翌朝、霞も大輔も日の出前に目が覚めた。お互い、浅いまどろみの中にいて疲れている相手を起こさないように自分も静かにしているうちに何度も眠りを繰り返していたけれど、空腹感が強くなって目を開けたとき、目が合ったので起きることにした。
「気がついたら、日曜日が終わってしまったな」
「ごめんなさい。……何か作るわ。お腹空いているでしょ?」
「ああ、頼む」
もう月曜の朝だが、まだ出勤までは3時間ほどある。ゆっくりと食事をしてシャワーを浴び、新聞に目を通して支度する。
「じゃあ、行くよ。帰りは遅いと思う」
「いってらっしゃい」
霞に見送られて出社すると意欲的に仕事をこなし、夕方になって時間を見つけてスポーツジムへ行く。習慣になっているトレーニングを終えて会社へ戻る道すがら、見知らぬ男に声をかけられた。
「あんた、日名さんかい?」
「…はい」
「日名…大輔さんかい?」
「……、ええ、そうですが。あなたは?」
あまり風体の良くない男は初対面のはずなのに大輔の氏名を知っていた。大輔が警戒心から眉をひそめると、男は尊大に名のった。
「南雲孝明だ」
「…南雲…」
「ああ、霞の父親だよ」
孝明は大輔を値踏みするように足元から観察している。
「なるほどねぇ……大輔か、…くっく…。ナオ君ごっこが終わったと思ったら、オレの娘までダイちゃんごっこか。くくっ……つくづく芹澤家の女ってのはバカだな。霞はオレに似て少しは賢いかと期待したのによ。まったく同じパターンとはな。我が愛しき娘ながら情けねぇぜ」
「急いでいるので失礼します」
大輔は仕事の予定があることよりも孝明の無礼さに会話を続ける気をなくして歩き出したが、孝明がついてくる。
「おい、待てよ。日名さん」
「……まだ、なにか?」
「なにかじゃねぇよ。話は終わってねぇだろ。人が話してるときは聞く、礼儀の基本じゃねぇか」
「だから失礼といった」
「……ちっ、屁理屈はいいから、オレの娘を返せ」
「………」
「話は、それだけだ。後も先もねぇ。父親が娘を返せっていってんだ。さっさと返せ」
「……。立ち話も何ですから、あそこへ入りましょう」
大輔がバーガー・ワックの福岡北店をしめした。
「………、誘ったんだから、日名さんのおごりだよな?」
「ええ」
短く答えると大輔は携帯電話で秘書へ帰社が遅れると伝え、孝明とワックに入る。孝明はレジに向かわず、さっさと窓際の席に座ったので、大輔はレギュラーセットを二つ買って孝明と向かい合って座る。
「どうぞ」
「……、なんだ、こりゃ?」
「ワックは初めてですか?」
「ああ、こんなアメリカかぶれの下品な店に入るのは初めてだ。どうせ、見た目通りのゲスな味だろう。まあ、いい。どうやって喰うんだ」
「そのまま手に持って、かぶりつくんですよ。ナイフとフォークはありません、下品な店ですから」
「ふーん……はぐっ」
孝明は包装紙を剥かずに、そのままハンバーガーに噛みつく。
「うぐっ…むむっ…」
「………。いえ、その紙は少し開いて、手が汚れないように持つところとして残しながらパンと肉の部分を食べるんです」
「ちっ…最初から、そう言え」
あらためて食べ始めると、文句を言っていたわりに完食した。
「それで、娘さんのことですが」
「ああ」
「二三お聞きしたいのですが、よろしいですか」
「……ちっ、面倒臭せぇ……、で?」
「娘さんは家出のような形で来られたようですが、何が理由かご存じですか?」
「さあな」
「……、意に染まない結婚がイヤで逃げられたのでは?」
「知ってるなら聞くなよ」
「確認したまでです」
「人ん家のことに首を突っ込むなって、ならわなかったか?」
「ならいましたよ、痛いほど」
