アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう   作:ppが足りない

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なる早で投稿できました


勘違いも深まれば真実となる

 

 

 

「なるほど……遠征の準備……ですか」

「そう、皆が色々してくれていて……もうすぐ終わるから、そうしたら深層に向けて行くの」

 

 レベリングから帰ってきたらしいアイズさんと並び立ってダンジョンを歩く。

 一緒に帰ろうと言われた時は、正直に言うと迷わない自信が無かった為にホッとしたけれど、今となっては後悔している。

 

「おい、あれ見ろよ……」

「あれって剣姫じゃねぇか!隣にいるチビは誰だ?顔隠れて見えねぇな」

 

 行き交う冒険者達からの好奇な視線、聞こえないように離れてから喋っているのだろうが、アイイヤーからすれば全て筒抜け、あんな事やこんな事までお聴き通しだった。

 最早恥ずかしさが天元突破したと言っても過言ではない状況に頭をくらくらさせながら、取り敢えずアイズさんを急かしてみる。

 

「すいません、アイズさん。少し気分が悪いので早足でお願いできますか?」

 

 自分で言っておきながら罪悪感を感じない訳でもないが、こう言っておけば心配性な(恐らく)アイズさんは気を利かせてくれるに違いない。

 見上げてみれば想定通りにアイズさんは目を丸くさせて此方を見ている。

 これで何とか冒険者達の視線から直ぐに逃れる事が……んん?

 

「あ、あの〜……アイズさん?」

「大丈夫、私が送ってあげるから」

「い、いや、そういう事ではなく……なんで担がれているんですか?」

 

 いつの間にか前に出てきたと思ったら、疑問に思う間もなくアイズさんの背中に背負わされていた。

 何を言っているのか分からないと思うけれど、私も何が起こっているのか分からないし、ていうか男が女に背負わされてるっていいのか?

 ……今は女か、なら良いのかな?

 

「て、違うでしょ。アイズさん、アイズさん、人目が気になるので下ろして貰っていいですか?」

 

 何となく察した。

 アイズさんは直球で言わないと理解できない人だということに。

 この天然さんに言葉を伝える為には遠回しな言い方は厳禁、こうして要件だけ伝えればアイズさんはきっと答えてくれる筈。

 

「恥ずかしさは……我慢して。大丈夫、直ぐに送ってあげるから」

「え?や、違うんです。ていうか何処に送って……はうっ!」

 

 顔にぶち当たる風圧に首を折りそうになりながらも、必死で顔を背中に当てて耐える。

 目は瞑って何が起きているのかはよく分からないけれど、何となくアイズさんが猛スピードで走っているのだろうなという事が分かる。

 ガタガタ体が揺れたり、風圧が掛かってくるのさえ知れば、今どういう状況なのかを察せられるというものだ。

 

「なななっ、んで、こんっ……ことに!」

 

 それから暫く、ダンジョンを出て数分走って目的の場所に辿り着くまで、言い様のない恐怖に心が蝕まられた。

 

 

「アイちゃんのホームは……何処にあるの?」

「ホームですか?えっとですね、それは……それは……っ~……」

 

 不味い。

 

 アイズさんからホームの単語のが出たことで漸く今の事態に気付いた。

 そういえば今の状況は二人の命令を無視して外出している最中でして、更に更にヘスティア様の宿敵?因縁の相手?であるロキファミリアの幹部?であるアイズ・ヴァレンシュタインに付き添われている。

 こんな所を二人に見られれば何が起こるかなんて考えたくもないし、今よりも拘束が酷くなる可能性もある。

 ……これより酷いってどうなるんだろう?

 

「アイちゃん?」

「うわぁ!びっくりした!」

「ご、ごめんね?……いきなり過ぎたかな」

「だ、大丈夫です……その、やっぱり私は一人で帰れるのでここでお別れしましょう」

 

 そしてさっさと帰って何事もなかったように振る舞うのだ。

 多少は訝しまれるだろうが、嘘を見抜かれても大丈夫なように気を付けながら、なにかと変な所で勘のいいベルさんに注意を払っておけば無問題だ。

 

「それでは私はこれで」

「ちょっと待って」

「……な、なんでしょうか?」

 

 背中を向けて走ろうとした瞬間、背後から腕を掴まれて動けなくなる。

 その掛けられた声に変調はないが、金剛力士像の様な顔になっている可能性もあるんじゃないだろうか?

