これまでで一番内容的に色々ひどいです。
そして主にガーネットさん、チグリス・ユーフラテスさん、ばりあぶる・たりすまんさんの見た目捏造をしています。
「そういえば……僕みたいなスライムって種族的に性別あるのかなあ……?」
全てはヘロヘロの、何気ない、その発言から始まった。
「『性別』……とうとう口に出してしまったかその言葉……」
至高の41人が一人、ガーネットが、地の底が揺れ動く様な低い声を発する。
円卓にかつてないほどの緊張が走るのを、ギルド長を始め41人全員がそれぞれ感じ取っていた。
「え? え?」
「私たち一同、性別はリアルの時のままの認識で問題ありませんよねって暗黙の内にアイコンタクトを交わしていたと言うのに……やはりスライムは他の種族とものの見え方が違ったと言うことか……」
自分が発した言葉の重みを理解せず、うろたえるヘロヘロをじっと見つめた後、ゆっくりと、チグリス・ユーフラテスは首を左右に振る。
「いやまあ実際違いますけど……え? なんか問題ありました……?」
「「あるに決まってんでしょうがああああっ!!!!」」
「あああ!! チグリスさん! ガーネットさん!!」
いきなり頭を抱えて卓に勢いよく突っ伏した二体に、モモンガは思わず席を立って駆け寄った。
悪魔系であり、女神ヘカテーをモデルとしたチグリス・ユーフラテス。
精霊族であり、水の精ウンディーネをモデルとしたガーネット。
苦悩の雄叫びを上げた二人の共通点は一つ。いや二つ。
そう、うつ伏せになり、テーブルの縁から伺えない位置に隠れた彼らの胸には、見過ごせないほどの立派なたわわが実っていた。
「いや、まあ……二人とも大丈夫ですって……少なくとも此処にいる皆はお二人が男性であることは知っていますし……今更二人に対して態度を変えるという事はないですよ……」
「なんだとぉ!? アタイのこの姿が美しくないというの!!??」
「このたわわを前に欲情しないってのかこの精神の異形種どもがぁ!!」
「こっちはフォローしてるんですよ!!? あーもうめんどくさいなあTS勢!!」
今度はモモンガがテーブルに突っ伏す番だった。
ここに来てから聞き慣れた精神沈静化のエフェクト音が虚しく脳内で響き渡る。
「い、いや、別に女体化したお二人をディスるつもりはなくてですね……ただあるところにあったもんが形を失った事実を目の当たりにして、ちょっと疑問を覚えただけで……」
「女体化言うな!!!! いいじゃないっすかスライムは無かった場所からだって作り出せるわけでしょ!!? かつてのものより立派なものを生成することだって可能なわけでしょ!!??」
「そうだよヘロヘロさん!! スライム種であることに誇りを持とう!! 我々は無限の可能性を手に入れたんだよ!!??」
TS勢に混じって何故かぶくぶく茶釜まで熱弁しだす。
そう聞いては黙ってはいられないとこれまた何故か火がついたギルメンが声を張り上げる。
「おいやめろよネカマ種にスライム種ども! ここにカタツムリ型異形種、ばりあぶる・たりすまんさんもいらっしゃるんだぞ!」
「そうだぞ! 逃れられぬ雌雄同体という哀しき運命を背負っておいでなんだぞ!」
「うお……触れてきやがった……やめろよなるべく目立たないようベル・リバーさんの隣に座ってたのに……」
突然槍玉にあげられたばりあぶる・たりすまんが、居た堪れなさそうにその背に負う殻の中に体を引っ込める。
「あ、私隠れ蓑にされてました……?」
「いやまあスライムみたいなもんかなと思ってましたけど、固有スキルに
「タブラさんそういう知識みだりに口にすんのやめましょうか……つーか本当勘弁してくれよ自分の中でまだ整理ついてないのに……」
殻の中から物悲しげに響く声。
確かに転移後、彼の見た目に関してはなんとなく触れるのを避けていた節があったのだが、こういう話題となってしまった以上注目が集まるのは避けられない。
モモンガはなんとかこの場を収めようと思考を巡らす。
「いや……まあ、あるかないかで言ったら、使用することのないまま俺も骸骨になってしまったわけですし、無かったところで一部のNPC達には関係ないというかむしろそっちのほうがいいとか喜ばれてしまっている始末ですし……………………よしましょうかこの話」
