ナザリックは辛いよ   作:せみらっか

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というわけで女子会です。
割とほのぼの平和です。


転移後第一回ナザリックかしまし女子会

 

 

 

 

 執事助手。エクレア・エクレール・エイクレアー

 密かにナザリックの支配を目論む彼は今、とある魔の園へ潜入をしていた。

 

 というか彼の創造主、餡ころもっちもちに抱えられて巨大樹に来ていた。

 

 

 

 

「ふふふふ……至高の御方々、その中でもぶくぶく茶釜様、やまいこ様、そして我が創造主であらせられる餡ころもっちもち様しか参加することを許されぬ「如死界(じょしかい)」!! そのような場所に居合わせることが叶うなど……フッ、私によるナザリック完全支配計画が成就する日も近いですね……!」

 

 

 

 

 

「んー! ちょうだねー! ほんとは【男子禁制入ったら即処刑】だったんだけど、なじゃりっくをしはいするためにまいにちがんばってるエクちゃんだけとくべつだからね〜! しゅごいねえらいね〜! きゃわいいよエクちゃん〜!! うりうりうり」

 

「おおおそんな餡ころもっちもち様……っ! ああ……っ! そんなところ撫でちゃ……っ!! んおおおお……っ!」

 

「……お腹撫でてるだけなのに、イイ声のせいでアレだね…」

 

わしわしと高速で撫でられあられもない声を上げるイワトビペンギンを見つめながら、半魔巨人(ネフィリム)が兜の下で苦笑いを浮かべる。

 その言葉は聴覚の優れた人狼である彼女にはまるで届いていないらしく、緩みまくった顔でひたすら自分の作った生き物を愛でている。

 

「もにもにのもっふもふ……たまんない……っぎゃんかわ!! この世界に感謝!! 一刻も早くエクちゃんの可愛さを世に知らしめねば……!!」

 

「え、世界征服云々の話の時、なんか乗り気だと思ったらそういうこと?」

 

「いやーもちろんそれだけじゃーないよー! ペスちゃんの可愛さも知らしめたいと思ってるよ!」

 

「結局それか! あーでも私もアウラとマーレが成長する前に! なんとか今の姿のうちに世にお披露目したい!!」

 

ピンク色のぷるんぷるんの物体が、腕の様な二本の触手をぐるんと巻いてガッツポーズの様なジェスチャーをする。

 その物体、ぶくぶく茶釜の制作したNPC、アウラとマーレはこの日留守だった。

 なんでも、出稼ぎに行ったギルド長その他のお手伝いをしているらしい。

 そのことを知った時、彼女は巨大樹の前で酸を流しながら咽び泣いたが、お金がないという理由の前には流石に振り上げた触手を引っ込めるしかなかった。

 

「NPCみんな意思を持って話せるようになったんだから、女子会もいよいよ本格始動だね!」

 

「あ、プレアデス誘ってお茶会とか良いね。ボクまだちゃんとユリとお話できてないし……」

 

「はいはいはいはいはい!!!!! マーレも!!!!! 引き続きマーレもいいよね!!!! 男の娘だし!!!! 娘入ってるし!!!! 男の娘という奇跡の瞬間奇跡の時間を共に女子達と過ごさせても構いませんよね!!!!???」

 

「うんうん、勿論いいよ、かぜっちならそう言うと思った」

 

「あはは、あたしも問題なーし! エクちゃん連れてくるのオッケーして貰っちゃったし〜!! うもももも……」

 

「おほおおおおお……餡ころもっちもち様…流石は我が創造主たられる至高の御方……っこ、このような……御技をお持ち……とは……っあふんっ!」

 

白目を剥いてよだれを垂らすイワトビペンギンをなおも撫でるその手を見つめながら、やまいこはやや羨ましそうにポツリと呟く。

 

「いいなぁ、あんちゃん。人狼系って、リアルと今とで他の人と比べて生活のギャップ少なそうだよね」

 

「そーいやそうだね! いやーユグドラシルの時は結構地味かなー? って思ってたけどこの姿にして正解だったー!」

 

「アヌビスが地味って本当よくよく考えたらものすごい濃いギルドだよねアインズ・ウール・ゴウン」

 

「ほんとだよね。見た目も中身も」

 

ピンクの肉棒が言うことじゃない。とツッコむ者はこの場にはいない。

 

「最終日ログインした時も懐かしいとしか思わなかったし。感覚麻痺してたな」

 

「あはははは! あけみちゃんも最初来た時めちゃくちゃビビってたもんねー!」

 

「はいあんちゃんアウトおおおおおおお!!!!!!!!」

 

ピンク色の触手が光の速さでアヌビスの足を酸でジュッとする。

 

「あっっっっっつぁ!!!!!! 何すんのかぜっち!!!」

 