 もしそうであれば死の覚悟もした方が良いかもしれない。

 恐る恐る首を曲げて顔を向けてみれば、そこに居たのはなんてことは無い、心配そうな表情を浮かべて此方を窺うアイズさんがいた。

 

「……もしかして、ファミリアで虐められていたりしない?」

「……はい?」

 

 何か途轍もない勘違いをされている気がする。

 そのまま手を引かれながら何故かホームとは異なる方向に引き摺られていく状況。

 もうこのまま逃げてしまいたくなるけれど、恐らく、というよりも確実に相手の方が力が上でして、尚且つ余計に勘違いが深まりそうだからそんな事は出来ない。

 

「……私に選択肢はないのでせうか?」

「何か言った?アイちゃん」

「何も言ってないです……」

 

 もうこの世界やだ。

 

 人造人間に厳しい剣と魔法のファンタジーの世界は、私にとっては生き辛い世の中みたいです。

 

 

「それで……どうしてここに居るんですか?」

「ゆっくり話が……したいから」

 

 目を爛々と輝かせてじっと視線を送ってくるアイズさんが非常に眩しい。

 何故か面と向き合って対峙する状況に困惑を隠せないけれど、周りが気になっている風を装って誤魔化してみる。

 まぁ、実際に気になるといえば気になるのだけれど、何でこの生活感のあまり感じられない部屋に居るのかだけは永遠の謎だ。

 

「私の部屋……あまり片付いてなくてごめんね?」

「い、いえ……片付いてない……てことは絶対にないと思うんですけれど……これは……」

 

 白いベッドに簡素で何処にでもありそうな机と部屋の中央に置かれた丸テーブル。

 壁に寄り添うように置かれているのは衣装タンスだろうか?

 ここまでは普通というか、必需品セットの様な装いだけれど、唯一疑問に思うのはこの部屋の清潔感だろうか?

 

「あの……本当にここに住んでるんですか?」

「?そうだけど……」

「そ、そうですか……そうですよね……」

 

 なんと言えば良いのか……必需品セット以外の荷物が見当たらない。

 武器とか防具を仕舞う物入れは家具としてカウントしちゃいけない気がするけれど、それを入れても物一つ床に落ちてないし、脱ぎ散らかした服さえ何処にも存在しない。

 挙句の果てには机の上にすら何も物が置いてない状態だ。普通片付けるのが面倒になって置きっぱにしている本の一つや二つがあって然るべきにも関わらず。

 

「……ほえ〜……」

「……あの、話に戻っていい?」

「あ!す、すいません!お願いします!」

「うん……それじゃあ……なんでずっとフードを被って体を隠してるの?」

「そ、それは……」

 

 どうしよう?なんて説明すればいい?造られた体で曝け出したら目立っちゃうし、色んな神様にあれやこれやと口外出来そうにない行為をされてしまいそうだから?

 

 ……いや、ダメでしょ。

 

 あかんです、これはあかんです。そんな事を言った終いには私のダンジョン冒険ライフが始まってすらいないのに終了してしまう。

 せめてやるからにはスタートダッシュだけでも切らせて欲しい。

 

「言い難いこと?」

「えっと……はい」

「やっぱり……アイちゃん、傷付けちゃうかもしれないけど……ごめんね?」

「へ?あ、や、大丈夫……ですよ?」

 

 何がだ?

 アイズさんの性格から考えて人を貶めるような事は絶対に言わない筈……多分。

 いや、今まで接してきて、たった数十分だけだったけれど悪口を言う人には思えない。

 ならば一体全体何を言われるというのだろう?

 全く予想がつかないけれど取り敢えず聞いてみるしかない。

 身構えていよいよ告げられるアイズさんの本音を待つ。たった数秒の時間が数時間に感じられる程……ということは無く、すっぱり告げられたその言葉は私のあるかもしれない心臓をビックリさせる位には衝撃的だった。

 

「それって……虐められてボロボロになった体を……隠す為なの?」

「…………………………………………」

 

 どうしよう?

 

 何か凄い展開になってる。

 アイズさんは確実にそうと思い込んでいるようで、さっきから憐憫の念が過剰に込められた瞳をしていたり、今にも爆発しそうな位に握り締められた拳がここまで聞こえてくる位ミシミシ言ってる。

 このままだと晒さないといけなさそうだけど、晒したら晒したで面倒臭いし、晒さなかったらきっと確実に信じ込んで後から付けられた結果ファミリア崩壊なんて流れになりかねない。

 だけれど二人との約束もあるし、しかし嘘をつけばきっとバレるし、そうしたら二人が危険な目に遭うけどでも約束が……。

 

「う、うぅ〜……」

「!き、傷が痛むの?え、エリクサーを……」

「だ、大丈夫ですから。そんな高価な物を持ち出されても払いきれません……」

 

 どうやら擬似的な腹痛を古傷が痛むんだ、みたいに解釈されてしまったらしい。

 その優しさをどうか察しの良さに分けて貰えないだろうか?

 

「どうしよう……」

「大丈夫、私がアイちゃんを護るから」

「違うんですぅ……」

 

 誰かアイズさんから私を護ってください。

 

 この場にいない誰かに向けてそう祈るしか、私には出来ないのである。

 

 

 

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