とくに息子が突っ込んだ挙げ句に、死にましたから、とは付け加えず、大輔は社会人のベテランらしく話の落としどころを探る。
「私としても、いつまでも娘さんが帰宅されないのは望ましくないと思っています」
「だから、返せって言ってるだろ」
「ただ、今すぐお返ししても、また同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。たまたま、私のところで保護しましたが、次は、どこへ行かれるか…」
「今度こそ逃げねぇように縄で縛っておいてやる」
「……」
やりかねないな、この人は、大輔は思ったことを顔に出さないようにして話を進める。
「縄をつけるにしても、仕切り直す結婚式の最中まで、ですか?」
「………ちっ……霞はオレに似た賢いところもあるからな。お色直しのどさくさでトイレに入るといって消えやがった」
「ですから、ムリヤリ連れて帰っても同じことではないでしょうか」
「だったら、どうするってんだ? お前が一生面倒みるとか、言うなよ」
「娘さんにも気持ちの準備が必要でしょう。いきなり連れて帰るよりはマシではないですか?」
「……」
「次の日曜日までに、お父さんが来られたことを伝え、帰るように言っておきます。あなたもムリヤリ連れて帰る手間が省けるでしょう? まさか、新幹線へも縄で縛って乗せられるわけじゃなし」
「……ちっ…」
孝明は舌打ちをしたが反対意見は述べなかったので了承とみなし、大輔は別の質問をする。
「ところで、娘さんには結婚相手の他に、誰か意中の人がいるのでは、ないですか?」
「………。ああ、いる。……いや、いた。だな、正確には過去形ってヤツだ」
孝明は忌々しそうに、それでいて、どこか嬉しそうに話した。
「あんたTVみるか?」
「いえ、あまり」
「んじゃ知らねぇかもな。ちょっと前はTVその事件でもちきりだったんだぜ」
「それで?」
「あいつが好きだったのは鷹見大輔。けど、TVじゃ誤魔化した戸籍名の芹澤直樹になっていたがな。マヌケにも怨恨事件に巻き込まれて女に刺し殺されやがったんだ」
「………」
「くくっくっ…で、刺した女は溺れ死に、ちなつちゃん…こいつはオレの姪で、まあ直樹と大輔も甥だがな。そのへんは省略して、ちなつちゃんは逆恨みした挙げ句、怨恨事件の対象だった女教師をスコップで殴り殺したんだ。面白いだろ?」
「……TVは、さぞや、その事件ばかりになったことでしょうね」
「おうよ。何回も何回も真相を知らねぇヤツらがマヌケなことばっかり言いやがって。しまいにはオレの見たかった番組まで特別報道で来週に回されるしよ。あんときゃムカついたぜ」
「………。亡くなったのが、大輔くんなら、直樹くんは?」
「とっくの昔に死んでるよ。マヌケにも崖から落ちて、ひゅーーーっ、ぐしゃ♪ あっさり跡取り息子は死にましたとさ。でもって第二候補のちなつちゃんは狂気のスコップ女子高生、17歳の少女が抱えた心の闇、とかTVのコメントでアートディレクターの二階堂達郎が言ってやがったな」
「よくTVをご覧になるのですね。記憶力もいい」
「まあな。二階堂はマリンランドの改修でもアート面で助言したらしいぜ。なんか、ホラー系恐怖ものの構成とか。なかなかデキがよくてな、けっこう面白いぞ。とくに女と乗るとキャーキャー言って抱きついてくるからよ。二階堂、いい仕事してるぜ」
「藤川へ帰る機会があれば行ってみます」
「話がそれたな。とにかく第四候補だった霞に、やっとお鉢が回ってきたんだ。言っておいてくれ、気に入らない結婚でもガマンすりゃ後は極楽生活だってよ。オレだって狙ってた女と結婚できたわけじゃねぇ。人間ガマンも必要だってな。どうしても、あの婿が気に入らないなら、とにかく子供だけ産め、オスでもメスでもいいから一匹だけ産めば、あとは婿を追い出してもいいから、跡継ぎだけは確保しろってな。妊娠なんて、ほんの一年だ。それさえガマンすりゃ、あとは極楽だから、よく考えろってな。オレは霞の将来を案じてやってる優しい父親なんだぞ。やっぱ、娘には幸せになってほしいだろ? な?」
