ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~ 作:マイン
…それに反してダンガンロンパの方の筆が進まない…。完結までのストーリーは出来ているのに話を膨らませるのが難しい…。
愚痴ってすみません、ではどうぞ
ザワザワザワ…
第1層ボス攻略の会議が行われる始まりの街の広場。そこには開始1時間前であるにも関わらず多くのプレイヤーが集まり、各々自身の戦歴を自慢したり情報交換をするなど戦いに向けての士気を高めていた。
「おお…もうだいぶ集まってるな」
キリトもまた一足早く会場入りし、適当なところで開始を待とうと辺りを見渡し…見覚えのある後ろ姿を見つけてそちらへと向かう。
「…や、ご無沙汰」
「…どうも」
アスナの素っ気ない挨拶に苦笑しながらキリトはその隣に腰掛ける。
「とりあえず、今日まで生きててくれてホッとしたよ。…でも、ここに顔を出してきた辺りアルゴのお眼鏡には適ったみたいだな」
「ええ、『才能ある』ってお墨付きをもらったわ。だから『お医者様』のご心配は無用です」
どや顔で嫌みを飛ばすアスナであったが、キリトはその顔色に異変を感じる。
「…アンタ、なんかやつれてないか?ちゃんとロクなもの食ってるのかよ?」
「はっ…?な、何言ってるのよ!そんなこと貴方に…」
くぅ…
「…~ッ!?」
まるで示し合わせたかのようにアスナのお腹から小さな悲鳴が鳴る。幸い周りには聞かれてはいないようであったが、隣に居る男にはバッチリ聞こえていたようで…苦笑いをするその顔に、アスナの顔が瞬時に紅潮する。
「ははは…どうやらその様子じゃ、まだまともな食事をしたことは無いみたいだな」
「…いいじゃない、そんなの…!どうせゲームの中なんだから、食べようが食べまいが一緒じゃ無いの…。なのに、なんでお腹が鳴るのよぉ…!」
「そんなことは無いさ。確かに栄養になるわけじゃ無いけど、こっちでの『食べた』っていう感覚は現実の肉体にも反映されるから、食べないと満腹中枢が満たされないんだよ。現実じゃ点滴漬けだろうから死にはしないけど、栄養だけじゃお腹は膨れません…っと」
キリトはそう言いながらメニューウインドウを操作し、所持品から黒パンと何かの容器を取り出しアスナに差し出す。
「とりあえず、これでも食べなよ。俺のお気に入りのセットだ」
「お気に入りって…一番安い黒パンじゃないの。私ちょっと苦手…」
「まあ食パン食い慣れてるとな…でも、そのクリームをつけて食べてみろよ。イメージ変わるぜ?」
「クリーム?」
言われるがまま容器に入っていたクリームをパンに塗り、恐る恐る一口かじりついたアスナは…その味に目を見開き、やがて恍惚とした表情になる。
「……!」
「な、イケるだろ?」
「ッ!…ま、まあまあかな…」
返事こそ素っ気ないが、夢中でパンを頬張るアスナの本音は筒抜けである。
「ゲームでも…いや、ゲームだからこそどんな状況であれ自分が満足できる環境でいなきゃ長続きしないぜ。こんな世界でも、そこそこうまいものと風呂と満足な寝床さえあればいつも通りに…」
「お風呂ッ!!?」
「うお!?」
キリトが何気なく口にしたそのワードにアスナが食いついた。
「今、風呂って言ったけど…お風呂、あるの!?」
「あ、ああ…市街地の宿泊施設にあるのは高いけど、ちょっと外れたところにある穴場の場所ならそこそこの値段で…」
「……」
「…入りたいのか?」
(コクコクッ!)
「…会議終わった後なら。後で案内するよ」
「約束よ、絶対よ…!」
「は、はい…」
さっきの黒パンを放り出すほどの執着ぶりに、キリトは若干引き気味であった。
と、そこに。
ゴーン…ゴーン…!
