東方魂愛想   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 洞窟を歩く裕太達の前にケルベロスが現れる。

 そのケルベロスをやっとの思いで倒すものの、さらに強い妖怪達が沢山いる。

 その妖怪を避けるために横道を開けるとそこは広い空間になっていた。



 それではどうぞ!


第54話 守りたい

side裕太

 

「キシャー!」

 そう声を上げてゆっくりと歩いてくる。

 

 こいつは今まであった妖怪とは桁違いだ。それは忍冬も感じていることだろう。

 

 女郎蜘蛛は恐らくこの洞窟で最も強い妖怪だ。

 

 以前、人里の図書館で読んだ文献によれば確か、肉食の猛毒を持った妖怪だ。

 その毒は一瞬にしてそこら一帯を死の土地に出来るくらいらしい。

 

 触れただけで死ぬ場合もある。

 

 そしてその毒が歯にもあるから噛まれたらジ・エンドだ。

 

「参ったな。今までこんな最悪の状況、経験した事が無いぞ」

 それに忍冬も頷く。

 

 なんて無理ゲーなんだよ。

 

 そして脳裏に浮かぶのは死のみ。だがそんなネガティブになっても居られない。

 

 取りあえず刀を抜く。

 

 俺の能力が奴の毒にどれだけ効くかは分からないが、やって見ねぇことには始まらねぇよな。

 そう考え、思いっきり地面を蹴って走り出す。

 

「空頼君!」

 その叫び声が後ろから聞こえるが、知ったこっちゃない。

 今は必死に戦うだけだ。

 

 そして刀を構えて女郎蜘蛛を斬る。が、しかし刃が全然奴の体を削らない。

 硬すぎるのだ。

 

「またかよ……はは」

 そして女郎蜘蛛は俺を睨みつけてきた。

 

「はは。ダメだこりゃ」

 そして必死に走るも、女郎蜘蛛に服を噛み切られる。

 

 大事な服だったのにとか言ってる場合じゃない。

 

 即座に噛まれた周辺の布地を刀で切り落とす。

 

 皮膚に着いてしまったらどうなるか分かったもんじゃねぇからな。

 

「硬ぇな……」

 そして俺は先程手に入れた能力を発動させる。

 

「氷符《アイスロック》」

 すると女郎蜘蛛は足先から凍りついていく。

 

 凍れ。凍ってしまえ!と思いながら能力をかけ続ける。

「こ、この!う、動けない……」

 そして完全に凍りついてしまった。

 

 それを見て安堵する。そして

「空符《アイスブレイカー》」

 そして氷の中に含まれている空気を膨張させる。

 

 そして遂にバリィィン!と氷が完全に粉々になった。女郎蜘蛛ごと。

 

 勝った。そう思った瞬間、「キシャー!」と天井から女郎蜘蛛が降ってきた。

 倒せていなかったのだ。

 

 それを見た俺は一目散に逃げ出したのだが左腕が食われてしまった。

「ぐあぁぁっ!」

 と腕が無くなった肩を抑えながら地面を転がる。

 

「ひっひっひ……お前はもう終わりだ」

 肩がビリビリと痛み出した。

 

 焼けるような痛みを実感した。

 

 猛毒。俺の能力でも抗えねぇってのか……

 

 走馬灯が見えてきた。

 

 俺のじいちゃんとばあちゃんが川の向こうで手を降っている。

 じいちゃんとばあちゃんが居るってことは安全なのか?

 そう思って川を渡ろうとする。

 

 その時、何故かある人物の顔が思い浮かんだ。

 何故その人の顔が浮かんだのかは知らないが、それが思い浮かんだら何故か足が動かなくなった。

 そう。俺の意志に反して足が歩むのを止めたのだ。

 

 行ってたまるか。足がそう叫んでいるようだった。

 

 じいちゃん。ばあちゃん。俺はそっちには行けない。そう心の中で言って反対方向に走り出す。

 

 するとどこからともなく声が聞こえてきた。

「起きなさい!アンタの力はその程度だったの!?」

「目を覚ませ裕太!お前の乗り越える力を見せてみろよ!私達に」

 忍冬の声が聞こえた後に理華の力強い鼓舞の声が聞こえてきた。そして

「裕太。あんたは良い仲間を持ったね」「達者で生きろよ裕太」

 と言う優しい声が聞こえてきた。

 その声が聞こえた瞬間、涙が出てきた。

 

 じいちゃん。ばあちゃん。俺はまだやり残した事がある見てぇだ。だから

 そして視界が急に変わり、閉じていた目を開けて体を起こして右手で刀を持つ。

「ひと仕事、しますかね!」

 そして刀を右手だけで構える。

 

「空頼君!」『裕太君!』

 驚く声が聞こえてきた。

 

 そして何故かさっきまで焼けるように痛かったのが全く痛くねぇんだわ。あれか?アドレナリンって言うやつか?