「ええ、わかりました」
話が終わり、大輔はトレイを持ってゴミ箱へ紙容器を捨てる。
「あんだ? ここはセルフサービスなのか?」
「そうです」
「ちっ…面倒だな」
孝明は億劫そうにトレイを持つと、ゴミ箱へ突っ込むが、乱暴な入れ方だったので紙コップが落ちる。
「「ぁ…」」
まだ氷が残っている紙コップが落ちると床が汚れる。けれど、手を伸ばしても、とても間に合うタイミングではなかった。
「よっ♪」
孝明はサッカーボールを扱うように踵の内側で紙コップの底を捉えると、氷を零さないように蹴りあげ、さらにボレーキックでゴミ箱へシュートした。
「ま、こんなもんよ」
「おお……お見事…」
これだけは本心から称賛して大輔は孝明と別れた。帰社して予定外の時間を孝明と過ごした分だけ遅くまで仕事をして帰宅すると、午前2時だった。夕食を作って、待っていてくれた霞に孝明のことを告げる気になれず、翌日に持ち越すことにした。
翌日の昼休み、出勤する前に霞へ昼食は二人で外で食べようと言っておいたので大輔は午前の仕事が終わると会社近くのバーガーワック前に行く。すでに霞は店の前で待っていた。
「ごめん、待った?」
「30分」
「ごめん」
「ううん、いいの。もう待つのに慣れたもの。待てば大輔が来てくれる。深夜でも夜明けでも、いつまでも待つわ」
「……。こういう店、初めて?」
「ええ」
「じゃあ、オレが適当に買ってくるから席に座っておいて」
「わかったわ」
霞は窓際の席へ座り、大輔はレギュラーセットを二つ買って霞と向かい合って座る。
「どうぞ」
「いただきます。……これ、どうやって食べるの?」
「そのまま手に持って、かぶりつくんだ♪」
「ふーん……はぐっ」
霞は包装紙を剥かずに、そのままハンバーガーに噛みつく。
「うぐっ…むむっ…」
「クっ!」
かっ、可愛い! 期待通りな上に可愛い! 大輔がポーカーフェイスを保ちきれずに無言で笑っていると、霞が気づいた。
「だっ…欺した?!」
「ごめん、ごめん。言葉が足りなかった。その紙は少し開いて、手が汚れないように持つところにして中を食べるんだよ」
「……最初から、そう言ってよ」
「ごめん、ごめん♪」
二人で昼食を終え、トレイを片付ける。大輔は失敗しても氷が散らからないように残った氷の上にハンバーガーの包装紙を詰めてから蓋をして、トレイをテーブルから持ちあげるとき、故意に落としてみる。
「「あ…」」
大輔が落としたとき、霞は自分のトレイを持ってゴミ箱へ行くために、背中を向けたところだったので、これは無理かな、と諦めたのに霞の華麗な足は踵の後ろで紙コップを捉えると、絶妙な速さと力加減で蹴りあげ、紙コップは宙を舞い、霞の右肩を越えると、霞の持っているトレイへおさまった。
「なんと……、称賛に値する。抱きしめたいな、霞」
「なっ…何をバカ言ってるの?!」
「はははは♪」
笑って誤魔化すと、大輔は霞を公園に誘った。公園を散策しながら父親のことを話すつもりで人気のない木陰へ誘う。
「昨日、霞のお父さんに会ったよ」
「っ…」
案の定、霞の表情が大きく曇った。
「……………………」
「そう、霞の考えている通り、君を連れ戻すために、接触してきた」
「……それで?」
「次の日曜、また来るって」
「……………………。大輔」
霞が大輔の腕に身を寄せた。
「……大輔……」
「そんなに嫌な結婚相手だった?」
「大輔以外、誰でもイヤ」
