ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~   作:マイン

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こっちのが先に書けてしまったのでこっちを更新します。
トリロジーのゲンムvsレーザー観てきました。まさか黎斗にしんみりさせられることになるとは思っても居なかったよ…。そして正宗があんなに人間くさかったとは…。外道では合っても、人でなしではなかったんですね。
出来るならこの作品でもトリロジー編をやりたいけれど…どのタイミングでやるべきなんだろう?やはりアリアゼーション編が終わってからかな?…何年後になるかな

ではどうぞ。



少女との邂逅

 デスゲーム開始から1週間…ようやく混乱から落ち着いたプレイヤー達は、それぞれ行動に移っていた。腹をくくり、命をかけた攻略に臨む者。戦いを恐れ、この世界で静かに生きていくことを選んだ者。…そして生きる希望を失い、自ら命を絶とうとする者。オーナリーが中心となり自殺者の多くは未然に防ぐことができたものの、それでも少なくない人数が人知れず命を絶ち、未だに余談を許さない状況にあった。

 

 

「…待ち合わせの場所はここだったよな」

 そんな中、キリトは始まりの街から少し離れた場所にある森の一角にやってきていた。

 

「…アルゴ、いるか?」

 

…ガサガサ

「待ってたヨ、キー坊」

 キリトの呼びかけに応じて木陰から姿を現したのは、頬の髭のようなペイントが特徴的なフードを被った少女。彼女の名は『アルゴ』、キリトと同じβテスターであり、テスター時代から『情報屋』として名の知れたプレイヤーである。なかなか人目につかない神出鬼没さと、顔のペイントからついたあだ名が『鼠のアルゴ』である。

 

「随分会わなかったけど、何やってたんだイ?こっちは他のテスターから集めた情報で攻略本作ってる最中で忙しいんだけれど…」

「そうか、ならちょうど良かった」

「んン?」

 怪訝そうな表情のアルゴであったが、直後にキリトから送られてきたデータを確認し…目を剥く。

 

「こ、これハ…!?」

「『第一層、ボス部屋までの最短ルート』、そしてそこまでの『βテストと製品版の差異』をまとめたものだ。その攻略本とやらを作る時の参考にしてくれ」

「ボス部屋までたどり着いたのカイ!?たった一週間デ!」

「一応な。…ただ、攻略自体は今の装備とレベルじゃ無理だったからそこで引き返してきたけどな」

「…とんでもないなキー坊。流石は『天才ゲーマーキリト』様ってことかイ?」

「茶化すなよアルゴ。…別に難しいことしたわけじゃあないさ。勝てる敵だけ倒して、勝てない敵からはさっさと逃げる。RTAの常套手段だよ」

「一回でも負けたら死んじまうデスゲームでそんなことやろうとすること自体、難易度ハードってレベルじゃないと思うけどナ…。まあいいヤ、ならありがたくこの情報はもらっておくヨ。いくら払えばいいんダ?」

「ああ、金は良い。…その代わり、2つ頼まれてくれるか?」

「何ダ?」

「…この情報を、攻略を目指しているプレイヤー全員に無償で配布して欲しいんだ。勿論、お前が集めた情報に関しては別でいい」

「おいおい…いいのカ?苦労して集めた情報なんだロ?」

「俺がここまでしたのは、こんなゲームで誰にも死んで欲しくないからだ。金だのなんだので死なれたら、それこそ俺にとっては本末転倒なんだよ」

「…ふ~ん。で、もう一つってのハ?」

「その情報が公開されれば、そう遠くないうちにボス攻略の為に多くのプレイヤーが召集されることになるだろう。…そして、おそらくその中心になるのはβテスターだ。その彼らに伝えて欲しい。…『ボスがβの時通りに動くとは限らない』ってな」

「…マジカ?」

 アルゴのそれは、キリトの言葉の真偽を問うものであり…そして同時に自分が予想していなかったことに対する驚きでもあった。

 

「あくまで俺の想像だ。…けど、アイツなら…茅場晶彦ならあり得ないとは言い切れない。ゲームの開発者様ってのは、何かと事前情報を鵜呑みにしているプレイヤーの予想を裏切りたくなるらしいからな。…まあ半分は脅しみたいなものだ。これで少しは慎重になってくれるのなら儲けものさ」

