ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~   作:マイン

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今回は現実サイドに視点が移ります。こっちサイドでも過去作からのゲスト出演があるのでお楽しみに

同時更新のオーブ外伝もよろしく。ではどうぞ


一方その頃現実では…①

ガヤガヤガヤ…!

「急患です!またSAOの被害者が…」

「またか…!?もう入院用のベッドは限界だぞ!クッ…一般病棟のベッドをかき集めてこい!なんとか受け入れるんだ!」

 聖都大学付属病院は、あのゲムデウスによるパンデミック並の混乱の渦中にあった。本来の部署を超えて全職員が総動員となり患者の受け入れ体勢を整えている。

 

 SAOをプレイしていたプレイヤー達の意識が戻らないことが発覚してから早10日…。各地の医療機関に搬送された被害者たちはSAOの出荷数とほぼ同じおよそ1万人にもおよび、その全てが万全の体制での入院を余儀なくされていた。何しろ何かの拍子にゲームの接続が切れてしまえば、間もなくナーヴギアにより脳を灼かれて死んでしまうのだ。受け入れる病院側は常にゲームを持続できるよう通常の生命維持設備に加えナーヴギアの充電を平行してできるような環境を整えねばならなかった。

 しかし、それだけの環境を用意できる病院は限られており、各地に点在するSAOプレイヤーの中には近隣にそのような医療機関が存在しない場所に住んでいるものもおり、事態は混迷を極めていた。

 そこで政府は、衛生省を通じゲーム関係の医療に最も精通している聖都大学付属病院を緊急の搬送先として全国に告知し、受け入れ先のないプレイヤー達はそこに搬送されることとなった。

 

「ハァ、ハァ…!」

 そんな聖都病院に、息を切らせた様子の女性とその娘らしき少女が駆け込んでくる。彼女たちは入るなり受付に向かうと鬼気迫る様子で尋ねる。

 

「す、すみません…!」

「は、はい…本日はどのような要件で…」

「あの…!『CR』って、どこに行けばいいんですか!?私たち、この病院の鏡先生って人からお兄ちゃんがここに運ばれたって聞いて…」

「は、はぁ…失礼ですが、お名前を伺っても?」

「はい…私、『桐ヶ谷翠』といいます」

「『桐ヶ谷直葉』です!」

「桐ヶ谷…!じゃあ、和人君のご家族ですか。失礼しました、CRはこの奥を向かった先にあります。今案内を呼びますので…」

「その必要は無い」

 受付の言葉を遮り、通路の奥から一人の医師がやってくる。

 

「鏡先生!」

「あの…貴方は?」

「私は鏡飛彩…この病院の外科医兼、CRのドクターを務めているものです。あなた方に連絡を入れたのは私の父の灰馬です。あなた方の到着をお待ちしていました。私がCRまで案内します」

「…あ、あの!そこに、お兄ちゃんがいるんですか?」

「はい。和人君と私は少々面識がありまして…まあ、詳しい話は後ほどにしましょう。ひとまず彼のところに…私についてきてください」

「は、はい!」

 迎えに来た飛彩に連れられ、翠と直葉は聖都病院の奥にあるCRへとやってきた。

 

「この先です」

 飛彩がCRの入り口を開ける。その先にはCRの診察台の傍に急遽誂えたベッドに横たわる和人と見知らぬ少女。そしてその周りには数人のドクターらしき男性とナースが一人、そして明らかに医療関係者には見えない数台のパソコンを相手に格闘している男性が一人居た。

 

「和人!」

「お兄ちゃん!?」

 和人の顔を見て思わず叫んだ翠と直葉は大急ぎで駆け寄る。ナーヴギアを被り点滴や心拍測定用のコードを貼り付けられた和人は、家族がやってきたことにも全く反応せずただ眠り続けている。

 

「…和人君のご家族の方ですね。私は鏡灰馬。この病院の院長であり、CRの総責任者を務めているものです」

「九条貴利矢だ。ここの監察医をしている、よろしく」

「花家大我…。この病院の医者じゃねえが、今は臨時でここの手伝いをしている。…あんたらの息子の隣にいるのが西馬ニコだ」

「私は仮野明日那です。このCRの専属ナースをしてます。……で」

 

 

「おぉのれぇぇ茅場晶彦ぉぉぉぅッ!!私の元から出奔しておきながら、このようなゲームを作るとはぁぁぁぁッ!!貴様なんぞが、この神の才能に及ぶはずが無いということを思い知らせてくれるぅぅぅぅッ!!」

