ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~ 作:マイン
ジオウのもやしのコレジャナイ感…ではどうぞ
「わぁー…!綺麗…夢の国みたいですねぇ!」
47層、フローリア。転移した先に広がる現実では滅多にお目にかかれない程の広大かつ色鮮やかな花畑に、シリカは感嘆の声を上げる。
「この層は通称『フラワーガーデン』と呼ばれていて、フロア全体が花畑なんだ。アインクラッドでも有数の景観の良いフロアで、プレイヤー達の人気も高い。その理由は…周りを見てくれれば分かるかな?」
「周り…?」
キリトに言われて辺りを見渡すシリカ。…よく見れば、自分たち以外の人の殆どが手を繋いでいたり、仲睦まじく話していたり、時折ハグやキスしていたりと…
「…ッ!!?ここ、これって…」
「…見ての通り、ここはデートスポットとして有名なんだ。しかもプレイヤーが気兼ねないように、わざわざカップルのNPCまで居るんだぜ。茅場晶彦も変な気遣いを…って、どうしたシリカ?」
「は…はひ!?な、ナンデモ無いですよキリトさんッ!!」
「そ、そうか?…なら、俺達も行こうか」
「い、行くって…!?そんな…キリトさん、私たちはまだ早いっていうか…その…」
「…?早く思い出の丘に行かないと、ピナの蘇生リミットに間に合わなくなるぞ。ここから思い出の丘まで結構距離あるから…」
「……デスヨネ!」
転移門のある主街地から数㎞ほど離れた花畑の奥、そこに目的の思い出の丘がある。キリトとシリカは道中襲ってくる植物や昆虫型のモンスターを倒しながらそこへと向かっていった。
「あの…キリトさん。今更ですけど、こんな装備私が貰っていいんですか?もの凄く強いですし、結構お高いんじゃ…?」
シリカは現在自分が装備している物を示しながらキリトに尋ねる。シリカが安全マージンを大きく上回る47層にて、キリトのフォローがあるとはいえこうして無事で居られるのはキリトから事前に渡されたこの装備があってこそだということが分かっているからだ。
「ん…ああ、気にしなくて良いよ。殆どがドロップ品だし、短剣は俺の趣味じゃ無いからな。そもそも女性専用装備は俺が持っていてもしょうがないし、シリカに使って貰えるなら俺も面倒が無くていいさ」
「そうなんですか。…そういえば、昨日寝る前に誰かと話してるような声が聞こえたんですけど、誰か部屋に来てたんですか?」
「あ~…聞こえてたのか。まあ、そんなところだ。あんまり関係ないからこっちも気にしなくて良いよ」
「…そうですか」
中々会話が続かないことにシリカは内心やきもきしていた。色々話しのネタを考えた末、前から気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの…キリトさん。前に言ってた妹さんの話、聞かせてもらえませんか?ゲーム内でリアルの話するのは良くないことは分かってますけど…」
「…ああ、それくらいならいいよ。…妹と言っても、本当は『従兄弟』なんだ。俺の両親は俺が小さい頃に事故で亡くなって、それから叔母さん夫婦に引き取られてな。妹が生まれる前のことだったから、多分アイツはそのことを知らないと思う」
「…そ、そうだったんですか。その…ごめんなさい」
「気にしなくてもいいさ。…それで、俺が本当の家族じゃないことを気にして距離を作っているのを見かねて、祖父が俺と妹を近所の剣道場に連れて行ったんだ。…まあ結局、俺が耐えかねてすぐに辞めちゃって、しこたま怒られているときに妹が言ったんだ。『お兄ちゃんの分まで頑張るから、怒らないで』…ってな。幸いアイツには才能があって、それからそのことでは何も言われなくなったんだけど…俺はますます妹と顔を合わせづらくなってな、無理を言って地元から離れた学校に通ってたんだ。…どうせ家で顔を合わせるのは分かってたんだけど、少しでも…距離を置きたかったんだ。俺の気持ちに整理がつくまでな」
「…キリトさん、大変だったんですね」
「そんな顔するなよ、シリカ。…大丈夫だよ。まだ面と向かって話はして無いけど、俺の心はもう決まってる。このゲームをクリアして現実に戻ったら、その時こそ…ちゃんと向き合ってみるよ。…君を助けたのだって、女の子が困ってるのをほっといたままじゃ、それこそ妹に会わせる顔が無くなってしまうと思ったからだしな」
