アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう   作:ppが足りない

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失踪するのは良くないと説教されたので、投稿開始します。


ステータス

 

 

 

「暇だなぁ」

 

 ヘスティアファミリアのホームである地下室は、教会だった場所―今は廃墟―の真下に位置していた。

 構成員は二人と少なく、その内の片方には、十四歳と若くそのあどけない顔立ちとあがり症から見た目も相俟って兎のように見える少年がいた。

 名をベル・クラネル、現在ダンジョンに挑戦中であり、経験値(エクセリア)を貯める次いでに魔石の採集を行っている。

 とはいっても新人冒険者なだけあって得られる魔石の量は僅かで、二人の時も大変であったというのに三人になった今はカツカツだった。

 その為に以前よりもダンジョンに潜る回数と時間を増やしているのが、こうしてソファーで寝そべっているもう一人の構成員に強い申し訳なさを与えていた。

 

「だからといって外には出れないし……」

 

 先日ヘスティアにフード付きの全身を覆えるコートと、何着かの服をプレゼントされ、今はその中のピンク色の細部にフリルが施されたシンプルなワンピースを着ていた。

 その上からコートを布団代わりに乗せているのは、白銀色の長髪に緑と赤のオッドアイが特徴的な幼い少女で、耳に金色の大きな装飾品を付けている。

 頬には傷跡の様には見えない一本の筋が左目から顎にかけて通っているが、それはよく見なければ分からないほどには薄かった。

 

「でもまさかこれが収納可能とは知らなかったなぁ」

 

 目を瞑りながら少女、アイは背中に接続されている機械に手を触れる。

 いや、それが機械等と呼んでも良い代物かは分からないが、兎に角そのこの世界には釣り合わない高度な文明力の技術が結集されたそれからは不思議な形の部品が伸びていた。

 金色の見ようによっては何かの植物に見えるそれは何本も生えていて、意識を取り戻してからずっと邪魔でしょうがなかったが、何となく収納できないか試してみると出来た。

 もっと苦労するものかと思っていたけれど、コンパクトになるのならそれに越したことはない。

 なのでこうしてソファーに寝そべることが出来る事実に感謝しながら、未知の金属で出来た脚を伸ばすと、右脚を軽く持ち上げて左脚に下ろす。

 すると軽い金属音が鳴り響き、アイはそれを聞くとリズムをつけ始めた。

 演奏するは某黒猫のウィズのタイトル画面で流れてくる音楽、途中で擦ったりして音を変えてみるものの中々上手く出来ない。

 これは練習が必要だなと再認識して、より高度に演奏するべく脚を持ち上げた時だった。

 

「えっと……アイ……ちゃん?」

「っ!?べ、べべっ、ベルルベルさん!?」

「うわっ! そ、そんなに驚かなくていいよアイちゃん」

「ご、ごめんなさい! これはサボってたとかじゃなくて、もう掃除とかし終わったし特にやることもなくて! それでその!」

 

 あたふたと慌てて目の前で苦笑いを浮かべる少年、ベルに弁解するアイ。

 いつの間にか帰ってきていたらしい、いつもに比べれば大分早い帰宅だが、アイはそのことに思考を回す余裕はなかった。

 しかしその慌て具合は酷いもので、弁解すればする程にドツボにハマっていく。

 最終的には膝を抱え込んで俯きながら謝り続けるアイに、今度はベルが慌てて慰め始めた。

 

「……すいません、取り乱してしまって」

「ううん、大丈夫だよ。それにアイちゃんを暇にしちゃってるのは僕のせいだしね」

 

 ベルは頬を人差し指で掻きながら、ヘスティアを含めた三人での話し合いを思い出す。

 神ならば人間の魂を見ることなど神の力を抜きにしても容易であり、更に神の恩恵(ファルナ)を与えることも出来ないとなれば、ダンジョンもダメ地上もダメの、地下室引き籠もりコースが直ぐに決定してしまった。

 この身体は食事が要らないとはいえ、どうやら食べること事態は出来るらしい。

 どういう原理で動いているのか本人でさえ分からない状況を考えて、ベルとヘスティアの二人はアイにも同じ食事を与えることを決めた。

 それには反対したアイだったが多数決で強行的に決められて、その分ベルとヘスティアが頑張るという致せり尽くせりの状況にアイの心労は溜まっていく。

 