 

 兎にも角にも俺はここに立って生きている。それが何よりも重要な事実。

 

「さて、女郎蜘蛛。そこを退いてくれるかな?」

 そして力強く睨む。

 

 裕太は知らなかったが、また目が金色になっていた。

 

 すると女郎蜘蛛は一瞬ふらついた。

(今のは……あの時の)

 

『南京錠の扉が暴れてるよ!』

 

 そして俺は刀を持って走る。

 

「何度やっても同じことよ!」

 そう言って糸を俺に飛ばしてきた。

 

 そして俺は糸の中を突っ切る。

 

 すると何故か糸が俺を避けるように飛んで行ったため俺に一切糸が付かなかった。

「ば、馬鹿な!」

 そして俺は女郎蜘蛛とすれ違うように女郎蜘蛛を斬る。

 

 すると数秒遅れて足から血が噴射した。

「こ、こいつ!」

 と噛み付こうとして来たので俺は頭を踏みつけるようにして回避する。

 

「忍冬!殺るぞ!」

 そういうと忍冬は頷いて手を前に突き出した。

「MAXモード」

 そう言うとどこからともなく例の大剣が飛んでくる。

 いつも思うけどどこから飛んできてるんだろう。ここは洞窟だし。

 

 そして忍冬は例の如く親指を噛んで血を出してその状態で大剣を握る。

 すると大剣は鎌になる。

「さあさあ!ブラッドパーティーの始まりだよ!アハハ」

 例の如く狂戦士化する忍冬。本当にこいつのコードネーム狂ってこいつに相応しいなと思う。

 

「しかしどう頑張ってもお前らは私には勝てないよ!」

 その言葉を無視して忍冬と共に走り出す。

 

「行くぞ忍冬!」

 

「わかった!」

 そう言って忍冬とクロスするように女郎蜘蛛を斬った。が、

「浅い!」

 そう。浅いのだ。

 

 どんだけこいつの体、固いんだよ。

 

 すると俺は女郎蜘蛛に掴まれてしまった。

「空頼君!」

 

 そして助けようと来る忍冬。

「来るな!」

 その助けを断る。

 

 ここで忍冬まで来てしまったら忍冬も恐らく殺される。それじゃ、誰が漠を倒すんだよ。

 

 そして俺は女郎蜘蛛に丸飲みされた。

 

 そして目を閉じる。

 瞬間移動しようにも手に触れているものはなんでも一緒に瞬間移動するから女郎蜘蛛も一緒に瞬間移動するから抜け出せない。

 

 すると喉に触れてみて思った。

 あれ?なんか柔らかい……

 

 そうだよ。忘れてた。

 

 肉体を鍛えて体を固くできる。なら鍛えられない場所はどこだ!?

 そうだよ。体内だ。体内だけはどうやっても鍛えられない。

 

 幸にも刀ごと飲み込まれた。なら!

 


 

side彩

 

 目の前で空頼君が殺された。

 

 丸呑みされて……

 

「何も出来なかった。また、守れなかった」

 そう。私は以前、大切な人を失った事がある。

 

 だから守りたかった。あの時、仲間だと言ってくれた空頼君の為にも……

 

 そして膝をつく。

 

 もう。何もかもがどうでも良くなってしまったのだ。

 

 漠を倒したかった。だけど私達はこの蜘蛛に勝てなかった。

 

 残念だけどしょうがない。これが運命だったんだ。

 

 すると急に女郎蜘蛛が苦しみ出した。

「ぐおぉ!ごがが!ぐはぁ!」

 と女郎蜘蛛は吐血した。

 

 どうして

『忍冬!』

 どこからともなく空頼君の声が聞こえてきた。

 

 どうして空頼君の声が

『今は直接脳内に声を送り届けている』

 そうか。空頼君の能力ならできる可能性がある。

 

『とにかくだ。こいつをどんな方法でもいいから高温に熱しろ』

 でもそんなことをしたら空頼君まで

 