自分で言っていて悲しくなってしまったギルマスを筆頭に、何人かの『使わずして息子とさよなら』勢は地獄の底の葬列に並ぶような面持ちで卓に突っ伏す。
「ほらモモンガさんもこう言っていらっしゃるんだ!!」
「ギルド長の意見に逆らうってのかアァン!!??」
割と事の発端な気がしないでもないTS勢二人が輩のようにモモンガに同意する。
ステータス異常が無効にも関わらず、押し寄せるような疲労感に肩を落とすギルマスを見かねて、ずっと我関せずを貫いていた山羊頭の悪魔がそっと口を開いた。
「まあ……種族的にそうなってるもんは仕方ないだろう。それぞれ折り合いをつけていくしかないんだし、外野がガタガタいうものではないさ。何か本格的に不味い事態に陥らない限り、この件は当初通り「触れない」って方向で行こうぜ」
静かに、なるべく穏やかに努めた声は、白熱しつつあった円卓に爽やかな静けさを齎しつつあった。
珍しくまともなことを言うものだと、普段いがみ合う立場であるたっち・みーも感心した様にその発言に頷いていた。
ーーしかし。
「そうは言うけどウルベルトさんだって分かんないじゃないですか。バフォメットって確か両性具有じゃなかった?」
収まりかけた場に爆弾を投じたものが一人。
アインズ・ウール・ゴウンが誇る問題児、るし★ふぁーその人である。
「…………いや、モデルになったのはそうかも知れんが性別はちゃんと男だから」
「でもアバター初期状態じゃ服着てるし下どうなってるか分かんないじゃん? 確かめました?」
「………………いや、つーか分かるだろうが胸ある様に見えるか?」
「バカだなウルベルトさん。この世にはつるぺたと言う至高の存在があって」
「ペロロンチーノ、黙ろうか」
声色は変えずに努めて冷静に全力逃走を測るウルベルトを、問題児&(下半身が)問題児は逃がそうとはしない。
なんでもない様に装ってはいるが、山羊の目がめちゃくちゃ泳いでいるのに気づかないものはいない。
ぺちょっと、手のようなものをウルベルトの肩に置くのは、殻から這い出たその目に悲しげな色を湛えた、ばりあぶる・たりすまん。
「ようこそ雌雄同体被害者の会へ……」
「やめろ、たりすまん。俺はお前ほど強い子じゃないんだ。今まで信じていたものが虚構であったかもしれない事実を目の前にして簡単に明日へと踏み出せる様な精神を持っちゃいないんだよ。撃たれ弱い大災厄の魔なんだよ」
《
『モモンガさん精神強制沈静化スキル貸してくれませんか?ちょっと泣きそう』
『すみません固有なんで無理です。俺も貸せるものなら貸したいです頑張ってウルベルトさん耐えて』
かつてないほど震えた声で送られたウルベルトの
円卓に流れた気まず過ぎる空気をぶち壊したのは、先程から実はその身をぷるぷると小刻みに震わせていたピンクの粘体の、空を裂く様な雄叫びだった。
「っッしゃーーーーッ!!!!!! ケモふたなりきたーっ!!!!!! 流石ファンタジーッ!!! 素晴らしい!!! さあウルベルトさん今すぐセクシーなお姉さん系口唇虫を付けるんだ!!! なんだったら私が後ろから声吹き替えてあげてもよくってよ!!!」
「落ち着け姉ちゃん!!! 流石に業が深すぎる!!! 先ずはNPC達の中に真性ふたなりがいないかチェックするんだ!!!!」
「お前も落ち着けクソ鳥!!!」
「やばい!! なにか姉弟の触れてはならぬ禁断の領域に足を突っ込んでしまった!!」
こうなっては黙っていない桃色の世界の住人たる姉弟。
ある意味ウルベルト置いてけぼりでよく分からない闘いを展開しようとしている。
その間、当のウルベルトは恐怖でその身が震え出すのをギリギリの瀬戸際で耐えていた。
(やだ、なにこれめちゃくちゃ怖い。いや、悪魔ロールする分においては何の障害でもない。しっかりしろ俺みんなの言う様にガーネットさんやチグリスさん、それにたりすまんだっているんだ俺は一人じゃない。……本当にそうか…?もし、もしもガチで両性具有だったら。ケモなんちゃらとか言うよく分からん属性が為に俺はずっとあのバカ姉弟からネタにされ続けるんじゃないのか…?)
