アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう   作:ppが足りない

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気付いたらいつの間にか三ヶ月経ってました……。
まだ一ヶ月も経ってないと思ってたんですが、時間の流れというのは早いですね……。


ミノタウロス

 

 

 

 

 

 

「あ、あの〜……わ、私は美味しくないですから、そんな目で見ないで下さいっ!機械ですよ機械!美味しい訳ないじゃないですか!」

 

 

 薄暗い洞窟内で、アイは両腕を伸ばして牽制しながらカエル型モンスターを説得する。

 しかしそこは知能などないモンスターの鏡、鳴き声一つ上げて首を傾げると、アイ目掛けて自慢の長い舌を射出した。

 

 

「うそ! わわっ! ま、巻き付かれてる!」

 

 

 大変だ大変だ!と騒ぎながら解こうとするがヌルヌルした舌は掴むことすら難しく、殴ってもつるんと滑ってダメージを与えられている感じがしない。

 焦りながらカエル、フロッグシューターの方を見れば気の所為か余裕の笑みを浮かべているように感じた。このまま永遠に鬩ぎ合いを続けるのか、流石にそんな事はないだろうが、アイは極度の緊張状態に入ると無我夢中で腕を引っ張った。

 

 

「え? きゃあぁ!」

 

 

 するとフロッグシューターは勢い良く此方に飛んで来て、リアルでは見たことの無い巨大なカエルが突っ込んで来た事に思考が真っ白になったアイは叫び声を上げながら舌で掴まれていない腕を振りかぶって、顔を逸らしたまま殴った。

 研石を装着していない拳だったが、フロッグシューターは飛んで来た時以上に勢いをつけて吹き飛ぶ。

 その拍子に腕に絡まっていた舌も解けて数メートル飛んでいくと、二度三度バウンドしてから背中を擦り付けて滑っていき、最後に力尽きたように四肢を地面に落とすと灰となって消えていった。

 

 

「はぁ……はぁ……うぇ……」

 

 

 ネチョネチョした唾液が付いた腕を洞窟の壁に擦り付けながら、フロッグシューターが力尽きた場所まで行く。

 しゃがみ込んで魔石を拾い上げると、それを握り潰して体力の回復と強化を促す。

 

 

「今どのくらいのLvだろ……進化してないから直ぐにLvは上がるよね。ん?そう言えばこの世界に進化なんてあるのか?」

 

 

 女言葉と男言葉が混じったよく分からない口調でアイは顎に手をやり考え込む。

 何度も唸ってみたものの名探偵のようには解決せず、もしかしたらLvが最大まで上がれば自動的に進化するのかもと自分自身を納得させ、アイは新たなるモンスターを探しに歩みを始めた……時だった。

 

 

「……何この声?ぶもぉぉぉ……って。まるで牛みたいな……ん?何か牛が来てる……牛?ミノタウロ……ふ!」

 

 

 全速力で此方に突進してくるミノタウロスに背を向けて、アイは全速力での逃走を試みる。

 疲れを知らない体が今ほど便利に思ったことはない。出口がありそうな方向に足を向けて駆け抜けるが、走れど走れど出口は見えないばかりか、何故かミノタウロスは此方をロックオンしているらしく足音が止むことは無かった。

 

 

「どうしようどうしようどうしよう……あ、うそうそうそ! ベルさん逃げて下さい!」

 

 

 何故か目の前には5階層への侵入など許されていないベルがのほほんとした表情を浮かべながら洞窟を歩いている。

 驚愕の表情を浮かべながら警告するアイを見てベルも驚愕の表情を浮かべるが、その後ろから出てきたミノタウロスを見てワンランク上の驚愕の表情へと進化した。

 ベルは律儀にアイが隣に来るのを待ってから走り出し、二人は仲良く並びながらミノタウロスから逃げ始める。

 

 

「どうしてこんな所にいるんですか!」

「いやちょっと待ってアイちゃん!アイちゃんこそどうしてこんな所にいるの!死んじゃうかもしれないんだよ!?」

「現在進行形で死にそうですよ!それは兎も角ベルさんは体力大丈夫ですか!」

「い、今は平気だけどこのまま続いたらダメかもしれない!」

「じゃあ限界が来たら言ってください!私がベルさんを背負って逃げます!」

「えぇ!?」

 

 

 目を見開くベルを尻目にアイは今からどう行動するかを考える。

 二人で逃げても捕まる未来しか見えないので、最適な行動としてはやはり自分が囮になる方が助かる確率は高いのだろう。

 死にたくはないが、二人で逃げるよりは死ぬ可能性も低くなるというものだ。

 

 

「ベルさん!ここは」

「ダメだよ!アイちゃんにそんな危険な真似はさせられない!」

「なんで私の言う事が分かったように話すんですか!人の話は最後まで聞くべきです!」

「へ? あ、ご、ごめんなさい」

「取り敢えず今は許しときます。ではここは私が相手を引きつけるのでベルさんは先に逃げて下さい」

「あってるじゃん!だからダメだよ!」

 

 

 ベルは頑なにアイの言う事に頷こうとしない。

 流石に我儘が過ぎると説教したくなるが、今はそんな暇がなかった。

 目の前が袋小路だったからだ。

 