『いいから早く!』

 急かされたので私はガスバーナーを取り出す。

 

 そして実は相手を焼き殺すために持ってきたガソリンを取り出す。

 

 それを思いっきり女郎蜘蛛にぶっかける。

 

「な、何をする!」

 

 そして着火したガスバーナーを女郎蜘蛛に向かって投げると燃え始めた。

「ぐぉぉっ!」

 

 これでいいかい?と心の中で呟く。

 するとその心の声が聞こえたのか『上出来だ』と言う声が聞こえてきた。

 

 あとは任せたよ。

 


 

side裕太

 

 徐々に熱くなっていく体内。

 

 まさか中から斬ったら皮膚が固すぎて貫通できないとは思わなかった。

 

 そして触ってみると鉄と同じような手触りだった。

 

 ならあの手が使えるんじゃないかと思ったんだ。

 

 そして滅茶苦茶熱くなってきたので俺は女郎蜘蛛を内側から凍らせた。

 

 するとさっきまで暴れていた女郎蜘蛛が大人しくなった。

「さすがに内側からの冷凍は避けられなかったみたいだな」

 すると皮膚にヒビが入ったのが見えた。

 

 そこを思いっきり斬った。

 

 するとバリィィン!と二種類の音が聞こえてきた。

 

 ひとつは氷が割れた音、もうひとつは……

「お前の負けだ!女郎蜘蛛!」

 

 そう言って大地に立つ。

 

 そして刀を見てみると半分に折れていた。

 

 今までの戦いで限界が来てたみたいだ。

 

 折れた先の部分を手に取って見る。

「ありがとうな。幽斬剣」

 そして目が元の色になった。

 

「ば、馬鹿な。この私が、この私が!」

 そして俺は女郎蜘蛛に向き直る。

「女郎蜘蛛。俺達にあってお前に無かったものが3つある」

 そして横を向いて往復するように歩く。

 

「1つは絶対に目的を果たすと言う気合いだ。

2つ目は強大な敵と戦うという覚悟だ。

そして最後は、守るものだ。一番重要なものであり、一番俺たちを強くしてくれたものだ」

 そして折れた刀を鞘にしまった。

 

「じゃあな。女郎蜘蛛」

 そう言うと女郎蜘蛛はぐったりとして動かなくなった。倒したのだ俺達が

 

 そして刀の所に向う。

 

 すると刀の横の壁から2人の男が出てきた。

 そのうち一人は

「ロイド……っ!」

 ロイドだった。

 

「流石だね。いやはや、この女郎蜘蛛を倒すなんて……この化け蜘蛛が!」

 ともう片方の男は蜘蛛を踏みつける。

 

 それを見て許せなくなった。

 俺達を殺そうとしてきたとはいえ、死んだ奴にそんなことをする奴が俺は嫌いだ。

 

「おい」

 と白衣を来た男を呼ぶ。

 

「なんだい?」

 

「テメェの名前はなんだ」

 そう聞くと男は名刺を渡してきた。

 

「私はチームトワイライトのマッドサイエンティスト。コードネーム『(やく)』どうぞお見知りおきを。その名刺は好きにして頂いて構いません」

 と女郎蜘蛛に足をかけながらお辞儀してくる薬。

「そうか……」

 そう言って薬の名刺をビリビリに破ってその場に捨てて踏みつけた。

 

「テメェ!?」

 

「好きにして構わないって良いって言ったよな?それにしても、初めて名刺を破ったけど、嫌な奴の名刺ってこんなにスッキリするもんなんだな」

 そう言うと薬は苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

 

「灰。殺れ」

 その言葉が聞こえた瞬間、ロイドが殴りかかってきた。

 

 間髪入れずにこいつとの戦いか……しゃあねぇ……

「勝負だロイド!今度こそ京哉の敵を討ってやるよ!」




 はい!第54話終了

 今回は途中でキリがいいところがあったんですが、文字数を増やすにはもっと書く必要があって、キリがいいところに来るとなんといつもの2倍になってました。



 次回の東方魂愛想は?

 路異怒との戦い。そして薬との戦い。果たして裕太は勝つ事が出来るのか?

「私はチームトワイライトの策士と呼ばれています」
 チームトワイライトの策士対
 VS
「実は俺も策士なんだ」
 対トワイライト組の策士

 そして
「外の世界にはこんな言葉がある。勝負は戦う前から始まっている」

 次回、第55話『勝敗は戦う前から始まっている』



 それでは!

 さようなら

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