至高の御方々より通常運転な気がしないでもない。
因みにアルベドちゃんはビッチのままです。
至高の41人が集う円卓の間。
そこでは現在、彼らアインズ・ウール・ゴウンは【転移後第一回定例報告会議】という名の雑談を繰り広げていた。
その部屋と廊下を隔てる分厚い扉には、ぴったりとその耳を押し付けて顔を赤らめ小声で興奮した声を漏らす女が二人。
「ああ…至高の御方々のお声……どんな美しい協奏曲も霞むほどの甘美な響き……くふー! たまらねーっ!」
「41もの御方々が揃うなど、再集結されたあの日以来なかったでありんすからねえ……ああっ! 今ペロロンチーノ様のお声がっ!!」
「も、モモンガ様と談笑していらっしゃるわ……! はぁ…なんて麗しいお声なのかしら……」
タイプは違えど甲乙つけ難い二人の美女が扉に耳を押し付けて息を荒くしている様は、端から見るとかなりアレな光景なのだが。
そんなことは、シャルティアとアルベドにとっては全く以ってどうでもいいことであった。
つい先刻、41人で集まって会議を開くので、その間緊急の業務があるもの以外は休むように、とギルド長たるモモンガから全NPC達に通達があった。
それを知って我先にと、密やかに速やかに扉の前に集ったのは、この両名であった。
普段は至高の存在を巡り、何かといがみ合っている二人であったが、扉の前でお互い視線を交わしたかと思うと、大きく頷きあい手をがっしりと握り合った後、ほぼ同時に現在の体勢に入った。
耳に全神経を集中させ、少しも声を聞き漏らさんとする精神と闘魂は最早ラビッツイヤーが自前で生えてきそうなほどである。
しばしただただ興奮し扉の前で悶え合っているだけであったが、ふと、漏れ聞こえた単語に、二人の顔は訝しげな色で曇る。
「……? せい、べつ? 何のお話でありんしょう……?」
「
「でも、至高の御方々が集まってなぜそのような話を……?」
実際はヘロヘロが、自分の種族の性別云々の話を出した、後の大事故の引き金となった一言だったのだが。
そのことを二人は知る由もなく。
「ま、まさか……っ!」
「え? なに? なんでありんす?」
はっと口を押さえ、ぶるりとその身を震わせたアルベドに、シャルティアはただただ困惑する。
そんな吸血姫にバッと向き直り、純白の悪魔は恐怖とも歓喜とも取れる、震えた声で言葉を紡ぐ。
「分からないのシャルティア!? 至高の御方々は我々守護者から……いえ、アインズ・ウール・ゴウンに仕える全ての者たちの中から、≪ある者≫を選別なさろうとしておいでなのよ!」
「せ、選別!? ≪ある者≫とは、一体なんなのでありんす!?」
「【聖別】……つまり我々から選別された、特別な存在……そんなの、ひとつしか、ないわ……っ!」
わなわなと震えるアルベドを不安そうに見上げながら、ただじっとシャルティアは続きの言葉を待っていたのだが。その前に、彼女の中でも一つの合点がいったらしく、ハッと眼を見開く。
「ま、まま、ま、まさかっ」
「……そうよっ」
「 夜 伽 の 相 手 に 決 ま っ て い る じ ゃ な い の っ ! ! ! 」
「んなああああああああああっっ!!!!!????」
「馬鹿ッ!!! 声が大きいわよ!!」
余りに余りのことに叫んだシャルティアの口を慌てて押さえ、至高の存在達に聞かれてはいないかとアルベドは肝の冷える思いで恐る恐る扉に耳を近づける。
『あるに決まってんでしょうがああああっ!!!!』
しかし漏れ聞こえたのは、麗しくも哀しき漢達の声。
その慟哭にびくっと身を震わせながらも、どうやら自分たちの声が聞こえていなかったことに、二人は安堵のため息を漏らす。
「こ、この声は、チグリス・ユーフラテス様とガーネット様……?」
「相変わらず見目に反した雄々しいお声でありんすぇ……しかし、随分白熱していらっしゃる御様子……」
「当たり前よ……! 至高の御方々のお世継ぎを産むかもしれない者の大事な聖別の儀なのよ…っ! ああ……一体何方が誰をお選びになるのかしら……! 私でしたら…お求め頂けるのでしたら何名いらっしゃろうとっ! 一度に、何名であろうとっ! 精一杯っ! ご奉仕させて頂きますのにい……っ!!」
「ああ…ペロロンチーノ様……わたしをお選び下さるでありんしょうか……もし、もし別の女を選んだりしたら…っ!! ああ……っ、でもユリとか……いいでありんすねぇ……その際は是非、同衾叶わずともお側でじっと観察させて頂きんしたら……若しくは、モモンガ様と褥を共にしている所をペロロンチーノ様にご覧に……っ! ああんっ!」
