ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~   作:マイン

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今回でプログレッシブ編は終わりです

早いとこSAO一期分までは進めたい…ではどうぞ


タドル想い、貫く剣

「あ…アッシュ!?」

 目の前で自分を庇って凶刃に斃れたアッシュに、アスナは悲鳴をあげる。

 

「ぐうッ…どうだ、鷹使い…。今度は、間に合ったぞ…!」

「…このゴミ屑がぁぁぁぁッ!なんでお前らは毎度毎度、俺の楽しみを邪魔するんだよぉぉぉッ!!」

 腹を貫かれながらもダーマスに皮肉を飛ばすアッシュに、ダーマスは水を差された怒りをぶつけるようにその身体を力任せに放り投げた。

 

「……ッ、鷹使いィィィィィッ!!!」

「だから…ダーマス様だと、言ってるだろうがぁぁぁぁッ!!」

 義弟をやられた憤怒に突き動かされ、力任せに屑ヤミーの包囲を抜けたキズメルをダーマスが迎え撃つ。

 

「キズメル!」

「…!」

「ッ!…う、うん!」

 すれ違う刹那のアイコンタクトを受け、アスナはキズメルが戦っている隙にアッシュの元へと駆け寄る。

 

「アッシュ!」

「…ア、スナ…無事、か…?」

「そんなことより貴方が…!待って、すぐに回復を…」

「いい…どうせ、間に合わん…」

 そう呟くアッシュの肌は、ダークエルフの黒い肌でも分かるほどに赤黒く変色してきている。あの一撃であっても、ダーマスの毒はしっかりと流されていたようであった。アスナの視界に映るアッシュのHPは、既に風前の灯火となっていた。

 

「そんな…」

「それより…これを…!」

 震える手でアッシュは懐から『秘鍵』の入った包みを取り出すと、それを無理矢理アスナの手に握らせる。

 

「これは…我々エンジュ騎士団の、いや…我らの王国の最後の希望…!頼む…それを必ず、守り抜いてくれ…!エンジュ騎士団に名を連ねる者として…我らのかけがえのない友として…!」

「…了解…ッ!」

「…ああ、ティルネル…。お前の仇…討てなかったが、これで…胸を張って、会いに…」

 

 その言葉を紡ぎきることなく、アッシュの身体はデータとなって霧散した。

 

 

 

「…ッ!」

 手にした秘鍵を握りしめ、アスナは消えていったアッシュをかき抱くように蹲る。

 

(…分かってる。アッシュもキズメルもNPC…ゲームの中のプログラムに過ぎないって。どんなに本物みたいでも、全部データ通りに動いているだけだって…)

 

 

 

(でも…でもッ…!)

 アスナが顔を上げると、視線の先には激昂したキズメルを嘲笑うように迎え撃つダーマスがいる。その姿に、アスナの心に今まで感じたことのない感情が湧き上がる。

 

(この気持ちが、今アイツを許せないっていうこの気持ちまでは嘘じゃない!ここはゲームの中だけど、私たちにとっては現実なのよ…!この気持ちから目を背けたら、私はきっと…現実に戻っても何も変われない。私が一番嫌いな『私』は、何も変わることが出来ない!それだけは…絶対に嫌なの!!)

 

クシャ…

「…!」

 その時唐突に、手の中の包みが緩んだような感触を憶える。ハッとして手の中を見れば、固く閉じられていた包みが開き、その中にあるものが姿を見せていた。

 

「…そう、戦えって言うのね。分かったわ…一緒に戦いましょう、アッシュ!」

 それを力強く手に取り、アスナはダーマスに叫ぶ。

 

「鷹使い…いえ、ダーマス!!」

「あん?」

「アスナ…?」

「私は、貴方を許さない…!自分の欲望のままに仲間すら欺いて、大切なものを奪っていった貴方を…絶対に許すことはできない!!」

「…ハッ!ならどうする、人間…?」

 

 鼻で笑うダーマスに、アスナは秘鍵を見せつけるように突き出す。

 

「ッ!?それは…」

「…だから、貴方を斃す。エンジュ騎士団の一人として、この世界で生きるプレイヤーとして…行くわよ、アッシュ!」

 

 

 

 

 

『タドルクエスト!』

 