「でも本当にいいんでしょうか……私もやっぱり働いた方がいいんじゃ……」

「だ、ダメだよ!それは絶対にダメ!神様も他の神様に会ったら大変なことになるって言ってたし、絶対にロクなことにならないから!」

 

 両腕を伸ばして手を振りながら全力で否定するベルに、アイはムスッとして頬を膨らませる。

 

「そんなに否定しなくてもいいじゃないですか……ベルさんのいけず」

「い、いけず……だ、だって僕はアイちゃんが……その……」

「その?」

「っ!……うっ、うぅ〜……も、もう一度潜ってくる!」

 

 アイが首を傾げて問うと、ベルは顔を真っ赤にして口を開閉したと思うと、そのままダッシュで地下室を出て行った。

 余りに突然の出来事にアイが呆然としていると、視界の隅にキラリと光る物があることに気付く。

 何気なく近付いてしゃがみ込み、それを手に取ってみると、淡く光を発する石があった。

 

「もしかしてこれ……魔石?」

 

 アイはしげしげとそれを眺めた後、ベルが出て行った先の扉を見やってから天井に目を移す。

 恐らくベルが落としたのだろうが、今から追い掛けたところで間に合わないだろうし、地上には出るなと言われている。

 ならば魔石鑑定所は逃げる訳でもなし、のんびりとベルが帰ってくるのを待ってその時に渡せばいい。

 アイは嘆息しながらそれを持って立ち上がった時だった、人差し指と親指で摘んでいた魔石が、まるで酷く薄い硝子で造られた中が空洞の工芸品のように軽い音を立てて粉々に砕け散った。

 

「……え?」

 

 魔石といえど、その硬さは普通の石と変わらないであろうそれが少し力を込めただけで砕け散るとは思っておらず、アイは顔を青ざめさせて破片を拾おうとする……その時だった。

 

「なに……これ?」

 

 その感覚は人間だった時の食欲に似ていた。

 食べ物を食べた時の満腹度と呼べばいいのだろうか? ずっと空であった器に何かが満たされた感覚がアイの身体に染み渡った。

 そしてそれと同時に、この器が満タンになれば、それ以上は何も貯まらず次の器への成長に入るという予感。

 

「これってもしかして……」

 

 このキャラの居たゲームの世界では、Lvを最大にすると進化することが出来て、そのLvはまた一に戻る。

 ステータスも低くなってしまうが、強化すれば進化前よりも高いステータスを得ることが出来る。

 そしてこの身体……もしこの器がゲームでのLvだとするのならば……

 

「この身体は……強くなれる」

 

 それだけじゃない、ステータスもあるということは同時にスキルも存在するということ。

 今はその感覚はしないけれど、強くなっていけば何れは使えるようになるのかもしれない。

 そしてそれが何のスキルかは分からないが、アイという存在があるカードの能力を使えるのならばイラストに載っているカードのスキルは全て使えるのではないだろうか?

 

「でも違うキャラが載ってるイラストとかもあるし……それにカード毎にステータスの値が違う。潜在能力とかはどうなってるのかな?」

 

 まだ分からないことだらけだ、このステータスの仕組みを解明するには時間が掛かる。

 けれど、たった一つだけれど、この生活を打破する内容が分かった。

 このまま魔石を吸収していけば強くなり、ダンジョンでも戦うことが出来るようになる。

 恐らくゴブリンにやられて傷がつかなかったのは、黒ウィズでいうプロローグの敵の感じだったんだろう。

 そう考えれば納得はいくが、逆に強くなっても攻撃を受ければ難しいクエストのように一撃でしぬことも考えられる。

 

「……けどこの世界はターン制バトルじゃない。上手いことやればきっと……」

 

 アイは儚い、けれど確かに強く燃える希望を胸に抱いてソファーに寝そべる。

 強くなれるのは分かったものの、二人からの許可はまだ得ていないのだ。

 アイは目を瞑って心を落ち着かせる。

 心があるのかは分からないが、こうしていると眠ることは出来なくても一種のスリープ状態にはなれることが分かった。

 アイはそうして二人を待ち続ける。

 金属同士が打ち付け合うような、とても小さいが軽い音を鳴らしながら。

 

 

 

 

 




久々なので読みづらいかと思いますが、何卒御容赦下さいませ。
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