ぽん。
ぐるぐると永遠とも思える思考の渦に呑まれていたウルベルトの肩に、再度何者かの手が置かれる。
遠慮がちに、しかし決心したように。
ーー白銀の手甲に覆われた手が。
「ウルベルトさん…私は、その……ちゃんと以前の様に貴方に接していくつもりですから……」
ウルベルトの中で何かがバッツンと千切れる音が響いた。
「うるせええええええええっっ!!! 死ねええええええええ!!! どんっ・たっち・みいいいいいいい!!!!!!」
「おお本当だいつもよく見る光景!!!」
「しかし何故だろうたっちさん心無しか逃げ腰!!」
「一番フォローしちゃいけない人がフォローしちゃったなー」
「ザマァとか言われた方が楽だったろうなー」
「もうやめて!! ウルベルトさんの心のライフはとっくにゼロよ!」
円卓で繰り広げられるチャンピオンとディザスターの戦いを避けつつ観戦しながら好き勝手言うギルメンに、モモンガは精神沈静化も追いつかないまま悲痛な叫びを上げる。
「もういい!! もういいんですウルベルトさん!!! 大丈夫!! 万が一のことがあっても「ウルベルトさんの性別について弄らない」って言う取り決めを多数決で勝ち取りますから!! 署名運動しますから!」
(モモンガさんにしては珍しく死人に鞭打つようなフォローだなオイ)
そもそもの元凶たるるし★ふぁーが他人事のように心の中で突っ込む。
「……ありがとうモモンガさん。そうなったら大災厄の魔どんな手を使ってもこの世を去りますので探さないでください」
絶望の表情を湛えた悪魔が、まだその身を確かめもしないうちから漆黒の決意を表明する。
そして、その言葉に最も動揺を示したのは、モモンガでは無かった。
バァンッッッ!!!!!!
ガッシャンッッ!!!