「そうだったんですか…。でも、なんか意外ですね。キリトさん凄く強いから現実でも運動神経抜群だと思ってました」
「…あのな、別に俺は運動音痴とかじゃないぞ。昔はちょっとアレだったけど、今は側転とかバク転だって出来るんだぜ」
「ええ~?本当ですかぁ~?」
「こ…こんにゃろう、信じてないなぁ…!」
「アハハハ!」
キリトの意外な一面を垣間見たことに気をよくしたシリカ。そんな彼女に苦笑しつつもキリトは目的の思い出の丘へと向かっていく。
「…『撒き餌』の効果は上々、ってところかな」
シリカに聞こえないよう、そう呟きながら。
先に進むごとに手強く、しかしキリトにとってはそうでもないモンスターを蹴散らしながら進んでいくと、やがて花畑の奥に不思議なモニュメントで囲まれた『台座』のようなものが見えてきた。
「あ…!キリトさん、もしかしてあそこですか?」
「ああ、あれが思い出の丘だ。さて…シリカ、ここからが君の出番だ。蘇生アイテムを手に入れられるのはテイマーだけだからな」
「はい!」
キリトに促されたシリカが台座の前へと立つ。すると、台座が光り出し光の中からゆっくりと百合にも似た可憐な花が生えてきた。恐る恐るシリカが花を摘み取ると、アイテム入手を示すウィンドウに『プネウマの花』と表示された。
「プネウマの花…。これで、ピナが生き返るんですね!」
「ああ。…けど、ここじゃ生き返っても帰りにまたモンスターと戦う羽目になる。ピナを生き返らせるのは町に戻ってからにしよう。ピナも病み上がりに戦うのは辛いだろうしな」
「はい!…じゃあ、急いで戻りましょう!」
「…いや、まだ時間はあるんだ。ゆっくり、無理をしないで戻ろう。俺としても、その方が良い…」
「…?は、はい…」
目的を果たしたにもかかわらず、一向に緊張を解こうとしないキリトに首を傾げながらも、シリカは言われたとおり急ぐことなく来た道を戻っていく。
「……」
帰りの道中、時折ポケットに手を突っ込みながら殆ど会話の無いキリトに不思議に思ったシリカがおずおずと問いかける。
「…あの、キリトさん?どうかしましたか…」
「…シリカ、ストップだ。ここがいい」
「へ?」
周りに殆ど人気の無い、並木道の続く一本道に差し掛かった辺りでシリカを止めたキリトが声を上げる。
「…いい加減出てきたらどうなんだ?隠れているのはとっくに分かってるんだぜ!」
「え…?」
「…ふふふ。アタシの『潜伏』を見破るなんて、流石はビーターってところかしら?」
キリトの声に応えるように並木の影から姿を現わしたのは、昨日出会ったロザリアであった。
「ろ、ロザリアさん!?どうして…」
「最初から付けてきていたのさ、俺達がこのフロアに来る前からな。…目的はプネウマの花か?」
「ピンポーン!アタシにとっちゃクソの価値も無いアイテムだけど、高レアアイテムは用途はどうあれ高く売れるからねぇ。…じゃ、早速花を渡して貰おうかしら?もう入手してるんでしょ?」
「な…何を言ってるんですかロザリアさん!?どうしてそんな酷いことを…」
「…それがこの女の『本性』だからだよ。ロザリアさん…いや、『オレンジギルド
「…へぇ」
キリトが口にしたギルド名に、ロザリアの眉が動く。
「オレンジギルド!?それって、オレンジプレイヤー…ゲーム内での『犯罪行為』をしたプレイヤーの集まりですよね?でも、ロザリアさんは…」
シリカの目に映るロザリアを示すアイコンは、危険人物を示すオレンジではなく健常なグリーンカラーであった。
「簡単な話さ。ギルド内に敢えてグリーンのままのプレイヤーを残し、そいつがまともなプレイヤーのふりをして他の連中を油断させ、タイミングをみて待ち伏せさせたオレンジの奴らに襲わせる…。釣りみたいなもんだよ」
「じゃあ…前のパーティに居たのも…!」
「そうよ、良い感じに金とアイテムが貯まるまで待ってたのよ。…ああでも勘違いしないで、アタシらってこれでも慎み深いから、直接殺したりなんてしないわ。精々身ぐるみ剥いで放り出すだけよ。尤も…武器もアイテムも無いままフィールドに置き去りだから、その後どうなるかまでは知ったこっちゃないけどねぇ…!」
「そんな…」