「…なんか実感こもってるナ。知り合いにそういう奴でもいるのカ?」

「……うん、まあな。とにかく、その2つは頼むぜ。一応俺も現場でフォローはするけど、万が一には備えておきたいからな」

「そうかイ…お人好しメ」

「ん?なんか言ったか?」

「いいヤ、何にモ」

「そうか?…じゃあ後は頼むな。俺はちょっと寝るよ。流石にぶっ通しで攻略するのは疲れた…」

「寝るって…まさかここでカ?」

「大丈夫だよ、ここはフィールドでもモンスターの少ないエリアなのはアルゴも知ってるだろ?それに、不意打ち如きで俺がやられると思ってるのか?」

「はいはい、分かりましたよ天才ゲーマー様。どうぞごゆっくリ…」

 呆れたように去って行くアルゴを尻目に、キリトは近くの切り株にもたれかかるとそのまま昼寝を始める。

 

「ふぁぁぁ…たまには、こういうのもいいよな。…今頃、スグや母さん達心配してるかな。飛彩さんたちも、今頃大変だろうし…黎斗が、俺の体に…妙なことしてない…よな…」

 

 

 

 

 

…ガッ、ザザァ…!

「…ん?」

 うとうと眠りに就きかけていたキリトであったが、どこかから聞こえてきた物音に目を覚ます。

 

「なんだ?こっちから聞こえてきたような…」

 β時代にはこんなところでイベントがあった憶えはない。キリトのように人目を避ける目的でもなければ誰も寄りつかないはずのこの森での物音に、キリトは怪訝そうに音の発生源へと向かい、そこで目にしたものは…

 

「…!」

 一体の犬のような頭のモンスター…『コボルト』に打ちのめされている一人の『少女』の姿であった。

 

 

 

 

(…え?何、これ…私、死ぬの…?)

 先ほど目の前のコボルトに吹っ飛ばされ、HP全損寸前で虫の息になっている少女…『アスナ』は朦朧とする意識の中でそう考えていた。

 

 元々彼女は、ゲームそのものに興味が無かった。親に言われるがまま良い学校に入学し、勉強し、優秀な成績を取り続けた…それしか知らなかった少女である。しかし、兄に勧められて気まぐれでログインしたこのソードアート・オンラインの世界に閉じ込められ、禄なゲームの知識すらなかった彼女はただ呆然とした日々を送っていた。

 そんなある日…街でプレイヤー達が噂していた『隠しログアウトスポット』の存在。それを聞いたアスナは藁にも縋る思いでここを訪れ…出口の代わりに現れたコボルトによる不意打ちを喰らい、その情報が嘘であったことを思い知らされながら…今、死を目前に控えていた。

 

(こんな、こんな簡単に死ぬの?……いや、嫌…!死にたくない、まだ私なにもしてないのに…今まで頑張ってきて、何もできていないのに…こんなところで、死にたくないッ…!)

 迫り来る死から必死に逃れようとするアスナであったが、目の前でわずかに残っている自分のHPの存在が知識に疎くとも自分の死が間近であることを知らしめ、その恐怖がアスナの体を縛る。そんなアスナに、コボルトが握りしめた棍棒が振り下ろされ…

 

 

 

…ビュンッ!

ガッ…!

(…え?)

 突如、アスナの後方から飛来した短剣がコボルトの胸に突き刺さり、その勢いでつんのめったコボルトが動きを止める。そこに

 

ダッダッダッダ!ダンッ!!

