ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~ 作:マイン
あとはダンガンロンパの合間にちょろちょろ書いていきます
ではどうぞ
戦闘を始めてから数時間後、日が傾き始めてきたのを機に3人は戦闘を中断し休憩していた。
「いやぁ~戦った戦った!慣れればなんてことねえ感じだったぜ。ひょっとして俺って天才だったりして…?」
「いやはや…拙僧が斬った張ったの戦いに出るとは夢にも思ってませなんだが、これがなかなか痛快ですな!リアルであれば破戒僧間違いなしですが、ゲームなら無問題ですしな!ここならばタケル殿も拙僧のことを見直してくれるかも…ぐふふ!」
「調子の良い奴ら…」
大声で笑い合うクラインとオーナリーに苦笑しつつも、キリトは久々の『命に関わらない戦い』に内心スッキリしていた。
「けど、俺もいいストレス解消になったよ。ここ最近勉強ばっかりしてたから色々溜まってたんだよな…」
「あん?なんだキリト、お前学生だったのかよ?」
「まあな…こう見えて、将来は『聖都大学医学部』を目指している医者のタマゴなんだぜ?…自分で言うのもなんだけど」
「おお!マジでか!?お前頭もよかったのかよ!」
「いやはや立派な志ですな。…しかし、そんなこと拙僧達に話してもよかったのですかな?」
「ん…なんだかな。確かにオンラインで個人情報を話すのは不味いんだけど…あんた達なら大丈夫そうだしな。二人とも嘘をつけるような奴には見えねえし」
「…キリト~!良い奴だなお前よぉ~!」
「会ったばかりの拙僧たちのことをそこまで信用してくれていたとは…うれしい限りですぞキリト殿!」
「うお、やめろって…暑苦しいっての!」
肩に腕を回して抱きついてくるクラインを引き剥がそうとすると、ふとクラインが思い出したようにメニューウィンドウを表示する。
「…おっといけねえ!そろそろログアウトしねえと、注文していたピザが来ちまう!」
「…クライン、さてはお前『独身のサラリーマン』だろ?」
「んなッ!?な、なんで分かった!」
「晩飯に宅配でピザを頼むって事は、『金も時間もあるけど一緒に食べる人の居ない寂しい奴』…ってことだろ?つまり、独身貴族のサラリーマン辺りだと思ったんだが…違うか?」
「な、ななっ…ひ、一言余計なんだよぉー!名探偵かこのヤローッ!」
「ははは、悪い悪い」
「ったく…キリト、今日はサンキューな。機会があったら、また一緒に遊ぼうぜ。オーナリーもな」
「ああ!」
「勿論ですぞ!」
再会を約束し3人で拳をぶつけ合った後、クラインは一足早くログアウトしようとし、オーナリーとキリトも続けてログアウトしようとしたが…
「…あり?」
「はて?」
「…ログアウトコマンドが、『無い』?」
メニューウィンドウを端から端まで見渡しても、ログアウトするためのコマンドが『存在しなかった』。
「どうなってんだ!?ふつーあるもんだろ…つか、無いとおかしいだろうがログアウトってのは!」
「どどど、どういうことなのでしょうか!?キリト殿、ログアウトというのは勝手になるものなのでしょうか!?」
「…いや、ログアウトは基本任意でしかできない。それにナーヴギアの説明書を読んだけど、ナーヴギア本体にも強制ログアウトするための機能は無い。そもそも、ナーヴギアを装着している間は脳への伝達信号の全てがシャットダウンされている状態だからな。リアルの俺達は殆ど昏睡状態に近い…自力での覚醒は不可能だ」
「なんだよそれ…サービス開始初日にトラブルとかふざけんなよッ!アーガスの連中はなにやってんだ!」
髪を掻きむしりながらナーヴギアとSAOを制作した茅場晶彦の会社である『アーガス』に文句を言うクラインをキリトが宥める。
「落ち着けよクライン、運営だってこの事態に黙っているはずがない。その内サーバーを停止するとかしてログアウトできるように計らってくれるさ。…ただ、何時になるかは分からないからお前のピザは諦めた方がいいかもな」
「ああ…俺のスーパーミックスDX…、俺の4500円~!」
「クライン殿、憐れな…南無」
悲しい慟哭と男泣きに暮れるクラインにオーナリーが合掌を送った
その時である。
ガラーン…!ガラーン…!