 

「ど、どうしよう……」

 

 

 この状態では逃げられない、死を悟ったアイが懸命に生き残る策を編み出そうとするが、これといって良い案が思いつかない。

 するといつの間にか壁に背を負っていて、鼻息荒く此方を見詰めるミノタウロスと対峙した時にベルがアイの前に一歩踏み出した。

 

 

「アイちゃん!君はボクを置いて先に逃げるんだ!」

「な、何言ってるんですか!私よりも弱いのに勝てるわけないですよ!」

「強いとか弱いとかじゃないんだ……ボクは大切な人を護りたい!例えどんな事があったとしても!」

 

 

 ベルは短剣を振り抜き、下手に構えながらミノタウロスと対峙する。

 顔を傾けて此方を向いたベルの顔は酷く引き攣っていたし、足はバイブ状態のスマホをテーブルの上に置いた時くらいブルブル震えていたがアイの瞳に映るベルは勇ましかった。

 胸にがトクンと強く鼓動を始める。その動悸の正体が分からず、ベルを見詰めるアイは締め付けられる胸が苦しく、今の自分に何が起きているのかさっぱり分からなかった。

 

 

「行くぞぉー!」

 

 

 ベルがミノタウロスに向かって飛び出そうとした瞬間、手を下すまでもなくミノタウロスは細切れにされて赤い血液を飛散させながら灰となって崩れ落ちる。

 何が起きたのか分からず呆然とするベルだったが、ミノタウロスの向こう側にいた剣を振り抜いている少女、アイズの姿を見て何が起きてしまったのか悟る。

 

 

「あ、いや……その……うわぁああぁぁぁぁ!」

 

 

 ベルはいたたまれなくなり顔を手で覆い隠しながら女の子走りで逃げて行く。

 その叫び声は裏返っていて、男の割には高い声がより一層引き立ち、本当に女の子が悲鳴を上げているように聞こえた。

 ポカンと口を半開きにしてベルが消えて行った方向を見詰めるアイと、どうしていいか分からないのか困った表情を浮かべるアイズが徐に顔を見合わせる。

 

 

「あ、あの……初めまして?じゃないよね」

「?私達は何処かで会っ……あ。もしかしてあの時の子?」

 

 

 アイズは最初アイが誰かという事に気が付かなかったが、何処か聞き覚えのある声な気がして記憶を遡った時、自分が手を繋いで一緒に歩いていた子供だということに気付く。

 よく見てみれば両眼のオッドアイと銀髪に頭に付けている謎の飾りなんて一人しか思い当たらないではないか。

 

 

「あれから……どうしてたの?ファミリアは見つかったみたいだけど……もし気に入らなかったらやっぱりロキファミリアに来る?」

「え、あ、あの……大丈夫っ、です」

 

 

 両手を力強く振りながら後退りし、走った拍子に脱げてしまったのかフードが垂れていたので急いで被り直した。

 裾を握り締めてできるだけ顔を隠せるように下げる。どうしてここまでしなきゃいけないのかは分からないが、本能がそうしろと叫んでいるのだった。

 

 

「なんだアイツ。血塗れで逃げてやがる!って、おいアイズ。お前何して……あん?」

 

 

 コイツだ。

 

 アイは何やらさっきから感じていた嫌な予感の正体が目の前にいるベートローガだということに気付き、口を引き結びながらアイズの影に隠れるように移動する。

 しかし流石は第一級冒険者、コソコソとするアイを目敏く見つけると、素早く移動してフードに手を掛けようとするが、その前にアイズが腕を掴んだことによってそれは防がれた。

 

 

「なにするんですか……ベートさん」

「んだアイズ。俺はコイツの顔を見ようとしただけだろうが」

「嫌がってます……アイちゃんにちょっかいを掛けないで下さい」

 

 

 アイズは親の仇を見るような目でベートを睨み付け、予想以上にアイズの雰囲気が険悪な事に驚き目を見開くが、直後にアイに顔を向けると目を細めてガンをつける。

 しかしアイが女で子供だからか、それ以上は何もしてこず、舌打ちをすると先に下に戻ってると言って去って行った。

 アイはもし自分が男だったら命が危なかったかもしれない事に気付き体を震わせるが、アイズはそんなアイを見て勘違いしたらしく膝立ちになるとアイの最中に腕を回して優しく抱き締めた。

 

 

「大丈夫……大丈夫だからね?」

「アイズさん……」

「そう……大丈夫……?なにこれ?」

「……」

 

 

 全然大丈夫じゃない。

 

 アイはアイズが手探りで背中にある羽みたいな何かを弄んでいるのを感じながら、きっと生身であれば冷や汗をかいているだろう状態で固まり、弁解の言葉を探す。

 しかしうまい言い訳が見つからず途方に暮れていると、アイズの手が急に頬を包み込むように移動して、アイのもっちりほっぺたを堪能すると言った。

 

 

「アイちゃん。変な武器を身につけてるんだね」

「……あ、はい。そうなんです」

 

 

 アイはアイズの質問にそう答えるしか出来なかった。

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