「なにすんのじゃないあんちゃん!!! 「あ」と「け」と「み」は、やまちゃんの前では続けて口に出しちゃいけないってあの日私たち夜空の向こうに誓ったじゃない!!」

 

「ホワアアアアア……そ、そうでした……ごめんやまちゃん……あたしを気がすむまで殴ってくれ」

 

「いやいやいやそんな大袈裟な! 知らなかったしその誓い! 気にしないで、ボクもあの時のあけみ可愛かったなって、ちょっと懐かしかったし。ていうかほら……そういうの、ボクだけじゃ無いし。むしろ、今まで通り、せめて……かぜっちとあんちゃんだけには、気を使って欲しくない、かな……って……」

 

 

ややどもり気味に、しかしはっきりと、目の前の友人二人に自身の思いを伝える。

 やまいこは女子会前、きっと二人が妹のことで自分に気を遣ってしまうのでは無いかと心配していた。そして、どうか気を遣わず、以前の通り仲良く普通に接してほしいと伝える機会を密かに伺っていたのだ。

 まさかここまで早くどストレートな場面に直面するとは思わず、

 

(まさかかぜっちとあんちゃん……ボクが言い出しやすい空気をわざわざ作ってくれたのかな……)

 

とデミウルゴスさながらの深読みスキルを発動させていた。

 もちろんそんな事はつゆとも知らず、二人はやまいこのリアルカルマ値プラスオーラの前にただただ怯える様に体を震わせる。

 

「天使かよ……」

 

「天使かよ……ごめんそうとは知らずユグドラシル時代あたし同族沢山狩ってしまって……」

 

「いや、半魔巨人ですよ……?」

 

「わかった……!やまいこ様がそう仰られるなら今まで通り普通に気を遣わず接させて頂きます!」

 

「は!右に同じく!」

 

「……なんか別のベクトルで気を遣い始めてない?」

 

「ハッ!ごめん……なんだかやまちゃんがものすごくでっかく眩しく見えて……殿上人かなって思ってつい」

 

「いやまあ実際大きいけど……おかげでまだ日常生活に慣れてないし……」

 

そう言って半魔巨人(ネフィリム)は困った様に鎧で覆われた後頭部を撫でる。

 それに同調する様にアヌビスも自身の耳をぱたぱたする。

 

「あ、それはあたしもだよー。耳と鼻が良くなったもんだからなんか落ち着かなくって。そういや、モモンガさんとかアンデッドの人らは睡眠欲も食欲も無いんだって?」

 

「らしいね。スライムってどうなんだろ…今んとこ食べたいとか眠いとか特に無いけどなー、できないこともないのかな?」

 

「普通に歩いたり、喋ったりするのはまだいいけど…お風呂がちょっと、大変じゃない……?」

 

「「あー!! わかるぅう!!」」

 

ビシッと指と触手を向けられて、やまいこはビクっと体を震わせた。

 

「あたしどこまでがボディーソープでどこまでがシャンプーでどこまでが洗顔フォームなのか全然わかんない! もういっそ全部ボディーソープで洗っちゃおっかな〜って思ってたりしてー」

 

「私なんてどこをどう洗って良いもんなのか全然皆目見当がつかないよ。今度ソリュシャンに聞いてみよっかなー」

 

「そ、そっか……ボクは色んなとこにゴンゴンぶつかっちゃって……毎回蛇口壊してメイドさんに迷惑かけてるし……」

 

「あ! お風呂で思い出した! 今度みんなでスパ行こうよ!!」

 

「おおいいね! そういやすっかり忘れてた!」

 

「あ……行きたい……! ボク、実はずっと気になってたんだよね。でも、一人で行く勇気がなくて……」

 

「おっしじゃー決まり!! いえー!! 古代ローマのお風呂、実際に入れるなんて夢みたい!」

 

「アヌビスが古代ローマ……! うわ、なんか違和感すごそう」

 

「言われてみれば確かに……! かぜっちは何風呂入りたいの?」

 

「そりゃーもちろん炭酸風呂」

 

「か、かぜっち入ったら強酸風呂にならないかな?」

 

「あ、どうだろ……普通のお湯なら大丈夫だったけど炭酸はまだ試してないしなー……下手したら体積増えるなんてことに……ヤベー乙女の死活問題!」

 

そう言ってぶくぶく茶釜はぶるんぶるんと体を左右に揺らす。

何度も言う様だがここにツッコむ者はいない。

 

「いっそのこと、スパで女子会ってのもありかもね!」

 

「ああそれいい、楽しそう……でもそれだとさすがにエクレアとマーレは連れていけないね」

 

「うーん……そうか……まあスパはしょうがないか…」

 

「あれ、良いのかぜっち? てっきりマーレきゅんは男の娘という性別だからセーフ!! とか言うと思ったのに」

 