3時を告げる鐘の音が鳴り響くと共に、辺りの緊張感が高まる。そしてそんなプレイヤー達の間を縫うように二人のプレイヤーが広場に中央に出てくる。
パンパンッ!
「…今日は俺の呼びかけに集まってくれて感謝する!SAOのトッププレイヤー達よ!」
「ま、トッププレイヤーとは言っても第一層じゃあ正直どんぐりの背比べだろうけど…それでも、ここに来てくれた時点でここに居る皆は誰よりも向上心のある人間だってことは俺達が保証するよ!」
大仰な口振りで注目を集めるのは青い髪の好青年。その隣で若干皮肉ぶった口調で話すのはパーマがかった茶髪の眼鏡の青年。どうやらこの二人が、今回の会議の中心人物のようだ。
「まず、自己紹介をさせてくれ。俺の名は『ディアベル』、気持ち的にはナイト…って感じでやってます!」
「俺の名は…『グリドン』!」
『プッ、クスクス…』
「…今俺の名前を笑った奴は、そう遠くないうちに後悔することになるぜ。戦うパティシエ…舐めんなよ?」
「皆、あまり彼を侮らない方がいい。グリドンの実力は相当なものだ、ボス攻略において彼は重要な存在になるだろう。皆もそのことはしっかり分かってもらいたい」
ディアベルの真剣な表情でのグリドンの評価に、こっそり笑っていたプレイヤー達が微かにざわめく。それを見たグリドンは誇らしげに眼鏡の縁を押し上げる。
「…さて、本題に入ろう!先日、俺達のパーティが第一層のボス部屋の前まで到達した!とうとう俺達プレイヤーの手により、このSAOの最初の攻略が成される時が来たんだ!」
「ここまで来るのに20日…まともなゲームなら遅いと言うべきペースだけど、現実の俺達にとっては余りにも長い時間だった。でも、そんな憂鬱は今は忘れよう!俺達を舐め腐ってこんなところに閉じ込めたあの茅場晶彦に、目に物見せてやる時が来たんだ!かっこよくボスをぶっ倒して、ついでに街で沈みきってる連中に希望を届けてやろうぜ!」
ディアベルとグリドンの演説に、周囲のプレイヤー達にも徐々に熱が籠もり出す。
「…ちょい待てやナイトはんにケーキ屋はん。盛り上がんのは結構やけど、その前にワイからちこっと言わせてもらえんか?」
そんな空気に水を差すように前に出たのは、刺々しい癖っ毛が特徴的な青年と中年の中間のような年齢の男性プレイヤーである。
「意見は大いに歓迎するよ。けどその前に名前を教えてくれないか?」
「ふん!ワイは『キバオウ』ってもんや。…ワイもボス攻略には大いに賛成やし、かといって一人でどうこうなる訳ないってのも重々承知や。だからあんた達とつるんでボス戦するんはかまへん。…けどな、その前にケジメつけとかなアカンことがあるやろ!」
「…傾聴しよう」
キバオウは振り返ってプレイヤー達を見渡し、一喝する。
「…こん中にいる元βテスターの卑怯もん共、出てこんかいッ!おどれらが今まで好き勝手やっとったせいで、一体何人死んだ思っとんねん!…分からんようなら教えたる、『1000人』や!この1000人は、おどれらが見捨てて殺したようなもんや!そんな人殺し共とつるんで仲良くボス攻略なんぞワイは御免や!おどれらに人間の良心ってもんがほんの少しでも残っとるんなら、今すぐ名乗り出てズルしてため込んだ金とアイテム全部おいて行けや…!」
『ザワザワ…!』
キバオウの怒号にプレイヤーのある者は同じように怒りを露わにし、ある者は出てくるわけが無いと笑い、…ある者は後ろめたいように顔を隠す。
「……ッ!」
