当時持っていたアイテムや装備品をこれでもかとポケットに詰め込む。我ながら意味不明な容量のポケットだ。

 

「はぁい!マユも準備完了です!」

 

…どうやらマユも付いてくるらしい。いつ創ったのか、ピンクのキャリーケースまで用意してあるよ…

 

「綾時は大丈夫?」

 

「なんとかね…でも当分戦闘は無理…」

 

仕方ないねという許容の心。

 

「マジか…んで、アンリは準備してないけど来ないの?」

 

「んあ?あー…俺ってばさ?エレボスと一緒で悪意の塊じゃん?んで、その悪意の発生源である人類がいない状態で封印の外に出ちゃうとさ、悪意が無い=俺の存在も無いってことになっちゃうんだよね。だから留守番。

まっ、せいぜい頑張れよ!」

 

「…サボりか」

 

「ちげえよ!」

 

まあアンリはどうでもいいか…

 

 

 

 

「往くのですね…」

 

「ッ‼︎ニュクスさん…」

 

エリザベスさんにどうやって目的地まで向かうのか聞こうとしたところに、いきなりニュクスに声をかけられる。

この人気配が無いから心臓に悪いんだよな…

 

「再び旅路に赴くあなたに餞別を…」

 

というと…おもむろに普段髪で隠れている僕の左目に…

 

 

「チュッ」

 

 

キスをした。

 

ズキンッ!!

 

「うっ⁉︎グッ…グァァ!」

 

目に走る痛み。

 

「うっ…ハァハァハァ…」

 

それも一瞬で治まるが…左目に異常に高い魔力を感じる。

 

死の視線(アイ・オブ・ザ・ニュクス)とでも名付けましょうか…私の権能をその目に魔眼として宿しました。使いどころを間違えないように…」スゥ…

 

「…ありがとうございます」

 

…どうしよ。なんか厄介なもの貰っちゃった。これはもう髪型変えられませんね…

 

「挨拶はお済みになりましたか?」

 

「ああ。で、どうやって行くんだ?」

 

「封印の扉と彼方側を一時的に繋げておきましたので、扉を通るだけでございます。

ただし大いなる封印の在り方の都合上一方通行でございます」

 

「なるほどな〜」

 

簡単でいいね。

 

「封印の管理はわたくしとアンリ様で行いますのでご心配なく」

 

「えっ?俺もやんの⁉︎」

 

…ちゃんとやってくれよ?

 

「じゃあ後のことは頼んだよエリザベス」

 

「はい、承りました」

 

「よし、行こうかみんな!」

 

「はーい!」

 

「お〜…」

 

マユはいい返事だが綾時はまだ痛むのか…

 

 

 

ガチャン!ギイィィィ…

 

大きな音を立てて封印の扉が開く。

 

 

さて、人類なんて本当はどうでもいいんだけど…かつての仲間のためにも頑張りますか。

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