「うんそう思ったけどさ。それで通すとあのバカ弟に大義名分与えてしまう気がして。下も無いけど上も無いから男湯でイイヨネ!! とか言ってアウラとシャルティア連れ込みそうな気がして」

 

「い、いくらペロロンチーノさんだからってそんなことまでは……」

 

「いやあり得る。こっちにきてからあのクソの元々無い脳細胞が急速に死滅していってるのを感じるし。まあアウラに指一本でも触れようもんならフレンドリーファイア解禁記念の最初の墓標(オブジェ)となってもらうけど」

 

「お、最初の犠牲者はるっしー★かなーと思ってたけどペロくん説も濃厚になってきたねー」

 

「あはは……まあ、とにかくスパ女子会は正真正銘女子だけって感じだね」

 

「うーん仕方ない。ごめんね〜エクちゃん。あ! でも露天は混浴だから、そこなら背中流しあいっこ出来るね!」

 

「い、いえ……流石にレディー達のおっふ……あられもない姿をあふんっ! 目に入れるわけには参りませんのでおほほおお……っ!!」

 

「レディー達の前であられもない姿晒すのはいいのか」

 

「あ、でもその場合ニューロニストはどうなるだろ?」

 

「誘ったら喜んでくれそうじゃない? 無性でも心は女の子みたいだから」

 

「そういえばボク、ニューロニストの見た目、前ほど苦手じゃなくなったかも……」

 

「あ! あたしもー! やっぱ精神も異形種化してってるからかな?」

 

「あんちゃん前から割と何でも平気だったじゃん。恐怖公をカワイイ呼ばわりしてギルメンの半数ドン引きさせてたじゃん」

 

「ちっちゃいモノは基本かわいい! ていうか恐怖公だったらかぜっちも平気でしょ? 小さい頃はペロくんの部屋に出たやつ、お小遣いと引き換えに退治してあげてたって聴いたよ?」

 

「あの野郎ぉ……余計なこと言いやがって……」

 

「ていうか、かぜっちはどう? スライムになってからなんかそういう好みの変化とかあった? ヘロさんステキ! と思ったりした?」

 

「ちょ! やめてよそんなのあるわけないじゃん! なんでよりによってヘロヘロさん!? あの人転移して早々メイドに興奮するわ溶けたふりして私にボディータッチしてくるわ! スライムの癖にラブコメ主人公みたいなことしてんだよ?」

 

「えー!? マジでっ!? うわショック~ヘロさんって貴重な常識人枠だと思ってたのにー」

 

「おまけに触った瞬間なんか物凄い黒いドロドロした情念っていうか社会への恨み辛みみたいなものが流れ込んできたし……」

 

「……え? それウルベルトさんじゃなくて?」

 

「うん、なんか「納期が…」「上層部が…」っていう言葉が頭に響いてきた」

 

「そっか、あの人リアルでプロ社畜だったっけ」

 

「あーそういやヘロさん、メイド達に何か頼むたびハイヨロコンデーって幻聴が聞こえてきちゃうらしくて、なんかえらい落ち込んでたわ。「メイドが動いて喋って働くところを見るのが好きなはずなのにどうしてこんな…」ってブツブツうごうごしてたからそっと離れたけど」

 

「拗らせてるなー。まあ弟がメイドにバカな命令しようとするのを絶対止めるマンだから良い人だとは思ってるけど。病んだスライムはちょっと」

 

「社畜と言えば、モモンガさんも悩んでたね……NPC達がみんな社畜精神半端なくてこのままじゃナザリックがブラック会社と化すって」

 

「セクハラ上司、鉢合わせる度喧嘩する上司、話長い上司、会社の金横領して変なオブジェ作る上司エトセトラエトセトラ」

 

「うわクソ」

 

「でも部下(NPC)たちは尊敬してくれるんだよね……ならまあ、いいんじゃない? とりあえずは」

 

「まあそうだねー! 誰もそこまで困ってないし!」

 

「うんうん、ナザリックは平和平和!」

 

 

 

あははは、と楽しそうな笑顔溢れる巨大樹。

その中で、未だもふもふされお腹の毛をボサボサにしたイワトビペンギンの執事助手は

 

(「如死界(じょしかい)」とはかくも恐ろしい会議で御座います……)

 

とゴクリと唾を飲んだ。

 

 

 

 

 




冒頭の執事助手を執事女子と誤字って深夜一人で興奮していました。

餡ころもっちもちさんは完全に捏造しています。
餡デッドにしようかなとも思ったんですが無類の動物好きかなと思いアヌビスの風貌をした人狼に。
なんとなく性格は女版建御雷さんなイメージ。
一人称あたし。大抵の人のことは愛称で呼ぶ感じ。

NPC出したいとか言って最初がエクレアになるとは。
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