【仮面】さん日記 作:復帰アークス
★月※日
何故かは知らないが、最近になって私へと色々な者達から懇願の様な苦情の様な電波が届くことが多い。私に届く理由は分からないが、おそらくはフォトンが何らかの相互作用を起こしているのだろう。
問題はその内容だ。例えば――
「爪先に激痛が走った瞬間、絶命していた。我を倒すには、頭や腹の護石を破壊しなければならないはず。ありえない。これはありえない。足だけ攻撃されて地に伏せるとは……理屈が分からない……」
これは惑星ハルコタン在住のギグル・グンネガムさんからのメッセージ。
「自分達専用のBGMが流れる前に倒されてしまった。もう赤箱になってしまってから音楽が聞こえて来るとか虚しいにも程がある」
こちらは惑星アムドゥスキア在住のヴォル・ドラゴンさん、クォーツ・ドラゴンさん、ドラゴン・エクスさんからのメッセージ。ついでに色んな場所に現れるクローム・ドラゴンさんのものも入っている。
「ええいっ!? こちらの通信が追い付かん!?
「ど……どうやったら、正確に情報を伝達できるのでしょうか!? シャオに至急連絡を!」
「ええっ!? 何これ!? こっちが伝達する前に敵が倒されてる!?」
「報告が追い付きません。至急改善を!」
これに関しては、アークスのオペレーター四人娘……。いや、三人娘とおばさんが一人からの狼狽えた声だ。
あれ? 今一瞬ゾクッと来た!? すいません!? おばさんではなく、お姉様です! 私もアークスだった頃は大変お世話になりました。ヒルダお姉様!!
敵味方問わず、こんなのばっかり来ていたら私だって気が滅入る。どうやら原因はかつての私にある様だが、ヤツは何をやっている? 何をするのも勝手だが、私に迷惑が掛からないようにして欲しい。こう見えても私だって忙しいのだ。
緊急で【深遠なる闇】になったり、いつ来るか分からない深遠トリガーでアークスと対峙したり、アドバンスクエストで待機したり、闇のゆりかごで理不尽な12対1の戦闘をしなければならなかったりと、これ以上面倒事を増やさないでくれ。
そんなことを考えていると、頭の中にどこからか助けを求める声が響いていた。
――ニャウ~! 誰か助けてニャウー!!
これは……あれだ。
少々気乗りはしなかったが、ワープをした先には人影が見える。どうやら敵は昔の私らしい。
場所は惑星ナベリウス森林エリア。愛用のコートダブリスDを構え――
――パンッ
なん……だと!? ワープする際の黒い靄が晴れる前に……倒されてしまった……!? 相手からアサルトライフルの銃声のようなものが聞こえて来たが……意味が分からない。どうして私が倒れている!?
命からがら別の場所へとワープしたが、何が起こっているのか理解できなかった。不可解な現象だ。このラスボスでもあり主人公でもある私がいとも簡単にやられてしまうとは……!?
先程の事象を頭の中で解析している最中にまたしてもニャウの声が頭に響いていた。さっきやられたばかりだというのに、またヤツに喧嘩を売って泣かされたらしい。
だが、これは私にとってもチャンスだ。先程の雪辱を晴らさねば!! こうなったら、私も本気をだして
この【仮面】の本気を目に焼き付けるがいい! さて、相手は……どこだ?
そこには、かつての私が確かにいた。まあ最初は装備でも確認するかとヤツの持っている武器を見る。
星がひとーつ、ふたーつ、みっつ、よっつ……えっ!? 星がじゅう……ご……!? しかも武器の強化値は+35。あれー!? 星って13までじゃなかったっけ? あっ、【深遠なる闇】の私から星14もドロップしたっけ。
じゃあ、目の前にあるのはなんだろう? しかもヤツのレベルは90。だがレベルは私だって少し低いだけで、そこまで負けていないはず。
そんな事を考えながら、自分自身のレベルを確認すると。
――Lv20
なに、この無理ゲー。よく見たらここって難易度ノーマルだ。そりゃあ私のレベルだって下がるなあ。はっはっはっ。
ってか、どうしてノーマルに来てるんだ!? 黙ってエクストラハードにでも行ってろ!
そんな文句を言ってやろうかと思ってしまったが、敵は何やら呟いている。
何ブツブツ言ってるんだ!? 楽してレベル上げしたい? 強化素材のエンペ・エンブレイス!? おすすめクエストで『ボーナスキー【金】』来い!? ラッピーフィーバーでも良い!? 目を血走らせて怖いんですけど!
そんな強すぎる武器をこっちに向けんな!? うわああああああああ!!?
こうして、Lv20の
エネミー視点で考えると割と理不尽だなあ……。