「えッ!?」

「アスナ…やっぱり、あの秘鍵は…!」

 手にした秘鍵…ガシャットから聞こえてくる音声に目を見開くキリトとNの前で、アスナはガシャットを胸に突き立て叫ぶ。

 

「…変身!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ! タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!』

 

 

 

 

「何…やて…!?」

「な、なんだあの姿は…!」

 ガシャットの起動と共に姿の変わったアスナに、キバオウやリンドたち初見の面々は唖然とする。

 

 薄いシャツにミニスカートにケープを羽織っていた質素な服装から一転。西洋鎧をモチーフに、しかし素早い動きを阻害しないよう軽量化された白い鎧を身に纏い、その背には内地の真っ赤な白のマントがはためく。頭には顔を隠さない程度に、しかし要所部分はしっかりと守られたティアラのような兜が。

 その姿はまるでゲームに登場する女騎士…見る人が見れば戦乙女のようであった。

 

「あれ…やっぱりブレイブ、だよね?でもなんか…妙に色っぽくない?」

「ブレイブの装備を『女物』にしたらこうなる、って感じだな。…男女で装備の見た目変えるとか、どんだけ凝ってんだよ茅場晶彦…!」

 どことなく見覚えのあるそれにそんなことを言うキリトたちを余所に、アスナが腰のレイピアを引き抜くと胸のガシャットから炎のような光が漏れ出し、白銀の刀身を紅く燃えさかる色へと染め上げる。

 

「貴方のご所望の秘鍵はここにあるわ。欲しかったら、私を倒して奪ってみなさい!」

「…ハハハハハハ!いいねえ、最高じゃねえか!気に入らない人族と秘鍵を同時に片付けられるなんて、気が利くじゃねえか!なあ!?」

「アスナ…!」

「任せてキズメル。…報いを受ける時よダーマス!」

 

「…ちょい待ちアーちゃん。女の子がそんな怖いこと言っちゃいけないナ。こういうときは、こう言うもんだゼ?」

「あ、アルゴさん?」

 いきなり耳打ちをしてきたアルゴに戸惑いつつも、アスナは改めてダーマスにアルゴに言われたことを告げる。

 

「コホン…さあ、貴方の罪を数えなさい!」

「罪ィ…?ハハハハ…んなもん、今更数えきれるかぁ!」

 いきり立ってアスナへと躍りかかるダーマス。…しかし

 

フッ…

「!?消え…」

 アスナの姿が掻き消えたかと思うと、気がついたときには既にダーマスの懐へと潜り込んでいた。

 

「何!?」

「遅いッ!」

 

ガガガガガガガガッ!!

 ダーマスがその事に気づいたのと同時に、アスナのソードスキルがダーマスの胸板を滅多刺しにする。攻撃を受けたダーマスの身体からは血の代わりにメダルがボロボロとこぼれ落ちる。

 

「グアアアアアアッ!!」

「まだまだまだまだァ!このままあのメダルを引きずり出してあげるわ!」

 先の一撃で、アスナはダーマスが変身する前に飲み込んだメダルが弱点であることを見抜いていた。故にアスナはそれの位置を確かめるべくダーマスがどれほど苦しもうとも一切手を緩めず、ダーマスの身体を掻き分けるように剣で切り裂きまくる。

 

キラッ…

 やがて蠢くメダルの合間、ダーマスの頭と心臓の位置に他のメダルとは異なる黄色と紫の輝きを見つける。紛れもなく先ほど破壊した『アリ』のメダル以外の『ムカデ』と『ハチ』のメダルであった。

 

「あった!そこに…」

「調子に…乗るなぁぁぁぁッ!!」

 止めを刺そうとしたアスナであったが、やられっぱなしだったダーマスが息を吹き返して分離させた甲殻で薙ぎ払おうとしてきたので、それを素早いバックステップで躱したことで距離を取らされてしまう。

 

「ギィィィィ…!」

「いい加減しぶといわね…!」

「アスナ!あまり時間をかけ過ぎるな、時間が無いのは君の方なんだぞ!」

「…え?どういうこと?」

「右上見て!自分のHPの横!」

「右上?」

 キリトとNに言われアスナが視界の右上にある自分のHPを見ると、HPゲージの横に『0:26』という数字がいつの間にかあり、徐々に数字が減っていっていた。

 