「…あっちで一人で盛り上がってるのが檀黎斗。まあ、基本的には居ないと思ってくれていいですよ」

「は、はぁ…」

 灰馬を除いてすさまじく濃い面々に翠と直葉はあっけにとられるが、すぐに思い出して問う。

 

「あの…和人は、大丈夫なんですか?ニュースで同じような症状の人がたくさん居るって聞いて、亡くなった方も大勢居ると聞いて…!」

「お兄ちゃん、私が部活に行くまで元気だったのに…帰ってきたら、全然返事が無くて…。部屋に入ったら、ナーヴギアを被ったまま目を覚まさなくて…このまま、死んじゃうかもって思ったら、私…ッ!」

「…心中、お察しします。ですがご安心ください。和人君の体は我々が責任を以て預からせてもらいます。肝心のSAOに関しても、政府は元より我々も全力を挙げて対策を考えているところです」

「見ての通り、あの神もやる気出しまくってるしねぇ~。…ま、ここまでされといて乗らないなんて医者としては見過ごせねぇからな」

 

「キィィリトォォォゥ!!帰ってこいッ、茅場晶彦なんぞの思い通りになるなどこの神が許さんぞぉぉぉぉッ!!」

「…アイツは人間性は糞以下だが、同じ敵を相手にしている時に限っては信用できるからな。…こいつらの為にも、この糞野郎には馬車馬の如く働いてもらわねーと困るからな」

「ええぇ…?」

 散々な言われ様の黎斗にドン引きする翠と直葉であったが、ふと思った疑問を口にする。

 

「…あの、どうして皆さんはお兄ちゃんの為にここまでしてくれるんですか?ここでアルバイトしてたのは知ってますけど、ただの清掃員のバイトにここまでしてくれるなんて、ちょっと変な気が…」

「あ…それは…」

 複雑そうな表情で灰馬の方を見る明日那。灰馬もまた同じような顔で飛彩に視線を向け…静かに頷いた飛彩を確認し、翠達のほうへと向き直る。

 

「…分かりました。では、全てをお話ししましょう。和人君がこの病院でしていた、彼の『本当の役目』についてを…」

 

 

 

 そして灰馬は二人に全てを告白した。このCRの本来の役割、ゲーム病とバクスターウイルスについて、それらと戦うドクター達の真の姿…仮面ライダーの存在。そして…和人もまたゲーム病患者であり、自分に感染したバグスターと共に仮面ライダーとして戦い、仮面ライダークロニクルをクリアした立役者の一人であることを。

 

「…これが、我々と和人君との関係です」

「「……」」

 全てを聞き終えた翠と直葉は、信じがたいものを見たかのように呆然としていた。

 

「…あの仮面ライダークロニクルの時、しばらく帰れないって聞いて…何かあったんじゃないかとは思ってたんです。でもバイト先が病院なので、そのお手伝い程度だろうと思っていました。…けどまさか、あの子が…和人が仮面ライダーになって戦っていたなんて…!」

「申し訳ありません…。何分国家機密に相当することですので、いかにご家族といえど本当のことを話すわけにはいかなかったので…」

「どうして…どうしてお兄ちゃんが戦わなくちゃならなかったんですか!?あの時、お兄ちゃんはまだ13才だったんですよ!なのに、そんな命懸けの戦いにどうして…」

「仮面ライダーに変身できるのは、適合手術を受けるかエグゼイドのようにゲーム病に感染するかして、バグスターウイルスに対する抗体がある人間だけだ。…とはいえ、手術を受けたからといって誰もが仮面ライダーになれるわけじゃねえし、エグゼイドのように自分のバグスターと共存できるなんてのは稀中の稀だ。だから衛生省は多少強引にでも、エグゼイドに戦ってもらうしか無かったんだろ」

「でもッ…!」

「それに、戦うって決めたのは和人の意思だ。俺らはそれに乗ってやったんだよ」

「え…」

「確かに、当初は和人も仮面ライダーとして戦えるという義務感と患者を放っておけないという正義感で戦っていた。それだけなら、正直言って俺もどこかで折れるだろうと思っていた。他人の為だけに戦うなんてことはそんな甘い事じゃ無いからな。…だがこいつは、自分がゲーム病であることを知ったことで逆に吹っ切れた。患者の為だけでは無く、あのゼロデイの引き金になってしまった自分自身の『運命』と向き合うために戦う。その強い決意があったからこそ和人は戦い続けることができたんだろう」

「飛彩も最初は和人のこと『清掃員』とか『子供』って呼んでたのに、途中からは『和人』って呼ぶようになったもんね。…それだけ、和人の意思は強かったんだよ。それはここにいる皆が認めてるよ」

「…そうなんですか」

 この場のドクター達が揃って和人を認めている。それを聞いた翠と直葉は、目の前で静かに眠り続ける和人が知らないうちに成長していたことに感慨深い思いを抱いていた。

 

…ッターンッ!