「…!?」
そんな中、ふと隣を見たアスナはキリトの表情に思わずゾッとする。その表情はまるで『無』であった。しかし、その奥には様々な感情が鬩ぎ合ってあふれ出そうになって、しかしそれを必死で押さえつけているような…そんな無言の迫力が感じられた。そのキリトが今にも立ち上がりそうになったとき…
「…全く、何を言うかと思えば…君さ、偉そうに言っておいて何にも見えてないんだね。そういうの、美しくないよ」
「な、なんやと!?」
キバオウの後ろに居たグリドンが呆れたようにそう言う。
「…俺も同感だな」
「なッ…!?」
それに続くように前に出てきたのは、キバオウより頭1つ分ガタイのいいやけに流暢な日本語を話す黒人の男であった。
「だ、誰やお前!?」
「Sorry…俺は『エギル』という。キバオウさんよ、要するにアンタが言いたいのはこれだけ犠牲者が出たのはβテスターが初心者たちに伝えるべき事を怠ったせいだ、だからその責任を認めて謝罪しろ…ってことだろ?」
「せ…せや!そいつらが自分たちだけウマい狩り場やアイテムを総取りしたせいで、他の連中が焦って無理をして死んでもうたんやないか…!」
「ま、確かに…これだけの犠牲者が出た原因の一つとしてそれは否めないだろうね。…けど、俺が思うに『こんなもの』まで用意されておいてそんな理由で死んだって言うのなら、それはそいつの自業自得としか言えないと思うね」
グリドンが取り出したのは、アルゴ達情報屋組謹製の『SAO序盤攻略本』であった。
「そ、それは…!」
「こいつにはこの第1層におけるレベルアップの最適スポットから各種アイテムの入手クエスト、おまけにボス部屋までの最短ルートやそこに至るまでのβテストの時との変更点まで記載されていた。正直、これさえあればド素人だってそれなりに戦える。そんなものが無償で配布されていたんだから、太っ腹な話だとは思わないかい?」
「ここまで正確な情報、おまけにβテストの時を踏まえての追加情報まであるってことは…これを用意したのは間違いなくβテスター、しかもおそらくテスター本人が自分の足で調べ回って集めた情報だろう。ここまでされておいて、βテスターの連中はなにもしてくれなかったなんてこと…俺には口が裂けても言えねえな」
「ぐっ…!」
二人の言葉にキバオウがたじろぐ。キバオウとて、その攻略本の存在は知っている。更に言えばキバオウ自身も間違いなくそれの世話になった。しかし…だからこそキバオウは納得が出来なかった。これだけの情報を得ておきながら、何故未だにβテスターの奴らはこそこそと隠れるような真似をしているのかと。まだ連中はここに記されている以上の情報を隠しているのでは無いかと…。
「キバオウ君、君の憤りも理解できなくは無い。だが、君も分かっているはずだ。確かに今日までに1000人もの犠牲が出てしまったのは事実だが、もし本気でβテスターたちが自分本位のまま動いていればこれ以上の犠牲が出ていたはずだ。彼らの存在は紛れもなく、まだこの世界で生きている8000人以上の人たちの命を繋いだんだ」
「…ちっ」
「…諸君!君たちの中にも元βテスターに思うところがある人はいるだろう。しかし、今はその感情をどうか堪えて欲しい!この第一層を攻略し、一刻も早くこの世界から脱出するためには彼らの力が不可欠だ!だからこそ今は敵では無く、頼りになる味方として彼らの存在を受け入れて欲しい!」
…パチ、パチ…パチパチパチパチ…!
