ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~   作:マイン

8 / 23
今回ちょっと短いので12時間後にもう一話投稿します
今回は第1層のボス戦です。…若干やり過ぎた感があるかもしれないけど気にするな!

ではどうぞ



無双の獣王

 始まりの街を出てしばらく…第一層の中央にそびえ立つ巨大な搭。それはアインクラッドを支える大黒柱のように第一層から百層にまでかけて貫いており、プレイヤー達はその塔を上ることで次の階層へと移動することが出来る。

 …しかし、次の階層へとつながる間には各階層の主である『ボスモンスター』が待つ部屋…即ち『ボス部屋』があり、そのボスを倒さない限り上へと続く道は閉ざされたままである。最上層へと辿り着くためには、最低でも各階層にて立ち塞がる99体のボスを倒さなければならない。それはプレイヤー達にとって、余りにも過酷な試練だ。

 

「…着いたぞ!」

 そして今、彼らはその過酷な旅路の最初の一歩…第一層のボス部屋の前へとついにやってきたのである。

 

「皆、分かっているな!?我々の目的はただ一つ。この先にいるボスを倒し、次の階層への道を切り拓くことだ!」

「…ディアベル、一応言っておくけど…」

「分かっているさキリト君。勿論、全員で生き残って…だ!」

「…ディアベルはん、あんま気負いすぎなさんなや。こいつはアンタの指揮とワイらの連携を見とらんさかいこんなネチネチ言いよんねん。合同演習にも参加せんとそこのお嬢さんと乳繰り合っとるくらいにエエご身分みたいやからなぁ~?」

「…ああ。俺の出る幕が無いのなら、それに越したことは無いさ。期待しているぜ」

「…チッ!スカしたこっちゃ…」

『ハハハハハ…!』

 やっかみをかけるキバオウを体も無くあしらうキリトに皆が笑う中、ディアベルがボス部屋の扉へと手をかける。

 

「皆…行くぞ!」

 ディアベルの問いに皆が頷き、扉が重々しく開かれる。

 

 

ギィィィィ…!

 軋むような音と共に開かれた扉の先。奥行き100メートル以上はあるかと思われる広間の奥には、3体の甲冑を身に纏ったコボルトを従える巨大な怪物の姿があった。

 

 

『グオオオオオオッ!!』

 巨大な骨製の斧と盾を手に持ち、背中には剣らしき武器を背負い雄叫びを上げる犬面の怪物。それこそが第一層のボス、『イルファング・ザ・コボルトロード』である。

 

「…ボス、武装、取り巻き、事前情報に間違いなし!!各自、作戦通りに散開!俺に続け!!」

『オオオオオオオッ!!』

 先陣を切って駆け抜けるディアベルに続くように、プレイヤー達はボスへと向かっていく。

 

「…さて、俺達は精々お邪魔虫の排除に勤しむとしますか」

「ええ。…どうしたの?行くわよ」

「あ、ああ…」

 ボスの姿を怪訝そうに凝視していたキリトを促し、グリドンやアスナたちも取り巻きの方へと向かっていく。

 

『グオオオオオオオ!!』

「…A隊、一時下がれ!壁B隊と交代だ!C隊、D隊は交互に入れ替わりつつ波状攻撃!ヘイトを集めすぎないよう注意しろ!」

 ボスと相対するのはエギル達体力と防御に特化した壁役…『タンク』と呼ばれるグループとディアベルを中心とした剣による攻撃を担うグループ。ディアベルの指示は実際なかなかのもので、適度に人員を交代し回復アイテムによる体力の維持を優先し、ソードスキルも好き勝手に撃つのでは無く同じソードスキルを同時に放つことでタゲをとらせない。…無論初めてのボス戦もあっておっかなびっくりの者も居るため足並みが揃っているとは言えないが、今のところは一人もまともに反撃を食らうこと無く徐々にボスのHPを減らしつつあった。

 

「どりゃあッ!」

 

ガスッ!