「一番いい獲物だったアンタが抜けちゃったから適当に始末しようと思ってたんだけど、レアアイテムを取りに行くって言うもんだからターゲット変更させて貰ったわ。…にしてもビーター、アンタそこまで分かっててなんでその子に付き合ってたワケ?まさか本当にたらし込まれちゃったとか?」
「…ッ!キリトさんはそんな人じゃありませんッ!」
「…ああ、違うな。俺をここまで来たのはシリカの為だけじゃない、…俺を呼んだのはアンタだよ、ロザリアさん」
「はぁ?」
意味深なキリトの言葉にロザリアは怪訝そうに表情を歪める。
「さっき、アンタ言ったよな。身ぐるみ剥いだ後のプレイヤーがどうなろうが知ったことじゃないと。…そのツケが、回り回ってきたってことだよ」
「ど、どういうことですか?」
「…10日ぐらい前、『
「!」
「……」
「リーダーだった男は、毎日最前線の転移門前でやってくるプレイヤー全員に『仇討ち』を懇願して回っていた。…それも、殺すんじゃ無く『牢獄送り』にしてくれってな。…仲間を殺されて、それでもアンタ達を牢獄送りで済ませようとしたアイツの心が、アンタに理解できるか…?」
「ハッ…それこそ知ったこっちゃないねぇ!あっさり騙されて勝手に死にかけた雑魚の泣き言なんざ聞くだけ時間の無駄だろう?ここで死んだところで、本当に死ぬ証拠なんてないでしょ?まさかアンタ、そんな奴に同情してアタシに復讐の肩代わりをしに来たってワケ?」
「同情なんかじゃない!…俺は、俺自身の意思でアンタを探しに来た。アンタらがこの世界をどう捉えようが勝手だ、だけどそのせいで誰かが悲しむと言うのなら…俺はそれを全力で阻止する。ゲームで人が死ぬだなんて、もう…御免なんだよ…ッ!」
「キリト…さん?」
いつになく感情的なキリトの様子にシリカがたじろぐが、ロザリアはそれに気づいた様子もなく嘲笑う。
「ぷっ…なにムキになっちゃってんのさ?バカみたい、そんな奴のこと気にするより…自分の心配したらどうかしら。ビーターさん?」
パチンッ
ゾロゾロ…
ロザリアが指を鳴らすと共に、物陰から次々と武装したプレイヤーが現れる。人数は20人以上おり、そのアイコンは揃って危険人物を示すオレンジカラーばかりであった。彼らこそ、ギルド『巨人の手』の実行犯グループの面々であった。
「うちのギルドの全戦力さ!一応天才ゲーマー様を相手取るんだ、こっちも本腰入れないとねぇ。…アンタ達、分かってるね?あの『情報屋』の言ったことが本当なら、こいつはまだ公開されて無いレアアイテムやありったけの金を持ってるはずさ!こいつさえぶっ殺せば、お釣りが来るほどのボロ儲けだよ!」
『ウオオーッ!!』
「そ、そんな…キリトさん!人数が多すぎます、転移結晶で脱出を…」
「…くっくっく」
「き、キリトさん?」
一見して絶望的状況に関わらず、キリトはそれを全く悲観した様子もなくせせら笑っていた。
「…ああ、悪いシリカ。そんな心配しなくても大丈夫、だから俺が逃げろって言うまで転移結晶持って待っててくれ」
「え、ちょ…キリトさん!?」
訳が分からないシリカを残し、キリトは一人で『巨人の手』の面々の方へと向かう。
「おいおい…まさか一人でアタシら全員を相手にするってんじゃないよね?いくらビーターだからってこの数を…」
「…俺は別にそれでも良かったんだけどな。ただ、『あいつ』に今回のことを話したら『テストプレイがしたい』って言うもんだから、わざわざあちこちに根回しする羽目になってさ」
「…ああ?何を言ってんのアンタ?」
「さっきアンタら、俺がレアアイテムとか金を持ってるって言ったよな?…アンタらにその情報を教えたの、『JK』っていう情報屋だろ?」
「ッ!…なんでアンタがそのことを」
「まあ聴けよ。…情報屋っつってもよ、そいつだってどこからその情報を仕入れて誰かに売ってるワケだよな。だったら、アンタらが聞いたその情報…JKはどこで手に入れたと思う?」
「…何が言いたい?」
「答えは…『俺』だよ」
「は?」
キリトの言葉に、ロザリアたちは呆気にとられた表情となる。
「俺がJKに頼んだのさ。『巨人の手』のリーダーに、俺がレアアイテムや金を隠し持ってるって情報を流してくれってな。おかげでその手数料の方が高く付いちまったよ…ちゃっかりしてるぜ」
