長らく文章書いてないのでリハビリです
世の中には様々な思想が存在し、またそれに連なって宗教が生まれている。大きさ、在り方。それらは全く違えど、同じ思想を持つ人々が集まり物事を成しているのであればソレは一種の宗教なのではないか、と俺は思う。
そして彼ら彼女らは、自分達の思想が正しいと信じ、善意でその思想を広めようとしてくる。そこに悪意はない上に、中にはそれが本気の親切だと思っている奴もいるからタチが悪い。
勿論、例外も存在する。それっぽいことを言っておいて信者を得た後、彼らから根こそぎ奪いたいと考えている奴らも沢山いるし、ただモノを売りつけて金稼ぎをしたいだけの奴だっている。善意が何故善意と呼ばれているかといえば、そこに悪意があるからだ。悪意が何故悪意なのか、それは善意があるからだ。世の中が善ばかりならば、そこに悪という概念が存在しないが故に必然的に善という概念も生まれない。それが”当たり前”だ。普通と比べて『善い』からこそ善であり、『悪い』からこそ悪なのである。つまり普通とは、善と悪の平均値であり、普通が生まれるためには善も悪もそれぞれ必要だということなのだ。多分。
であるからこそ、俺は善意や悪意の存在を否定しない。ただ、それを押し付けてくるのだけは勘弁、というだけだ。自分の事は自分で決めたいから放っておいてくれってこった。
さて、初っ端から小難しいことをペラペラと言っているが、結局何を言いたいのかというと。
「……あのさ」
「「何だ?」」
「ジム通いの度に俺を誘うのはなんで?」
鍛錬狂いのこの2人の誘いを、俺はいつ断ればいいんだろうね? いやさ、分かってるんだよ。この2人は親切で誘ってくれてるって。体力があって困ることはないし、筋肉があって(つけ過ぎは駄目だけど)困ることも少ない。俺もそれは分かっているからこうして来ているけれど、頻度が多いと困りものだ。始めは「来るか?」だったのが最近は「行くぞ、見守」だし。確定事項かよ。
「見守は普段、あまり運動をしないだろう。運動不足は病の素でもある。俺はお前が病に苦しむ姿を見たくないからな」
「本音は?」
「友人を紹介すると安くなるからだ」
「打算しまくってんじゃねえか」
冗談だ、と蒼也は薄く笑うが声が割と真剣だったぞ。というかこのジムそんなキャンペーンあったのか。さては蒼也とレイジが同じジムなのもこれが理由だな?
まあ落ち着け見守、そんな声がベンチプレスの方から聞こえた。
「鍛えておくことは悪い事じゃない」
「レイジが言うと説得力がありすぎるな……」
声の主の名は木崎レイジ。筋肉モリモリマッチョマンで大体なんでも出来るやべー奴だ。図体もデカい、多分2メートル近くあるんじゃないか? 少なくとも190はありそうだ。その見た目から(怖くはないが)誰からも絡まれることがない、非常に羨ましい性質を持っている。筋肉教は真実だったんだ! そんな筋肉に少しでも近づく為に、とりあえず自分を納得させることにした。
「まぁ、確かにバイトとかやってても疲れにくくなってきたとは思うし……いいか」
そう、この鍛錬。実際に効果が出ているのだ。主にスタミナ方面で。それまでは一時間で疲れが出た作業が二時間、三時間と疲れないまま出来るようになってきたのを実感して、やっぱり努力はそこそこ実を結ぶものだと思ったものだ。
「それに、ついこの間だって運動の成果が出ていただろう」
「追いついたお前が言うかね……」
さて、3人でジムにやってきている俺達だが、勿論それぞれのメニューは違う。初めにここに来た時の要望を基に、トレーナーさんがある程度のメニューを決めてくれたのだ。それをクリアすれば後は自由、帰ってもいいしもう少し鍛えてもいい、そんな方式らしい。まあ、俺はメニューをこなした後にすぐレイジや蒼也が帰る姿を一度も見たことがないんだけどね。そんなに長いこと筋肉をいじめて……どんだけ鍛えるのが好きなんだ。
実際、前にそう聞いたことがある。”お前ら、なんでそんなに自分を鍛えるの?”って。答えは以下の通りだった。
「質の高い鍛錬は自分を裏切らない」
「自らを高めるのにはこれが一番だ」
言葉は違えど、まあニュアンス的には同じだと思った。つまりは二人とも、単純に強くなりたいが為に鍛えているのである。多分。
因みに、これらの言葉。蒼也とレイジ、どっちがどれを言ったと思う?