「鷹見大輔くんのことは、不幸な出来事だったらしいね」
「っ…」
霞が身体を硬直させて、大輔を見上げる。大輔は優しく微笑んで霞の頭を撫でた。
「オレは大輔だけど、日名大輔だ。鷹見大輔くんとは違う」
「……………………大輔……」
「日曜日、お父さんが来たら…」
「イヤっ!!」
「……………………」
「守ってくれるって! 約束した! お願い、大輔!」
「ああ、できる限りのことはする。けど、いつまでも、ここにいるわけにも…」
「イヤっ!!」
「…………霞、………。そうだね。急に言い過ぎた。落ちついて考えよう」
大輔は泣き出しそうな霞を優しく撫でると、マンションまで送ってから会社に戻る。やや遅れて会議に出席し、残業をこなしていると、すぐに午前0時を過ぎていた。
「ふーっ……まだ、終わりそうにないな」
眼鏡を外して疲れた目を押さえると、支社長室でコーヒーを淹れる。窓から夜景を見ると、向かいのビルに反射した自社の様子が見える。まだ、何人かは残って仕事をしているようで、いくつか照明がついている。
「みんな残業しすぎだな……オレが、これだからな……」
そう零して仕事に戻ろうとしたが、どうも階下が騒がしい。何か起こっている様子で見に行こうかと迷っていたら、女子社員の一人が真っ青な顔で駆け込んできた。
「ひっ、支社長!」
「どうした? 血相を変えて」
「なっ…」
「な?」
「ナマハゲがっ! で、でた!」
「んにゃ? ナマハゲぞ、おんざるぎゃ?」
大輔は思わずナマハゲという懐かしい言葉に故郷の秋田弁が出てしまったが、女子社員は幽霊か妖怪に会ったように怯えている。
「トイレっ…で、でた! あ、あがってくる!」
「落ちついて。ナマハゲは恐ろしい姿をしているけど、もともとは祝福をもたらす神さまだから。……いや、そもそも空想の…」
大輔がコーヒーを置いて支社長室を出ると、廊下の向こうから声が響いてきた。
「……だい……すけ……どこ?」
「………」
聞き覚えのある声に大輔は戦慄した。まさか、会社に、大輔は対処法を考えようとするが、いいアイデアが浮かばない。そのうちに、幽霊や悪鬼と見間違えるほど生気のない顔をして霞が廊下の闇から滲み出した。
「…だい……すけ……どこ?」
「…………」
逃げたくなったが、覚悟を決めた。
「霞、どうして、ここに? 何かあった?」
「…だい……すけ?」
「霞、落ちついて」
駆け込んできた女子社員の他に、霞の後ろから何人かの社員が不法侵入者の対処に困ってついてきている。ここで下手なことは言えない。大輔は親戚の情緒不安定な子が訪ねてきたような風に迎えて支社長室で二人になろうと思ったが、霞は大輔を見つけると、飛びついてきた。
「大輔っ!」
「か…」
問答無用でキスをされ、抱きつかれる。
「大輔っ! 大輔!」
「ちょ…、まっ…ンミャ! かちゃぺね…」
大輔の周囲にいる福岡出身が多い社員たちには支社長が何を言っているのかわからなかったけれど、思いつめた少女が妻子のいる上司に抱きついてキスをしたことは、わかった。
「大輔っ」
「………。わかった。落ちついて」
「ほんとに? お嫁にもらってくれる?」
「わかってる。もらうから。落ちついて」
大輔は霞を抱きしめて余計なことを言わないように口を塞ぐと、今度は周囲にいる社員たちに告げる。
「この子は私の関係者だ。少し心を病んでる。詳しいことは話せない。難しいことはわかってるが、君たちが誰にも言わずにいてくれたら、勤務評定を二つあげよう。西野くん、酒井くん、木村さん、高橋くん、細見くん。覚えておく。頼んだよ。くれぐれも他言無用に」
社員たちの口にアメと鞭で戸を立てて霞を抱いたまま支社長室に篭もる。ドアを閉め、鍵をかけ、監視カメラのコードを抜くと、霞を来客用ソファに座らせた。