始まりの街より、鐘の音が響き渡る。
フッ…!
「…え!?」
「ほわっ!?」
「これは…」
その音を聞いた瞬間、3人の視界が青い光に包まれ、光が収まったときには3人は始まりの街の広場…ログインしたときに居たあの場所へと戻ってきていた。
シュンシュン…!
辺りを見ればキリトたちだけでなく、他にも多くのプレイヤーが…正確には『全てのプレイヤー』がこの広場に続々と強制転移させられてきていた。
「ど、どうなってるんだ!?なんでこんなところに…」
と、群衆の誰かが声を上げかけたその時…
ゴロゴロゴロ…
突然、晴れ渡っていた夕焼け空に黒雲が蔓延り始める。そして…
ピシャァァンッ!!
一筋の稲妻が轟音と共に落ちた。
『きゃああああッ!!?』
悲鳴と困惑の声が響く中、黒雲の中から『電子音声』が響き渡る。
『雷鳴轟々!剣神降臨!全知全能、ここに在り!』
「…!?い、今の…声?なんだ!?」
皆が思わず空を見上げると、黒雲の中から何かが『降りてくる』。
「あ、あれは…!?」
それは山のような大きさの『巨人』であった。赤と白の2色のカラーリングの甲冑に身を包み、頭は跳ね上がった髪の毛のような形をしている。目はまるでゲームキャラのようなデフォルメされた形をしており、左胸や手足にゲームコントローラーのボタンのようなものがついている。そして腰には、特徴的なベルト…『バグルドライバーⅡ』が装着されている。
その異様な姿に誰もが圧倒される中、その外見にすさまじく『見覚え』のあったキリトは思わず呟く。
「馬鹿な…!?そんな、あり得ない…いや、でも…色や細部こそ違いはあるけれど…あれは、『クロノス』そっくりじゃあないかッ…!」
『……』
かつて自分たちが倒した最強最悪の敵に酷似したその巨人に激しく動揺するキリト。巨人はそんなキリトを一瞥したかと思うと、自分を見上げるプレイヤー達を見下ろしながら話し出す。
『プレイヤーの諸君。私の名は『ゼウス』…このアインクラッドを支配する者。私の世界へようこそ…!』
「私の世界…!?」
『この姿を見て分かっている者もいるだろうが…私はとある人物の『アバター』だ。私の本当の名は…『茅場晶彦』。そう、私はアインクラッドの支配者であると同時に現在SAOを『外』から管理できる唯一の存在なのだ』
「…な、なんなのこれ…どういうこと?」
「もしかしてなんかのイベントじゃない?期間限定のクエスト的な」
「開発者様がラスボスしてくれるってか?粋な計らいじゃないか…!」
まだ事態を受け止め切れていないプレイヤーの多くは、目の前の出来事をサービス開始を記念したセレモニーの一環だと楽観的に捉えている。しかし、キリトはそんな油断など欠片もない視線でゼウスを見据える。…その支配者然とした雰囲気が、あの壇黎斗や壇正宗に近しいものだと感じ取っていたからだ。
『諸君らはすでにメインメニューからログアウトのコマンドが無いことに気づき、動揺したことだろう。…しかし、それは不具合などではない。それはソードアート・オンラインの『本来の仕様』なのだ』
「仕様…?」
『諸君らはこの世界に来た時点で、自発的なログアウトをすることはできない。また、外部からの物理的、あるいはハッキング等によるナーヴギアへの干渉も不可能だ。もしそれが実行された場合…ナーヴギアから放たれる高出力のマイクロウェーブが諸君らの脳を灼き、死に至らしめる』
「…?あの、あの方は一体何をおっしゃられているのですかな?」
「要するに、無理矢理ログアウトしようとしたら俺らの脳みそが電子レンジみたいにチンされるってことだとよ…!」
「ふむふむ……どぇぇぇぇぇぇッ!!?そそ…それでは拙僧達が死んでしまうではありませんかぁ~!!?」
