ソードアート・オンライン~エグゼイド・クロニクル~   作:マイン

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ボス戦決着です。SAOらしくない終わり方かもしれないけど気にするな!

ではどうぞ



ヒーローのキメワザ

 第一層のボス、『イルファング・ザ・コボルトロード』との戦い。その最中コボルトロードの持つ剣から『銃撃』が放たれたことにプレイヤー達は騒然とした。

 

「い、今のって…SAOに銃なんてあるの!?」

「そんな馬鹿な…!いくらβテストとは違うからって、あんな無茶苦茶な武器があってたまるかよ!」

 ゲームのことを殆ど知らないアスナであっても、今の今まで剣…よくてグリドンのようなハンマーや槍のような武器しか見たことが無いこの世界で銃撃を放つことが出来る武器の異常性は理解していた。キリトもまた、現実にはあり得ないような武器…まるで『仮面ライダーが使うような武器』の存在に愕然とする。

 

『グルルルルルルッ…!』

「ひいッ!?」

 コボルトロードは腰を抜かして動けないプレイヤー達に、無双セイバーを突きつけながら詰め寄り始める。ディアベル達も逃げようとはするが、普段見慣れない剣と比べより死に直結するイメージのある銃を前に体がついて行かない。

 

「チッ…!アスナ、グリドン!バックアタックをかけるぞ!ボスの注意を逸らすんだ!」

「う、うん!」

「了解!」

 彼らを救うべくキリト、アスナ、グリドンはコボルトロードの背中を狙う。

 

「やあああッ!」

「ハッ!」

 

ザシュザシュッ!

 最初にキリトとアスナの斬撃がコボルトロードの腰に刻みつけられ

 

「…ちょっとごめんよぉ!」

 

トンッ!

「うおッ!?」

 それに続くようにグリドンがキリトを足場にコボルトロードの頭部近くにまで跳び上がり

 

「どっ…せぇぇぇぇぇいッ!!」

 

ガッツゥゥ~ン!!

 思い切り振り下ろしたハンマーが、コボルトロードの頭を兜の上から強かに打ち据えた。

 

『…~~~~ッ!?』

 さしものコボルトロードもこの不意打ちには応えたようで、声にならない悲鳴をあげた後頭を抑えながらキリトたちの方へと振り返る。

 

「ディアベルッ!今のうちに体勢を整えるんだ!」

「あ…ああ、分かった!」

 我に返ったディアベルが仲間達の回復に回る中、キリトたちは目の前のコボルトロードへと向き直る。

 

『グルルルルルルルッ…!!』

「あーあ…どうするの?怒髪天を衝くって感じですけど?」

「どうするもなにも…やるしかないだろ。…おいグリドン、さっきのお前の口ぶり…あの武器についてなにか知ってるんだろ?非常事態だ、情報料は言い値で後払いするから教えてくれ」

「…この状況でそんな阿漕な真似はしないよ。と言っても、俺も詳しく知ってるわけじゃ無いんだけど…あの刀の名前は『無双セイバー』とか言うらしい。刀の部分に関しては特に変わったことはない…精々大抵のものは切れる程度だ。そんで鍔の銃だけど、無制限に撃てる訳じゃない。何発かは知らないけど、撃ち続ければその内弾切れを起こす。…もっとも、アレが俺の知ってるモンと同じってならの話だけどな」

「…オーライ。なら、この手で行くか。アスナ、グリドン。俺が奴のタゲをとって無駄玉を撃たせる。二人はその隙に側面や後方から攻撃してくれ」

「!?」

 まるで買い物にでも行くような調子で囮を買って出たキリトにアスナは目を見開く。

 

「そんな…危険すぎるわよ!貴方死ぬ気!?」

「そんなつもりは毛頭無いさ。この3人の中でソードスキルやボスの情報に一番精通しているのは俺だ。なら、俺が囮になるのが妥当だろ?」

「だからって…」

「それに…飛んでくる銃弾を躱すのは『慣れてる』しな」

「…慣れてる?」

「…キリト、お前ひょっとして…」

『ウオオオオオオッ!』

「…話は後だ、行くぞワン公!ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!」

「もうっ…!知らないわよ!」

 攻撃モーションへと移行し始めたコボルトロードに、キリトは駆けだしていく。

 

『グオオオッ…!』

「させるか!」

 

ガキィンッ!