「…ふ、ふふ…ふははは…!」

「黎斗?」

 その時、力強くキーを叩く音と共に我関せずだった黎斗が笑い声を上げ始める。

 

「ふはははは…!はははッ、ハハ…ウェァハハハハハハハハハハッ!!!」

「…まさか、何か分かったのか!?」

「え、嘘、マジ!?」

「ゲンム!どうなった!?」

 

 

 

 

 

 

「…駄目だぁ~ッ!!」

「だぁーッ!」

「ずごーッ!?」

 けたたましい笑い声から一転、情けない声と共に項垂れる黎斗に灰馬と明日那はずっこけ、貴利矢たちは期待外れに地団駄を踏む。

 

「おい!自慢の神の才能はどうした!?テメーの部下だった奴に歯が立たねーとか情けねーぞ!」

「黙れェェェェェェッ!!…言っておくが、決して私の才能が奴に劣っているのでは無い!むしろ、奴がこの私を徹底的に『警戒していた』からこそこうして手こずらされているのだ!!」

「…ま、上司にこんなイカれた奴がいれば警戒するわな。無駄に能力だけは高い分余計に厄介極まりないぜ」

「とはいえ、諦めるわけにはいかない。他の患者への対処法の確立のために、和人には頑張ってもらうしか無い…」

「くっそぉ……あ!ていうか、俺達バグスターなんだからデータ化すればSAOの中に入れるんじゃね?」

「あ!そうだよ、その手が…」

「私がその程度の浅知恵を試していないとでも思っているのかぁぁぁぁぁ!!」

 コンピューターウイルスとしての特性を持ったバグスターの能力を使った貴利矢のアイデアにポッピーが同調するが、黎斗はそれを一蹴する。

 

「…どういうことだ?」

「九条貴利矢の策など、私は最初に既に試している!その結果、私がここにいるということを…結果など分かっているだろう」

「…もしかして、駄目だったの?」

「…このナーヴギアとSAOのサーバーには、どうやら『バグスターウイルスだけ』を弾き出す特殊なセキュリティが組み込まれているらしい。おそらくバグヴァイザーのバグスターを閉じ込める機能を応用したものだ。これがある以上、バグスターウイルスは外から侵入することも中から出ることもできない…!」

「ということは…パラドからの反応が無いのも…!?」

「おそらく、パラドの意識もSAOの中にあるのだろう。パラドとて所詮はバグスター、例外では無い」

「マジかよ…!?てか、茅場晶彦がいくら元お前の身内だからってなんでこんなもんを作れるんだよ!?」

「…奴が幻夢コーポレーションを辞職したのは、あのゼロデイの後…私が檀正宗を刑務所に送ったのと同じ頃だ。元々奴は壇正宗が拾ってきた男だったから、私の元で働く義理はないと言って去って行った。おそらくその時に開発途中だったライダーシステムやバグスターに関する情報を持ち逃げしたのだろう…忌々しいぃぃぃぃぃッ!!」

 研究成果を掠め取られた黎斗は苛立ちを露わにするが、実際問題かなり面倒なことになっていた。敵が檀黎斗の存在とバグスターに関する情報を知っている以上、どんな罠が仕掛けられているか分からないからだ。

 

「あの…お話はよく分からないんですけど、お兄ちゃんを助ける方法はもう無いんですか?」

「う~ん…どうなの黎斗!?」

「…ふん、そう慌てるな。既に『策』は打ってある。…九条貴利矢!例のものはまだ届かないのか!?」

「あん?…ああ、今日持ってくるって聞いてんだけど…」

 

ガシュン!