「ふ、ふざけんな!いくらイベントだからって悪ふざけが過ぎるぜ、付き合ってられっか!」
業を煮やしたプレイヤーが広場から出ていこうとするが…
「…あ、あれ…!?なんだこれ…出られない!?」
『…心苦しいが、諸君らには私の話を最後まで聞いてもらいたい。でなければ…残念にも既に外部からの強制ログアウトにより先んじてアイングラッド、そして現実世界から退場してしまった213人のプレイヤーの後を追うことになってしまうだろう』
「213人…!?んな馬鹿な…信じねえ、俺は信じねえぞ!」
『だが幸運にも、多数の死者が出たことで世間も今回の事態を認知し始めている。彼らという尊い犠牲のおかげで、諸君らが無駄死にする危険は大いに減ったと言えるだろう』
「…何が犠牲だッ!お前が殺したようなものだろうが!!」
『ご尤もな反論だ少年。しかし、その言葉はもはや無意味だ。その怒りは私にではなく、攻略のための原動力とするのが良かろう』
「くっ…!」
キリトの激昂にも澄ました口調でいなしたゼウスはさらに続ける。
『さて、強制ログアウトによる死のリスクが減ったからといって安心してもらっては困る。諸君らがこの世界から出られない以上、諸君らにとって今よりこの世界が『現実』となる。…すなわち、この世界における死…『HPの消失』が訪れたプレイヤーもまた、ナーヴギアにより脳を灼かれることとなる。…例外は、無い』
「…まさか、まさかお前…!」
『もしこの場に昨年までの時点で都内に在住、あるいはその近郊に住んでいたプレイヤーがいるなら、私の言葉にどこかしらの既視感を憶える者がいるだろう。…そう、あの『仮面ライダークロニクル』のことを。諸君らの中には、もしかすればプレイヤーとしてゲームに参加した者も居るかもしれないな』
「仮面ライダークロニクル…!ニュースで聞いたことがありますぞ、仮面ライダー同士が戦い合い、ゲームオーバーになったプレイヤーは本当に消えてしまうと…!」
『そうだ、謂わばこれは仮想空間で行われる仮面ライダークロニクルの第2幕…!敗北はそれ即ち死を意味し、戦いから目を背ければ一生ここから出ることは叶わない。…そして、そのクリア条件もまた同じ。ゲームマスターを倒し、『ゲームをクリアする』ことのみ。仮面ライダークロニクルの時はクロノス、そして今回はこの私…ゼウス。私はこのアイングラッド第1層から遙か上…『第100層』にて君たちの来訪を待っている』
「100層だと…!?んなもんできっこねえじゃねえか!」
「そもそも開発者がラスボスとかふざけんな!そんなの勝てるわけ無いじゃないか!」
『安心したまえ、私とて自身が作ったゲームで開発者権限で好き放題するほど厚顔無恥ではない。君たちが100層に到達する頃には私と十分渡り合えるだけの実力に成長しているだろうし、私自身も対等な条件で戦うことを約束しよう』
「私たちを閉じ込めておいて、どの口でそんなこと…!」
『…では最後に、君たちのアイテムストレージに私からのプレゼントを贈っておいた。確認してくれたまえ』
「プレゼント…?」
キリトが訝しげにアイテムストレージを除くと、そこにはさっきまでなかった『手鏡』というアイテムがあった。
「なんだこりゃ…?」
オブジェクト化した手鏡を覗き込む。そこに映っているのは自分のアバターの顔。ただの手鏡にしか見えない…と、その時。
「うおおおおっ!?」
「おおおおおっ!」
「クライン、オーナリー!?…ッ!」
悲鳴に振り向くと同じように鏡を見ていたクラインとオーナリーの体が光り出す。彼らだけでなく、他のプレイヤー達も同じように光に包まれていく。当然、キリトも。
カッ…!