「何この数字…?」

「それはガシャットの『制限時間』だ!ガシャットは基本的に『1分間』しか使用できないんだ!制限時間が過ぎれば、次に変身できるのは『24時間後』…丸一日経たないと使えないんだ!」

「…!?そ、それを早く言ってよ!もう30秒切ってるじゃない!」

「……あッ!アイツ…!」

 Nの声に皆が顔を向けると、ダーマスが背中の羽を羽ばたかせて今にも飛び立とうとしていた。

 

「まさかアイツ…逃げる気か!?」

「…屈辱ですよ、この俺が貴様ら如きに撤退しなければならないなんてな。だが、憶えておけ!次に会ったときこそ、貴様らを皆殺しにし、秘鍵を必ず手に入れてくれるわ!」

 捨て台詞を吐き捨てると、ダーマスは羽音を立てながら飛び上がった。

 

「あ、アカン…!逃げられるで!」

「ああもう…!キリト君、なんとかならないの!?」

「なんとかって…こっちはガシャット、使用済みなんだっつーのッ!!」

 そう言いながらも、キリトは短剣を抜くと空中のダーマスめがけて半ばヤケクソで投擲する。しかし、投剣スキルがまだ十分でないキリトのそれは惜しくも命中することなくダーマスの頭上すれすれを通過する。

 

「糞ッ!」

「ハ!惜しかったな…!」

 

 

 

 

…パシッ!

 

「…いや、良い投擲だぞキリト!」

「ッ!?」

 頭のすぐ後ろから聞こえた声にダーマスが首を回すと、いつの間にか自分の背中に張り付いていたキズメルがキリトの投げた短剣を掴み取っていた。

 

「なッ…き、貴様いつの間に!?」

「強くなりすぎるのも考え物だな。私一人背中に捕まっていても気づきもしないのだからな!…とはいえ、そのために装備を全て地上に置いてきてしまったが、たった今良い物を手に入れたのでな!」

「ぎっ…!この…」

「墜ちろぉ!!」

 

ザクッ!

ボキボキ…ブチッ!

 キズメルが振り落ろした短剣はダーマスの片側の羽の根元に深々と突き刺さり、さらにそのまま空中に身を投げ出したことでキズメルの体重が掛かった短剣は下へとずれ、羽を千切り落とした。

 

「ぎゃあああああッ!!?」

「…ッ!」

「キズメル!」

 

ぽすッ!

ドズゥゥゥンッ!!

 片方の羽を失いバランスを崩したダーマスとキズメルは共に落下していくが、咄嗟に跳び上がったアスナがキズメルだけは抱きとめ、ダーマスはそのまま頭から地面に叩きつけられた。

 

「無茶して…!貴女まで死んだらどうするのよ!?」

「…それでも、構わん。私一人の犠牲で、エルフ族の未来を…あの二人の仇を討てるのなら…!」

「そんな…そんなの…」

「…ああ、違うな」

「何…!?」

 自棄気味にそう言うキズメルに、ようやく屑ヤミーを片付けたキリトが諭すように語りかける。

 

「キズメル、アンタは死んじゃいけない。アンタがそう思ったように、アッシュとアンタの妹だってそうして戦って、…そして死んだ。だからこそ、アンタは生きろ。生きて、あの二人が守ろうとしたものを守り続けろ。…それを忘れない限り、二人はアンタの心の中に生き続ける。だから、勝とうぜ…!」

「キリト…アスナ…」

「…うん!」

「……済まん。私としたことが、自棄になりかけていたようだ。キリト、アスナ…そして人族の戦士達よ。もう少しでいい…力を貸してくれ!」

『おう!』

 

「…グォァァァァァァァァッ!!」

 キズメルの呼びかけに応えるプレイヤー達の団結を吹き飛ばすように、ダーマスがうなり声を上げながら起き上がる。そんなダーマスに、皆は剣の切っ先を向け向かい合う。

 

『キメワザ!タドルクリティカルフィニッシュ!』

「…残り10秒!これで、最後…一気に決めるわよ!」

『了解!』

 『タドルクエスト』の必殺技を発動させ、アスナはプレイヤー達に檄を飛ばす。それを受けたプレイヤー達は一斉にダーマスへと駆け出していく。

 

「10!」

 ダーマスの両腕の毒針を盾持ちのプレイヤーが受け止める。

 

「9!」

 その隙に、他のプレイヤー達がダーマスの脚を潰す。

 