「ハァーッ!!」

 叫び声と共に光り輝く足を突き出した少年、キリトの飛び蹴りがコボルトに突き刺さった短剣の柄を捉え、さらに奥深くへと突き込んだ。

 

『…ッ!』

 投擲によるダメージに加え蹴りと短剣のダメ押しによるダメージを受けたコボルトは、断末魔をあげる間もなく砕け散った。

 

「…おい、アンタ!しっかりしろ、おいッ…!」

 自分に必死で呼びかけるキリトの顔を見上げながら、アスナの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

「…ん…?」

 目を覚ましたアスナは、自分が切り株を枕に寝かされていることに気づく。

 

「お目覚めですかお嬢さん?」

「…誰?」

 頭上からかけられた声に顔を上げると、そこには先ほどの少年が切り株に座りながら自分を見ていた。

 

「貴方、さっきの…私を助けてくれたの?」

「目についちゃったからな、ほっとけなかったんだよ。…体は大丈夫か?一応HPは全快している筈だけど」

「え…」

 言われて目線をあげると、先ほどまで全損寸前だった自分のHPが満タンになっていた。

 

「ど、どうして…?」

「いや…あのままだとなんの拍子に0になるか分からなかったから、寝ている間に回復ポットを飲んでもらったんだけど…」

「回復ポット…?飲んで…って、まさか…貴方が飲ませたの!?寝ている私に無理矢理!?」

「ち、違うから!あくまで医療行為、不可抗力だから!ていうか、そうしないとやばかったんだからしょうがないだろ!」

 両腕を抱いて後ずさるアスナにキリトは大慌てで自己弁護する。

 

「…ホントに何もしてないんでしょうね?」

「マジでそれだけです、神に誓って…!…俺だってホントなら同性のプレイヤーに任せたかったけど、アルゴはもう帰っちまっただろうからアテが無くて…」

「オレっちを呼んだかいキー坊?」

「へ…うおおおおッ!?あ、アルゴ!いつからそこに!?」

 いつの間にか自分の背後に潜んでいたアルゴにキリトは飛び退いて驚く。

 

「こ、今度は誰!?」

「にしし…オレっちの隠密スキルを甘く見ない方がいいゾキー坊。…それはともかく、無事でなによりだなビギナーさン?」

「え…私のこと?」

「おう。…実はキー坊と別れてから街に戻る道中デ、通りすがりの奴から誰かがオレっちの名を騙ってこの森にログアウトできる抜け道があるってデマを流していることを聞いてナ、しかもその噂を聞いた明らかにビギナーなプレイヤーがこの森に向かったって行ってたもんだから急いで戻ってきたんだけド…流石キー坊、手が早くて何よりだナ」

「…なんか含むものを感じるけど、まあいいや。それよりアルゴ、悪いんだけど…」

「分かってるサ。ここまで来たついでダ、このビギナーさんはオレっちに任せときナ」

「ああ、頼むぜ」

 アスナの面倒をアルゴに任せ、立ち去ろうとするキリトであったが…ふと足を止める。

 

「…ビギナーさん、アンタに1つ忠告しておくよ。帰りたい気持ちは分かるし、自棄になりたい気持ちも理解できる。…けど、だからといって死に急ぐようなことはしないでくれ。そんなことをされても、誰も喜ばない。むしろ、アンタを心配している人たちに迷惑をかけるだけだ」

「…ッ!貴方に、何が分かるって言うのよ!こんな世界に閉じ込められて、正気で居られるわけがないでしょ!?貴方みたいな、ゲームが好きな人たちは違うんでしょうけど…私はそうじゃないの!たまたま興味本位でここに来て…そしたら、ここから出られなくて、挙句本当に死ぬって…そんなの、受け入れられる訳がないでしょ!!」

「……」

「だったら、どうせ死ぬんだったら…黙って引き籠もっているより、いっそ戦っていた方がマシよ!なにもしないまま、できないままただ生きているだけよりも、自分が何かをしたっていう証を残して死んだ方が、ずっとマシ…」

 

 

ガッ!