カンッガランガランガランゴロゴロゴロ………
円卓の部屋の扉が、勢いよく開け放たれる。
ギルドメンバーは何事かと一斉にそちらに目を向ける。そこには、山のように積み上がったNPC達。一番下にはアルベドとシャルティアが。
そして…その山など目に入っていないとでも言うように、よろけた足取りでNPC達を踏んづけ、取り憑かれたように部屋へ入ってくる一体の悪魔ーーー。
「あ、デミウルゴス 」
「あ、デミウルゴス 」
「あ、息子さん」
皆が口々に呼び慣れたその名を口にする。
本来、彼が呼び出しもなく、ましてや断りもなく至高の41人の会議の最中に足を踏み入れるなど、ありえない事である。
実際、彼は部屋の前で聞き耳を立てるという所業を行っていた守護者統括と吸血姫、そしてそれにそそのかされたプレアデスや友人のコキュートスを諌める為にその場に居たに過ぎなかった。
だが、運悪く、彼の耳には入ってしまったのだ。
先のウルベルトの、絶望に染め抜かれたその言葉を。
「………う……る、べ……ると…様……今…今……なんと……」
ヤバい。
うちの最優秀社員賞を欲しいままにしているみんなのデミウルゴスが。
デミウルゴスがいるなら大丈夫と大抵のことは丸投げにされているウルベルトさんちの自慢の息子さんが。
未だかつてないほど動揺している。
「ウルベルト様……このナザリックを離れてしまわれるのですか……」
「あ、いや……」
自分の手がけた悪魔の、想像だにしなかったその様相に二の句が告げずにいたウルベルトの前で、デミウルゴスは崩れ落ちるように頭を垂れ、その首にどこから取り出したのか刃渡50センチ以上はある神器級の剣を押し当てる。
「何卒……何卒お考え直しを……!!! 私の至らぬ手際に御心を害されたのでしたら直ぐに命で以って贖わせて頂きます……!! ですからどうか……っ!! それでもこの地を再び離れると仰られるのであれば…何卒この首をお受け取り下さいませ……! どうか、どうか……っ!!!」
血を吐くような告白に誰かが何か言う前に、ドアが開いた拍子に持っていたティーセットを床にぶちまけてしまったソリュシャンが顔を真っ青にしてデミウルゴスの隣に土下座する。
「もっ……!! 申し訳ございません……っ!! あああ!!! 至高の御方々集う円卓の間の床を汚すなど……っ!!!! この命では足らぬ重罪っ!!! どのような罰をも受ける覚悟はできております……っ!!! どうか、どうか私の命摘み取る前にこの床を清めるご許可を下さいませ……っ!!! どうか……!!!」
「そんな……!! も、申し訳ございません至高の御方々!! ソリュシャンは何も悪くないでありんす!! わたしがっ! 至高の御方々の御心を知るのも我らが役目と唆したでありんす!! ソリュシャンの替わりに、どうかこの命で以って謝罪を……!!!」
「何を言うのですシャルティア!! お前達ばかり至高の御方々の懲罰に預かろうだなどとそんな羨まし……その様なこと守護者統括として見過ごすわけにはいかないわ!! どうか!! この者らの咎は全て私一人が請け負うべきもの!! ですから罰はどうぞこの私!! アルベドめにお与えください!!」
「だああああやめろデミウルゴス !! ソリュシャン!! シャルティア!! アルベドお!!! その刃物置きなさい!! めっ!! そうやってすぐ自害しようとしちゃダメでしょって言ってるでしょってモモンガさんから言われてるでしょ!!!」
「友達をかばうシャルティアホワアアアアアアアアアアアア!!!!! なにこれすっげいい子!!!! そんないい子に育てた覚えないよシャルティア可愛い!!! 可愛い・オブ・ザ・ナザリックううううう!!!!!」
「ちょっと待てえええええ!!!! うちのアウラ&マーレを差し置いて可愛い・オブ・ザ・ナザリックの座を譲ると思ったかクソ弟おおおおおっ!!!!」
「ややこしいときにややこしい争い繰り広げんじゃねえバカ姉弟があああああああ!!!!!!!!!!」
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様々な、本当に様々な手を使ってその場を収めてから、次の日。
無事、確認を終えて自室から出てきたウルベルトを、ハラハラした面持ちで見守っていたモモンガとデミウルゴスに。
大厄災の魔は、安堵と疲労と謎の達成感を表情に浮かべ、その場に崩れ落ち喜びに咽び泣いたのであった。
というわけで。
41人も居りゃ二人くらいTS居そうですよねって思いまして、詳細出てないのを良いことにガーネットさん、チグリス・ユーフラテスさん、ばりあぶる・たりすまんさんを犠牲にしてしまいました。
詳細出次第さらっと別のギルメンに差し変わるかもしれません。
しかし一番被害を被ったのは何故かウルベルトさん。やっぱりある程度情報が出てる人の方がオチつけやすいですよね。ごめんなさい。