『アオッ!?』

 ソードスキルを使用しようとしたコボルトロードの剣の軌跡を弾き、スキルを中断させる。

 

「ソードスキルは使わせないぜ。そうなると…残る手は一つしかないよなぁ?」

『…!』

 挑発するキリトにコボルトロードは苛立たしげに無双セイバーの銃口を向け、トリガーを引く。

 

ドゥンッ!

 鍔から放たれた弾丸は、狙い違わずキリトへと迫る。それに対しキリトは

 

…ガィィン!

「ぐっ…!?」

 ずば抜けた『反応速度』で銃弾の軌道を読み、半身になりながら咄嗟に剣の腹を弾丸を受け、弾丸の軌道を変えつつ反動で自身も銃弾と反対方向へと吹っ飛ばされることで身を躱す。

 

「なんて無茶な…!」

「ボサッとするなよお姫様!気ぃぬいてっとアイツが先にお陀仏しちまうぜ!」

「…分かってます!」

 乱暴な銃撃の躱し方に唖然としながらも、アスナとグリドンはコボルトロードの足や背中を狙ってソードスキルを叩き込む。事前に厄介なソードスキルの発動条件をキリトから聞いていたため、それに引っかからないよう交互に攻撃を撃ち続け、徐々にHPを削っていく。

 

『…アォォォォンッ!!』

 と、コボルトロードが遠吠えのような声を上げる。すると

 

シュンシュンシュン…!

「ッ!?取り巻きのセンチネルが…」

「おいおい…聞いてないぜこんなの…」

 遠くで他のプレイヤーを攪乱している筈のセンチネルがアスナ達の周囲に出現し、アスナとグリドンの足を止めさせる。

 

「クッソ…!こんな時に取り巻きのパターンまで変わりやがって…」

『グオオオオオ!!』

 結果、ボスとタイマンの形になったキリトは奮戦するが、斬り合いには分があるもののやはり飛び道具相手では受け身にならざるを得ず、徐々に攻め手に欠け始める。

 

「押されてるぜ…」

「や、やべぇんじゃねえか…!?」

 アスナ達の方にセンチネルが回った為手漉きになったプレイヤー達も、コボルトロードの猛攻とそれに必死で応戦するキリトを目の当たりに動くことが出来ない。

 

 

…ピキ、パキィィィンッ…!

「なッ…!?」

 そして、6発目の銃弾を受け流したところでついにキリトの剣が先に限界を向かえ、エフェクトと共に砕け散ってしまった。

 

『オオオオオオオッ!!』

 勝ちを確信したコボルトロードは刀を振りかぶり、ノーガードのキリトめがけて振り下ろす。

 

「糞ぉッ…!こんなところで…」

 

 

 

 

 

ガゴォンッ!!

 

「…?」

 訪れる衝撃に身構えたキリトであったが、痛みの代わりに届いたのは金属同士がぶつかったような鈍い音であった。

 

「…頑張りすぎだぜ、天才ゲーマー…!俺ら壁役の良いところぐらい、残しておいてくれよ…!」

「エギル!」

 キリトへの攻撃を防いだのは、一足早く戦線に復帰したエギルの斧であった。

 

「…何をしている!今が反撃のチャンスだ!センチネルとボスを引き離すんだ!!」

「ディアベル…!」

「ディー!」

 続けてディアベルの指揮する部隊がアスナとグリドンを妨害するセンチネルの間に割って入った。

 

「…キリト君、グリドン!さっきはすまない…俺としたことが功を焦ってしまった!この失態は、今からの働きを以て挽回しよう!」

「…ふっ。分かればいいんだよ、分かればさ」

「ケッ…しゃあないな!おいそこのβテスター、おどれはひっこんどれ!武器持ってない奴に出てこられても邪魔じゃ!」

「くっ…ディアベル!」

「分かっているッ!…C、D隊は引き続きセンチネルを引き付けろ!残る全隊はボスに波状攻撃!…だが気をつけるんだ!奴の一定の範囲に複数のプレイヤーがいると全体攻撃が来る!包囲するのでは無く、ヒットアンドウェイで攻撃を仕掛けるんだ!」

『了解!』

 ディアベルの指揮に戦意を取り戻したプレイヤー達は指示通りに行動に移る。アスナとグリドンを中心にプレイヤー達は指示通り連続して攻撃を叩き込む。

 

『グオッ…!』

 

ガキィンッ!

