アイちゃんってなんでこんなに可愛いんだろう   作:ppが足りない

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今回は全て三人称で書いてみました。
あと迷宮と書いていた所をダンジョンと変えてみました。
前回の話で少し変えた所もありますがそんなに話に支障があるものではないので見直さくて大丈夫かなと思います。
読みにくかったら教えてくれると助かります。
あと黒ウィズ爆死しました


ダンジョン 前編

 

 

 

 

 

「準備万端……」

 

 

上で装備は着た……ちゃんと武器も持ってる……フードも動いても外れない様に固定済み……完璧だ。

 

 

「さぁ、行こうか」

 

 

眼前には地下に繋がる下り階段。

螺旋状に描かれるそれは上からでは下がどうなっているかは確認できない。

それでも分かることはある。

きっとそこに待っているのは楽しい事なんて何一つない正真正銘、只の地獄なんだろう。

 

 

「(……ここに潜る奴らは大間抜けもいい事なんだろうな……わざわざ死にに行ってるんだから)」

 

 

きっと下にはモンスターが蠢いていて俺の知らない奴らも沢山いるんだろう。

もしかしたら突然後ろから襲われてそのまま死ぬかもしれない。

本音を言ってしまえばこんな所入りたくもないし死にたくない。

 

 

「……ふっ」

 

 

けど……入ろうとしてるのは、何でなんだろうなぁ……

 

 

「……うん、よし」

 

 

一歩一歩足を動かして階段を降りていく。

コツンコツンと響く音だけが鼓膜を震わせる。

増大していく恐怖心とは逆に、何処か荒れていくような興奮が、彼の胸中に一滴、また一滴と貯まっていく。

それが満たされるのは存外すぐそこにあるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い」

 

 

そこは正しく洞窟だった。

 

 

階段を降りた先、迷宮という呼び名から想像したそれとは対称的な風景が広がっていた。

まず見えてくるのは床も壁も天井も薄青色一色に染められた光景。

それを見ただけで異常だという事が直ちに認識出来る程に普通とは違う視界。

更に目を向ければここが広い通路だという事が分かる。

横幅は広く両腕をめいっぱい広げて並んで、漸く両端に手がつく程だろうか。

しかしそれに比べて天井は低く数メートルしかない。

 

 

「……ふぅ〜」

 

 

腰に差した剣の柄に手を掛ける。

ここからはダンジョンで、いつ死ぬかも分からない危険地帯。

何度考えても潜る理由が分からずに進んでは立ち止まる。

けれど最後はまた歩き出す。

まるで何かに惹かれるように。

 

 

「……皆はステータスを上げるためにダンジョンに潜るんだよね」

 

 

なら、ステータスがない自分はどうすればいいのだろうか。

何度考えてもその答えが見つかる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

地を踏みしめる音だけが洞窟を支配する。

地面は硬く、土を踏むというよりは石の上を歩いている感じだろうか。

金属質な足裏に靴を履いていないのも相俟って人が歩いているとは思えない甲高い音がなる。

静かな洞窟内でこのような音が響けばモンスターが寄ってきそうなものだが今の所はモンスターが現れる気配はない。

いつモンスターが現れるか緊張感を持って歩いていた彼女、アイは中々現れないモンスターに緊張の糸が切れたのか、歩みを止めてその場で一つため息を吐く。

実際には呼吸をしていないので息など出ていないが、人間だった頃の感覚からか自然に動作をとってしまう。

 

 

「……一階層だからかな?……全然モンスターがいない」

 

 

歩けど歩けどモンスターに遭遇しない。

事実彼女はダンジョンに潜ってからまだ一度もモンスターに遭遇していなかった。

潜ってからそれほど時間が経っていないとはいえ、先に二階層への階段を見つけるとは思っていなかった。

 

 

「もう二階層に行っちゃおうかな……ん?」

 

 

視界の端を横切る人影が一瞬見えた。

その姿に見覚えがあったから、その人影が入って行った道を覗いて見えたのはよく知る人物だった。

 