ディアベルの力強い言葉にキバオウも引き下がり、プレイヤー達も拍手を以てその言葉を賞賛する。
「…人気取りのいいダシにされた感じね。まあ、あのキバオウって人の言うことはどうかとは思うから自業自得だけど」
「……」
「…ホッとした?」
「べ、別に…」
脱力したように座り直したキリトにアスナがからかうようにそう言う。そこに…
「…おい!皆、朗報だ!今例の攻略本の最新版が配布されて、そこにボスの情報が書かれて居るぞ!」
「何!」
広場に駆け込んできたプレイヤーが全員に配布したもの…つい先ほどアルゴ達が完成させた攻略本の最新版には、第1層のボスに関する情報が記載されていた。
「…確認も兼ねて、俺が読み上げよう!ボスの名は『イルファング・ザ・コボルトロード』、更に『ルインコボルト・センチネル』と呼ばれる取り巻きだ。ボスの使用武器は斧とバックラー、HPゲージが最後の一本になるとタルワール…『曲刀』を使用するようになる。ボスの情報としてはそんなところ…」
「…ちょっと待った!」
ディアベルが情報確認を終えようとしたとき、キリトがそれに待ったをかける。
「な、何かな?」
「あのさ、細かいこと言うようで悪いんだけど…『裏表紙』に書いてある『それ』も、読んだ方がいいんじゃないか?」
「裏表紙?」
ディアベルが裏表紙を見ると、そこにはこのような文章が書かれていた。
『※尚、この冊子はあくまでβテストの情報を元に作成したものです。製品版である現行のボスがこのデータ通りである保証はありません。ご注意ください』
「これは…!?」
「見ての通りだ。あくまでこの情報はβの時のもの…まだ誰もボスと対面していない以上、これが100%合っているとは限らない。現にこっちの攻略本にも書いてあるとおり、βの時とは変更されている情報もある。流石にまるっきり違うって事は無いだろうけど、過信は禁物だと俺は思うぜ」
「う、うむ…」
「…ちょい待てやお前!さっきから偉そうにぬかしおって、なんでお前がそんなこと断言できるんや?…さては、お前もβテスターやな!」
「おいキバオウ、いい加減に…」
「だったらなんだって言うんだ?」
『ッ!?』
キリトのサラッとしたカミングアウトに、隣に居たアスナのみならず全員がぎょっとした視線を向ける。
「ちょ…ちょっと貴方!?」
「今更隠したところで逆に怪しまれるだけだろ?だったらいっそハッキリ言った方がすんなり話が進む」
「そうかもしれないけど…」
「おっ、おどれ…ええ度胸やないか!よくもぬけぬけと顔見せよったな、名を名乗らんかいッ!!」
「…俺の名はキリトだ」
「キリトやとぉ~?けったいな名前し腐りよってからに…」
「お前も人のこと言えるのかよ…」
「なんやとぉ!?」
「ちょっと待ってくれキバオウ君!」
「で、ディアベルはん…?」
激昂しかけたキバオウをディアベルが制止し、キリトに問いかける。
「キリト…と言ったな。まさかとは思うが…君があの天才ゲーマーキリトなのか?」
『天才ゲーマーキリト…!?』
『冗談だろ、たまたま同じ名前の…』
「…ああ、そうだ」
『ザワッ…!?』
ディアベルの問いに皆がざわめきだしたが、キリトがそれを肯定したことでざわめきが更に大きくなる。
「やはりそうなのか…!君がキリトだったのか、会えて光栄だよ!」
「…冗談やろ?あんなガキが天才ゲーマーキリトやて…?」
「…どっかで聞いたことがあるような気がするけど、なんだったかな?」
「俺も噂程度しか聞いたことは無いが、確か数年前にあらゆるゲームの公認、非公認を含めた大会を総ナメにしたらしいぜ。ここ最近は表舞台に出てこねえから引退したって聞いたが…まさかあんな子供だったとはな」
「…貴方、本当に有名人だったのね」
「はは、まあな…」
周囲から向けられる様々な視線にキリトは居たたまれないように肩を竦める。
「…そういえば、攻略本の情報のあちこちに『情報提供者 K』って書いてあったが、まさか君のことなのか?」