「どうして来たんだ? ここに!」
大輔が苛立った声で問うと、霞は怯えて啜り泣いた。
「だって…、帰ってこないから…」
「まだ、1時じゃないか! 今夜だって遅くなるって…」
「ひっ…ひぅう…ううぅ…」
「……………………」
泣く子と地頭には勝てない、昔からの格言を思い出して大輔は苛立つ自分を諫めた。責めても解決しないどころか、もっと悪化する。気持ちを落ちつけるために、霞の分もコーヒーを淹れた。
「ぐすっ…ぅぅっ…」
「………」
えりかとあすかが訪ねてきたとき、霞は大輔の立場を考えて声一つ物音一つ立てずに耐えてくれた。なのに今は会社に訪ねてきて大輔の立場を一顧だにしない行動を取ってくれた。社員たちに口止めはしたが、大きな不安が残る結果になった。霞は賢い、会社内での大輔の立場がわからないはずがない、いや、やっぱり、ただの17歳で社会のことなんてわからないのかもしれない。それに、思いつめて自分の行動が自分で理解できていないのかもしれない。そもそも、オレは、どうして霞のことを隠そうとする。えりかの性格の問題か、女子社員たちは何を言ってもゴシップにするからか、だが、オレ自身にやましいことがないなら公言してもよかったはずだ。家出少女を保護している、ただ、それだけなら、それだけを説明すれば、よかったはずなのに、大輔は強烈な疲労感を覚えてソファに座り込んだ。
「…………ふーっ……」
「ぅぅっ…ひっく……ぅぅ…」
隣で霞が泣いている。
「ぅっ…ぅっ…ごめ……なさい…ぅ…ぅぅ…」
「………」
「…ごめ…ひぅ…ひぅぅ…」
「………疲れた…」
大輔はタメ息をついて、霞の震える背中を撫でた。
「もう、いいよ。怒ってないから」
「ぅぅ…ぅ…」
「霞、約束は守る。必ず君を守るから、だから、もう泣かないで、霞」
抱きよせると、霞の髪にキスをした。
「だい…すけ…」
「必ず守る。霞」
「大輔……」
霞が目を閉じて唇をささげてくる。
「…………」
霞を愛しいと感じてしまう大輔の脳裏に浮かんだのは妻でも娘でもなく、亡くなった雄介だった。雄介は微笑んでいた。
「………」
「……」
大輔は霞と唇を重ねた。目を開けると支社長のデスクが見える。
「…………」
ずいぶんとオレも、まっすぐ歩いてきたな、仕事の面では本当に、まっすぐ歩いてきたけれど、それだけだったな。入社して二年で主任、次は課長補佐、課長、次長、藤川営業所長、そして福岡に来て副支社長、支社長、霞のことがなければ、たぶん来年には本社で常務、定年までにはCEOに手が届くかもしれない。本当に、まっすぐ歩いてきた。
「……大輔?」
「帰ろう、霞」
「はい」
霞と支社長室を出て帰宅する。マンションに戻ると、すぐに食べられる状態まで調理された夕食と、つきっぱなしのTVが待っていた。その状態から素直に待っていた霞が発作的に待っていられなくなり会社まで来たのだとわかった。TVを消し忘れたことを謝りながら夕食を準備してくれる霞に、なるべく優しい言葉をかけた。遅い夕食が終わって入浴をすると、もう午前4時を過ぎている。入浴後にパジャマを着ないで待っていた霞が大輔のソファベッドに入ってきた。
「大輔……いっしょに、寝てもいい?」
「……、いいよ。そっちのベッドにしよう。広いから」
「うん」
霞とベッドに入った大輔は求められてキスに応じたけれど、それ以上の性行為を仕草で求めてくる霞の瞳を見つめ諫める。
「霞は、きちんとした嫁にならないといけないんじゃないのかな?」
「…うん…」
「じゃあ、こういうことは、もう少しガマンしないといけないね」
「………でも…私……大輔の……お嫁…」
A「ガマンできる霞が好きだ」
B[……。わかった」