「8!」

 膝から倒れたダーマスの顎をアルゴが力一杯蹴り上げ、のけ反らせる。

 

「7!」

 ガラ空きになった胴体に、キバオウとリンドのソードスキルが炸裂する。

 

「6!」

 そこに、アスナとキズメルが足並みをそろえて吶喊する。

 

「5!」

 瞬間、ダーマスが急に起き上がって迫る二人へと両腕を突き出す…が

 

「…4!」

 突き出されたその腕の側面から斬りかかったキリトとNが、腕を半ばから断ち切った。

 

「3!」

 しかし、ダーマスは目を血走らせてなおも怯まず、再び背中の甲殻を分離させて返り討ちにしようとする。

 

「2!」

 その時、甲殻の先端に異様な重さを感じる。目を向ければ、そこには撓る甲殻に必死に食らいつき動きを阻害するアッシュの狼が。それに気を取られた一瞬がダーマスの命運を分けた。

 

「1!」

 懐に潜り込んでいたアスナとキズメルへと意識を向けたその時には、二人は力の限り剣を突き出していた。そして…

 

 

 

ドシュ、ドシュッ…!

 

『ガッシューン…!タイムアウト』

 ガシャットの制限時間を迎え、アスナの装備と剣にかけられた強化が切れる。

 

 

 …だが、二人のレイピアは違うことなくダーマスの頭と心臓を捉え、突き抜けたその切っ先にはそれぞれ紫と黄色のメダルが貫かれていた。

 

 

「ガ…そん、な…!この、私…が…」

 

パキィィンッ…!

 最後に鷹使いの口調でそう言い残し、ダーマスは砕け散った。

 

 

「…終わった、の?」

「ああ…アッシュ、ティルネル…終わったよ」

「…ん」

「イェイ!」

 

『オオオオオオオオオッ!!』

 壮絶な戦いで半壊したフォレストエルフの野営地に、プレイヤー達の勝ち鬨の声が轟いたのだった。

 

 

「いやはや…流石はキリトさん、いや…今回のMVPはアスナさんの方ですね。あんな偶然があるとは、…いや偶然でしょうか?もしかしたら、これもカーディナルのバランス調整によるものなのでしょうかね。まあそれはどうでもいいでしょう。これで新たなコアメダルの性能実験も済んだ、後は精々この世界を楽しませて貰うとしましょう。期待していますよ、茅場晶彦…そして、桐ヶ谷和人君…!」

 

 

 

 

 

 

 …その後、アルゴが交わした約束によりALSとDKBは進行中のエルフクエストをギブアップし、その後の進行をキリトとアスナのパーティに一任することになった。尚、タドルクエストのガシャットはまだクエスト未完遂の為再びダークエルフ達に預けられることになった。(キズメルに返却する際、もの凄く名残惜しそうだったアスナにキズメルが躊躇いがちになり無駄に手間取ったのは余談である)

 キバオウとリンドたちは今回の件により諍いつつも互いを尊重し合うようになり、当初の目論見通り切磋琢磨し合いながらボス攻略に専念。その後のボス戦ではそんな彼らに加えキリトとN、更に9層からはエルフクエストのクリアにより正式にタドルクエストの所有者になったアスナの活躍により、誰一人として犠牲者を出すことなく攻略を進めてくのであった。

 

 

 SAO最大の難関である『クォーターボス』、その最初の一体が待つ二五層までは…。

 

 




今回アスナが使用したタドルクエストガシャットの説明です

・タドルクエスト(アスナ)
・使用制限時間 1分
・効果 一定時間レベル10アップ。また、プレイヤーのステータス傾向に応じて能力に補正が掛かる。アスナの場合は敏捷性と精密性が重点的に強化された
・武器 専用武器は無いが、使用する武器の強化補正値がアップする。アスナの武器は原作と同じ「シルバリック・レイピア+15」だが、これが「+25」までアップする。これは性能だけなら原作でキリトが最後まで愛用した「エリュシデータ」に匹敵する。
・キメワザ タドルクリティカルストライク(キック)、タドルクリィカルフィニッシュ(武器による攻撃)

次回はぐーんと飛んで25層後の話になります。彼らの運命がどうなるか…お楽しみに。ではまた次回
同時更新のウルトラマンオーブ×ダンガンロンパもよろしく!
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