「くぅッ…!?」

「ディアベルさん!」

 それでも時折足並みが合わずコボルトロードのソードスキルが襲ってくるが、それらはエギルが筆頭の壁隊…そしてなんとディアベル自身が身を挺して防ぐ。

 

「ディアベルはん、無理すんなや!アンタ壁役とは違うんやで!?」

「先刻承知…!だが、こうすることぐらいでしか…俺の失態を償うことは出来ん!」

「ディー…」

『グルルァッ!』

「…!ディアベル、撃ってくるぞ!」

「何ッ…!?」

 怯んだディアベルにコボルトロードが銃撃を放とうとする

 

 

 

…が

 

カチン、カチン…

『…!?』

「…た、弾切れ?」

 グリドンの言ったとおり、どうやら弾数は6発までだったようでトリガーが虚しく空ぶるだけに終わった。

 

「…今だッ!」

「どっせぇぇぇいい!」

 相棒の覚悟に奮起したグリドンの渾身の振り上げがコボルトロードの顎を捉えた。

 

「これで…止めよッ!!」

 隙だらけの胴にアスナの細剣の軌跡が打ち込まれ、ボスのHPがみるみる減っていき…

 

 

 

…ギロッ!

 あとほんの少しと言ったところで踏みとどまってしまう。そして死に体のボスのターゲットが、正面でスキル後の硬直状態のアスナに変わる。

 

「そんな…!」

 

「…エギル!背中貸してくれッ!」

「き、キリト…うおッ!?」

 仕留めきれなかったことに愕然とするアスナの後ろで、武器を失い戦線から外れていた筈のキリトがエギルを踏み台にしてボスめがけて跳躍する。

 

「ハァァァァァッ!!」

「…!あれは…」

 自分の頭上を飛び越え、ボスへと突貫するキリト。その突き出された足が纏う光に、アスナは見覚えがあった。アスナがそれを目にするのは、『2度目』だったから。

 

 

 

 

 

 …唐突ではあるが、SAOの攻撃手段である『ソードスキル』には剣だけでなく槍や斧、投剣の専用スキル、…そして徒手空拳による『体術スキル』も存在する。この中でも体術スキルであるが、これを極めようというプレイヤーは初心者は元よりβテスターの中でも数少ない。

理由は明確、極めたところで武器を使った方が圧倒的に強いからである。元が達人級の格闘家でも無い限り、徒手空拳で武器を持った相手と戦って勝利することは極めて難しい。なのでプレイヤーの多くは戦闘中に武器を壊してしまったときの緊急手段として初歩的なもののみ会得し、それ以降のスキルには目もくれないことが殆どである。

…しかし、だからといって体術スキルが弱いわけでは無い。勿論武器を使ったソードスキルには一発の威力は劣るが徒手空拳故に至近距離でも小さなモーションで使用でき、またスキル後の硬直時間も無いか、あったとしても限りなく短い。そして序盤で習得できる体術スキルの中でも『最強の技』は、隙こそ大きいもののその威力は相当なものである。キリトはその技をスキル一覧で見た瞬間、他のソードスキルの習得を後回しにして真っ先にこのスキルを会得した。威力や見た目の格好良さもあるが、その理由を問われればキリトはこう答えるであろう…

 

 

『こんな『名前』の技を見つけちまったら、そりゃ習得するしかないだろ?…俺も、『仮面ライダー』なんだから…!』

 

 

 

 

「ライダァァァ…キィィィックッ!!!」

 

ドゴォォォン!!

『ガアアアアアアアッ!!』

 キリトの体術スキル…『ライダーキック』をもろに喰らったコボルトロードが断末魔をあげ、残りわずかだったHPゲージが消滅する。

 

 

パキキ…パッキャァァァァンッ…!!

 そして、半透明になったその体が甲高い音を上げて砕け散ると同時に

 

 

 

 

『Congratulations!!』

 勝利を称える電子音と空間に浮き出た文字、そして戦闘終了を示すリザルト画面が、キリトたちの勝利を示していた。

 

 

「バトル…クリア!」

 




体術スキル「ライダーキック」は当然ながら今作オリジナルです。
威力としては「強いには強いけどわざわざ憶えるのは面倒くさい」…ぐらいの技です。ドラクエ7でキーファに真空切りを憶えさせるとか、ポケモン金銀でケーシィを捕まえてユンゲラーまで進化させるぐらいの面倒くささと思ってくれれば…分かりづらいかな?
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