それぞれがそれぞれのエグいまでの性癖を晒して廊下で悶えている事を、彼女達をそう作った張本人二人は知る由もない。
「は!! 待ちなんし!! 今……ぶくぶく茶釜様は、なんと!?」
「スライム種の……無限の可能性……!?」
「そ、ソリュシャンのことでありんしょうか!?」
「な、なんですって!? あんの糞ビッチがああああっ!!! いつの間に至高の御方々の御心を……っ!!!」
「ちょっと!! あの子を悪く言うのは止めなんしっ!!!」
「ソリュシャンがどうかなさいましたか?」
「「うおっ!!!!」」
大凡美女が上げるとは思えない声を上げて慌てて振り向くと、そこには訝しげな表情を浮かべたプレアデスの副リーダーが二人を見下ろしていた。
「ゆ、ユリ!! いつの間にそこにいたでありんすか!?」
「つ、つい先ほど。至高の御方々の会議が長引いていらっしゃるご様子でしたので、ソリュシャンにお茶のお代わりを持ってくるよう告げて参りました帰りで……」
「そうでありんしたか……てっきりユリも至高の御方々のお声を聴きに来たのかと」
「……盗み聞きは宜しくないかと思いますが……」
至極真っ当な事を進言するユリに対し、アルベドは人差し指を立てて謎の聖母ドヤスマイルを浮かべる。
「何を言っているのです。これは至高の御方々の御望みをいち早く心得んが為、守護者統括として当然のことをしているまでよ」
「そうでありんすぇ。モモンガ様は休みを取るようにと仰有りんしたけれど、会議の御内容を聴くなとは仰ってはありんせん。つまりこれは、守護者としての在り方を至高の御方々が試しておいでだと言う事ではありんせんこと?」
「そ、そうですか……」
アルベドに便乗して、ドヤ顔で無茶苦茶な屁理屈を捏ねるシャルティア。
二人を見つめながら顔が徐々に引きつっていくのを自身でも感じてはいたが、ユリはそれ以上何と言えばいいか分からなかった。
「ほらユリも! そんなとこにぼーっと立っていないでわたしの隣で一緒に至高の御方々のお声を拝聴するでありんすぇ! ささ!」
「い、いえ! ぼ、私はセバス様より任された仕事がありますので……!」
「何ヲシテイル。シャルティア、アルベド、ユリ」
ユリを吸血姫の毒牙から救ったのは、意外といえば意外な人物であった。
「あらコキュートス。あなたこそ何を?」
「私ハ、会議ガ終ワリ次第、武人建御雷様御自ラ稽古ヲ付ケテクダサルト仰ラレタ事ヲ受ケ…鍛錬場ニテタダ待ツノモ不敬カト思イ、此方ニ参ジタ次第」
「要するに、ワクワクして待ちきれずに来てしまったでありんすね」
「ヌウ…」
図星を突かれたことを恥じたのか、コキュートスは決まり悪そうに顎をカチカチと鳴らしたーー。
「ああ! 待って……! また何か白熱していらっしゃるわ!」
「チグリス様とガーネット様がモモンガ様の援護をなさっておいでのご様子……」
「やはり聖別の儀のこととなると、至高の御方々の中でも意見が割れているということなのかしら……」
「オオ……至高ノ御方々ノ御世継ギ……私ガ剣ヲ教エル事叶ウノハ何方様ノ御子息ダロウカ……」
盗み聞きは不敬ではないかと咎めたコキュートスに、二人は即座にユリにした言い訳と全く同じ文言を告げた。
ただユリとは違い、コキュートスは結構マジに受け止めてしまい、こうして現在二人と一緒に扉に張り付いて至高の存在達の会話に耳を傾けている。
ぶっちゃけ殆どトリップしているためコキュートスの耳に会話はほぼ届いていないのだが、邪魔をしない限りはアルベドとシャルティアにとってはどうでもいい。
因みにユリはというと、コキュートスが籠絡されている間に辛くも逃亡に成功している。
そして数分後。
コキュートスに加え、アウラ、マーレ、ルプスレギナが。
アルベド&シャルティアに唆された面々が各々真剣な表情で扉に耳を貼り付けていた。
「……? ケモフ・タナ・リキター…って、な、なんだろうお姉ちゃん……ぶくぶく茶釜様……とっても喜んでいらっしゃるみたい、だけど……」
「うーん何だろう……あたしたちで用意できるものだといいんだけど……」
「ぶくぶく茶釜様は、ウルベルト様の同衾相手について話しているみたいっすね」
「……ああっ!! ペロロンチーノ様が!! 【
「オオ……オボッチャマ……其ノ調子デ御座イマスゾ……此ノ儘デハ直グニ爺ハ追イ越サレテシマイマスナ……」
「あら、珍しい組み合わせ……ルプーまで。皆様何をなさっていらっしゃるのですか?」
