【仮面】さん日記 作:復帰アークス
▼月◇日
最近、アークス達が地球という惑星の東京へと足を運んでいるらしい。とはいえ、何故かダーカーも出没するし、稀に自分を呼び寄せるニャウも現れるようだ。私もあの猫の助けを呼ぶ声で、一目散にそこまで行くこともあるので下見も兼ねて、【仮面】の姿で現地へと降り立っていた。
一見平和な街並みであり、辺りはアークスシップ居住区の様にビルが立ち並び、その中にあって道端の服屋と思しき店内からはルーサーとマトイがコントをしている様な放送が流れている。
”ふふっ……。げんきいー?” とか、ルーサーもかなりノリノリでやっている。その一方でマトイはかなり嫌がっているのが声を聞いただけで分かってしまう。あんなのやられたら、私だってサプライズダンクでヤツの頭を叩き潰したくなってしまうだろう。マトイはそれこそ二代目クラリスクレイス時代の無差別複数同時ラ・グランツをやりそうなものだが、よく我慢したと褒めてあげたい。
――わたしはあなたと漫才しに来たんじゃない……。わたしは、あなたを殺しにきたの。
決め台詞としてはいまいちか……。
とりあえず街の散策をするにあたって、仮面は外しておいた方が良いのでは……、と考えたので、素顔でそこら辺を練り歩いている。服に関しては……、どうやらこの星の一張羅に近い様でそこまで不審者扱いはされていないようだ。
しばらく歩いているとおでんの屋台らしきものが見えて来たので、立ち寄る事にした。これでも元アークスなので、現地住民とのコミニュケーションも大事な仕事なのだ。今の私は【深遠なる闇】だけど。
おでんとこの国の酒を味わっていると、後ろの方から女性の声が聞こえていた。
「あら……? ご一緒してもよろしいですか? この時間に他のお客さんとは珍しいですね」
長い金髪を三つ編みにし、上品な黒いドレスを着こなす糸目の淑女がそこにはいた。何処かの星の戦闘民族の嫁っぽい気がするが、勘違いだろう。彼女は私の隣に座り、屋台の親父さんと世間話をしだした。どうやらこの店の常連らしい。
「聞いてますか! 親父さん、あのバカときたら……いつもいつも……!」
「まあまあ、少し落ち着きなって。きれいな顔が台無しだぞ?」
隣に座った女性は、酔っぱらって屋台のマスターに愚痴りだしていた。内容から察するに、別れた旦那の所業が気に食わないらしく、自分がどれだけその旦那とやり合って来たかを熱弁していた。
「錬金術に夢中だった頃は、施設ごと蹴り飛ばしたりもしました! それと――」
「はっはっはっ! 相変わらず面白いなあ! その旦那も悪気があるわけじゃないんじゃないか?」
「悪気が無いから余計タチが悪いんです!!」
隣の方はかなり酔っぱらっている。施設を丸ごと蹴り飛ばすか……。そういえばレギアスとマリアが本気を出すとマザーシップ自体がヤバい事になると、
「そういえば……私も、ある
自分もほろ酔い気分になり、遠い記憶の……マトイと共にマザーシップへと赴きルーサーと対峙した事を思い出してしまった。
「そっちも面白い人だなあ……。ファレグさんと話を合わせて来るなんてな」
屋台のマスターは私の話が冗談だと思ったらしい。この星の人からすればそう感じるのも無理はない。
「あのバカは……裏でコソコソと良からぬことを……!」
「いますよね、そういうの。こちらの
どういうわけか、話が合ってしまった私と隣の女性だった。そして意気投合したのを感じ取ったのか、その女性は……。
「この店に来たのでしたら、鯛の揚げ団子を食べないともったいないですよ! 私が奢りますから!!」
どうやら、お勧めを食べさせてくれるらしい。聞くからに旨そうなメニューだ。ワクワクしていると、屋台のマスターが申し訳なさそうに。
「悪いけど鯛の揚げ団子は、これで終わりだよ。最近『東京マダイ』が獲れなくなって、価格が上がっててな……。どうにかおでんの値段を下げないで頑張ってきたが、そろそろ限界かもしれねえ……」
「あら……、それは大変ですね……。けど、私は少しくらい価格が上がっても食べに来ますから」
今日最後の鯛の揚げ団子に舌鼓を打ちながら、マスターと女性の会話に耳を傾けていた。自然の都合なので、仕方ない部分はあるだろう。すると、マスターから聞き捨てならない言葉が聞こえて来ていた。
「ありがたいねえ。『東京マダイ』だけじゃなくて、『東京マグロ』や『東京エビ』も漁獲量が最近眼に見えて減ってるらしくてなあ……。どっかの悪い連中が密漁してんだと思うが、こっちとしちゃあ良い迷惑だ」
……最近漁獲量が減ってるって、もしかして……?
「親父さん、密漁している連中を見かけたら、私が蹴り飛ばしてきますから! 安心して下さいね」
それって、どう考えても
彼女が密漁者に憤りを感じている最中、一人真実を知る私はいたたまれなくなってしまい、足早に屋台を後にした。