「…アルゴの奴、匿名にしとけって頼んだのに余計なことしやがって…」
「素晴らしいッ!皆、これは俺達にとって最高の追い風だ!あの天才ゲーマーキリトがβテストに参加したと言うことは、間違いなく彼はこのゲームについて相当なレベルで熟知している!そんな彼が我々の攻略に協力してくれるのなら、これほど心強いことはない!…勝てるぞ、この戦い!!」
『オオオオオオーッ!!』
ハイテンションのディアベルに釣られるようにプレイヤー達の興奮も高まる。天才ゲーマーキリトの名は、それだけゲーマー達の間では知れ渡っていたのである。
「…あんまり持ち上げてくれるなよ。俺だってまだこのゲームの全容を把握している訳じゃあ無い、ボス戦で何が起こるかは俺も分からない。だから皆も、油断しないでくれ。ボス戦の経験値も、金も、アイテムも大事かもしれないが…その前にまず、自分の命を最優先に考えてくれ。だから…必ず全員で生き残って、2階層に進もう!」
「その通りだ!…では、これにて一旦対策会議を終了する。この後は各自懇親を深めるなり、装備を充実させるなり各々ボス戦に向けての努力をして欲しい。それから明日、全員でボス戦に向けての集団戦の訓練をしたい。参加可能な者はできるだけ協力してくれ。では、解散!」
ディアベルの解散宣言により会議は終了し、プレイヤー達はそれぞれ行動に移りだす。キリトもその場を立ち去ろうとしたが…
「…おい、待てやお前」
その背を不機嫌丸出しな声のキバオウが呼び止める。
「…なんだよ?俺に何か用か?」
「ハン!…おどれ、天才ゲーマーだか言われて調子こいとるようやけどな。ジブンが何時までも好き放題させてもらえるとは思うなや!おどれみたいにちょっとゲームが上手いからって協調性を崩すようなことをするような奴は、ワイは認めへんからな!」
「はぁ…?」
ふんと鼻を鳴らすとキバオウはのしのしと踵を返して去って行く。その背をぽかんと見送っていたキリトに、今度はエギルとグリドンが声をかけてくる。
「…ったく、しょうがねえなあいつは。協調性を乱してるのはどっちだって話だ」
「ま、どんな集団にもああいうスットコドッコイはいるもんだよ。ほっとこほっとこ、それより…キリト君、だっけ?正直君の噂はあまり知らないんだけど、攻略に協力してくれるのなら大歓迎だ。よろしく頼むよ」
「あ、ああ…よろしく」
「おう。…ところでよ、ボス戦のことなんだが…俺達でパーティを組んでみないか?」
「え?」
「ディーの奴も言ってたけど、今度のボス戦は単に第2層へ進むためだけじゃあない。このSAOが『クリア可能』であることを他の連中に示してやるためにも、絶対に負けるわけにはいかないんだよね。だからこそ、確実にボスを倒すことが出来る力量の『まとまった戦力』が必要になる。素人かき集めて俄仕込みの集団戦をしたところで、何の拍子に瓦解するか分かったもんじゃあ無い。そのためにも…俺達が血路を開く必要がある、そうは思わない?」
「あ…言いたいことは分かるし、買ってくれるのはうれしいんだけど遠慮しておくよ」
申し訳なさそうにそう言いながら、キリトは自分を…正確にはお風呂への案内を待つアスナを示す。
「あそこに、色んな意味で放っておけない子がいるんでな…下手に突撃されてそれこそ集団戦を乱されるのもアレだし、俺はあの子についているよ」
「成る程な…しかし、フード被って隠してはいるが中々可愛い子じゃあないか。天才ゲーマーも隅に置けないな」
「ま、お姫様の護衛っていうんじゃあしょうがないな。けど、攻略の時はちゃんと協力してくれよ?」
「勿論。じゃ…また後でな」
エギルとグリドンに別れを告げ、キリトはアスナの後を追う。
「…何を話していたの?」
「ん?ボス戦の時はよろしくって話だよ」
「ふうん…ところで、さっき言ってたお風呂って何処?」
「ああ…今俺が宿にしてる場所にあるんだけど、街の外れに…」
「…ちょっと待って。それって、貴方の部屋にある…ってこと?」