「…っく、一体何が…」
「お、おいキリト…大丈夫…か…」
やがて光が収まり、声をかけてきたクラインにキリトが振り返ると…
「…だ、『誰』?」
「お前こそ…誰だよ?」
クラインの声でそう言うのは、先ほどまでの爽やかそうな見た目とは異なる無精ひげを生やした男であった。
「まさかッ…!」
再び手鏡を覗き込んだキリト。そこに映っていたのは自分のアバターの顔…ではなく、『現実の自分の顔』であった。
「ど、どうなってるんだ!?なんで俺の顔が…」
「お、お前…男だったのかよッ!」
見れば広場全員のプレイヤーの顔も先ほどとは別物になっており、彼らの言動からその顔が彼らのリアルの顔であることが窺える。…ネカマプレイをしていたプレイヤー間で一悶着も起きている。
「ま、まさかお前…キリトなのかよ!?」
「じゃあやっぱり、アンタがクラインなのか…!なんでこんな…」
「…き、キリト殿?その顔は…」
「ん?オーナリー…」
自分の顔を指さしながら愕然としているのは、オーナリーの声の『坊主頭の青年』。その顔を見た瞬間、キリトがさっきまで感じていたデジャヴが融解する。何故ならその顔は…あの『パックマン騒動』の時に共闘した『仮面ライダーゴースト』と共に居た坊主、『山ノ内御成』だったからだ。
「…あ、アンタ!確か、ゴースト…タケルと一緒に居た、『大天空寺』の坊さん!?」
「そうであります!…ではやはり君はあの時タケル殿と一緒に戦った『清掃員の少年』だったのですな!」
「な、なんだお前ら…知り合いだったのかよ?」
「あ、ああ…ちょっとあってな」
「そ、それよりキリト殿!これは一体何がどうなっているのでありますか!?」
「…そうだ。ナーヴギアはヘッドギアタイプの筐体だから顔の形がハッキリ分かる…!それに、常に放っている微弱なパルスで目や鼻の位置をスキャニングすれば顔もほぼ完璧に把握できる…。けど、体格や身長は…?」
「ナーヴギアを初めてつけたときに、キャリブレーション…?とかで体をあちこち触ったよな?そん時のデータなんじゃねえのか?」
「で、では拙僧の頭が坊主なのはナーヴギアを被る時カツラが邪魔で外していたから…?」
「で、でもよ…でもよぉ!なんでこんなことを…」
「…すぐに教えてくれるさ。アイツがな…!」
キリトが指し示した先で、混乱するプレイヤー達を睥睨していたゼウスが再び口を開く。
『君たちは今、何故こんなことを…と思ってるだろう。それに答えるとするなら…『こうすること』が私の目的だったからだ。私が創り出したこの仮想空間の世界で、『本物の命』が生と死を謳歌する…それを鑑賞するためにこのソードアート・オンラインは作られた。いくら精巧に現実を再現したゲームであろうと、そこに生きる者が『偽物』であれば所詮それは『偽物』でしかない。…私は、私の作品が『本物』になる瞬間を見たかったのだよ』
「…茅場、晶彦ぉッ…!」
『ではこれにて、ソードアート・オンラインのチュートリアルを終了する。私は上で君たちを待つとしよう。…ここに居る誰かが、私を打ち倒す『英雄』になることを心より願っている…!』
パチィンッ…!
そう言い残し、ゼウスが指を鳴らすと…
バリバリバリバリィッ!!
『きゃあああああッ!!』
視界を覆い尽くさんばかりの稲妻と稲光が黒雲より降り注いだ。
シュゥゥゥゥ…
そしてそれらが収まり、空を覆い尽くしていた黒雲が引いていった後には…
「き…消えた…」
そこに居たはずのゼウスの姿は、影も形もなく消え失せていた。
ワーワーギャーギャー…!