俺は忘れた。思い返しても両方共がどっちも言いそうだから分からなかった、と言ったほうが正確だろうか。こいつら多分、中身入れ替わってもある程度は他の奴らを騙せるんじゃないかな。つーか信じてくれなさそう。風間さん冗談下手っすねー、みたいな。うん、容易に想像がつく。
まあ、レイジの方がちょっと他人に甘いから一番見分けられるとしたらそこだろう。あと料理。蒼也は他人に甘くとかは多分ムズい。理屈と合理性の塊だし。
さて、そんな他人にも自分にも厳しいストイックな蒼也。少し前にまた学校に来たと思ったらご機嫌斜めだったのである。何かあったんだろう、そう思って暫くは軽い接触しかしてなかったわけですが。最近ちょっと機嫌がいいように見える。視覚的にではなく、感覚的に。もっとくだけて言うならオーラが。多分良いことがあったんだろう。身長が伸びたとか。
勿論それを本人には伝えない。気にしてないように見えてやっぱりちょっと気にしてるから。
「皮肉という訳じゃない、あの時は追いつくのに骨が折れた。間違いなく体力はついている」
「あー、それはまあ」
自覚がある。事実、ランニングマシンの上に乗っている時間が徐々に増えてるし。
「確かに最近、長く走っているんじゃないか? それに見守の肩幅も少し広くなったように見える。鍛えた成果だ」
ランニングマシンの上で走り続けていると、レイジが蒼也に便乗して俺を褒めそやしはじめた。また俺をおだててここに来させる算段なのだろうが、そう簡単にはいかないぞ。
「レイジまで……よせよ、おだてても何も出ないぞ」
「お世辞じゃない。このまま続ければ必ず強くなれるぞ」
「そ、そうか? んー、まあ? それほどでもないっていうか。まだまだ頑張るさ」
前言撤回、我ながら驚くほどチョロかった。即オチ2コマかよ。だって褒められたら悪い気はしないし、そもそもコイツらこういう系の冗談あんまり言わないし……。しかし、続けるだのまだまだ頑張るだの、これではまるでこれからもコイツらの鍛錬に付き合う事が前提のようじゃないか。まあいいけどさ。
そのまま暫く身体を動かし続けていると、いつの間にかもう夕方になっていた。そういえば、今日の飯の当番俺じゃん。
「悪い、俺今日食事当番なんだわ」
「そうか。お疲れ」
「おう、じゃあな」
二人に事情を話してから軽くシャワーを浴びて外に出る。身体を動かしたお陰か、外はそこまで寒くはなかった。
スーパーへと歩みを進めていると、向かい側から人影が見えた。見れば制服を着た女の子が数人、間違いなく女子高生だろう。うわ、今の凄い不審者っぽい。
それにしても、女子高生。いいね、響きがいい。見れば、かなり可愛い子もいる。
ああ、そうそう。地味にここ、イケメンや美人が多い街なのだ。なんでだろうね。
って、ん? あれは……。
「あれ? 兄さん」
「なんだ、望か」
可愛い子がいるなと思ったら妹だった件。いや、シスコンとかじゃなくて単純に顔のレベルが高いのだ。隣にいるのは友達だろうか、何処かで見たことがあるような気もする。というか、何回か家に来た記憶さえある。だが、ここで踏み込むのは阿呆のやることだ。下手に踏み込めば間違いなく妹からの小言が待っている。
「部活お疲れ。俺は買い物行ってから帰るから」
「ん、分かった。そんじゃね」
妹と別れてから、再びスーパーへと歩いていく。さっきまでの身体の温もりはもう消えていて、時折吹く風が肌を刺していた。
「おぉさっぶ。今日は鍋かねぇ」
一人、呟きながら空を見上げる。真っ暗な空の中、月と星がキレイに輝いていた。
さて、買い物買い物。白菜が安いといいな。
今日は疲れたけれど、変わらず三門市は平和だった。明日も良い日になりますように。
風間がストイックなのは、小さい頃から鍛えすぎると身長が伸びない、みたいな話を真に受けて程々に鍛錬してたけど、別に鍛錬しすぎなくても身長が伸びなかったので吹っ切れたからだと思います(妄想)
次回からは高校生組。更新予定は未定です()
あと、これから先登場する高校生組、中学生組の時系列は大学生組の時系列とある程度同じになる予定です。正確に言えば、各組の区切りとなるお話の日にちは三組とも等しくなる(例えばこの話の日にちが2月1日だった場合、他の組の区切りとなる話の日も2月1日になる)と思われる、という事です。
まあ、あくまで予定なんで壊れることは想定内なんですけど。妄想にプロットはないからね、しょうがないね。