アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう 作:ppが足りない
アイちゃん可愛い
「………………んっ」
……いつの間に寝てたのか?
何だか身体が変だし声も変だ。
それに部屋の窓閉めてたしそもそも壁がある筈なんだけど何故だろうか。
まるでそこに何もないかのように風が横から吹いてきてる。
それに床も変だ。
何だか硬いような柔らかいような……そう、まるで広い公園によくある芝生のような感じだ。
けど俺の部屋の床はフローリングだしベッドは鉄パイプを組み合わせた上に無造作に敷布団を敷いた様な安もんだからいつもギシギシいってる。
こんな暖かな日差しが心地良い天然の敷布団の上に寝ているようなものではない。
……暖かな日差し?
……おーけーおーけー。
どうやら俺は酷く混乱している様だ。
いいか?この感覚は全て偽物だ。
一度寝れば全てが元通りになっていて俺はいつもの生活に戻ることが出来るんだ……
あんまし戻りたくねぇなぁ……
取り敢えずこのまま目を瞑って寝てみよう。
そしたら何か変わるかも知んない。
「寝れる訳ねぇだろ」
いやいやこの状況で寝れるとかどんだけ精神強い奴らなんだよ。
そんな事出来るのはナローシゴホッゴホッ!位だわ。
俺にはそんな事出来んしそもそも……
この声俺の声じゃねーよな?
何かどっかで聞いたことある声なんだけど何だったっけ……何回か聞けば分かるんだろうけどもう聞きたくねぇなぁ。
これもう一度聞いちゃったら確実に俺の身体に異常が起きてるって事だしなぁ。
それは嫌だなぁ……ほんと戻ってくんないかな。
さっきから心臓が今まで聞いたことない位にバクバクいってるし訳分かんなくなってるしこのまま発狂して死ぬ未来しか見えんぞ。
そもそもこの体勢はなんだ?
足をピンっと伸ばして身体もピンっと伸ばして手を重ねてお腹の上に置いてる姿勢。
俺完全にご臨終じゃねーか。
まだ俺の人生終わってねーよ、これからだよ。
てか手がちっちゃいよ。
身体もちっちゃいよ。
顔もちっちゃいよ。
全体的にちっちゃいよ。
意味分かんないよ。
なにこれ?
あれから当分考えて三時間くらい経った気がする。
今の俺はあれだ、仙人の様に達観している気がする。
もう何を見ても驚かないと思う。
すっと上半身を起こして腕を見てみる。
それは案の定細くてまるで女の子の様な感じだけど肘から先が人の腕じゃなくて機械の腕でその金属製の様なものに写っている顔はどう見ても俺の顔じゃなくてそれは……
「どう見てもアイちゃんです、ありがとうございました」
薄れゆく意識の中声の正体が分かってホットしたのと絶望したのは同時だった。
「……ここは?」
目を開ければ空が見える。
身体を起こして周りを見渡せば見えるのは綺麗な緑色の草原のみ。
何故こんな所にいるのだろうか?
それに俺は何をしていたんだ?
全く思い出せない……
……………………………………
……………………………………
……………………………………
……うん、現実逃避はここまでにしよう。
取り敢えず身体を隅々まで見渡してみてそれから腕に反射した顔を見てみる。
やっぱり何回見てもそれはある一人のキャラクターで俺が愛していた一人の女の子だった。
「どうしてお……私がこんな姿に」
この姿で俺というのがはばかられたから私と言ってみたけどどうにもむず痒い。
それとこの姿……イベガチャの時のじゃねーか……追憶のうんたらかんたらの時のだこれ……
ふと思い返してみれば俺は黒ウィズで欲しいキャラを全く入手出来なかった記憶がある。
けどある程度はやっていたし課金もしていたので精霊は持っていたけどアイちゃんだけは出なかった。
やっぱり一万じゃ足りなかったのか……
でもまさかガチャで出なくてリアルでなるとは思わなかったわ。
「そういえばお……私こんな姿になってるけど……人格ってどうなってるんだ?」
……死にてぇ
今日何度目かの死にたくなる現象が発生した。
「落ち着け……よく考えるんだ。憑依とかそんなのはある訳ない。まず俺如きの魂が乗っ取れる筈ないからこの身体は器だけなんだ。きっとそうに違いない。だって俺……じゃなかった。私がこんなことってもぉ!めんどくせぇ!」
はぁーはぁーはぁー……まず有り得ないだろ。
これはゲームのキャラだぞ?