 と、その時CRの入り口が開き一人の男性が入ってくる。

 

「…失礼します!遅れてすまない、貴利矢!」

「おお!待ってたぜ進ノ介!」

「…誰だアンタは?」

「おっと、申し遅れました。…俺は警視庁捜査一課所属、『泊進ノ介』です。階級は警部補を務めています」

 警察手帳を出して挨拶したのは、あれから昇進し警部補となった泊進ノ介…かつて『仮面ライダードライブ』としてロイミュードたちと戦ったライダーの一人である。

 

「警視庁の方でしたか…!これはご苦労様です。…ところで、ウチの病院に何かご用でしょうか?」

「ああ、別に疚しいことじゃないんです。今回はそこの貴利矢に頼まれていたものを届けに来ただけでして…」

「貴利矢に?貴利矢、警視庁の人と知り合いだったんだ」

「ま、監察医の仕事してると警察関係者とも顔馴染みになるもんでね。進ノ介ともそういう間柄だよ」

「物が物だけに、他の奴に任せるわけにもいかなくてね。俺が直接持ってきたんだ。…それに、俺の友人もSAOに囚われているからな。俺に出来ることならなんだって協力するさ…ほら、これが例のものだ」

 進ノ介が持っていた鞄から取り出した物に、皆が目を見開いて驚く。

 

「こ、これは…!?」

 それは、現在和人がプレイしているもの…ソードアート・オンラインのソフトであった。

 

「今回の事件で、流通しているソフトの殆どは警視庁が回収していたからな。なんとか無理言って一本だけ調査資料として拝借してきた。副総監や日向審議官には迷惑をかけてしまったけどな…」

「サンキュー進ノ介!…おい神!ご注文の品が届いたぞ…」

「でかしたぞぉッ!」

 貴利矢の手からソフトをひったくると黎斗は再びパソコンを鬼気迫る勢いで叩き出す。

 

「それを使ってどうする気だ?」

「決まっている!奴が横やりを拒むというのなら、望み通り堂々と乗り込んでやるだけだぁ!」

「乗り込むって…まさか、SAOにログインするの!?」

「おい…そんなことをしたらミイラ取りがミイラになるだけだろーが!」

「ふん、これだから凡人は考えが浅はかなのだ。SAOにログインしたプレイヤーの意識が戻らないのは、筐体であるナーヴギアとの連動によるものだ。つまり…ナーヴギアさえ使わなければ、SAOにログインしても問題ないということだ!」

「成る程…だが、現状SAOのソフトを起動できるのはナーヴギアだけの筈だが?」

「確かにそうだ。…だがそれがどうしたぁ!ナーヴギア以外に無いというのなら、今から『創り出せば』いいッ!」

「創るって…今からゲーム機開発するってのかよ!?いくらなんでも無茶だろ…ガシャット作るのとは訳が違うんだぞ?」

「私を誰だと想っているぅ!私は神、檀…黎斗神だッ!神の才能に不可能など無い!精々見ているがいい、ヘァアアアアアアッ!!」

 更に勢いを増した黎斗に、飛彩たちは呆れかえったように首を振るしか無い。

 

「ったく、しょうがねえなあの野郎…。けど、今はその神の才能とやらに乗るしかないってことか」

「あの…息子は本当に大丈夫なんでしょうか?」

「ご心配なく、お母様。息子さんの体は我々が責任を以てお守りします。SAOからも…あの男からも」

「…それに、エグゼイドやニコもビビって縮こまってるタマじゃねえ。アイツらもゲームの中で解決のためになにかしている筈だ」

「うん、絶対そうだよ!…案外、私たちが助ける前にゲームクリアしちゃったりして…」

「…それ、ありそうですね。アハハハ…!」

「…ともかく、SAOの調査に関してはあなた方の協力に掛かっています。我々警察も可能な限りお手伝いしますので、被害者の皆さんの一刻も早い帰還のために…お願いします」

「はい、承りました…!」

 

 こうして現実の方でも、茅場晶彦の企みに対抗する動きが始まっている。彼らの努力がゲーム内で戦うプレイヤー達にどのような影響を及ぼすのか…それが分かるのは、もう少し先のことである。

 




茅場が幻夢コーポレーションを去った経緯に関しては後ほど明らかになります。進ノ介はパックマン騒動の時からちょっとだけ出世しています。…思えば照井が20代そこらで警視なのって相当凄いことですよね
ニコがCRに運ばれたのは大我の診療所では長期間の入院には向かないのと、多くの同じ状態の患者がいるので面倒を見やすいからです。なので大我は現状診療所を一時閉めてCRで非常勤医師として働いています
SAOのログアウト不能の設定はソフトの方なのかハードの方なのかイマイチ分からなかったので、両方使うことで機能する…ということにしました。どのみち現段階ではナーヴギアしかSAOを使えないですからね
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