『ウォォォン…!』

 一方、グリドンやアスナ達も取り巻きのセンチネルたちとの戦いを繰り広げていた。取り巻きと戦うのは向上心はあっても未だにビビりがちな奴や逆に血気に盛りすぎている者、あるいは武器やステータスが低い者をグリドン達実力者がカバーするという形になっている。その中でもグリドンはディアベルが言うだけあって身のこなしがかなりのもので、タンク隊が使うようなハンマーを軽々と振り回しながら取り巻きを翻弄する。

 そしてアスナもまた、この数日で磨き上げた細剣の腕を振るいセンチネルに反撃の好きを与えない。しかし初心者ということもありペース配分がまだできていないのか、1体目を倒し2体目が襲ってきたところでバテ始める。

 

「アスナッ!」

「…ッ!す、すい…」

「スイッチ!」

 それを見たキリトはアスナの返事を待つ間もなく入れ替わるようにセンチネルの前に出る。

 

『ウォーン!』

 突っ込んできたキリトにセンチネルが手にしたメイスを振り下ろすが…

 

「ふッ!」

 

トンッ!

『!?』

 キリトはその軌道上に入る寸前にジャンプし、宙返りしながらセンチネルの頭上に跳び上がる。そして

 

ザンッ!ザシュッ…!

『グオッ…!』

 すれ違いざまにセンチネルの頭部を回転の勢いで縦に切り裂き、着地と同時に振り返りながら剣を振りその首を切って落とした。

 

「…凄」

「ヒュゥ…やるじゃんか」

 その一拍の無駄の無い動きにアスナやグリドンたちのみならず、たまたまその光景を見ていたプレイヤーたちも感嘆の目でキリトを見る。

 

「…シッ!」

 そんな視線を意に介すこと無くキリトは懐から短剣を取り出すと、それをボスの目めがけて投げつけた。

 

ザクッ!

『~~ッ!?』

 攻勢に出ようとしていたコボルトロードであったが、キリトの投げた剣が目に刺さったことで気勢を削がれて蹈鞴を踏む。

 

「…ハッ!今だ!!」

 即座に我に返ったディアベルが攻撃の指示を下す。

 

「……」

 

ガシッ!

「!」

「…出しゃばんのはその辺にしておけや天才様。もう十分ええカッコしたやろうが。オレンジになるのは御免やさかいど突くのは勘弁したるけど、おどれも波風立てるようなことはしたくないやろ?」

 追撃の投擲をしようとしたキリトの腕をキバオウが掴む。しばし睨み合った後、キリトは手にしていた短剣を渋々しまう。

 

「ハッ…おどれらβテスターはそうやって身の程をわきまえとればエエねん。いくら命懸けのデスゲームやからってな、おどれらのケツ追っかけて情けなくここを脱出するなんぞ御免なんや!ワイらの道は、ワイらが決める!!」

 そう吐き捨てるとキバオウもボスの攻撃へと加わっていった。

 

「……」

「…いいの?あんなこと言われて?」

 それを見送るキリトに、取り巻きを一通り片付けたアスナとグリドンが近づく。

 

「別に…さっきも言ったけど、俺の出番がないならそれはそれでいいさ。それより、注意しておけ…多分ここからが正念場だ」

「君の指摘が正しければ、ボスもβテストの時とは異なる何かがあるかもしれない。今のところは情報通り、となると…変更しているとするなら」

「ああ…奴のHPが危険値に入ったとき、奴は武器やモーションが変化する。何かが違うというのなら、そこしかない…!」

 

 そうしているとやがて、コボルトロードのHPが最後の一本に差し掛かった。

 

『ウオオオオオオッ!!』

 するとコボルトロードは持っていた斧と盾を放り出し、背負っていた剣を握る。

 

「来るか…!」

「…ディアベル、一旦下がれ!モーションが変化する、様子を見るんだ!」

「…全隊、一時後退!距離をとれ!」

「チッ、βなんぞの指示で…」

 後退したプレイヤー達の前で、コボルトロードの最後の切り札が露わになる。

 

 

 …それは、片方の鍔だけが若干突き出た少し変わった形の『日本刀』のような剣であった。

 

「あれは…?」

「どう見ても曲刀じゃあねえな…あれはニホンのカタナ、って奴か?」

「…あれ、どっかで見たことがあるような…?気のせいか?」

「やっぱりβの時と違う…!ディアベル、しばらく攻勢は控えろ!相手の出方を見切るんだ!」

「…総員、包囲用意…」

 