「お、お前…何を、どういう…」
「まだ分からないのか?…その情報は、全部嘘。『巨人の手』の全員を、ここにおびき寄せる為のな」
「ッ!?」
キリトが言い放ったカミングアウトにロザリアたちだけで無くシリカも驚愕に目を見開く。
「な…ば、バカなこと言ってんじゃないよッ!そんなことして、アンタになんの得があるってんだい!?」
「理由は3つ。まず第一に、仮にあんた一人を牢獄送りにしたところで他のオレンジプレイヤーが残ってしまっては意味が無い。むしろリーダーを欠いたことで分散してゲリラ化されると余計に厄介だからな、元を絶つためにはギルド全員を一気に捕縛しなきゃならない。…そして第二に、アンタは一応対外的には『まとも』なグリーンだ。だから人前でいくらアンタらの罪状ぶちまけたところで、カーソルカラーを盾にして言い逃れられちゃ敵わない。そのためにも、『人気の無い場所』に来て欲しかったのさ。…そんで、最後の理由は…ここなら多少おかしなことが起きたところで、大して騒ぎにならないからさ。例えば…」
「…『同じ顔』をしたプレイヤーが2人、その場に居合わせたとしてもな」
『ッ!!?』
突然割り込んできた声の方を向けば、ロザリアたちの更に後方の物陰から『キリトと同じ顔をした少年』…パラドが姿を現わした。
「え…え、ええええええッ!!?き、キリトさんが…2人!?」
「なんなんだいこりゃあ…!?まさかバグってんじゃあないよねぇ!?」
「ち、違いますぜ姐さん!俺らにも、こいつが2人に見えまさぁ!」
「よう、待ってたぜパラド。ったく…お前の為にわざわざ『時間稼ぎ』してやったんだぞ。感謝しろよ?」
「サンキューキリト。そう固いこと言うなよ、いつも良いアイテム送ってやってるだろ?」
「パラド…?キリトさん、あの人は一体…」
「ああ、アイツはパラド。俺の…まあ、双子の兄弟みたいなもんだ」
「君がシリカちゃんかい?俺の『弟』が世話になってて悪いなぁ」
「は、はぁ…」
「おい!誰が弟だ、どっちかっていうと俺が『兄』だろうが!」
「えぇ~、そうかナァ~?」
「…おい、ガキ共…!余裕ぶっこいてんじゃあないよッ!ちょっとばかし驚いたけど、種を明かせばただの双子なだけじゃないの!一人増えた程度でどうにかなるとでも思ってんのかい!?」
キリトの『双子』という言葉に落ち着きを取り戻したロザリアたちがパラドにも剣を向けて威嚇するが、パラドは余裕を崩さない。
「ハァ…なあ、オバサンさ。キリトが言ったこと聞いてなかったの?キリトは俺が来るまで『時間稼ぎ』しててくれたんだよ?その意味がまだ分からない訳?」
「お、オバっ…!?このクソガキ、調子に乗ってんじゃないよッ!時間稼ぎしたからってどうなるっていうんだい!?」
「…簡単なことさ。今から始まる戦闘を、あんまり他のプレイヤーに見られたくないんだよ。もしこのことが攻略組にでもバレると…アイツらにちょっかい仕掛けてくるやつが出てくるだろうからな」
「何…?」
キリトの言葉に応えるように、パラドはポケットから赤と青のツートンカラーにダイヤルの付いた特殊なガシャット…『ガシャットギアデュアル』を取り出し、ダイヤルを『青』に合わせ起動する。
『パーフェクトパズル!What’s the next stage?』
「変身…!」
『デュアルアップ!Get the glory in the chain. PERFECT PUZZLE!』
パラドがギアデュアルを右腕に挿し込むと、ガシャットからブロックのようなパーツが飛び出し、それが鎧のようにパラドに装着される。
肩から上腕部にかけてを頑強なプロテクターに覆われ、頭部にはデビロックヘアを模したような兜、そして特徴的なのはギアデュアルが変形して『スマートフォンの画面』のようなものになって腕のプロテクターに内蔵されていた。
「な…なんだい、そりゃあ…!?」
「これが俺のとっておき、『パラドクス』だ!さぁて…正直期待はしてないけど、俺の心を滾らせてくれるなよ…!」
今回使ったギアデュアルの解説は次回纏めてで
やりたいシーンがもうちょっと先だから急ぎたいけど、どこかカットしないと厳しいかも…リズ編はカットできないから、圏内殺人編カットしようかな…?
同時更新のダンガンロンパ黄金の言霊もよろしく!ではまた次回