「…いやはや、とんでもないことになりましたな」
「とんでもないどころじゃねえっつーの…!糞がッ、なんで俺がこんな目に遭わなくちゃならねえんだッ!」
「…自棄になるなクライン」
「けどよぉッ!」
「俺達が混乱すればするほど、茅場の娯楽を増やすだけだ。…キツいのは分かるけど、今は冷静になろう」
「…クソぉ!」
ゼウスが消えてから数分後、パニック状態の広場から抜け出したキリト、クライン、オーナリーは広場から少し離れた路地裏に移動していた。
「しかし、これからどうしたものでしょうか…。こちらの拙僧達もですが、現実世界の拙僧達の体もです。拙僧はログインしている事務所に同僚がいますし、この手のことに強い知り合いがいますので大事にはならないでしょうが…クライン殿は一人暮らしでしょう?お体のほうは大丈夫なのでしょうか?」
「あ、ああ…俺はアパートに同僚が住んでるし、月に1度は母ちゃんが様子見に来るし大丈夫だろうとは思う。キリトの方はどうだ?」
「…俺は家に家族がいるからもうしばらくすれば異変に気づくとは思う。それに、さっき言ってた聖都大学の付属病院には俺の知り合いのドクターもいる。…それに、こういうことにかぎっては誰よりも頼りになる奴もいるから、なんとかなるとは思う」
「ではひとまず現実の体の方は心配なさそうですな。…拙僧達がこちらの世界で死なない限りは、ですが」
「ちっくしょう…!なんで『たかがゲーム』で死ななきゃならねえんだ!一体俺達が何をしたって言うんだよ…俺達はどうすりゃいいんだよ!?」
「……」
『たかがゲーム』。クラインのその言葉はキリトの胸に深々と突き刺さった。自分はついこの間までその『たかがゲーム』で命のやりとりをし、多くの人々の死を目にしてきた。間に合わなかった命があるたびに、キリトは己の中で『ゲームの在り方』を反芻し続けてきた。
…そして今、目の前で再びゲームによる命のやりとりが繰り返されようとしている。そんなものを、キリトは許すわけにはいかなかった。
「…ああ、そうだ。これはゲームだ、ゲームって言うのは楽しいものでなくちゃ…皆の『希望』でなくちゃいけないんだ。だから、こんな絶望しかもたらさないゲームを…許すわけにはいかないんだ…!」
「…き、キリト?」
「キリト殿?」
「…クライン、オーナリー。俺は今すぐに次の村に向かう。そして一刻も早く…一分一秒でも速く、このソードアート・オンラインをクリアしてみせる」
「キリト…お前」
「別にヒーローを気取りたい訳じゃあないぜ。…ただ俺は、茅場を許すわけにはいかない。ゲームを愛する者として、人の命を救う医者を目指す者として…人の命を弄ぶようなこんな狂ったゲームを、俺は絶対に認めるわけにはいかない…!この世界で、2度目の仮面ライダークロニクルを繰り返させるわけにはいかないんだ!」
「…キリト殿」
「俺はこのゲームのβテスターだ。その中でも俺はかなり奥深くにまで進んだ部類に入るという自覚はある。…けど、あの茅場晶彦が俺達βテスターの存在を見越していないとは思わない。多分序盤の内から、俺達の知っている情報と違う仕掛けがされているだろう。俺はそれを確かめながら、一人でも多くのプレイヤーが生き残れるよう手を尽くす。…クライン、オーナリー。お前達はどうするんだ?」
「…悪い、俺は一緒には行けねえ。ここには別ゲームで知り合ったダチが一緒にログインしてんだ。そいつらをほっといて、俺一人だけ先に進むわけにはいかねえ…」
「…そうか。オーナリーは…」
「……」
「オーナリー?」
オーナリーは神妙な面持ちで目を瞑った後、やがて目を見開いて二人に宣言する。