「ディアベルさん!あんな奴の言うこと聞く必要ありませんよ!」

「ッ!」

 キリトに言われたとおり指示を出そうとしたディアベルであったが、隣にいたプレイヤーからそう言われて踏み止まる。

 

「そうや!たかが武器が変わっただけやんけ、奴はもう虫の息なことには変らへん!このまま押し込んで決めたればエエねん!」

「ディアベル!」

「ディアベルさん!」

「…総員、突撃用意!」

「ディー!?」

「ディアベルッ!」

 若干の思考の後指示を切り替えたディアベルにグリドンとキリトが声を上げる。

 

「…心配するな!刀とはいえ剣には変わりない、動きにさほどの違いは無いはずだ!!」

「ディアベル、無茶をするな!」

 ディアベルは隊を結集させると、一団となってコボルトロードに突っ込んでいく。

 

『ウオオオオオ!!』

 

ギィン!ガキィン!

 コボルトロードは刀を振り回して応戦するが、タンク隊たちが射線上でまさに壁のようになってその攻撃を受け止める。

 

「やはり目立った動きは無い、ならば…全隊、防御に専念!俺が決める!!」

 一団の中から抜け出したディアベルがソードスキルを構えながらコボルトロードへと迫る。

 

 

 

『…ニィ』

 その瞬間、コボルトロードは口元を妖しく歪ませながら鍔の伸びた方をディアベルへと向ける。

 

「…?鍔なんぞ向けてなに考えとるんや…」

「…ッ!あの構え、まさかアレは…!?」

「ディアベルッ!!下がれ、それは…ただの刀じゃあないッ!!」

「ッ!?」

 ディアベルが異変に感づいたときにはもう遅かった。咄嗟に盾を構えようとするが、ソードスキルのモーションを起こしてしまった体は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

ドゥンッ!!

 火花の爆ぜる音と共に、鍔の先端から『光』がディアベルめがけて放たれた。

 

 

 

「…うおおおおおおおッ!!」

 その光が放たれるよりも速く、キリトはストレージから持て余していた『盾』をオブジェクト化すると全力でディアベルめがけて投げつけた。

 

ゴンッ!!

「おぐッ!?」

 そして光よりも一瞬速くディアベルに命中してモーションを中断させ、ディアベルを突き飛ばしながら光と彼の間に割って入る。

 

ドガァァン!!

『ウワァァァァァ!!?』

 直後、キリトの盾に命中した光が爆発しその余波がディアベルとその後ろにいたプレイヤー達を襲う。

 

「嘘、そんな…!?」

「マジかよ…!?」

「ディアベル!皆!」

 その光景に愕然とするアスナとグリドン。キリトが皆に呼びかけると、土煙の中からディアベルを始めとしたプレイヤー達の姿が見える。どうやらあの一撃自体に大した威力は無いらしく、その余波を喰らった程度の皆のHPはさほど減ってはいない。…しかし、皆の動揺は目に見えて明らかであった。

 

「な、なんだよ今のって…!?」

「ここは剣の世界じゃなかったのかよ!なのに、なんで『あんなモノ』があるんだよッ!?」

「ば、馬鹿な…こんな、こんなのβテストにだって無かったのに…」

 しかし、それも仕方が無いことだろう。このSAOにおいて、ソードスキルを放つ剣こそが唯一にして最大の武器。それがこの世界の常識の筈だった。しかし…それをこんな初っ端から覆されたようなものなのだから。

 

『グオオオオオオオンッ!!』

 勝ち誇ったように雄叫びを上げるコボルトロード。その手に持つ光を放つ刀の名を、グリドンだけが知っていた。

 

「なんで、だよ…。なんでアレが、SAOん中にあるんだよ…!?」

 それはグリドンにとってかつては見慣れた武器であった。自分は使わなかったが、自分が時に敵対し、時に肩を並べて戦った『鎧武』や『斬月』が愛用していた、『銃』の特性を兼ね備えた刀。

 

 

 その剣の銘は、『無双セイバー』。沢芽市のアーマードライダーたちしか知らないはずのその剣が、今そこにあった。

 




今回ここまで、続きは正午に
次回、決着です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。