「!?」

「…アンタ、それ…本気で言ってるのか?」

「ちょ、キー坊!?」

 アスナの癇癪を黙って聞いていたキリトであったが、アスナの『死んだ方がマシ』という言葉を聞いた瞬間、電光の如く振り返りアスナの胸ぐらを掴みあげる。

 

「死んだ方がマシだって?…ああ、そうだろうな。アンタにとってはその方が楽だろうし、気持ちもスッキリするだろう。『やれるだけやった、もういいか』ってな…!けどな、アンタの命は、アンタだけのものじゃあないんだよッ!現実世界でアンタの帰りを待っている家族や友達、それに…わざわざ命を助けた俺の前で、アンタはその言葉を胸を張って言えるのか!?アンタに生きて欲しいと願っている人たちに、死にたいって…言えるのかよッ!」

「え、あ…!?」

「…確かに、この世界で生きていくのはキツいことだ。現実以上に死が間近にあるこの世界で、いつも通り振る舞え…なんていうほうが無理な話だ。でも、それでも…死んだら何もかも終わりだろ?帰りたいと願うことも、楽しかったことを思い出すのも、現実に戻ってからのことを考えるのも…死んじまったら、できなくなるんだよ。だから、せめて最期まで生きることを…生きようとすることを諦めないでくれ。ここはゲームの世界だけど、この世界に…『次』は無いんだから」

「………」

「…あ、あの…聞いてます?」

「…手」

「へ?」

「いつまで掴んでるのって言ってるの?…女の子の胸ぐら掴んで何をしようとしているのかしら?」

「あ…ご、ごめんッ!」

 ジト目のアスナに注意され、キリトは慌てて手を離す。

 

「と、とにかく…俺が助けた以上アンタは俺の『患者』だ。だから俺は何が何でもアンタに死んでもらいたくない。もしアンタが限界になるまで生きて、それでもまだ死にたいって本気で言うんだったら…その時は、好きにしろ。俺もそこまで付き合っている暇は無いからな」

「…何よそれ、医者気取り?貴方どこから見ても私と同年代ぐらいじゃない、偉そうに…」

「……」

「わ、分かったわよ…。これからは、気をつけてみるわ…」

「そうか…ならいいんだ。んじゃ…!」

 アスナの返事を確認すると、キリトは走り去っていった。

 

「…なんなのよあの人。変にかっこつけたり大人ぶったり…男子って皆ああなのかしら?」

「…」(ニヤー…!)

「な、何よ…?」

「んふフ…ビギナーさん、アイツのこと気になるのかイ?」

「ち、違います!!あんな言い方されたら、誰だって思うところぐらいあるでしょ!?」

「まあその辺は否定できないナ。キー坊はそういうところだけぶきっちょだからナァ…。けど、1つだけ教えてあげるヨ」

「…何?」

「アイツは、オレっちの知る限り…このSAOのプレイヤーの中で『最強』サ。今のところはだけどナ」

「最強…!」

「おっと、この情報はサービスしておいてあげるヨ。オレっちも情報屋だから、これで食ってかないといけないんでネ。これ以上知りたかったら、料金か対価になる情報をよこしナ。…お嬢ちゃんの情報でもいいけどナ」

「いりません!…それより、今情報屋って言ってましたよね。なら、教えてもらえますか?」

「ん?何をだイ?」

 

「…強くなる方法を。この世界で、戦って…生き抜くための方法を…!」

「…いいゾ、ちょっとだけならナ。料金は…出世払いにしてやるヨ。アンタが強くなってからのナ…!」

 

 

 

 

 その後、キリトの情報を加えて作られた『SAO序盤攻略本』は第1層の全プレイヤーに『無償』で配布…というより、第1層の全ての街や村のど真ん中にフリーペーパーの如く山積みにされたことで滞りなく行き渡り、多くのプレイヤーがその本を参考に戦う術を身につけ、腕に憶えのあるプレイヤー達が中心となって攻略が本格化されることとなった。

 そんな中キリトはそんな攻略から一度身を引き、『来たるべき時』が来るまで疎かにしていたレベル上げや強力な武器の入手クエストに勤しんでいた。

 

 そして…デスゲーム開始から20日目、第1層の全プレイヤーに通達が入る。

 

『本日3時より、第1層ボス攻略の為の会議を行う。腕に自信のあるプレイヤーは可能な限り召集されたし』

 

「来たか…!」

 キリトの待っていた来たるべき時…『ボス攻略』の日が、とうとうやってきた。

 




アニメ通りに進めるとちょっと味気ない気がするので、SAO編はプログレッシブのストーリーもちょこちょこ絡めてやっていきます。
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