本当に何をしているんだ。といった有様の六名に、至って普通に声を掛けたのは、ユリに頼まれお茶を運んできたソリュシャンであった。
その姿を見とめたアルベドが鬼の形相でバッとソリュシャンに詰め寄る。
「ソリュシャン……っ!!!! お前……っ!! いつの間に至高の御方々に取り入ったのです……!!? 洗いざらい白状なさいその超絶テクニックを…っ!! 因みにそれは私でも実行可能な事!!?? スライムじゃないと出来ない手練手管!!?? 参考までにちょっと実演してみて頂戴!! やれるかどうか練習してみるから早く!!」
「ほんと隅に置けないっすねー! このこのー!」
「……一体なんの話をしていらっしゃるのでしょう……?」
「お前惚けるつもりっ!!?? くっ、門外不出の技だと言うのね…っ! 見てなさい私だって夜な夜な血の滲むような自主練を重ねて完成させた48の必殺技が…っ!!」
「ちょっと!! 突っ掛かるのは止めなんし!! ひとまずソリュシャンの神業テクニックについては後でじっくり聴くとして今は至高の御方々のお求めを知る事が先でありんす!!」
「…………あの、まさか、皆様……盗み聞きをしておりますの……?」
取り敢えず辛うじて分かったシャルティアのセリフ後半一部のみを抜粋して、ソリュシャンは顔を引きつらせる。
すかさず聖母ドヤスマイルからのハイパー正当化タイムを経て、コキュートス他三名ほどとは行かないまでも一応の納得を示すが、運んだお茶が冷めてしまうのを心配してなんとか皆に扉の前からどいてもらえないものだろうかと、ソリュシャンが思案したまさにその時ーー。
『うるせええええええええっっ!!! 死ねええええええええ!!! どんっ・たっち・みいいいいいいい!!!!!!』
「う、ウルベルト様……!!??」
「ま、まさか……同衾相手を巡ってたっち・みー様と争いを……!!??」
「うおおおおお!! 熱いっすうううう!!!」
「い、一体誰なの御二方に取り合われている
「…………あなた達、一体何をしているのですか」
本日何度目かのそれを口にしたのは、通りすがりのみんな大好き(セバスを除く)デミウルゴスであった。
「守護者統括として至高の御方々が望む事をいち早く理解しようと」
「盗み聞きしないと理解できないのはシモベとしてどうかと思いますよ守護者統括殿」
「盗み聞きしてはいけないと言われていないでありんす」
「シモベが頂いた暇の時間をそのような下卑た行為に割くとは、我々を信頼して下さっている慈悲深きモモンガ様は欠片も御疑いでは無かったでしょうね」
彼は勿論、二人の屁理屈に耳を傾けるような子ではない。
ルプスレギナとアウラとマーレはともかく…と、やっとトリップから帰ってきた友人を呆れた顔で見下ろす。
「君まで何をやっているんだコキュートス」
「……返ス言葉モナイ」
「ほらあなた達そこを退きなさい。ソリュシャンがお茶を運ぶのに邪魔ですよ。全く……」
そう言って扉の前の有象無象を追い払おうと、両手が塞がっているソリュシャンの替わりに入室の合図をしようと、手の甲を扉に近づけたーーその時だった。
「そうなったら大災厄の魔どんな手を使ってもこの世を去りますので探さないでください」
デミウルゴスの耳に入ってきてしまった、余りに、余りに余りに余りな、創造主の言葉。
彼の手は瞬時に力の限り握られた拳へと変わり。
そのノックは、未だ離れないアルベドとシャルティアごと吹き飛ばさんほどの勢いで、扉をとんでもなく豪快に開けてしまった。
そして極め付けに、アルベドの羽に引っかかって、部屋の内部に勢いよくぶちまけられるティーセット。
ーーそれ以降の流れは、前譚の通りである。
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「それで、モモンガ様……!!! 一体……どの者が何方様の同衾に預かる事になったのでしょう……っ!!!」
「もしまだ決めかねておいででありんしたら是非一度っ!!! わたし達の絶技を御見物頂いてからご判断頂きたくありんすぇっ!!!」
「……………………え?」
シャルティアだったらふたなりのこと知ってそうだけどそこはカマトトシャルティアんか゛わ゛い゛い゛な゛あ゛(鳥人間並感)という事で一つ。
処女ビッチアルベドもっとちゃんとハッスルさせたい。
守護者達キャラ崩壊させる方が罪悪感すごいっていう、何ていうかアレです。人ん家のお子さんに教育上よろしくない言葉覚えさせてしまった罪悪感に近いこの。アレ。