アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう 作:ppが足りない
「えっと、それじゃあ入りますね。あ、アイちゃんのステータスってどんなでしたか?」
へスティア神が扉の向こうのベル君に声を掛ける。
先程買い終わったのか声と共にノックの音が部屋に聞こえてきた。
それから少し待ってもらい今部屋に入って来て貰った所だ。
「あぁ〜うん、ベル君と変わらなかったよ」
「そうなんですか。……よし、それじゃあアイちゃん。今から一緒にダンジョンに潜りませんか?」
「……すいません。少し疲れていて、今日の所は申し訳ありませんが……」
「え、あ!ご、ごめんなさい……そ、その……神様!行ってきます!」
言うが早いかベル君は急ぎ足で扉を開け放ち飛び出していく。
階段を駆け上がる音がだんだん離れていく。
ベル君は本当に今からダンジョンに行くのだろうな、元気で羨ましいよ。
「……それで、アイちゃん。さっきの話は」
「はい……誰にも言わないで貰えると助かります」
「う〜ん、そうだね。流石に僕もこんな事を知ったら気楽に言いふらすことなんて出来やしないさ。それにこれはアイちゃん自身に関わる問題だからね」
「ありがとうございます」
「……何かあれば力になるからね?いや、何かなくても僕に頼って欲しい。例え神の恩恵という繋がりがなかったとしてもアイちゃんは僕の家族なんだから」
「……ありがとう……ございます」
あぁ、へスティア神は優しい人だな。
本当に……この人のファミリアに入って良かったと思う。
へスティア神に視線を向ける。
彼女は相変わらずの優しげな表情でこちらを見つめる。
その目にはコートを身に纏っている俺の姿が映っていた。
「……これを……見てください」
「これ?」
俺が何なのか……一度疑問に感じてしまったそれを消し去る事なんて出来ない。
だから、今は少しでも自分自身に対しての知識が欲しい。
それさえ考えていれば怖い事は考えなくて済むから。
「これが……私の身体……です」
俺はゆっくりと見せつけるようにしてコートを剥いでいく。
へスティア神は俺の身体が外気に晒されていく毎に驚愕に目を見開いていく。
そして俺がコートを剥ぎ終えて全てを見せつける為に立ち上がるとへスティア神は一度目を閉じてから俺の元に近寄りその手で身体に触れてきた。
「……これは……本物……なんだよね?」
「はい、本物です」
へスティア神も信じられないのだろう。
俺だって信じられない。
自分の身体が機械で出来ているなんて今でも信じられない。
身体を動かしている感覚は記憶にある感覚と同じで目で確認しなければそこが機械で出来ているなんて事すら気づかないほどだ。
ましてや機械、それもロボットなんて存在すらないだろうこの世界にいるへスティア神は俺という存在に目を丸くしている。
それから幾許か時が過ぎてからへスティア神は徐ろに俺から離れて先程まで座っていた椅子に座り直す。
それを見て座った俺を確認してからへスティア神は口を開いた。
「その腕に脚……背中のそれも……どんな素材か分からないけど人の身体のそれとは別のもので作られているのも分かる。アイちゃんの皮膚に思えるのも普通とは違うようだしね」
「……」
「だからこそ……聞いておきたいんだ。アイちゃんの身体を見て思ったんだけど……その身体……自然に出来るものだとは思えない……もしかしたらだけど……その身体は……」
「……はい、考えている通りです。私の身体は……人によって造られました」
「っ!……はぁぁ……」
へスティア神は頭を両手で抑えて背もたれに背中を預けて天井を仰ぐ。
それから数分間あーだとかうーだとか呻き声が聞こえてくる。
そしてやっとのこと呻き声が止み顔をこちらに向けたへスティア神の表情は何と言ったらいいのか分からないと言うような顔をしていた。
驚きやら興奮やら困惑やら……哀しみ?
「アイちゃんの身体が人によって造られたなんて……そうとしか考えられないけど信じられない。それは……本当に人によって創造出来るものなのかい?アイちゃんを造った人は……一体誰なんだい?」
……俺は……この質問に答えていいのか?
この身体は俺の身体だけど俺の身体じゃない。
ただの借り物の身体に詰まっている思い出を赤の他人の俺が答えていいのか?
「……」
「……答えたくないならそれでいいよ。アイちゃんの過去に何があったかなんていうのはそれは全てアイちゃん自身のものだから。それを詮索するのはいけないことだしね」
「……私の身体は……一人の人間によって造られました」
「……」
俺はへスティア神に知りうる限りの中からこの身体が造り上げられたら経緯までを話した。
一人の男が娘を亡くした事、いつか見た同じ身体を持った女の子をイメージしてこの身体を造り上げた事。
それが自分である事。
それからの事は……話せなかった。
俺が言っていい事ではないと思ったから。
そして……俺が、この身体がこの世界ではない所から来たことを。
「そっか……これで全てが分かったよ。アイちゃんの身体から魂を感じなかったのも嘘が分からなかったのも……全てが」
「……」
「でもね、一つ言っていいかな?」
「……?はい」
「アイちゃんの身体には魂はない。これは事実だ」
「……」
「けどね?例えアイちゃんの身体に魂がなかったとしても今僕とアイちゃんはこうして話している。それにアイちゃんは今悲しそうな顔をしているだろう?それは……感情があるって事じゃないかい?」
「……」
「アイちゃんが他の人と違っていたとしても心はちゃんと君の身体にはあるんだ。嬉しい事があったら笑って、悲しい事があったら泣いて……ムカムカする事があったら怒る。どうだい?そう考えたら人と変わらないじゃないかい?」
「……っ」
「だから……泣いてもいいんだ、アイちゃん。君には心がある。だから、泣きたければ泣けばいい。それを僕は受け止めてあげる。だって僕達は家族なんだから」
「……うっ……うあっ……ああ……」
「あああああああっっ!!」
泣きたくないのに……俺の意志とは反対に感情が水となって目から流れていく。
へスティア神は俺を前から抱き寄せてその腕で包んでくれた。
感じる体温は暖かくて……とても……気持ち良くて……そのせいで流れる涙はどんどん増えていって……それと同じくらい安心出来て……
「すいません、買ってきました。えっと、今大丈夫ですか?」
それから暫く胸を借りて泣いていたらノックと一緒に声が掛かってくる。
それは俺を現実に引き戻すのに充分だった。
感じるのは物凄い羞恥心とへスティア神の胸の柔らかさで……
「ふわぁ〜……」
「あ、ベル君!うん、入ってっぇ!」
「分かりました。それじゃあ入りま「ちょおっと待ってぇ!うん、少しの間扉の前で待機しててくれるかい!?」え?あ、はい。分かりました」
「全く……何が人とは違うって?こんなに気持ち良さそうな顔してさ」
ベッドにはアイちゃんが寝ている。
さっき急に声をあげて気絶しちゃったから急いでベッドに横にしたけど……ふふっ、可愛い寝顔だなぁ。
気持ちよさそうに寝ているその顔は子供と同じそれで、時々あげるふにゃっていう声は猫みたいで聞いていてとても癒される。
髪をさすれば指に引っ掛かりもせずにサラリと透き通る様に通る。
「アイちゃん……君にはこれから沢山の試練が待っていると思う。けど、例えどんな事があったとしても……」
「僕だけは絶対にアイちゃんを守ってみせるからね」
それが聞こえたのかどうかは分からないけど、ほんの一瞬、アイちゃんの顔に笑みが浮かんだ気がした。
20連でSS以上0枚でした(ガチギレ)