 

「……ベル君?」

 

 

視線の先、軽快な足音を鳴らしながら歩く姿はどこか余裕を感じさせるものだった。

あのボサボサとした白い髪に華奢な体付き、標準よりも小さめに思える身長は同じへスティアファミリアに所属する少年、ベル・クラネルとそっくりに見える。

しかしベル・クラネルと断定するには不可解な点があった。

 

 

「おれ……私よりも随分先に出たのに……何で入口近くに?」

 

 

それはここがダンジョンの入口のすぐ近くだったから。

付け加えて言えば階段を降りてすぐに広がる一本道を歩いていたからだ。

一本道が終わる最初の脇道から見えたからさっきまでダンジョンにいたとは考えられない。

彼女にとって短い間だけだが一緒にいた感覚からして、ベル・クラネルという少年の性格は好奇心旺盛な子供といったものだった。

 

ホームを出てすぐにダンジョンに潜り一階層のモンスターの討伐、更には勢いに乗り二階層まで進んでいきそうだと思っていたが予想とは真逆の現実に少しばかり彼女は目を見開いて驚く。

まさか二時間程の時間差があったにも関わらずに先にダンジョンに入ったのが自分だった事に驚いたのだろう。

それと合わせて彼が今まで何処にいたのかが気になってくる。

 

 

「……つけてみよっかな?」

 

 

暫く後を追ってみても向こうが此方に気づく様子はない。

それならこれから何処に行くのかついて行くのも面白いかもしれない。

宛もなく歩いているのか目的があるのか……正直帰ろうかと思っていた此方としても何かしらの目的が出来るのだから悪い考えでもない。

なので気付かれないように後をつけてみることにした。

 

 

 

 

 

 

「モンスターがいる……」

 

 

追跡対象のベル・クラネルは道中に発見したモンスターを狩りながら歩を進めていた。

そう、先程までどんなに歩いても見つからなかったモンスターがこれまでで五体は遭遇している。

 

 

「私の運が良いのか悪いのか……どっちなんだろう……」

 

 

モンスターになるべく会わないというのはダンジョンに潜る冒険者にとって共通する考えだと考えている彼女でも、流石に一度も会わないというのは自身の運が悪いのかと疑ってしまう。

実際に目の前にいる彼はモンスターと遭遇している訳だしこの階層にモンスターがいないなどという事はないから運が悪いという事は間違いではない気もしてくる。

 

それから暫く経った頃、彼女は今歩いている地点に見覚えがある様な気がしてきた。

憶測は現実味を帯びていき、ある程度まで進んだ辺りで確信がつく。

 

 

「まさかベル君……ほんとに二階層に行く気なの?」

 

 

ここは二階層への階段がある場所だった。

その階段を見下ろす形でベルが立っている。

記憶によればベルの担当もエイナだった筈なので、彼女にされた説明はベルも聞いている筈だった。

ダンジョンに潜り始めてから一週間は一階層で探索というものに慣れていく事から始めるという事。

口酸っぱく言われていたのを思い出し、彼もこの話を散々聞かされた筈だと考える。

けれど彼は今、二階層へと続く階段の前でうんうんと唸りながら立ち往生している。

その様子から彼もその事を知っているだろう事は把握出来るがその足はだんだんと階段に近づいていってる。

その足が段差にかかるのにはそれ程時間が掛からないであろう事も容易に想像出来た。

だからこそ、ここで放っておく訳にはいかない。

 

 

「ベル君、何をしてるんですか?」

「わっ!え!?あ、アイちゃん?」

「エイナさんから二階層に行くには一週間ほど掛けて一階層に慣れてからと言われていた筈です。まさか約束を破るつもりですか?」

「へぇっ!?……や、そ、そんな事はないけど……で、でも……」

「……」

「……うぅ……」

 

 