「あ、あー…うん、まあ」
「………覗かないでしょうね?」
「し、しないって!」
若干の熟考の後、浴槽という誘惑に抗えなかったアスナは渋々キリトの宿へと向かい、お風呂を頂戴することになった。その後、アルゴを交えた情報交換の末、明日は集団訓練を欠席し装備が不十分なアスナの強化に費やすことが決まった。
…結果、ボス戦のチーム分けに関われずエギルとグリドンが(余計な)気を利かせた結果アスナとのコンビでボス戦に挑むことになり、当日になってそのことを聞かされたアスナが不満を漏らすことになってしまった。
(もっとも、それに対してキリトが「じゃあ誰と組んだら良かったんだよ?」と聞き、悩みに悩んだ結果答えられなかったことからどの道同じ結果ではあっただろうが)
「…全く、なんで私がこの人と…ブツブツ…」
ボス部屋までの道中、列のから少し離れたところを歩きながらアスナは未だに愚痴っていた。
「しょうがないだろ、決まっちゃったんだから。…幸いというかなんというか、ボス本体じゃ無くて取り巻きの相手だから危険は少ないんだし、ここは様子見ってことで納得しておけよ」
「ふん…!それより、よく天才ゲーマーさんが取り巻き退治なんかに納得しましたね?あんな格好良いこと言っておいて、ボスと戦えないなんて締まらないんじゃ無いの?」
「…まあ、それはいいさ。リーダーの指示だからな、それに取り巻き退治だって大事な仕事だよ。抜かりはしないさ…」
「…?」
アスナを宥めながら、キリトはつい先ほどディアベルから言われたことを思い出す。
『…俺が後方サポートに?』
『そうなんだ!…実は昨日の演習が予想以上に上手く機能したおかげか、皆が自信を持ってしまってな。本来ならグリドンの言うとおり俺達が主軸になってボスと戦うつもりだったんだが、この良い空気を乱すようなことは避けたい…。だから、今回はチームによる連携を重視した作戦に変更して、技量のあるプレイヤーにはサポートに回ってもらうことになったんだ。…あの衆目の前であれだけ持ち上げておいて本当に申し訳ないが、今回君には皆の支援に回ってもらえないだろうか?勿論、その代わり取り分には色をつけさせてもらうよ!』
『…まあ、俺はかまわないけど…』
『そうか!済まないな、感謝するよキリト君!』
『……』
(ディアベル、アンタの言ったことに嘘は無いだろうし皆のモチベーションを保ちたいっていうのもマジなんだろうけど…アンタの『本音』が隠しきれてないぜ)
列の先頭でキバオウたちと談笑しているディアベルの背をキリトは見つめる。
(βテスターだけが知る情報…各階層のボスを倒した時に得られるLA…『ラストアタックボーナス』。金も経験値も頭割りにしておいてドロップ品だけを獲った者勝ちのルールにしたのも、これを狙ってのこと。それはつまり…アンタがβテスターだっていう証拠だ。大方俺に獲られないよう他の連中を理由に遠ざけたってとこだろうな…)
清廉な態度をとってこそいるが、キリトはディアベルの行動の根底にゲーマーとしての本能がにじみ出ていることを感じ取っていた。
(…まあ、俺はそれでもかまわないんだけどな。皆のことを考えているのは事実だろうし、下手に分散するよりまとまって一体の敵と戦った方が安全ではある。LAボーナスはちょっと気になるけど…またチャンスはあるだろうしな。…だけど、この判断がβの時の情報を信用しきって決めたものだとするなら…油断はできない。警戒だけはしておかなくっちゃあな…)
そんな思考を巡らせながら、キリトは無意識に自分の胸に手を当てる。この世界に来てから全く応えてくれない、内に眠る半身に呼びかけながら。
(…お前が居てくれたらな。応えてくれよ、パラド…!)
二人目のゲスト客演。グリドン…一体誰の内なんだ…?
次回こそはダンガンロンパの本編かオーブ外伝更新します。ジードの映画とダンガンロンパ霧切6巻を見たのでやる気だけは十分にあります!…体がついて行かないんですけど