それが現実にあるって事がおかしいんだ。
そもそもここは何処だよ?
こんな所日本にあるのか?
「考えても訳わかんねぇよ……」
どうする……か。
この何も分からない現状で出来ることなんて……あるにはあるけど……
ちらっと右を見てみる。
そこには相変わらず見渡す限りの地平線の中で異様な存在があった。
結構遠くにある筈なんだけどめっちゃデカい。
これって近くに行けばアホらしくなるほどデカくなる奴なんじゃないだろうか……
「アソコに行ってみれば……何か分かるかな……?」
取り敢えず何も分からない現状から脱すべく近くにあった道沿いにそこ目指して歩いてみる。
きっとあれ程の大きさの
それなら何か知ってる人もいるかもしれない。
何かあった時の為にそこら辺に落ちていた木の棒を握り締めて決意を胸に宿らせながら一歩、また一歩と進んでいった。
『ゴトゴトゴトゴト……』
「ひゃっ!」
後ろから聞こえてきた音にびっくりして思わず道の側に生えている背の高い草むらに隠れる。
背が低いのが幸いして上手く隠れる事が出来た。
段々と近づいてくる音に目を向けてみればそこには馬の手綱を引いている馬車があった。
「この世界にもまだ馬車なんて使ってくる国があったんだな……」
初めて見る馬車という存在に思わず胸が踊る。
しかしこの馬デカイな……ちょっと怖いぞ……
近くまでくればこの馬……相当デカい。
こんなのに追いかけられたら死ぞ。
思わずより深く隠れてしまう。
こんな事しても無駄だとは思うけど。
「……?それにしても」
この手綱取ってる人……何でゲームのモブみたいな服装してんだ?
まるでドラゴンのクエストの登場人物みたいな古臭い格好をしてる。
正確に言えば麻布みたいな素材を使った長袖のシャツにズボンだ。
お洒落みたいなものは一つもない。
後ろの荷台に座っている人も同じような服装だ。
もしかして……
「この服装……浮いてる?」
ゲームの一枚絵だけあって凄く衣装が凝ってる。
こんなもの着て入ってったら大注目間違いないし、怪しい奴と思われて連れ去られたり誘拐されたりする危険性もあるんじゃないか?
「……どうしよう」
何も考えてなかった。
思わず顔がひきつって眉がピクピクと動く。
こんな姿で入ったら不味い……どうにか、どうにかしないと……そうだ!脱いだらどうだ!……変態じゃねーか!
あぁもうどうしようと悩んでいる内に馬車は前を通り過ぎようとしている。
それを恐らく死んだ様な目になって見ていると荷台に座っている白髪の人の横に何かが掛けられていた。
「……」
それからの行動は早かった。
「……あれ?僕のコートがない?」
確かに掛けておいた筈なんだけど……もしかして落としちゃったのかもしれない。
「あぁ、やっちゃった……幸先悪いなぁ……」
思わず挫けそうになる。
これからオラリオで冒険者になるっていうのに入る前からこれじゃ後が思いやられるよ。
思わず落ち込みそうになる気分を頭を振ることで振り払う。
「うん、大丈夫!今悪い事が起きたんだからこらからは良くなる一方なんだから!」
そうだ、一度落ちたならこれ以上落ちることはないじゃないか!なら今はこれからの事に集中するべきだ!
「うっせぇぞ小僧!」
「ひぃ〜すみません!すみません!」
「やった……やったぞ、やってやった……」
人生初めてのスリにとてつもない罪悪感と達成感が沸き上がる。
けどこれで何とかなるはずだ。
「やっぱり……」
広げてみればそれは麻布で作られたデカいコートだった。
この小さい身体なら全体を包み込む事だって可能な筈だ。
試しに着てみるとフードを被れば外から見たら誰これ?状態になれることが分かった。
これなら安心して入る事が出来る。
「幸先いいなぁ」
きっとこれからはいいことが起こるぞ!
思わず鼻歌を歌いながら道に沿って進む。
棒で風を切って振る時の音が心地良い。
「あぁ、今日はいい日だ!」
棒を握り締めて一生懸命な顔してるアイちゃんを想像するだけで……素直に写生です。