慌てふためきながらもその視線はちらちらと階段に向けられている。

何故ベルが約束を破ってまで二階層に行きたがるのかは彼女には想像がついた。

先程までのモンスターとの戦闘を見ていれば分かる。

彼とモンスターとの戦闘は一方的と言ってもいいレベルだった。

苦戦という苦戦もなく階段まで辿り着けてしまった事から余裕が出来ているのだろう。

もしかしたらダンジョンに潜ってから、一度出て戻ってきた所に出くわしたのかもしれない。

それなら彼のモンスターとの戦闘で感じた慣れのようものの理由がつく。

確かに緊張感をもって臨んだダンジョンで、拍子抜けな程楽に行けたらそう考えて仕舞うのも分かる。

けれどそれとこれとは話が別だった。

 

 

「ダンジョンでは何が起こるか分からないともエイナさんは言っていました。ダンジョンに入って初日にこれは流石にどうかと思います」

「うぅっ……」

 

 

アイの言葉にベル自身思う所があるのか顔を顰めて俯いてしまう。

厳しい事を言っているようだが彼女の言っている事は間違いじゃない。

エイナという女性も言っていた。

調子に乗って降りていった冒険者が最後どうなっていったかを。

そんな冒険者を何人も見てきた事を。

彼は楽観視しているようだが腐ってもここはモンスター蔓延るダンジョン。

降りていけば行く程困難になるダンジョン内において油断は死を招く。

それを体現しようとしてる彼を引き留めようとするのは当然と言えた。

 

 

「……な、なら!」

 

 

が、そんな正論が効かないのも好奇心旺盛なベルの性格からして分かりきっている。

どうしても二階層に降りたいベルは代案としてアイに交渉を持ち掛けた。

 

 

「二人なら!二人なら二階層に降りても良いって言ってたよね!?」

「うっ……」

 

 

今度は逆にアイの顔が顰められる。

例えベルからフードを被ったアイの表情が窺えなくても声の調子からどちらが優勢かは分かる。

そのまま勢いに乗って畳み掛けるように話し出す。

 

 

「確かに初日で二階層に行くのは早いのかもしれない。けど、二人ならエイナさんの言ってた通り潜れると思うんだ。勿論油断してる訳じゃないし危険だってことも分かってる。けど、二人なら一階層で戦ってもあまりお互いの戦い方とか分からないと思うんだ。ある程度の強さじゃないと連携とかを確かめられないと思う。だからこそ二階層に行くのは間違ってないと思うんだ」

「……うぅ……」

 

 

ここぞとばかりに二人ならを強調して喋り出す。

いつもはこんなに口が回らなさそうなのに今はやけに饒舌だ。

反論したい所だが上手い言い訳が見つからないのか口を開けては閉じを繰り返し、一向に言い返すことが出来ないでいる。

 

 

「我儘な事は分かってる。でも、僕は二階層に行きたいんだ!巻き込んじゃって悪いんだけど……どうしても嫌なら諦める。だから」

「……くれるなら」

「……?」

「帰りにじゃが丸くんを奢ってくれるなら……いいですよ」

「!本当!?ありがとうアイちゃん!」

「きゃっ!」

 

 

いきなり抱きついて来ようとしたベルをすんでの所で躱すアイ。

危うくバレそうになる所だったので躱せた事に安堵のため息をつく。

 

 

「……同じ事をしたらすぐ帰りますよ」

「ご、ごめん……嬉しくてつい」

「……はぁ……行きましょう。遅くなったら大変ですし。危なくなったらすぐに帰りますからね?」

「うん!分かった!」

 

 

ベルは嬉しくなったのかその顔を輝かせて階段まで走ると駆け足で降っていく。

まるでおもちゃを貰った子供のような行動にこの日三度目のため息が零れた。

 

 

「……私も行こうかな」

 

 

二階層に行けばモンスターと戦えるかもしれない。

そんな事を考えながら階段に足を降ろす。

しかし、この良かれと思って決めた決断がこの後彼女にとって悲劇を生む事になるとはこの時の彼女はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 




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