「…キリト殿、クライン殿。拙僧に戦い方を教えていただいてありがとうございまする。…しかし、誠に申し訳ありませんが拙僧はしばし戦線から身を引こうと思いまする」
「ああッ!?なんでだよ!お前結構強いじゃあねえか、なのになんで…」
「勘違いしないでもらいたいですぞクライン殿。拙僧は何も臆病風に吹かれた訳ではありませぬ。…いえ、確かに怖いのは怖いのですが拙僧にはもっと恐ろしいことがありまする」
「…それは一体?」
「お二人とも、あれをご覧なされ…」
オーナリーが示した先では、未だに混乱の渦中にあったプレイヤー達が物や他のプレイヤーに当たり散らしたり、絶望してその場に打ちひしがれたりしていた。
「…あの者達の中には、キリト殿のようにゲームをクリアし帰還を試みようとする勇気ある者も居るでしょう。…しかし、そうでない者もまた大勢居るのです。子ども、老人、か弱い女性…そんな方々にあの凶暴なモンスターの前に立ち剣をとって戦えというのは余りにも惨い…。こうして坊主頭に戻ったのも御仏のお導き、拙僧は今一度大天空寺の住職代理としての立場に戻り、行き場のない人々の為に仏の道を説く選択をしたいと思いまする。…思い詰めた人々が、自ら命を絶ってしまうようなことがないように…!」
「…オーナリー、お前…そこまで考えてたのかよ」
「命を大切にしないことは、タケル殿が…私の一番の親友が最も嫌うことですので。『命を燃やす』ことと、『命を諦めること』は例え結果が同じでも天と地ほどの違いがありまする。拙僧はここで、人々が明日を生きることに己が命を燃やすことができるよう頑張ってみるであります」
「…分かった。じゃあ、ここでしばらくお別れだな」
「…おう!けど心配すんなよ、仲間と合流したらすぐにレベル上げて追いつくかんな!それまでくたばるんじゃねえぞ?」
「俺を誰だと思ってるんだ?…俺は『天才ゲーマーキリト』だぞ。追いつけるもんなら追いついてみろ!」
「拙僧はここで、お二人の旅の無事をお祈りしていまする。…道に迷ったときは何時でも訪ねてくだされ。拙僧がどんなことでもお力になり申す」
3人は向き合い、どちらともなく拳を突き出しぶつけ合う。
「じゃあ、先に行ってるぜ!」
「おお、次会ったときは強くなった俺を見てびびんなよ?」
「キリト殿、決して無理はなさらぬよう。どんなときでも、自分を信じて…」
「…命、燃やすぜ!…だろ?」
「…はいであります!」
笑い合った後、キリトは始まりの街の出口へと、クラインとオーナリーは広場へと走って行く。
タッタッタッタ…!
「…待っていろ茅場晶彦!俺は必ず、お前の元にたどり着く!そして、帰るんだ…皆が、スグが、パラドが待っている…現実に!」
グオッ!
ブィィィィィッ!!
門をくぐった瞬間、まるで待ち構えていたように先ほどのイノシシ型モンスターが群れを成して襲いかかってくる。
チャキッ…!
それを認めるや否やキリトは背負った剣に手をかけ…
…ズパァンッ!
プギッ…!?
すれ違いざまにまとめて切り捨て、モンスターが砕けるのを見届けもせず走り去っていく。
(第2の仮面ライダークロニクル?負ければ即死のデスゲーム?…上等じゃないか、乗ってやるよ茅場晶彦!お前がどんな仕掛けをしていようが、いつも通り…)
「…ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!!」
と言うわけでアニメ第1話の部分はここまで。いや~思ったより長くなった…
オーナリー…もとい、御成の出番はここでちょっとお休み。彼の努力でデスゲーム開始直後の自殺者が減ることを願いましょう
さて…攻略にストーリーが進めば今度は違った立場の面々が活躍します。勿論その中にはどこかで見たような人物達もちらほらと…次は誰を出そうか?